平日のまったりした午後。仕事もないから、神楽はゴロゴロして、  
銀さんは定春の散歩と言いながらパチンコに行ってしまう始末。  
新八はというと、銀さんが食い散らかしたお菓子のゴミをせっせと片付けている。  
パチンコの景品を全部お菓子にする人なんて銀さんくらいなんじゃなかろうか。  
「あんなにあったのに、もう全部食べちゃったのか…」  
「銀ちゃんはお菓子大好きなのヨ」  
「ホントにもう…、糖尿になったって知らないよ…」  
新八はソファの下に落ちている包み紙を拾った。  
「新八〜」  
ソファでゴロつく神楽が新八を呼ぶ。  
「なに、神楽ちゃん」  
新八はテーブルの上にあった飴の包み紙もかき集めゴミ箱へ捨てつつ答える。  
「さっちゃんはもう来ないのかな?」  
「どうだろうね、銀さんフラレたんじゃない?」  
「銀ちゃんも酒の力を借りるなんてまだまだネ」  
「まったくだよ。あんな汚い大人になりたくないね僕は…」  
ぶつぶつ言いながらいろいろ片したら、新八はついにすることがなくなった。  
仕方なくテレビでもつけようと神楽の隣に腰を下ろす。  
「ねえ新八」  
「昼時は面白い番組ないよね。昼ドラでも見る?」  
「せっくすってしたことある?」  
「セックス…?」  
「そう、せっくす」  
「…」  
「…」  
シーン…。一瞬全ての物音が消える。  
「えええええええェェェェェ!?」  
新八は思わずソファから転げ落ちる。  
 
「びび、びっくりしたあ、なあに、どうしたアル」  
「なななにをいきなり言ってんの!?」  
「歌舞伎町の綺麗なオネーサンからこの前聞かれたアル。したことないって言ったら  
『まだまだ子供なんだねェ』って笑われたヨ」  
「…もしかして遊郭の人?」  
「ウン。そのオネーサンは私ぐらいの年にはもうしてたらしいネ」  
「それは、事情とかあって特殊な場合じゃないのかな」  
「でも歌舞伎町の女王なのに、子供だって笑われるのは嫌アル」  
「嫌って言ったって…」  
落ち着いてきた新八は呆れた顔で神楽を見遣った。  
神楽はふいと目線を脇にそらし、うっすら考え込む表情を作る。  
それから表情がぱっと明るくなった。  
「新八、今からせっくすしよう」  
「え!?」  
再びすっとんきょうな声を出す新八。今日は本当に良く驚く。  
けれど、どうもさっきとは様子が違う。  
下を向いて考え込む顔は、照れというか、何だかとても恥ずかしそうな様子だった。  
「それ、それって、それって…」  
「…何?どうかしたか?」  
「神楽ちゃん、もしかして、僕のこと…す…?」  
「す…?すって何アル、すって」  
「……き…なの?」  
「き?す…き…。誰が。私が?誰を。新八を?私が新八を好き…………?  
待って待って、違う!全然違うヨそれ」  
「え、全然違うの!?」  
「違うヨ!そんなわけないアル!全くもってありえない」  
「いや、そこまで否定しなくても…」  
「あ、ごめん。嫌いでもないんだけどナ」  
「じゃあやっぱ」  
「それも違くて」  
 
