05/x/xx 17:30  
     近藤  
     祝・テスト終了!  
     --  
     皆さんこんにちは!  
   
     今日のテストは皆さんどうでしたでしょうか?  
     とても出来た人、あまりよろしくなかった人、それぞれだと思います。  
     そんな、我々の頭痛の種をさらに増やしてくれるようなテストも  
     ようやく終わりました。そこで!今までの苦労を分かち合いつつ、  
     皆で鍋を囲む、というのはいかがでしょうか!  
     8時頃、わたくし近藤の部屋での開催を予定しております。  
     皆様お誘いあわせの上、ご来場下さい。   
     なお!来場者の皆さんで楽しい楽しいゲームも企画しております!  
 
とまあこんなうっざ!と一言で片付けてやりたくなるようなメールがきた。  
エンターテイナー気取ってるのがもうそれはそれはすんごいむかつくのだ。  
しかしさっきから、土方の携帯がガタガタいいっぱなしで。  
それは一体何を意味しているのかというと。  
「・・・・・もしもし?」  
「トシ?あ〜やっとつながったーお前さっさととれよー」  
「あのさ正直うざいよ」  
「ちょっ、お前そんなこと言わないでもいいだろ」  
「切るぞ」  
「待って待って!!あのな、メール見たか?」  
「見た」  
「来いよ」  
「嫌だ」  
ブツッ、ツーツー  
 
「おーいなんで切るんだよ」  
「・・・・・・・」  
「トシ、来ないと皆でお前の家に押しかけるぞ」  
「えっちょっ、きもい!!きもいからやめろ!!」  
「きもいゆうな!!沖田もな、お前いなかったらさびしいって」  
「あいつの言うことなんざ、どうでもいい。ますます嫌だ」  
「・・・・・本当にお前んとこ行くぞ」  
「しつけーぞ!!あっ・・・・切れた」  
あの人なら本当に押しかけかねない。  
携帯を見つめ、渋々土方は出掛ける用意をした。  
 
「おー来たかー!」  
「アンタさ、あんなこと言われたら来るしかねェだろ」  
「ささ、どうぞどうぞ」  
「俺すぐ帰るから」  
「まあそんなこと言うな!あがれ」  
その後だんだんクラスの面々が集まって来て、  
とりあえず盛り上がりそうになってきたからもうちょっとここにいてやってもいい。  
と、土方は思った。  
「なんだか、急に物分りよくなったみたいですね、土方さん」  
「山崎、来てたのか。まぁな、ガキじゃあるまいし」  
「近藤さんの親戚がカニ送ってくれたって聞いたからでしょう」  
「・・・・・・・!!」  
「(本当分かり易いなこの人)」  
「…沖田は来てんじゃなかったのか?」  
「今、神楽ちゃんと買出し行ってますよ」  
「へえ、あいつらがわざわざ自分から動くとはな」  
「自分達が食べたい物だけ買ってくるつもりなんじゃないですか?」  
「…………(ありえる)」  
 
その頃の沖田と神楽は。  
「たりるかな、これで」  
「どうですかねィ、皆化け物並の胃袋持ってますから、特に神楽ちゃん」  
「たりなかったら買い足せばいいアル」  
「寒くないです?」  
「寒いヨ」  
「へへ、たしかに」  
神楽がキモイ!と言うと、沖田は何も言わずににぃーっと笑った。  
なにはしゃいでんだコイツは、と神楽は思ったけど、それはお互い様なので黙っておく。  
角を曲がったところにあるファミレスから明るい光が差してきて、  
二人は自分たちがいる場所がいかに寒くて暗いかということを思い知った。  
沖田がずび、と鼻をすすって、女の子みたいに小さくくしゃみをした。  
「くしゃみまできもいアル」  
「なんですかィそれ。ひどいなァ、神楽ちゃんはひどい女だ」  
「お前も性格悪い男ダロ」  
「へっへっへ、たしかに」  
そう言った途端に、沖田はまたくしゃみをして、  
きっと暖かいに違いないファミレスを恨めしそうに見上げた。  
「はやく帰ろうよ、寒すぎアル!」  
「そうですねィ、カニも待ってらっしゃるし」  
「カニ様を待たせてはいけないナ」  
「そういうこと」  
そうだ、と神楽が相槌を返すと、いきなり沖田が大きな声でよーいどん!と走り出した。  
神楽が慌ててちょっと待つアル!と悲鳴を上げると、  
沖田は何かを思い出したように神楽の方へバックしてくる。  
「いけない、忘れてやした。ん、」  
「は?」  
「は?じゃなくて、荷物、はやく渡してくだせィ」  
「荷物?」  
「そう荷物、重いでしょう?ハンデハンデ」  
私の方が力持ちなのにナ、と思う神楽から荷物をさっと奪って、  
もう一度よーいどん!と沖田が言う。皆きっと二人を恨みながら待ってるに違いない。  
 
