隣に座る、同い年の女の色素の薄い瞳は揺るがずに己を絡めとっていく。
お妙はそんな視線に気付くと背中をぴんとのばし、再び顔を屋上のフェンス越しに見える空に向けた。
まぁ、と声を洩らし、絶景という言葉が最適である朝焼けに呆気にとられていた。
今だ。沖田はその瞬間を狙った。
「ここは世界で1番綺麗な場所だ」
「本当にそうでしょうねぇ」
「だからここで壊してもいいですかィ?」
「…?」
「1番綺麗な所で壊すのが夢なんでさァ」
「……あら、私を?」
ふふふ、と冗談混じりの顔は笑う。沖田は本気だと言うが早いか、お妙の体を少々乱暴に押し倒す。
身構えすらしていなかった体があまりにも頼りなくて思わず力を緩める。
表情を視線で追えば、驚く双眸を縁取る睫毛が揺れた。
彼女は数秒間目をぱちぱちとさせていたが、次第にいつもの笑みへと変わっていく。
「優しくしないとただじゃおかないわよ?」
小さな笑顔に安堵し、ほっそりとした白いうなじに緊張で強張る唇を近づけていった。
「近藤さんになんて言いましょうかねィ」