「違うんだったら何で僕とその…し、したいのさ」  
「手頃な相手がお前だけだから」  
「…今サラッとものすごく失礼なこと言ったよね」  
「駄目アルか?」  
真剣な眼差しで新八を見つめる神楽は、いつもと違い女の子らしく見えた。  
「おーいおいおい何だこれ!何でこんな展開になってんだ!あまりにも不測の事態だよ!」  
「どーでもいいから、するかしないかはっきりしろヨ。眼鏡叩き割るぞコラ」  
「どうしてそういう発想に行き着くの!?」  
この状況から切り抜ける策を考えるのは難しい。  
しかし今の神楽を冷たくあしらうなんて、  
ノーとは言えない日本人の典型みたいな人間の新八には出来なかった。  
それに新八も思春期真っ盛りの男子であり、興味が無いといったら嘘になる。  
考えることすらバカバカしくなってしまったこの状況で、新八はただ、  
「します…」  
と力無く答えるしかなかった。  
その返事に目を輝かせて喜ぶ神楽は、幼い子供がおもちゃを与えられたようだ。  
(ねえ、これ本当は夢なんじゃないの、そうでしょ?ようし、足でもつねってみよう)  
「…やっぱり痛いや」  
「何言ってるか新八?で、せっくすってどうやるの?」  
「え!えーっと…ごめん神楽ちゃん、僕やったことないんだ」  
ソファに腰かけた神楽と所在なく立ったままの新八の間に、  
何とも言えない気まずい雰囲気が流れた。  
(失敗だよ神楽ちゃん、僕とするなんて明らかな人選ミスだ…)  
「ごめんね」  
やると言ってしまったのに経験が無くて、新八は本当に心から謝った。  
謝ったつもりだったのだけど、神楽は何故かいきなり笑いだした。  
「え、え、何、何笑ってんの」  
「なんでそんなヘコでるアルか?初めて同士頑張るアル!」  
そう言って、神楽が不思議そうな顔をした後ににっこりと笑うと、  
後ずさっていた新八の足はぴたりと止まった。  
「そ、そうだね…」  
 
神楽はずいっと新八に近寄って、にやりと笑った。  
「ちゅーしよっか?」  
「え、あ、うん」  
新八も神楽につられて笑う。  
しかしいつものようにうまく目を細めることが出来なくて、  
どんな顔に見えたのかすこし気になった。  
新八は恐る恐る顔を近づけて唇にそっと触れる。  
神楽の唇はやわらかく、そして生ぬるく濡れていた。  
しばらく重ねるだけのキスが続き、息が苦しくなった頃合にどちらともなく離す。  
目線が交わるところにふっと沈んで落ちて、部屋に言葉がなくなる。  
今度は神楽から、逃げられないように新八の顔を押さえ、  
下唇を舐めて上唇に噛み付く。そして舌で歯列をなぞって絡めた舌に吸いついた。  
「ふ、…」  
顔が離れて舌と舌とが離れても、唾液の糸がそれを繋いでた。  
まだ明るい四角の空間にねっとりとした空気が生みだされはじめる。  
「服…」  
「ぬ、脱ごうか。僕こっち向いてるから!」  
急に恥ずかしくなって新八は神楽に背を向けた。  
とりあえず下着一枚を残して、脱いだ服を畳む。  
見えないけれど、神楽の脱ぐ音が気になって、新八は思わず横目で盗み見る。  
まぁ、これから、全部見るんだけれども。  
「神楽ちゃん、もういい?」  
「いいヨ」  
新八はくるりと体を神楽の方に向き直す。その瞬間視界に入る神楽の体。  
「わ…」  
希薄なひかりを浴びて白くぬめったうすい肌に目を奪われる。  
神楽も新八と同じように下着だけ残し、小ぶりな胸もさらけ出していた。  
その頂上のピンク色を見つめ、新八はごくりと喉を鳴らした。  
本能に正直な体が憎いけれど、新八のモノはそれだけで微かに反応し始めていた。  
 
