お妙と九兵衞は柳生の屋敷の一室にて午後を過ごしていた。
外はまだ二月の風が吹き荒れ、暖かな室内にいても風の音が聞こえる。
「暖かいな、妙ちゃん」
「そうね。九ちゃん」
ここは九兵衞の自室。
二人はこたつでみかんを食べている。
柑橘系の爽やかな香りが充満する。
ふと、剥いた皮を片付ける九兵衞の指と、お妙の伸ばした手の甲が触れた。
九兵衞が僅かに身を固くする。
お妙はその様子を見た。
そんなお妙の様子を九兵衞が上目つかいで見るから、二人は目が合ってしまう。
九兵衞は思う。
さっきまで楽しくお喋りしてたのに。
他愛もないことで大笑いしてたのに。
みかんだって取り合いしてたのに。
手なんかいつも触れているのに。
こんな風に偶然、手が触れ合ってしまうからいけない。
あの結婚騒動のときに潰したはずの思いが、湧き上がってしまう。
にしても…妙ちゃんの目はなんてきれいなんだろう…
触れあったままの九兵衞の手を、妙はもう片方の手のひらで包んだ。
「…!」
内心息を飲む九兵衞。
何でもない風に手を握ったままお妙が笑いかけた。
「九ちゃん、キスしよう?」
「は」
「九ちゃん見てたらしたくなったの。
…ね?」
いきなりのことに九兵衞は声が出ない。
「だ、だだってぼく僕達は女どう」
「だけど私が好きなんでしょ?
手がぶつかっただけでそんなトマトみたいになっちゃって」
「!」
九兵衞が、どもってきょどってるうちにも、お妙は九兵衞に身を寄せ、肩を抱く。
コタツの中の、互いの脚もぴっちりとくっつく。
いつもふざけてじゃれあうのとは明らかに違う。
こんなに静かに、こんなに近くで見つめあい、キスをしようだなんて。
恥ずかしすぎる。
羞恥で九兵衞はうつむく。
「キス…あの時は躊躇わなかったのにね」
お妙の言葉に九兵衞は顔を上げる。
「…すまなかったと…思っている。本当に…」
「なら私を見なさい。」
先程から緊張してしまった九兵衞は、ぎこちなく目を動かしてお妙と向き合う。
頬の熱が伝わりそうなほどの距離で。
お妙は笑っていた。
目以外は。
「はじめてだったのよ。…責任くらい取ってよ」
黒目勝ちで可憐な筈な瞳は、感情に熱く濡れ、九兵衞を真っ直ぐ睨み付ける。
掴まれた肩。ほそい指。
九兵衞は泣き出しそうなほどに喜びを感じた。
「…妙ちゃん…目、閉じて?」
九兵衞はお妙の細い顎に指をかけ、リードしようとした。
お妙はやっと破顔した。
「イヤよ」
えっ?と聞き返す間もない。
ガッと九兵衞の頭を両手で固定し、いきなり舌を絡めるディープキス。
瞬時に口内に侵入してきたお妙の舌、吸い付く柔らかなくちびる。
強引過ぎて九兵衞の思考と感覚がついていかない。
びっくりして閉じた目を、息も絶え絶えに開ける。
口づけの熱とは裏腹に、冷たく見下ろして来るお妙の瞳。
乱れる九兵衞を監視するかのような視線。
一度彼女への思いを断ち切ろうとして出来なかった九兵衞。
だけどお妙もまた、九兵衞に執着していた。
しかしやられっぱなしの九兵衞ではなかった。
キスしつつ、意中の相手の胸やら何やらが密着していると理性も薄れる。
着物の隙間から肌に触れた。
雪のようだと思って見ていたからだは、やはり柔らかだった。
脚の間に指を滑らせても、お妙は抵抗しない。
しかし、鍛えてる自分の体とは桁違いのやわさに、傷つけてしまいそうな気がした。
荒々しく触れるのを、ためらってしまう。
みつけた茂み。
九兵衞はお妙のそこにゆっくりと触れた。
割ると、熱い蜜が指に絡み、九兵衞は歓喜に息を洩らす。
さすがにお妙も口づけを途絶えさせる。
「こんなに…妙ちゃん、…嬉しい…嬉しいよ…」
最中にも関わらず九兵衞はむせび泣きそうになる。
秘所をまさぐられたからか。
お妙は息切れし、白い肌を薔薇色に上気させる。
時折上がる悩ましい声に応えたくて、九兵衞はお妙の脚の間に頭を突っ込んだ。
繊細な毛に覆われた花びらを指で開き、芽を見つける。
そこに舌を当て、一生懸命に動かした。
「!!…ぁあっあぁん!九ちゃん!」
いやぁ、やめ、あぁやめないでと普段聴かせない湿った声は、九兵衞の脳内を甘く刺激する。
目の前のお妙の股ぐらがこの世の全てのような気がしてくる。
濡れて光るその器官が、自分の全てな気がしてくる。
お妙の全てがどうしても欲しくなって、九兵衞は我慢出来ずに穴にゆるゆると中指を食い込ませた。
「いい?妙ちゃん………欲しいんだ。」
どうしても。
どうしても欲しい。
このからだの全てを知り尽くしたい。
荒げていた呼吸をととのえながら、お妙は九兵衞を見る。
うなじを引き寄せ、再び口づけるお妙。
ちゅ、と軽く。
「ま、責任取ってよね…?」
悪戯に笑うその顔は、照れと喜びに輝いていた。
九兵衞も照れて笑う。
「勿論だ…一生幸せにする」
そう言いながらはにかむ。
「うん。それもだけど…」
お妙が大事なところで言葉を濁す。
「ん?お妙ちゃん?」
「責任取る、って言うのはね」
お妙は優しく九兵衞の体を横たえた。
再び見下ろし、まるで天使のように笑う。
「こういう事よ。」
そう言って九兵衞の蜜壷に予告なしに指を差し入れた。
「!はぁあん…あぁ…」
痛みと快感で九兵衞は喘ぐ。
お妙はお構いなしに、差し込む指を増やしていく。
「キレイよ…九ちゃん…世界で一番…」
飢えたように九兵衞の恥丘にむさぼりつく。
幼い顔を性の悦びに歪め、九兵衞はのぼりつめ、叫び、落ちた。