眩しい。
瓦礫の隙間にできた小さな穴にも届くこの光。
ほんの一筋でしかないのに、強くどこまでもまっすぐに、貫いてくる。
夜兎にとって天敵だったのは陽の光だけじゃなかったようだ。
阿伏兎は残り少ない命をそぎとっていかれた気がした。
あの小娘に致命傷を与えられ、落ちた先はこの僅かな隙間。
残骸の折り重なった中に奇跡的にできた空間だった。だが、ここで傷を癒やすにしてももはや自分には力は残っていない。
戦闘の果てに死ぬのは夜兎の本望だ、だが、ここで朽ち果てるように死んでいくのはごめんだった。
薄暗い穴倉の中なのはいい。夜兎は陽の光の下では生きられないイキモノだから。
だが砂時計の砂が落ちていくようにおのれの残り少ない生命が減っていくのは我慢ならない。
誰でもいいからコイツをどっかにやってくれ、と思っていたところ、目を閉じても網膜に焼きついている光が一瞬さえぎられた。
待ち焦がれた死がようやく来たのかと思ったがそうではなかったらしい。
首筋に触れた何かが阿伏兎を現実に引きもどした。
薄暗い中で浮かび上がる白い肌。自分が知る一族の中でひときわ小柄なシルエット。
その持ち主の指先が喉下に触れていた。
アイツか?。
阿伏兎は目の前にいる相手に問いかけた。
だが、返って来た声は思いこんでいた相手ではなく、その妹だった。
「オレがまだ生きているのが分かったってことは、おまえさんも腕があがったんだな」
覗き込んでいる蒼い瞳は動かない。
喉元にかけられた手も動かない。
「とどめを刺しにきたんじゃねえのか?」
相手は、最後に見たときのケダモノの姿ではなくなっているものの、初めて見えたときともまた違う。
「こんなオレじゃ殺る甲斐がないか?」
戦闘種族の夜兎として戦わない相手を殺れないといいたいのか、コイツは。
なめられたものだ。
コイツはオレに情けをかけるつもりか・・・。
指一本動かすだけでも体中から悲鳴が上がる。
鉛を流し込まれたように重い体は果たしてこの娘の意図するところに付き合えるかどうか怪しい。
立ち上がることもできないが、この手をねじりきるくらいならできそうだ。
阿伏兎は神楽の手を掴んだ。
その力は、掴んだというよりも触れたという方が正しいほど弱弱しく、到底神楽をくびり殺すには至りそうにない。
だが、これで望みが叶えられる・・・。
阿伏兎の口元にかすかに笑みが浮かんだその一瞬だった。
阿伏兎の手を払った神楽の手がツッ…と下にすべっていき、破れた上着の裂け目にたどり着くとそれを一気に裂いた。
あらわになった無数の傷跡を見てもたじろぎもせず、神楽はそのままかがみこんだ。
胸元に残る古傷に、ざらりとした湿ったモノが触れた。
歴戦のツワモノに敬意を表するかのように、傷跡に舌を這わせ、時折強く吸い付いてくる。
「よせ・・・」
神楽の指先が胸元の突起に触れた。
つまみ上げ指先で撫でさするその動きが何を意味しているのかこの娘は知っているのか。
その前にどこでこんなこと覚えたんだ。
「やめろって・・・」
やっと持ち上がった手で軽く神楽を押すと、神楽はじっと阿伏兎を覗きこんだ。
「バカなことしてねぇで・・殺る気がねぇならさっさと・・・どっかいっちまえ・・・・」
こんなことはてめえの惚れた男とやることだ、と続けようとしたが声にならなった。
神楽の手が荒々しく下肢に残っていた布地を取り払ったからだった。
もう何をされようと抗う力もなかった。
それと裏腹に、残された生命は湧き上がるもう一つの本能に身を任せたがっている。
コイツ本当にできるのか。
力なく頭を垂れているそれに神楽の手がたどり着いたとき、そんな考えがよぎった。
神楽は躊躇いもなく阿伏兎自身を掴むと、ゆっくりとしごき始めた。
いくら頑丈な夜兎族とはいえ、どう見てもこの娘の体つきは成熟には程遠い。
なのに、何が彼女を駆り立てるのか。