同じ高さに顔を見やれば、神楽の上気した頬に潤んだ瞳。  
新八の方から洩れる吐息も熱くなる。  
「これからどうすればいいアル?」  
「と、とりあえず…触るね」  
「おうヨ」  
剥きだしになっている神楽の素肌の上を、新八の手が滑る。  
神楽は思わず吹き出しそうになって、笑いを押し殺す。  
「新八、くすぐったいヨ」  
「じゃあ、これは?」  
ぐにぐにと胸の形が変わるくらい揉みしだくと、  
確認するように新八は神楽の顔を覗き込んで目を合わせた。  
「なんか、どきどきする」  
神楽が笑ったら、新八は嬉しそうに頷き、  
甘い匂いのする胸に顔をうずめて軽く吸った。  
「ひゃあっ…」  
神楽は何かに縋るように手を伸ばし、新八の頭を抱いて黒髪を弄るように動かした。  
お互い膝立ちの姿勢から、ソファの上にそのまま崩れ落ちるように、抱き合ったまま倒れ込む。  
「新八、お腹の下らへんがむずむずするヨ」  
「僕も、変な気分になってきた、かも…」  
太腿を撫でていた指が下着の隙間から中に滑り込むと神楽の体がびくりと震えた。  
「ん!な、なにするネ」  
「あのね、ここに指を入れるんだよ」  
指の腹で触れるとしっとりと濡れた感触が染みる。  
「えっ…わ、あっ…!」  
「けっこう入るもんなんだなぁ」  
人差し指を差し入れると粘り気のある音が響いた。  
指を増やして出し入れを繰り返す。  
「やぁっ…しん、ぱち、なんか熱い…!」  
「神楽ちゃんの中、温かい…」  
 
時折神楽の敏感な部分を指が掠めると、新八の肩に爪を立てた。  
「ひっ!ちょっと、痛いよ神楽ちゃん」  
「こっ、ちは、それどころじゃない、アル!」  
「うーん、もうそろそろいいのかな?」  
指を抜くと、新八は下着を下ろし、すでに立ち上がった自身を神楽に宛がおうとした。  
「オイ、もしかしてそれを入れるつもりアルか?」  
「うん、そうだよ」  
「テメー無理に決まってるダロ!そんなん入るかァ!」  
「大丈夫、ゆっくりするから、ね?」  
そう言ってみたが、腰を進めようとしてもなかなか上手く捕らえられない。  
「なんでだろ…むずかしいなぁ」  
「しょーがないネ」  
え?と新八が口を開きかけると、神楽は不意に手を伸ばし、新八の胸を突いた。  
鎖骨のあたりが指先だけで押される。無理矢理ではないが力がこもっている。  
新八は急なことに、そのまま後ろに倒れた。  
「ちょっ、何するのさ!」  
「私が乗ってみるヨ」  
神楽はそう言い、仰向けになった新八の上に無造作に跨がった。  
「大丈夫?初めてなんだから、無理しないでも…」  
「だーいじょうぶ!」  
自分から招き入れ、再び新八の中に収めようとする。  
神楽は曲げた膝を大きく開いたまま目を閉じ、息をつく。  
「…いくヨ?」  
「う、うん」  
柔らかな神楽の中に杭を打ち込むように真直ぐに食い込んでいくのが分かる。  
神楽はきつい圧迫感に、大きく息を吸い込んだ。  
「う…ちょっと…痛い、ネ…」  
「ごめん、僕気持ちいいや」  
「んぁ、ずるいヨ、一人だけ…あぁっ!」  
痛みを誤魔化すように喋りながら神楽は腰をゆっくり沈めていく。  
 
