「じゃあ…今日だけは甘えちゃおうかしら。わがまま聞いてくれる?」  
「ハッ…ハイ!! なんでも言ってください僕なんでもしますよ!」  
わがまま聞いてくれる? だって!   
戸棚に潜みながら、俺(近藤勲)はいいなぁ〜新八君ていいなぁ〜役得じゃん、と羨ましがった。  
インフルエンザで屯所は全滅、まさかお妙さんまでインフルエンザだとは思わなかったが……  
ちなみに俺もインフルエンザだ。  
寒気がするなぁオイ。頭がボーっとするなぁオイ。  
元気だったら俺がお妙さんを看病して差し上げたいものだ。  
しかしお妙さんの寝込む姿もなかなか乙なものだ。髪を下ろしているところは貴重なショットだ。  
カメラ持ってくればよかった。  
「そうね、じゃあ……新ちゃん、身体を拭いてもらってもいいかしら。」  
「はい、わかりました!」  
って、エェェェェェェェ!!?? いきなりそれェェェ!?  
新八君はすぐに湯を桶に汲んできて手拭を絞る。  
お妙さんはゴホゴホ咳き込みながら身体を起こして寝巻きの上を……ぬ……脱いだ……。  
ノーブラッッ!!  
俺の位置からはお妙さんの背中しか見えないがっていうか生背中ぁぁぁっ!!  
「じゃあ、失礼します。」  
新八君はお妙さんの後ろに回って背中を拭きはじめたんだけどエェェェェェェェ!!??  
ちょ……いいのかコレ。いいのかコレ。いくら姉弟でも18と16にもなっていいのかコレ。ジャンプだよコレ。  
少コミじゃないんだよコレ。  
エロゲ? これなんてエロゲ? エロゲのしすぎで幻見てるんじゃないのか俺?  
いや違う、確かに目の前で新八君がお妙さんの生背中を手拭で拭いている。  
っていうか新八君にはお妙さんのパイオツ丸見えじゃないのか?  
新八君の手がお妙さんの肩から前に滑って……オイィィィィィ!! 何してるの新八君ッッッ!!  
「……あん、」  
お妙さんの口から、かつて聞いたことも無いような声が。  
「新ちゃん、くすぐったいわ、そこ。」  
「だって、ちゃんと拭かないとダメでしょう?」  
そこってどこォォォォ!?   
「姉上のおっぱい、汗かいてますね」  
ってそこかァァァァァ!!  
いやこれは夢だ。絶対夢だ。幻だ。そうだそうに違いない。そう思うんだ勲。  
数え切れぬほどお妙さんにストーカー行為をしてきたけど、この二人がそんなことをしていたなんて  
今まで一度も無かったじゃないか勲。  
「もう、ダメよ新ちゃん……今日はダメ。」  
今日はっていつならいいんですかァァァァ!!   
 
ん? 手拭が畳の上に落ちてるぞ? っていうことは……。今お妙さんの後ろに回って膝立ちの新八君の手は。  
「……やっ……新ちゃん……。」  
「姉上のおっぱい、柔らかくて好きですよ。」  
って、揉んでるぅぅぅぅぅぅ!!  
この位置からじゃちょっとちゃんと見えないが、後ろからお妙さんのパイオツを新八君が揉んでいるッ!  
間違いない! あっ長井秀和って復活したんだっけ? エンタ見てないなぁ最近。  
「最近は近藤さんがストーカーするからって、なかなかできなかったじゃないですか。」  
「そうね、そうだけど……ぁあっ、新ちゃん上手……。」  
うおおおおおおおおお!! 落ち着け勲ぉぉぉぉぉ!! 幻だ勲ぉぉぉぉぉ!!  
「新ちゃん、下も……拭いてちょうだい。」  
「はい、わかりました。」  
下? 下って何だ? 下ってもしかして下なのか? 新八君がお妙さんから離れ、お妙さんは寝巻きを調えた。  
新八君はお妙さんの足元に回って布団の中に潜り込……オイィィィィィ!!  
「あ……新ちゃん……いきなりそんな……。」  
いきなりって何ィィィ!? おいなりの親戚ィィ!? そんなってどんなぁぁぁぁ!!  
いやいやいやいや何だよこのピチャピチャとか言う音!! 明らかに布団の中からじゃん!!  
そうか……そういうことだったのかお妙さん……貴女はあの万事屋といい仲かと思っていましたが……。  
 
