「神楽ちゃんも新ちゃんもそんな汚い大人になっちゃだめよ」  
「はーい!」  
頭をなでた妙に、神楽はにっこり笑って返事をした。  
(本当に可愛い女の子だわ)  
天真爛漫な笑顔に、思わず妙の口許が緩む。  
 
大晦日、初詣の道すがら、志村姉弟と神楽が連れ立って歩いていた。  
 
「姉御、新八ー!早く早く!」  
「うふふ神楽ちゃん私そんなに早く歩けないわよコノヤロー」  
なんだかんだいって可愛い弟と、そして自分を慕ってくれる、本当の妹のような神楽。乱暴な所もあるがいつもいつもその愛らしさに目が奪われる。  
なんだか今年は新ちゃんと二人で来た去年の初詣でより幸せね、と妙は思っていた。  
 
 
「銀ちゃん帰ってこないアルネ」  
「だからどこぞの女と合併してるんでしょ」  
こたつに頬杖をついてほっときなさいよ、と事もなげに妙が言うと、神楽は紅白を見ていた時のように騒ぎだすのでもなく、ただ無言でしゅんとした表情を見せる。  
(嫌だわ一体何なの...)  
ちら、と神楽を見て視線をテレビに移した妙の心がなぜだか痛んだ。  
「神楽ちゃん、新ちゃんももう寝ちゃったし、私たちももう寝ましょ」  
「ん...」  
神楽は妙の言葉に頷いたが、言葉とは裏腹に、体をこたつにもぐりこませた。  
「神楽ちゃん」  
「うん...」  
神楽はしかし、こたつから出てくる気配はない。妙は小さなため息をついた。  
「風邪ひくわこんなとこで寝ちゃったら」  
妙はテレビをリモコンで消すと、神楽の側に屈みこんだ。  
「ね、神楽ちゃん。今日は一緒に寝ましょうか。」  
妙の言葉に、こたつに顔半分もぐりこんだ神楽が視線を妙の方に動かした。今日は銀さんもいないんだし、とも言えず、妙はただ神楽に微笑んだ。  
 
神楽と一緒に布団にもぐりこんで少したつが、未だ銀時が帰ってきた気配はない。どこぞの女と、なんて勿論冗談で言っていた妙だったが、さすがに本当の事なのではないかとすら思い始めていた。  
今もまだ眠れないで目の前に横たわっている神楽に、妙はそっと手を伸ばした。  
「姉御...」  
「神楽ちゃんは銀さんを待ってるつもりだったのね?」  
いつものおだんごをほどいて、髪が神楽の頬にかかっている。  
頬を撫でながら、妙は神楽の頭をそっと撫でた。絹糸のような、細くて柔らかな髪だと妙は思った。  
「だって銀ちゃん寂しいアルヨ、きっと...帰ってきたとき、真っ暗だったら」  
言いながら神楽はくす、と微笑んだ。  
(神楽ちゃん...)  
薄明かりの中、神楽の寂し気な微笑みに、妙はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。  
(さっきの嫌な気持ちって、きっと...)  
妙は布団の中、両腕を伸ばすと、そっと神楽を抱き締めた。  
 
「あ、姉御、どうしたアルか?」  
「神楽ちゃん寂しい?銀さんがいなくて」  
「べっつに!あんな天パ!」  
「...嘘つき。ほんとは寂しいでしょ」  
「もーっどーでもイイアルヨーっ!」  
強がる神楽に妙はくすくすと笑った。  
(神楽ちゃん、本当は淋しいわよね)  
妙はさらにぎゅっと神楽を抱き締めた。  
頼りなく小さな、柔らかな体。銀時はいつもフラフラして、こんな小さな娘に心配ばかりさせている。  
「ふふ。姉御がいるから寂しくないヨー」  
そう言って神楽は瞼を閉じた。おやすみアル、と言いかけた神楽の唇を、妙がその唇でそっと塞いだ。  
「?」  
神楽は一瞬何が起こったのかわからず、反射的に目を開けた。  
「神楽ちゃん」  
妙は再度、神楽にくちづけた。そっと触れるような、唇を優しくついばむような口付けを繰り返す。  
「姉御!?」  
妙がしているのは、明らかにくちづけだ。恋人同士がするような...。それを何故、女の妙にされるのか理解できず、呆然としている神楽に、妙はそっと微笑んだ。  
「神楽ちゃん、ひどいわね?銀さんあなたの事を放っておいて...」  
「た、たしかにひどい天パアルけどっ。でもっ...」  
妙はいつもの優しい調子で神楽に囁きながら、唇のみならず頬や前髪のかかった額に唇を落とした。  
 
「姉御、どうして...?」  
女の妙に、口付けされている。その状況をやっと飲みこめた神楽が、掠れた声で妙に問うた。妙は神楽の髪に指を通すと、指先にひと房その髪を絡めて毛先まですうっと撫でる。  
「何で、こんな...きゃあっ」  
頬に感じた濡れた舌の感触に、神楽が声をあげた。  
「姉御っ...」  
「銀さんはどうしてこんな可愛い神楽ちゃんの事、放っとくのかしらね?」  
いつのまにか妙の手が神楽の腕をおさえつける形になっていた。  
(アネゴの事ぶん殴る訳にはいかないヨ...)  
 