「俺絶対このバイト向いてないと思う。大体さー、接客業が駄目なんだわ、きっと。  
俺より後輩の上田君とかにも「坂田さん 目笑ってないですよ」とか言われるしさ、  
中坊のガキヤローは俺バカにしてんのかしんないけど、  
アルコールのもんとか堂々と買っていくしさ、俺が飲みてぇっつーの。  
ていうかコンビニのあの明るさが駄目。なあどう思う?俺、目、死んでる?」  
そこまで銀八は一気に言って、新八を見た。  
一応真面目に話は聞いていたつもりだけど、まさかそこでふってくるとは思わなかった。  
「え、えっと…死んでない、と、思います」  
本当は7割ぐらい死んでると思った。けどそんなこと言えるわけない。  
つーか教師が副業にバイトってやっちゃ駄目だろう。  
「だよな?大丈夫だよな?くっそー上田め…」  
「もっとやる気を全面に出した方がいいですよ」  
「そうは言うけどさ、俺お前みたいに元気キャラじゃねぇもん」  
「はぁ…」  
元気キャラってなんだ。第一僕は今元気じゃない。  
昨日は一晩中お通ちゃんからかかってくる電話を待ってたりしてて、  
あんまりよく寝れていないのだ。  
 
近藤さんに誘われて来たはいいものの、なんで担任のこの人までいるの?  
それになんで僕が酔っ払った先生の聞き役しなきゃいけないわけ?  
「新八はさあ、今楽しいだろ」  
「え?今、ですか?今・・・?」  
「あー、この瞬間って意味じゃなくて。てか何、今楽しくないんか!?」  
「や、そんなことないです!楽しいです!」  
「やっぱりな!」  
銀八は元気よく言ったあと、大きくため息をついた。この人の相手をしていると疲れる。  
思い出したようにパチンと手を叩いて、銀八は とても嬉しそうな顔をした。  
ここまで良い予感をさせない笑顔も、そうないだろう。  
銀八はごそごそと鞄をあさって、雑誌を取り出した。  
「これ、この問題…お前わかるか?」  
折り目が大きくついたそのページにあったのは、おそろしく細かい網目のクロスワードパズル。  
楽しそうに騒ぐクラスの面々をよそに、黙々とクロスワードを解く新八だった。  
 
「じゃあ、鍋も食べたし、ゲームでもするか!」  
「しねーよ馬鹿!」  
土方は半分潰れかけた煙草の箱を取り出すと、溜息をつき、一本抜いて咥えた。  
散らかったテーブルを挟んで向かいにいた妙が微笑んだまま言う。  
「土方さん、煙草やめてくださる?私健康な赤ちゃんを産みたい派なの」  
「そうだぞトシ、お妙さんが俺の可愛い子供を産むために、この部屋は禁煙だ!」  
「誰がテメーの子供産むかァァァァ!!!」  
暴れる近藤と妙を放っておき、山崎が何か道具を運んで来た。  
「これ、桂さんがせっかく準備してくれたんだから使いましょうよ」  
「何アルか?それ」  
「なんか罰ゲームの小道具みたいですよ、多分」  
「桂さん、これ全部100均ですぜ」  
「俺はザ・ダイソーだ。貴様に100円のありがたみを教えてやろう…!」  
「いや、別に知りたくないでさァ」  
「ちなみに品質は聞くでないぞ!」  
箱に入った道具を見て、神楽は何かを掴み銀八の元へかけ寄る。  
「先生、コレかぶるアル!」  
「なんだ〜?ガキの遊びには付き合わねぇぞ俺は…ってうお!」  
神楽は脳天を割る勢いでアフロのカツラを銀八の頭に被せた。  
「やめろ!…ん?取れねぇぞ、オイ!どーなってんだ!?」  
「接着剤塗りこんだアル」  
「オイイィィィィ!!」  
「大丈夫ヨ、先生だって分からないから」  
「余計悪いわ!!」  
「落ち着いてください。自称銀八先生」  
「自称って何だ自称って!!分かった、俺はたった今からパパイヤ鈴木と名乗ろう!!  
 ポジティブシンキングだ!!」  
結局罰ゲームとして使う予定だった物は、ゲームもしないまま好き放題遊ばれ、  
健全に鍋だけだったはずの集まりが、沖田の買ってきた酒によって場はさらに騒がしくなっていった。  
「オメーら高校生のくせに酒だの煙草だの、100万年早いわ」  
「まあまあ先生、今日は多目に見てくだせェ、ホラ養命酒どうぞ」  
「俺はそんな年じゃねェエェェ!!まだピチピチだっつーの!!」  
 