時間をかけ、神楽は新八のモノをすっぽりとくわえ込んだ。  
神楽はいくらか汗ばみ紅潮した頬のまま、まばたきをした。  
「はいった、新八入ったヨ!」  
「うん、入ったね」  
「わあ、はいったはいった」  
神楽は口元をうすく歪ませて、息を詰まらせながら笑った。  
「神楽ちゃん、笑うと抜けちゃうよ」  
それが抜けないように気をつけ、新八は少し腰を揺らしてみる。  
「あ、ぁっ…もうちょっと、ゆっくり動いてヨ…、はあっ」  
不自由なまま揺れ、自分にも神楽にもいい場所を貪欲に、新八は探り続けた。  
「んんっ…新八、イイ?」  
率直すぎる質問が上から降ってくる。  
「ん、まあまあだね」  
「あ、そういうこと言うカ、この眼鏡」  
わざとふざけて言う新八に、  
不満げな言葉と裏腹に、神楽はひどく楽しそうに体を傾け、首を巡らす。  
「じゃあ私も、本気になっちゃおうかなァ」  
こんな軽口が出るほど、痛みにも慣れ余裕が出てきたのか、  
どう動いたらいいのか試し求め上下する神楽の体は、いつもよりも遥かに精力的に思える。  
没頭する神楽の内腿の筋肉が、緊張して震えていた。  
「ふぅ、は…あっ」  
「神楽ちゃんすご、きつい…!」  
「や…夜兎を、なめるな、ヨ…」  
強がりを言うのと対照的にだらりと下がった両腕の先には、ソファを掻いた指がある。  
自分の手をずらして、新八は神楽の手をゆるく掴んだ。  
上に乗った体はがくんと前に折れ、汗ではり付いていた神楽の前髪が乱れる。  
神楽の手を押さえ付け、動きに合わせて軽く揺らしながら、  
上半身が大きく動かないように、新八は両方の手を掴んだまま離さない。  
肌と肌が激しくぶつかり合い、ぐちゅりぐちゅりと響く音が徐々に大きくなり、  
背中を走るたとえようのない心地は一気に加速していって、  
新八は思わず目の前にある神楽の肩に噛み付いた。  
 
「いたっ!」  
「あ、ごめん、なさ」  
新八は神楽の肩についた歯形を慌てて撫でた。  
「…コノヤロー」  
新八の顔を掴み引き寄せて頬に噛み付いた。  
「いたァ!!」  
神楽は笑いながら新八を押遣る。新八はそのまま神楽の唇に食いついた。  
「ん…っ、あふっ…」  
強く突き上げてくる新八に、神楽の塞いだ口から洩れる喘ぎが大きくなる。  
神楽も新八をぐいぐい締め付けるから、余裕が微塵もなくなって、新八の口からも声が洩れる。  
「か、ぐらちゃん、もう僕いきそ…」  
「新八、すごく、気持ちいいっ…!」  
波のように拡がる快感に、神楽は瞼裏をじりじりと焦がしながら  
うまく笑えない顔で息を吐いて、目を閉じる。  
「もう、もう駄目だ!神楽ちゃん、出るよ…!」  
「は、ふっ…で…でるって何がっ…!」  
「やばいやばい!神楽ちゃん離れて!」  
「いやアル!いいところなのに!」  
「ええ!?ちょっとほんとやばいって!くぅ…!」  
「あああっ新八っ…!」  
お互い苦しくなって呼吸を求めれば、噛み締めた唇からこぼれおちる息が小さく震えた。  
新八の吐き出した白濁が、神楽の足のあいだをゆっくりと濡らしてゆく。  
「ど、どうしよ…」  
驚愕の声をあげようとしたところで新八の首に腕が絡んできた。  
強く引き寄せられると、耳元に神楽の息遣いが触れる。  
「せっくすって疲れるヨ」  
と途切れ途切れの声で言うものだから、新八は神楽の髪を撫で、頬にキスをした。  
「でも楽しいアル。新八、またしようネ」  
「うん、いいよ。でも妊娠してたら、姉上になんて言われるか…」  
一つの生ぬるい息をこぼした後に、そっと新八が上目遣いに見あげると、  
瞳をまあるくした神楽が問うた。  
 
「はあ?なんで赤ちゃんできるアルか?」  
「え?だって中に出しちゃったから」  
「せっくすで赤ちゃん出来るの?」  
「知らなかったの!?」  
「赤ちゃんは結婚したら宅急便で届くって銀ちゃんが」  
「オイィィィィ!!騙されてるぞそれ!独身男の真っ赤な嘘だから!」  
「でも私の赤ちゃんならきっと可愛いアル!」  
きゃっきゃっとはしゃぐ神楽を見て新八はもうどうでもいいやと投げやりになった。  
そんな新八にふいにめいいっぱいの体重圧し掛かった。  
「新八、もう一回しよ?」  
ぎゅうと強く抱きしめながらそう言う神楽が可愛く思えてしまって、  
新八は「はいはい」と篭った声で言って笑った。  
 

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