目が覚めると総ガラス張りの天井が目に入った。  
見覚えはまるでない。  
適度にくすんだその鏡面に死んだ魚のような目をしたいつもの自分の姿をみと  
めて、坂田銀時は現状を確認するようにまずは鼻をほじった。  
鏡面に写った今の自分は、裸の上半身に赤い布団を被って、丸いベッドのうえ  
に仰向けになっている。  
さらに、ここからが重要なのだが――おなじく裸の女がふたり、両側から彼に  
抱きついていた。  
「……ナイな、うん。これはナイ」  
銀時はまず、現状をそう評価した。  
身体の左右に女のやわらかな乳房の感触。  
布団に隠れて確認はできないが、女たちは下半身までフルヌードのようで、太  
ももにも女たちのあたたかな肌が触れていた。  
つまりは、自分もヌードということである。  
ここ数年来記憶にないシチュエーションだった。  
――いや、見栄を張るのは止そう。実は生まれてはじめての経験だった。  
(なに、なにがあったの? オレ死んじゃったの?)  
たらたらと冷や汗をかきながら、銀時はまず、右側の女を確認した。  
女はお妙だった。  
「………」  
いつもはアップの髪を解いて、彼の腋にそっと横顔を埋めている。  
いかにもコトが済んだ後といった雰囲気。  
お妙はボリュームこそ若干足りないものの、極上の絹のようになめらかな乳肌  
を惜しげもなく彼に押しあてて、カーコカーコと健やかな寝息を立てていた。  
「いやいやいやいや、ナイナイ、これはナイって」  
銀時は鼻をほじほじしながら左の方に向き直った。  
左の女は神楽だった。  
「………」  
こちらも、いつもはお団子にまとめた髪を解いて銀時の腋に鼻を埋めている。  
ぺったんこの胸の感触が意外と心地よかった。  
――そういう問題ではない。  
銀時は鼻から血がでるほどほじほじしながら、何度も左右を見返した。  
「いやいやいやいや、イヤイヤイヤ! でもナイ! これはナイって! だって、  
オレはアレだもん! 少年誌の主人公だもん! こんなシチュエーションでも  
絶対最後までいってるなんてことはナイってェ!!」  
だが、そんな絶叫とは裏腹に、彼の股間のジャスタウェイは、一仕事終えた後の充  
実した気配を彼に伝えてきていた。  
「いや、でもね? でもこれはナ――」  
「……もう、朝っぱらから耳元で五月蝿いわねえ」  
「……どうかしたアルか、銀ちゃん」  
パニックを起こして叫びまくっていると、目を覚ましたお妙と神楽が、むっくりと  
身体を起こした。  
かけ布団がずり落ちて、ふたりの裸身が完全に露になる。  
乳房にもおなかにも、いっぱいのキスマーク。  
「………」  
銀時はとりあえず、タイムマシンを探すことにした。  
 
つづく?  
 

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