土方はあまり酒が強くなかった。  
人前で醜態を晒すくらいなら、飲まない方がましだと思い、  
酔って普段と性格が変わりつつあるクラスの面々をぼんやりと眺める。  
こうして座っていると、より人付き合いの悪い無愛想で傍若無人な奴に見えるのだろう。  
隣には話し相手もおらず、あるのは灰皿からこぼれるほどの煙草の山だけ。  
しかし土方は雑談したい気分でもなかった。  
騒がしい部屋の中心では酒の早飲みの競争をしているようだ。  
そしてその輪の中から、神楽はなんだか3Dのカードのように、くっきりと浮き上がっている。  
タイムリーにパチッと土方と目が合った神楽が少し目の表情を変えた。  
それを見て土方は無言で、吸っていた煙草を灰皿にねじ込むように揉み消す。  
(こっちにおいでヨ)  
神楽が口パクでそう言っても他のメンバーは気付きもせず、ゲラゲラと笑っている。  
神楽は、その輪の中にいながら、彼らをガラスの外側から眺めていた。  
土方の少し機嫌の悪くなった瞬間の目つきの変化とか、  
貼りつけたように高揚していくこの場の雰囲気とかを、誰よりも敏感に感じ取ってしまう。  
神楽の問いかけに土方は首を振った。神楽はいーっと舌を出す。  
すると、神楽の隣に座り、落ちつきなく肩を揺すっていた沖田が、  
神楽の背中を突き何かを囁いている。  
それからじゃれ合うように肩を抱いた沖田に、神楽はしかめ面で言い返す。  
本気で嫌がっているのではなく楽しそうに。  
その二人の様子が、土方の癇にさわった。  
恋をするということ。醜い気持ちをもつということ。  
土方はこんな事で妬いている自分が少し情けなくも感じた。  
「近藤さん、ちょっと外の空気吸ってくる」  
「おー、外寒いからちゃんと上着着ろよ」  
「アンタは心配性だな」  
土方はライターを取り出すと、くわえた煙草に火をつけて、薄笑いを浮かべて部屋を出た。  
 
神楽が部屋を見渡すと、銀八と雑誌にむかいにらめっこして何かを解いている新八、  
真っ赤な顔して鼻眼鏡やカツラを被っている山崎と桂、  
酔って暴れる妙を何故か嬉しそうになだめる近藤。  
しかし先ほどまでいた土方の姿がなかった。  
「ね」  
「・・・・・」  
「ねねね」  
「・・・・・」  
「沖田てば」  
「・・・・・なんですかィ」  
「土方、さっきから部屋にいないけど、どうしたアルか」  
沖田はさぁ?と首をすくめてみた。  
「それよりホラ、もっと飲みなせェ」  
「もう、頭の中ぐるぐるしてるヨ」  
そう小声で言うと、持っていた酒の缶 を沖田に渡した。  
「まだまだ、夜は始まったばかりですぜ?」  
「オマエは飲みすぎだ」  
話を遮るようにピロピロと頭の悪い音で携帯が鳴って、沖田は顔をしかめた。  
神楽はポケットから携帯を出すと、液晶を確認してにんまりする。  
「ちょっとトイレ行ってくるアル!」  
そう言って神楽はニッコリと笑った。  
「へい、どうぞ」  
神楽は床に転がる酒のビンや缶を跳ねるように避けて、部屋を出て行った。  
酔いが回っているのか足取りはおぼつかない。  
神楽は嬉しくて、でもどんな顔をしていいのかわからなかった。  
目的地は沖田に告げたトイレじゃない。  
神楽は上着も着ずに、火照る頬を両手で押さえながら、  
玄関の扉を開け外に飛び出した。  
 