俺が車田泣き(わからない子は三十代より上のお兄さんお姉さんに聞くべし)をしながら心のポエムを朗読していると、  
どっかで聞いたような声が玄関から聞こえてきた。  
『お妙ちゃーん、お見舞いに来たよー。』  
「……新ちゃん、誰か来たみたいよ……あんっ。」  
「チッ、邪魔が入ったか。下衆が……。」  
舌打ちをしながら新八君は布団から出てきた。  
っていうか君そういうキャラだっけ? もっとダメガネな突っ込みキャラじゃなかったっけ?  
新八君は面倒くさそうに部屋を出て、客人を連れて帰ってきた。  
「お妙ちゃん、大丈夫?」  
って長谷川さんかよオイ!   
「ありがと、長谷川さん。わざわざお見舞いに来てくれたのね。」  
「いやぁ、店に行こうと思って確認の電話したら、お妙ちゃん休みだって聞いたからさ。」  
ええっあのマダオいつの間にお妙さんとそんな仲に!? 店に行く金あるの!?  
新八君は邪魔すんじゃねえよこのマダオがって顔してるし邪悪な小宇宙が背後に渦巻いてるし!  
「……僕お茶入れてきますね。」  
「ああ、おかまいなく。」  
不機嫌そうに障子をバンッ! と閉めて新八君はまた部屋を出た。  
……俺が新八君でも怒るな、うん。でも長谷川さん、ちょっとグッジョブだ。  
アンタが来なかったら今頃ジャンプではお見せできない光景が繰り広げられていた筈だからな。  
ジャンプ海苔持ってないからね勲。  
「お妙ちゃん、まだ続いてるの?」  
長谷川さんはお妙さんの傍に座り、なにやら深刻な話をし始めた。  
「ええ……だってこのくらいしか、私があの子にして上げられることはありませんもの。」  
「でもよくないよ。オジサンお妙ちゃんの倍は生きてるけどさ……いいことだとは思えないよ。  
止められるうちに止めといた方がいいって。」  
ん? 何の話だ?  
「新八君と男と女の関係だなんて、倫理的にもジャンプ的にもどうかと思うんだよ。」  
ってやっぱりそうだったんかァァァァ!!!  
「掲載してる雑誌の色に合わせるべきだとか言う前にね、お妙ちゃんにも新八君にもプラスにはならないよ」  
前半はいらんだろう、長谷川さん。っていうか……そうだったのか。やっぱりそうだったのか。  
俺の見たあれはそういうことだったのかァァァ。  
……あれ。障子に影が。  
新八君、戻ってきた?  
「新八君も穴があったら入れたい年頃だとは思うんだよ俺もそうだったしさ、」  
うんうんそうだそうだ。俺もそうだった。今もそうだ。  
「風邪みたいなもんだと思うんだ。一度離れて暮らせば、すっぱり断ち切れるかもしれないよ。」  
もしもーし。長谷川さん。正論だとは思うんですが長谷川さーん。  
障子の向こうに小宇宙を感じませんかもしもーし。  
 
 
「何姉上と話してんだこのマダオォォォォォォ〜〜〜〜〜〜」  
「ぎゃああああああああああああ!!!」  
 
長谷川さんの断末魔の悲鳴。  
真剣持ち出しちゃダメだよー新八君ー。  
ダメだ、もう突っ込む気力もうせた。戸棚の裏の通路(減俸をちらつかせて山崎に作らせた)から、俺はすごすごと退散した。  
「あら。ゴリラさん。」  
「おや、さっちゃん。」  
赤い顔をしたさっちゃんと、庭で鉢合わせた。  
「もしかして貴女もストーカーの帰りですか?」  
「銀行の帰りみたいな言い方は止めてちょうだい。そうよ、床の間の壷の中にね……でもほら、……ね。」  
「ああ……貴女も見ましたか……。」  
「一部始終ね。」  
二人で雪の中、はぁーとため息をつく。  
「あの、さっちゃん……どうですこれから病院でも。二人でタミフルでも飲みませんか。」  
「そうね……そうしましょう。今日は銀さんを待ってたけどそういう気分じゃなくなっちゃったわ。」  
「ですよねー。」  
背後では三人の絶叫やら言い合いやらが聞こえてる。あっ障子破れたなあの音。  
「あのサングラスの人、生きてるかしら。」  
「長谷川さんなら大丈夫でしょう。マダオの中のマダオですから。あっ長谷川さん逃げてる」  
雪の中を全裸の長谷川さんが逃げてるのが見えた。38とは思えない脚力だ。  
その長谷川さんを真剣持った新八君が追い回している。  
「見上げたガッツだわ……。さすがマダオね。」  
「行きましょう、さっちゃん。」  
雪の中を俺とさっちゃんさんは歩き出した。  
 
 
病気の日は家で寝てるのが一番だと実感しました。勲。  
(終)  
 

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