否定したくてもできない、本能ってヤツか。
いきつくところは結局それだ。
割り切れないものは全てこれで片付けてきた。
多分今度もそうなのだろう。
『小娘』ではなく『若い女』の柔肌を思い浮かべるのは悪い気持ちではなかった。
ふっきれると同時に、潰えかけていた欲望が体の奥底から湧き上り始めた。
ただでさえ少ない夜兎の女だが、それでも抱く機会は幾度とあった。
彼女らと交わって分かったことがある。
潰しあい殺しあうばかりの男と違い、彼女らは次の命をつなぐことに貪欲だ。
だが、彼女らの本能もまた夜兎そのものだった。
強い命を繋ぎたい。
残るのは強者のみ。
死闘の果てに得られる果実の甘さは血の味がし、征服の後に得られるものは『愛』や『情』よりも、
強い男の種を残す、という破壊と対極にある行為だった。
考えて見れば、女というものは弱さを装っているがしたたかだ。
戦うばかりのバカどもは到底太刀打ちできない。
一体コイツが何を考えてここに来たのか理解できないが、そうならばこちらも応えてやらねば、と阿伏兎は
神楽の手を押さえた。
「やり方知ってんのか?」
神楽の瞳が一瞬翳りを帯びた。
「ソコをそうするのは間違ってないが…このままじゃ……ムリだ」
どうしたらいいのか?と問いかけるまなざしに、阿伏兎は
「オレだけじゃない……オマエの準備も……できてないとムリなんだよ」
脱げといわれ、神楽は阿伏兎から離れ指示に従った。
現れた白い体はようやく胸が膨らみ始めたばかりで、阿伏兎が想像していた以上に幼かった。
傍らにひざまずいた神楽の下肢に手を伸ばした。神楽は一瞬身を硬くしたが、阿伏兎は戸惑うこともなくまだ生え始めたばかりの草むらをかきわけていく。
だが、それ以上進ませるには体勢にムリがあった。
気力を振り絞って体を起こそうとしたが、それも叶わず、阿伏兎は一つため息をついて手を引いた。
「もっと……近……く………オレの上に跨れ…」
引き寄せられるように神楽は阿伏兎の腹の上に跨ろうとしたが、そうではなかったらしい。
そっちじゃない、もっと上、と誘導されるままにずりあがっていき、止められた時には彼女の一番奥まった箇所が
阿伏兎の目の前に完全にさらけ出されていた。
死に行く身だというのに、己の中を占拠し始めた欲望に阿伏兎はついに降参した。
「もっと…………腰・・おろさねぇと…」
沈められると同時にさらにあらわになったそこに阿伏兎は舌を突き出した。
触れた時には一瞬体を引こうとした神楽だが、次第に阿伏兎のなすがままになっていった。
ピンク色のソコを丹念に舐め上げていくと、次第に少女とは思えない艶めいた吐息が漏れ始めた。
次第に潤い始めた箇所を、ねだるように阿伏兎に押し付け、気がつけばもう少し舌を伸ばせば蜜の溢れる秘肉に
到達するところまできていた。
ぷっくりと膨らんだピンク色の核を集中的に舌先でなぶると、しとどに蜜を滴らせ始めた。
神楽は堪らないとばかり、眉根を寄せて切ない吐息を吐き続けている。
そして阿伏兎自身もいつの間にか頭をもたげていた。
ここまで来たら例え神が首筋を掴んで引き離そうともやめられはしない。
執拗に攻めていた陰核を吸い上げると、神楽の太股が痙攣しひときわ大きなうめき声を上げ動きを止め、しばらくするとがくりと力を抜いた。
「…おい」
座り込んでしまわないように我慢はしているおかげで阿伏兎は窒息せずに済んでいるがさすがにこの体勢のままずっと
いられるのは苦しかった。
目の前でヒクヒクと震える蕾は男を受け入れたことがあるのかと気になったが、もはや気遣う余裕はなかった。
「オレ……の方も頼む…」
このまま後ろ向けよ、と言われた神楽は体勢を入れ替え男に体重をかけないように四つんばいになった。
目の前に聳え立つのは先ほどとは様相が違うモノだった。
ソレは今では凶暴なまでに形を変えていた。