いびつな形の月がぼんやりとふやけて見える。  
公園の隅っこにある白い背の高い時計は10時5分を指していた。  
ポケットのケータイを取り出すと22時56分。  
秒針が動かないところを見ても止まっているようだった。  
公園内は当たり前に人気がなかった。側の通りも人は通らない。  
地面にぽとりと灰が落ちる。体が、冷たい風を吸った。  
土方が思わず顔をしかめたら、見えたのは、絶対忘れたことなんてないあの髪の毛の色。  
 
土方の目は、公園の蛍光灯の光と、鮮やかな桜色にすっかり冒されてしまった。  
神楽は土方のもとに小走りでくると、ニッと笑う。  
「ネ、なんかさ、いけないことしてるみたいだネ」  
「お前なんでそんな薄着なの」  
神楽はそう言われて、自分の服装を見遣る。  
薄手のセーターとスカートで夜の野外に出て行くのは、確かに寒そうだと神楽は思った。  
「寒いから、着とけ」  
「じゃあ、借りる」   
神楽はそう言って、上着を土方から貰い、マントのように翻してそれを羽織った。  
肩に着地する瞬間、煙草の香りがふわりと降りてきた。  
神楽は袖を鼻のところに持っていって、匂いを嗅いだ。  
「煙草臭いアル」  
「仕方ねぇだろ」  
少し離れて背中を向けていた土方は鼻をふっとならした。  
先ほどまで小雨が降っていたのか、アスファルトが濡れている。  
蛍光灯の光に反射して光る葉っぱ。水滴のついたジャングルジム。  
少しの沈黙の後、神楽が言った。  
「水の中というのはとても気持ちがいいらしいネ」  
 
不機嫌なのか土方はむすっとした顔のまま、のそっとした動作で振り返る。  
「お前ずいぶん酔ってるな」  
「泳ぎたいアル」  
「まだ寒いだろ」  
「てゆうか泳げないんだけどナ」  
「練習しとけ」  
「うん」  
「夏になったら、海行くか」  
「うん」  
土方の手が神楽の 手首を確りと掴んだ。神楽は逃げられなくなった。  
土方の冷えた指先が神楽の熱を奪う。  
この温度差にぞっとして、神楽はすぐに「冷たい」と笑った。  
詰めたような呼吸と、視線が絡まった瞬間、土方は掴んだ手首を優しく引き寄せた。  
神楽が意地悪で足を踏ん張ると、さらに力を入れてグッと引き寄せる。  
とうとうその気になればキスくらいできそうな距離まで近づいた土方は、  
神楽の髪の毛に鼻先をうずめた。土方と神楽では高低差がありすぎる。  
神楽は磁石に吸い寄せられるように、重心をゆらりと前に戻した。  
はー、と頭上で土方がため息を吐いた。  
「沖田がお前待ってんじゃねーの」  
「そういえば、トイレ行ってくるって言ってしまったヨ」  
そうやって、神楽は歯を少しだけちらつかせながら、声を押し殺して笑った。  
「戻るか?」  
土方は、ゆっくりと神楽の顔へと手を伸ばして、頬を触った。  
そして神楽は、更に頬を上げ、目を細めて笑う。  
神楽は土方の手が好きだった。酷く神経質そうな、かたく、冷たい指先。  
「…それとも、セックスする?」  
神楽が顔を上げると、土方は神楽の目を見据えて言った。  
「…よくもまあ、事も無げにさらっと言えるネ」  
神楽はこまった男だな、と思ったけど、  
これを言ってしまうとキリがなくなるので言わないでおく。  
お互い暗くて顔がよく見えないけど、はい、と小さく言ったのが聞こえた。  
 
途端、手をぐいっと引かれて、神楽はつまづいて転んだ。  
「いった!」  
「立て馬鹿」  
笑って神楽を見る。  
「ウルサイ、万年発情ヤローが」  
「上等だ」  
土方は馬鹿の一つ覚えみたいに、神楽の手を掴んでずんずん歩いていく。  
土方は前を向いたまま、神楽はうつむいたまま、いつまでたっても視界は暗い。  
 
