(少し、飲みすぎたかァ)  
久々に桂と坂本と酒を酌み交わし、昔話に花を咲かせていた銀時は、  
すでに灯りが消えている万屋にゆっくりと入っていった。  
真っ暗で物音がしない。神楽はもう寝ているのだろう。  
自分の部屋に直行し、電気を手探りでつけた。  
「おかえり」  
神楽が大きくも小さくもない声で呟く。  
不意に声をかけられ、銀時は一瞬驚いた顔をした後にたりと笑みを零した。  
「ただいま」  
布団に倒れ込んだ銀時は天井に背中を向けて動かなくなった。  
その猫背気味な背中に神楽はぶつかるように抱きついた。  
布越しに神楽の体温がじんわりと銀時に伝わってくる。  
「いいこにしてたか?」  
「してない」  
「そっか」  
嗅ぎ慣れた匂いの中、微かに甘さが漂う銀時の体。  
それに神楽は鼻をこすりつけ、ふ、と息をついた。  
「あのさ…。何でオメーは一人じゃ寝れないのかな」  
「後から入ってきたのは銀ちゃんの方ヨ」  
「ここは俺の寝室。俺の布団。ついでに言うとお前の部屋は押入れだろーが」  
「だって、怖いんだもん」  
「は、何が」  
「ゴキブリ」  
確かにありゃあ悪夢だった、と銀時は思う。  
 
時計さえない無音の空間。溜息が銀時の喉から零れる。  
神楽は銀時の顔を覗き込む。固く目を瞑り、微動だにしない銀時を暫し見つめた。  
「今日は何もしないの?」  
神楽は銀時に尋ねた。  
「…疲れたんだよ」  
シーツに吸い込まれる吐息は、無防備に吐かれる。  
 
「うわ、じじー」  
「何ィ?」  
「じ・じ・い」  
「いいよ、今はじじいで。何とでも言えー」  
「あっ、拗ねたアル」  
「しかもこいつ…かなり邪魔なんだけど」  
銀時の背中に感じるのは、神楽の冷たい肌と、息が荒い我が家のペット。  
「定春がいるとあったかいヨ」  
「あーそうかい」  
半ば面倒くさそうに片手で髪をかきあげると、銀時は身体を反転させ天井を仰ぎ見た。  
眠気に誘われるまま眠ってしまいたかったが、神楽の手がそうさせてくれそうもない。  
「銀ちゃん?」  
幼い手はたどたどしく銀時の着流しを肩から下げる。  
「んー」  
「だめ?」  
「選択肢はないんだろ」  
銀時は自分の顔まで落ちた神楽の髪を掴んだ。  
「へへっ」  
「はー…てかもう銀さん体力ないよ」  
「じゃあ、…んー……私が攻めるネ」  
「マジでか」  
「うん」  
神楽は顔を近付けると、少し口を開いて銀時の唇に自分のそれを押し当てた。  
啄ばむように何度も唇を重ねながら、服を脱がしていく。  
「ひひ」  
「何だァ?」  
「銀ちゃんお酒の味がするアル。苦いネ」  
「うっさい」  
「ほどほどにするヨロシ」  
「そらァ無理だ。つーか、定春が見てんだけど」  
「あ、そうだった。定春には刺激強いネ。定春ーあっちに行こうか〜」  
 
大人しく神楽の言葉について行く定春を横目に、銀時は伸びをした。  
定春を部屋の外に出した神楽が、ばしっと襖を閉め銀時に圧し掛かる。  
太腿を撫で上げ、服の上から銀時自身に触れてきた。  
「銀ちゃん、もうおっきくなってるヨ。元気ないんじゃないの?」  
「銀さんの性欲なめんなよコラ」  
「そう言ってられるのも今の内だからネ」  
下着をズボンごと脱がし、神楽は勃ち上がるモノをそっと握って軽く擦ると、  
ちゅ、と先端に口付けてそのまま口で包んだ。  
先端から溢れる蜜も手伝って、すぐに動きに混じって水音が聞こえてくる。  
舌を這わせれば、そこは更に熱を上げた。  
「神楽」  
銀時の声が甘くなる。  
「お前上手くなったんじゃない?」  
銀時はにやにやと笑いながら神楽を見下ろす。  
神楽が頭を上下に動かしていると、ゆっくりとした動きだけでは物足りないのか、  
銀時も腰を動かしてきて、唾液と蜜が飲み込みきれずに神楽の口角から流れ出た。  
「ん、っふ…、ん」  
舌で裏筋をなぞり、神楽は一気に吸い上げた。  
「神楽、も、いぃ」  
銀時の熱がまた大きくなって、神楽を引き離そうとしたけど、神楽は銀時を逃がさなかった。  
「う…っ」  
どくんと脈打ち放出された熱が口に広がって、神楽はごくりとそれを飲んだ。  
「神楽悪ィ!って、ええェェ!?」  
銀時は慌てて神楽の口から引き抜いた。  
神楽は、けほ、と少しむせて、飲みきれなかった白濁液が顎に伝った。  
「飲んだ?飲んだのォ!?」  
「だっ、て、銀ちゃんの…だ、し」  
お前はそんなことしないでいいんだよ、と銀時は呟くと、ついと神楽の顎を親指の腹で拭った。  
「まあ、うん、嬉しいけどな」  
そう言って銀時が笑うと、神楽は満足そうに銀時を抱きしめた。  
抱き合ったままごろんと体勢を変え、今度は銀時が神楽に覆い被さる。  
 