男ならいざ知らず、無理に振り解こうとすれば怪我をさせてしまうかもしれない。目の前の妙をどうすることもできず、神楽はされるがままになっていた。  
「ん...」  
さっきまでと違って深い口付けだ、と思っていたら、妙の舌が神楽の口腔内にそっと入ってきた。遠慮がちにゆっくりと、しかしじっくりと妙の舌は神楽の舌を味わった。  
「は、っあ」  
唇と唇が離れ、さっきよりとても熱い二人の吐息が重なった。  
「姉御、どうして?だって姉御は女のひとアルヨ...」  
くちづけの所為かこの異常な状況の所為か、神楽の意識は幾分混乱して、神楽の寝巻きの釦を外していく妙の手を止められなかった。  
 
(姉御は、私に何するアルか...?)  
「神楽ちゃん、こういう事って、何も男と女だけがするもんじゃないのよ」  
言いながら、妙も自らの寝巻きの帯をゆるめた。妙の肩から、着物がするりと落ちた。  
(あ...)  
神楽の目は妙の体に釘付けになった。白い肌に、なだらかな体の線。綺麗な形の乳房。自分なんかより、  
余程大人な、色気のある体をしていた。  
「姉御いいな...」  
神楽は自分の幼い体が妙の目の前に晒されているのに恥ずかしくなり、ふい、と顔を背けた。  
「神楽ちゃんどうしたの?」  
妙の手が神楽の胸をそっと包んだ。  
「んん...くすぐったいヨ...」  
妙の手はなめらかで、優しく神楽の体をなぞっていく。いつも銀時にされている愛撫とは、また違った気持ち良さがあった。  
「はあっ...姉御お...」  
神楽の心臓は早鐘を打ち、息もだんだん上がっていった。  
「ね、神楽ちゃん、触って...?」  
妙が神楽の手を取り、自らの胸に導いた。  
「柔らか...」  
神楽の手が、妙を壊さないようにそっとその胸に触れると、妙は更に神楽の手を引き寄せ、深く自分の体を触らせる。妙の鼓動を、神楽は掌に感じた。  
 
「ん、神楽ちゃん...」  
「姉御も、すごいどきどきしてるネ...」  
「そうよ、だって私...女の子とするなんて初めてだもの」  
(まさかアネゴと、しちゃうなんて...)信じられないような話だけれど...。  
妙の頬はいくらか紅潮しているようだった。その表情の色っぽさに、神楽も体が熱くなるのを感じた。妙は神楽の首筋に唇で触れ、その胸の先端をそっと口に含んだ。  
「あんっ...」  
敏感な部分を熱い舌で舐められ、唇で吸われ、知らず知らずの内に神楽の喉がのけぞった。  
「やっあ、姉御、っ」  
「神楽ちゃん、可愛いわ、本当に...」  
「ん、気持ちい...」  
妙の体が、神楽の体に乗っている。触れあう胸の柔らかな感触に神楽の意識は溶けていた。  
 
「あっ、だめ、姉御...」  
「大丈夫よ神楽ちゃん。私は女だから浮気にはならないわ」  
「あ...ん...」  
妙の細い指が神楽の秘所を何度もなぞる。  
(そういう問題アルか? )と思いつつ、神楽は快感に抗えなかった。  
「あ...はァ...んん」  
「神楽ちゃん、興奮してる...?」  
妙の指が、ちゅ、くちゅ、と音を立てる場所に深く深く沈められていく。  
「たいへん...もう私の指、ぐちゃぐちゃだわ...」  
ふふ、と妙が神楽の耳許で声を殺して笑うと、神楽の体が小さく震えた。  
「あ...やだ...あ、姉御...」  
「もう神楽ちゃんのここ、...熱くて」  
神楽の首筋に、小さな胸に、唇や舌を這わせながらも、妙はさらに神楽の感じる場所を探ろうと折り曲げた指を動かす。  
神楽の愛液が幾筋も妙の指を流れた。緩やかに与えられる快感に、神楽はただ小さく声を上げ、息をつく事しかできなかった。  
「神楽ちゃん、気持ちいいでしょ...ねえ、恥ずかしがらないで」  
この神楽の、感じる様をもっと見たい...妙は指を秘所に沈めて抜く動きを早くした。  
「っん...あ...」  
「もっと感じて」  
「っ...やっあっ!ああっ!」  
あん、やあっ姉御っ...と小さく叫びながら、妙の流れる黒髪の頭を抱き締めた神楽の意識は、快感の中へ堕ちていった。  
「神楽ちゃん...」  
「はあ、はあっ...」  
妙は神楽の反らせた白い顎に口付けた。  
 
「...それにしても、神楽ちゃんにこんな事する銀さんって、やっぱりロリコンよ」  
妙と神楽は二人で布団に横たわり、先程の余韻を反芻するようにお互いの体を近付け、小さな声で囁きあっていた。  
「ち、違うよ姉御!銀ちゃん、お天気お姉さんみたいのが今まで好きだったけど、私にはどうしてもこういう事しちゃうって、こんな事しちゃうのは私の所為だって...言われるヨ...」  
神楽は慌てて上半身を起こすと、銀時を庇った。  
「あ、そう...」  
(神楽ちゃんって本当に銀さんに夢中なのね。)  
「...神楽ちゃんオヤスミ」  
やっぱりなんだか面白くないわ。ちょっと拗ねた気持ちになって、妙は布団を顔まで被ってしまった。  
「姉御お...」  
(そんな寂しそうな声出しても、もう知らないわ。もうこのまま寝てしまいましょ。)  
と思った妙の額に、何かが触れた。  
「姉御、お返しヨ」  
「あ...」  
唇の感触に次いで、妙の額から神楽の前髪がそっと離れた。  
「姉御大好きヨ...」  
布団から顔を出すと、神楽が少し照れたような笑みでこちらを見つめている。  
「おやすみ!」  
神楽も布団を被った。  
「...神楽ちゃん、お休みなさい」  
妙は神楽の様子にふふふ、っと微笑むと、そっと目を閉じた。  
 
 

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