骨の髄にまで届くような、鈍い音が辺りに響いた。  
夕陽に照らされた桃の実のような、鮮やかな色の頭髪を、団子に結った小さな頭が、河原の地面に転がる。  
攻撃をまともに喰らい、側頭部を強打したらしい。  
いつもならすぐさま起き上がって向かってくる筈の相手は、脳震盪でも起こしたのか、そのタイミングがいつもより数秒遅れた。  
それが、相手にとっての命取り。  
容赦なく沖田はか細い少女の上に馬乗りになり、その華奢な首筋に白刃を突きつけた。  
可憐な容姿に惑わされて手加減すれば、自分が屠られる。  
相手は戦闘種族の天人の中でも、特に凶暴な夜兎族の娘だということを忘れてはならない。  
どちらにせよ、今の沖田には相手に手加減してやれる余裕は一切なかった。  
実力的に、というよりも、精神的な理由で。  
ひどく残虐な血が己の中で沸き立っているのが沖田自身にも解っていた。  
相手の血を欲する獣めいた欲望が彼を支配していた。  
ただ相手を傷つけるのみならず、より残忍な方法で、最も無様で哀れな姿を引き出して、己の前に跪かせる。  
それを嫌がる相手に強いる事こそが、彼を最も興奮させ、悦ばせることだった。  
 
―――夜兎族は凶暴な生き物だと言われてるが、自分も大して変わりゃしねェ。………いや、もっと性質(たち)が悪ィか。  
 
そのとき、意識を取り戻したのか、小さな頤(おとがい)がピクリと動いた。  
「おっと、動くんじゃねぇぜ、チャイナぁ。首が胴体とオサラバしたくなけりゃあな」  
薄い刀の切っ先を少女の首に押し当てる。  
少女が軽く息を呑んだ。その動きだけで、少女の白い肌に真紅の滴が一筋流れた。  
状況を飲み込んだのか、少女の動きは固まったままだ。  
しかし、その瞳は視線だけで沖田を殺そうとしているのでは、と思えるほど、鋭く激しいものだった。  
少女の視線に撃ち抜かれて、沖田は歪(いびつ)に口角を吊り上げた。  
目の前の娘がどれだけ悔しい思いをして自分を睨んでいるのか、その心中を察するに、沖田は愉悦の笑みを漏らさずにはいられない。  
もっと激しく憎めばいい。ままならなさに臍(ほぞ)を噛み、怒りにその血を滾らせ、それでも敵わない絶望と屈辱に涙を流せばいい。  
娘とは何かと互いが気に障る相性らしく、寄れば諍いを繰り返している間柄ではあったのだが、沖田は何故今これほどまでに、己がこの娘に対して気持ちが昂ぶるのか、解らないでいた。  
年の頃は13,4。容姿もあどけなさの残る、まだまだ幼い少女。  
今、刀で薄っすらと傷をつけたその首も、沖田の手中にあっけなく収まって、力を込めれば折れるのでは、と思えるほど、細く頼りない。  
しかし、その少女の首に再び目をやれば、先ほどつけた赤い亀裂は、既にもうなかった。  
夜兎の脅威の回復力。  
痛々しかった傷跡は消え去り、赤黒い血が絵の具の汚れのようにこびり付いているだけ。  
拭えば、何事もなかったかのようにその肌は白く美しい輝きを取り戻すのだろう。  
沖田は塞がった傷跡を見つめて舌打ちした。  
 
―――気に入らねェ。いけ好かねェ。………せっかく、傷つけたのに。  
 
沖田の意識が何かに捕らわれているのを察して、神楽は素早く反撃を開始した。  
強靭なバネを生かして沖田を撥ね退ける。  
 
「お前がワタシの上に乗るなんて、100年早いネ!!」  
 
神楽が背後を取って渾身の力で首に手刀を打ち込めば、貧弱な地球人などあっけなく倒せる―――はずだった―――なのに。  
 
「よっぽど、痛い目に遭わなきゃ解らねェらしい―――動くなッつってんだろィ、チャイナぁ」  
 
背後を取ったつもりが、沖田には神楽の動きが読めていたらしい。  
振り向いた沖田の目は神楽をしっかりと捉えていた。  
その目と目が合った瞬間、ゴギンッという鈍い音が、神楽の体の中に響いた。  
彼女は何をされたのか、一瞬解らなかった。  
次いで、左腕が燃え上がり、血潮が体内を駆け巡る音と、己の唇がけたたましい叫び声をあげるのが聞こえた。  
 
「キャアアアアアアアアアアアッッッ」  
 
白い骨が見えるほど深く、少女の腕に冷たい真剣が食い込んでいた。  
咄嗟に相手を薙ぎ払おうと試みたが、反対の右手も、男は握り潰さんばかりの力で押さえ込んでいる。  
何時もなら簡単に跳ね除けられた筈なのに、左腕の痛みと長く傘無しで戦っていた為、陽の光に当たりすぎた夜兎の少女は、まるで力を出せなくなっていた。  
気づくと、息がかかるほど近くで、色素の薄い男の瞳が笑っていた。  
男は楽しくてたまらない、とでも言うように、少女に微笑んで見せた。  
少女は戦慄と激痛に体を硬直させた。  
 
――――コイツ気が狂ってるネ! 完全にイカレてるアル!!  
 