土方の家にはすぐ着いた。神楽はポケットから鍵を探す背中をうしろから眺める。  
扉を開けて、二人はためらいもなく部屋の中に入る。  
土方の部屋は、いつもひんやりしていた。  
バシッとドアが閉まると、後ろから突き飛ばされて、神楽は頭からその中にのめり込む。  
土方もそのまま上に被さり、乾いてざらついた唇を押しつけた。  
縺れて引っ張り合う舌。神楽はすごい力で羽交い絞めにされる。  
「ちょ、落ち着くアル!背中イタイ!」  
胸を押しやり、土方の顔を見上げたら、口元に薄く皺を寄せて憎らしいほど色っぽく笑った。  
「ちょっと我慢しろ」  
「なっ……ん!」  
そう呟いて、神楽の言葉が言い終わらぬうちに唇を合わせ、噛みつく勢いで舌を絡める。  
同時にシャツのボタンを上から一つずつ外し始め、平然と脱ぎ捨てていく。  
神楽もブラごとセーターを脱がせられる。固く張り詰めた腹筋に神楽の指先が触れた。  
熱っぽい空気。神楽も体の底から這い上がってくる熱気に浮かされたように背中に手を回す。  
土方は獣みたいに首に歯を立て、太腿から足の付け根を手の平で撫でた。  
「あ、…っ」  
痛いくらいに小さな胸を揉みしだかれ、声がうわずっているのが、神楽は自分でもわかった。  
全身の産毛が逆立つ。  
土方は、神楽の腰に手をかけると下着を剥ぎ取り、ふと体を眺める。  
白く薄い滑らかな細い腰は柔らかな曲線を描いて、一層艶めかしさを強調していた。  
神楽は見降ろされているのを意識して、眉根をしかめる。  
 
「……ジロジロ見るなヨ」  
土方の顔を両手で挟み軽く唇を寄せると、薄く目を閉じて舌を味わう。  
頬に熱い息を吹きかけ、黙らせるように土方の指は中を掻き分け、敏感な部分を探し当てる。  
「ひあっ…!ひじ、か」  
神楽は俯き、視線をずらし、唇を噛んだ。漏れそうな声を押し殺して首を振る。  
体が震えているのが土方にまで伝わってきた。  
土方のモノはすでに怒っているみたいに硬くなっている。  
「……いくぞ」  
神楽が眉を寄せ首を傾げ力なくへらっと笑うと、膝を折って腰を持ち上げゆっくり奥深くねじ込んだ。  
「やぁっ!…あ、んっ」  
視界が少し滲む。  
神楽の肩を摘む指が肉に食い込むと、次の瞬間、土方は腰をすごい勢いで動かし始めた。  
神楽は薄く唇を開いて、恍惚の表情を浮かべながら身悶えている。  
紅く柔らかな唇の間から舌が覗いていた。  
ひとしきり腰を突き動かすと、神楽を抱きしめ唇を貪った。  
目尻から涙が滲み出す。胸に抱えられた太腿が白く光って揺れていた。  
神楽の頬をつたって一気に涙がこぼれ落ちると、土方の動きが激しくなっていく。  
「っん…あ、あっ…」  
「…くっ」  
神楽の胸に顔を押し当てると、数回腰を強く打ちつけ、土方は達した。  
中に熱い液体を受けて、神楽も遅れて達する。  
窓の外は真っ黒で、神楽はそれに溶け込んでしまいそうだった。  
溜息をついた途端に、土方の体が神楽を押し潰すほどの重さで崩れてきた。  
しばらくそのままで、神楽は心臓の音を聞きながら、目をつぶる。  
どれ位時間がたったのか、土方は起き上がるとライターをひねり、煙草をふかしながら頭を掻く。  
神楽は瞳を閉じたまま、規則正しい寝息をたてて横たえていた。  
猫を撫でるように、神楽の顔から汗で張り付いた髪の毛を払ってやる。  
横顔がきれいだなと思った。  
その顔を見て、少し荒かったかな、と土方は苦笑いした。  
空は灰色のままだけど、すこしずつ朝になっていく。  
 
 

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