ずっと仕事の依頼がない万事屋では、銀時一人がただ椅子に座り、ジャンプを読んでいた。
神楽は、妙や新八の家に泊まりに行っている。久しぶりというか、妙というか、静かであった。
「暇だよなあ」
ふと、時計を見る。
時間は午後8時。飯も食ってかなり暇だ。仕方ない、もう寝るか。
そう思い、寝床につきまぶたをゆっくり閉じかけた時。
「すいません、」
小さな声がした。
本当に小さく、そして神楽のように幼い声だったから、幻聴だと思い、再びまぶたを閉じようとするが。
「あの、あ、あの」
泣きそうな、動揺したような震えた声は、確かに聞こえた。
仕方ねぇなあ、と布団からでて、玄関を開ける。
やる気のない目であたりを見回す。
見えるのはかぶき町のネオンだけ。
「なんだよ やっぱり幻聴か」
戻ろうとした時、引っ張られる感覚がした。
下を見ると、黒い長髪のかわいらしい花柄の着物をきた少女だった。
俯いていた顔を上げた少女は、大きな目に少し涙を溜めていて。神楽くらいの可愛い少女だった。
「なんだ、ヅラのガキか?」
「ヅラさんとは誰ですか?私、依頼をしに…」
「そんなら明日の昼、お母さんと一緒に来なさい」
「私、家出してきたんです」
急な言葉に、銀時は言葉を詰まらせた。
「…え?」
「私は親がいないんです。お姉さんがいるんですけど、私が末っ子だからと、子供扱いしてばかりで…」
「だから大人にしてくれと?すまねぇな、俺は魔法使えねぇんだ」
「抱くことなら、出来るでしょ」
「大人って、そっちの大人!?」
ここで話すのも何だからと、銀時は少女を上がらせた。