先日発売されたお通のニューアルバムには『応募券』がついていた。
応募すればなにか良いことがあるかも知床半島というあおり文句に、新八は当然の如く応募した。
直筆サインか、はたまた未公開音源か……と親衛隊の間では発売日より連日その”良いこと”の内容について
熱く、暑苦しい議論が交わされていた。
新八は見事当選した。
そしてその”良いこと”を我が身を以って体験したのだ。
「あの……お通ちゃん……」
新八の声は震えていた。
ここは江戸某所のお通の事務所の休憩室。
当選してのこのこと事務所に呼ばれてやってきた新八は今、畳に仰向けに寝ている。
新八の傍で、椅子に座ったお通が微笑んでいた。
新八は下半身丸出し。やや皮被りのバベルの塔は真っ直ぐに上を向いている。
「んー、じゃあ始めるねるねるねるね♪」
お通はよっ、と脚を上げて新八のバベルの塔を白いニーハイソックスを穿いた両足の裏できゅっと挟んだ。
「流石に本番は無理なんだ、事務所的に」
ごめんネクロマンサー、とお通はやはりニコニコしたまま言い、新八のバベルの塔を足でしごき始めた。
「ちょ、ちょ、ちょちょちょ……!!」
新八は今の状況が飲み込めないでいた。
当選おめでとうございます大山と書かれたハガキが新八の家に届き、喜び勇んで指定された日時
――つまり今日のこの時間――に、お通の事務所を訪れてみれば。
休憩室に通され、「はい仰向けに寝転んで、袴下げて、パンツも下げて」と事務所の人間に言われ、
???となりつつもその通りにすると、椅子片手にお通が登場、傍に座ってバベルの塔を
ほっそりとしたおみ足で挟まれてしまったのだ。
「お通ちゃん……、良いことってもしかして……」
「そうだ四の字固め。私による足コキだよっちゃんいかめっさうまい♪」
お通は器用に足を上下させ、新八の塔を気持ちよくした。
ナイロンの生地はテロテロツルツル、生地越しのお通の足の裏のなんとも柔らかな感触。
言葉に出来ないと小田和正のように歌いたいところだ。
「お・おおっ……」
混乱と興奮と混沌と快感が一気に押し寄せ、新八は情けない声を出してしまった。
カウパーがトロトロと垂れる。
お通を見てみれば、お通はニコニコと新八だけを見ている。見てくれている。
しかも短すぎる着物の裾から、太腿や白い下着の三角地帯が時折見え隠れするのだ。
白い下着の向こうに、髪の色と同じアンダーヘアが渦巻いているのさえ見えた。
『もう……一生分の運を使い果たしたかも……』
道場の再興も、溜まった未払い給料も諦めなければいけないかもしれない、と新八は心の底から思った。
「つんぽさんのアイデアなんだよ。あ、練習はつんぽさんとマウストゥマウスで一杯したから大丈ブイサイン」
お通はあっけらかんと言う。
何考えてるんだつんぽぉぉぉぉ! 第一練習って何だァァァァァ! っていうかそれはマンツーマンッッッッ!
と普段の新八なら突っ込むところだが、今はそれどころではない。
「気持ちいい? 新八君」
「い……いいれす……!」
答えるのがやっとだった。
『いけないいけないこんなチャンスを逃しちゃいけない一秒でも長持ちさせるんだ新八お前はやれば出来る子だ
イッちゃいけないイっちゃいけないイっちゃいけない!』
念仏のように頭の中で唱えながら、新八は憧れのアイドル・お通に足コキされるというこの
一生に一度、あるかないかの幸運を少しでも長いものにするべく新八は頑張った。
「新八君のって、ちょっと火星人だねー」
「そそそそそそそうなんです、ははは……」
「でも可愛いなっとういち♪」
「あああああありがとうござい増田明美…」
新八は頑張った。
たっぷり二十分は粘った。
連休の高速道路の渋滞に巻き込まれてトイレに行きたくなった時くらい頑張った。
しかし、物事には何れ終わりがやってくるもの。とうとう我慢の限界となり、お通の足コキで盛大に射精した。
白濁は天井まで飛んだ。あとで聞いた話だが、染みになってしまったという。
口止めにお通から貰ったサイン色紙と夢のような時間の思い出を携え、新八は事務所を後にした。
そんな夢のような日から数ヵ月後、お通の新曲が出た。
タイトルは『お前の××火星人』
新八は泣いた。
(終)