手にしてみると、さっきまでの弱弱しさではなく力強く脈打ち、そして熱かった。
「…手でしごきながら咥えてみな」
数度しごいた後に飲み込んでみたが、勢いあまったのか口から吐いてしまった。
阿伏兎はそれを批難することもなく、むしろこれで神楽はやはり男に触れたことも触れられた事もないのだ、と確信し
「ゆっくりでいいからな」
と優しく言った。
神楽はもう一度恐る恐る手にし、そっと唇を寄せる。
どこがどうなのか分からないなりにも丁寧に舐め上げていく。
阿伏兎は拙い愛撫に身を任せていたが、放置していた神楽のことを思い出した。
手を伸ばせばすぐに届く位置にあるはずなのにやけに遠くにいるように感じたが、至ってしまえば案外簡単な
ことだった。
溢れ出た愛液を指先にまぶし、そのままもぐらせていく。
僅かな抵抗がありその瞬間だけ神楽の動きが止まったが、すぐに中にあることになれた。
激しく攻め立てることもせずただゆるゆると出入りさせていく。
しばらくすると男に言われたことよりもそっちの方が気になるのか、神楽は肩越しに阿伏兎を見ようとした。
「いいぜ……オレはもう動けねぇから…な」
神楽はそのまま体をずらしていく。
白い尻がそこにたどり着くと阿伏兎に熱いぬめりがあたった。
位置が分かりにくいのか、恐れからか、何度も外れた場所をさまよい、ようやく宛がわれた。
息を詰めたのが分かる。肩が震えていた。
初めて侵入してくる苦痛は夜兎と言えども同じらしく、神楽は何度も腰を浮かせ逃げようとしたが、
「おい…」
阿伏兎の声に意を決したように腰を沈めていった。
飲み込まれた阿伏兎は身動きの取れないキツさと、男を受け入れるにはまだ不十分な神楽の中のせいで苦しかった。
だが、初めて男を受け入れるにはきつすぎる体勢をとらざるを得なかった神楽はそれ以上の苦痛に苛まれている。
「大丈夫か?」
痛みを堪えようと肩で大きく息をついていた神楽は小さくうなづいた。
「…ゆっくりでいいんだぞ……」
体の無駄な力が抜けたのか、神楽は一つ大きく息を吐き出すと少しずつ動き始めた。
神楽の動きは最初こそおぼつかなかったが、次第にそれらしくなってきはじめた。
いかにすれば男の精を受けることができるのか知っているかのように、彼女は阿伏兎の体をつぶしてしまわないように、
気をつけつつも腰を動かした。
最初の痛みを堪えてじっとしていたのが嘘のように、しばらくすると奥まで受け入れてはギリギリまで引き抜き、入り口の感触を楽しむように回してはさらに
深く受け入れるを繰り返している。
とんだガキだ。
神楽に翻弄されながら阿伏兎は荒い息の下で笑った。
『本能』ってヤツはすごいもんだ。
さっきまで瀕死だった俺は自分の種を残そうと死に損ないのくせに女に乗られている。
女は強い男と認めた相手の精を受けようとする。
絶滅に向かう種族と言ったヤツは、多分夜兎の女を抱いたことがないのだろう。
こんなに強く逞しいイキモノが他にいるかって・・・。
「こっち…向けよ…神…楽…」
神楽は動きを止めると上気した顔を肩越しに阿伏兎に向けた。
「こん…ないい女の顔を見ながらイかねぇって…勿体ない…ぜ」
神楽はそのままそろりと阿伏兎を抜くと、彼に向き直った。
阿伏兎は、どこにそんな力が残っていたのか分からないが、体を起こした。
神楽はゆっくりと阿伏兎の上にのしかかる。
大きく広げられた右腕に包み込まれると同時に、彼女は再び阿伏兎の全てを受け入れ、そして受け止めた。
中ではじけた熱い奔流の余韻が急速にうせていく中、閉じていた目を開けると、男はすでにだらりと頭を垂れていた。
「バカなヤツ」
それは誰にかけた言葉なのかは分からなかった。
神楽の唇はそれ以上の言葉をつむぐのをやめ、男の顔を上向かせると、どこか照れくさがっているような笑みを浮かべている
唇に重ねられた。