「なーんか、元気出てきたかも」  
神楽のパジャマの釦を一つずつ外すと、ブラジャーを着けていない肌が露になった。  
銀時は胸に顔を埋め、赤く膨れた突起を舌で転がし、強く吸ってくる。  
「んっ!やだ、ぁ…」  
「煽ったくせに拒むのかァ?」  
神楽はその声から逃げるように、ふいにゆるんだ銀時の腕の中で身動きをすると、  
下着の隙間から指が滑り込み、何度も何度も撫で回された。  
「ふぁ…ぎん、ちゃん…っ、はぁっ」  
ぐちゅり、と内壁を掻き回す指が神楽の一番感じる部分に触れた。  
銀時は指を増やして抜き差しを繰り返す。  
「もぅ、指はいい、からぁ…」  
「…我慢できない?」  
うん、うん、と神楽が頷くと銀時は神楽の腰をつかんで優しく撫でた。  
そして神楽の額に浮かぶ汗を手背で拭って、熱をもった入り口に腰を進める。  
「ひゃあ!あ、んっ…」  
神楽は苦しそうにあえぎながら、とても気持ちの良さそうな顔をする。  
銀時も激しく動いて神楽の表情を窺いながら、時たま神楽の名前を呼ぶ。  
「気持ちいいか?」  
「うん…っ、銀ちゃん、もっとォ…」  
銀時は腰の動きを止めず、胸の先端を舌で舐め上げる。  
銀時の揺れる髪を見つめ、神楽 は下唇をきゅっと噛んだ。  
「…我慢しないで、声出せよ。…聞かしてくんないの?」  
銀時は焦らすように緩急をつけて、神楽 を上下に揺さぶる。  
「やっ、あ、あッ!」  
激しく突き上げられ、神楽は快楽に飲まれていった。  
「あー…、もう駄目だ、いくぞ神楽」  
「ぅあ、きて、銀ちゃん…!」  
銀時の神楽の腰を掴む手に力がこもる。  
最奥を貫かれて神楽が、あっ、と一声上げると銀時は達した。  
遅れて神楽もびくっと体を揺らし、ほんの少し呻き声をあげて果てた。  
 
二人とも汗まみれになって体を投げ出し、しばらく黙って天井を見上げる。  
徐々に呼吸が整い、熱をもった体が冷えていく。  
「神楽、こっちこい」  
銀時が両手を広げると神楽は銀時の胸に顔をうずめてしっとりと息を吐いた。  
「さむいネ」  
神楽は銀時の鎖骨に唇をあてがったまま、篭った声でそう言って笑った。  
神楽の柔らかい髪を梳きながら銀時はぼんやりと考える。  
---バカだなぁと思うわけ。  
こんな小娘に翻弄されてる俺ですが、そういう自分を見るのが新鮮だったり楽しかったり。  
「俺は色気のあるお姉サマがすきだったのになァ…」  
「なにそれ、嫌味アルか」  
神楽は銀時に覆い被さると、首に腕をまわして、銀時の頭を引き寄せる。  
深い口付けを求める神楽に合わせて銀時は口を開けた。  
神楽の舌が銀時の口に入ってきて絡みつく。唾液が伝って、神楽の口角から漏れた。  
唇を離すと、神楽は両手で銀時の顔を包んだ。銀時の手がそれに重なる。  
「銀ちゃんは私だけ見てて」  
よしよし、と言いながら銀時は神楽の頭をわしゃわしゃと撫でた。  
「神楽は淋しがり屋だからなァ」  
「銀ちゃんがそうしたんだヨ」  
「銀さん、お前を幸せにする準備は出来てっから、安心しろ」  
あ、でも準備って言っても心の準備だけで、指輪とかそういうのないから。買えないから。  
と言っていたが、その顔は少し笑っている。  
銀時は右腕で神楽の頭を抱きこむと、あやす様に背中を叩いた。  
「ウソつくと、閻魔さまに舌抜かれるからネ」  
はいはい、と呟く銀時から伝わるぬくもりに、神楽はその身を委ねた。  
 

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