「動くなィ。これ以上刀引いたら、本当に腕が?(も)げちまうぜ。  
それとも夜兎ってぇのは、トカゲみたいに何度でも生えてくんのかィ?」  
 
少女の柔らかな腕に痛々しい大きな裂け目を作っておいて、沖田は面白そうに囁いた。  
そんなんだったら、是非とも拝ませてもらいてェ―――と。  
深く刺さりこんだ刃先を、肉の中で抉るように回す。  
ゴリリッという、刀と骨がこすれる音と、血肉の飛沫が跳ねた。  
 
「ガアアアッッア! アアアア――ッ!!!」  
流石の神楽もこればかりは耐えられなかったらしい。痛みに悶え、涙を流して泣き叫んだ。  
 
「ああ、いい声出せんじゃねェかィ――そういう声で鳴くんなら、悪かねェ」  
いつもの糞生意気な減らず口聞かされるより、百万倍マシでィ。――そう続ける沖田自身は、明らかにいつもと違っていた。  
普段、目の前の娘と喧嘩することはあっても、ここまで残忍に傷つけようとはしていなかった。  
それは今、沖田に向けられている娘の視線が、いつもより恐怖と嫌悪に満ち満ちていることでも解る。  
   
―――もっと激しく憎みゃあ良いのに。泣き叫んで、苦しんで、本気で殺しにくりゃあ良い。  
そしたら、そいつをまた、ひねり潰してやらぁ。  
 
少女の瞳が憎悪に燃えて己を睨みつける度に、沖田の心は打ち震えた。  
それが快楽なのか、苦痛なのか、沖田自身にも解らなかった。  
しかし、沖田の内側が、獣のように荒々しい衝動で、それを求めていることだけは確かだった。  
沖田は少女の腕を貫いたまま、彼女を縫いつけるように、刀を地面に突き立てた。  
掠れた声で呻く娘の、温かな赤い血が地面に吸い込まれていく。  
雪のように白い肌の上を流れる赤い色が本当に綺麗で、しばし沖田はその色に見惚れた。  
地球人なら瀕死の重傷だが、娘は確かに生きていた。  
生き物の持つ、命が燃える熱を、全身から発していた。  
温かい。流れる赤い血も。頬を濡らす涙も。泥で汚れてしまった白い肌も。  
この熱を完全に奪えば、娘は死んでしまう。  
 
―――今、自分はこの命を奪うことだってできる。  
 
いつもは殺しても死なないように思えた娘が、今は子供の頃、戯れに殺めた小さな虫たちのように、儚いもののように思えた。  
人気のない夕暮れの河原。  
パトロールをサボって昼寝していた最中に、たまたま見つけて、からかって、いつもと同じように喧嘩して、暇潰しとしか考えていなかった筈なのに――。  
沖田は仰向けに縫い付けられた少女に馬乗りになり、かの少女を見下ろした。  
少女からは土や血の匂いと一緒に、髪に馴染んだシャンプーや仄かな汗、そしてどこか甘い香りが立ち上っていた。  
生き物の、未だ幼い人間の、未成熟な女の匂いがした。  
その香りを胸に吸い込みながら、沖田はふつふつと沸きあがる黒い衝動を押さえ切れなくなっていた。  
 
赤く滲んでいく空の色と呼応するように、紅い血を滴らせた少女は、夕日に照らし出された白い少年の顔をぞっとしながら見上げていた。  
会った時はいつもの少年だった。彼が豹変したのは憎まれ口を叩き合っていた途中でのことだ。  
神楽がある言葉を口にしたら、彼はがらりと表情を変え、攻撃の勢いを格段に上げてきたのだった。  
腕の傷口は酷い有様で、回復には時間がかかりそうだった。  
痛みと、日の光を長く浴びたせいで、脂汗がひっきりなしに流れた。  
だが神楽が動けないでいた理由はそれだけではなかった。  
少年は明らかに常軌を逸していた。  
その瞳から、いつもは感じない狂気を感じ取り、神楽は戦慄した。  
 
―――逃げなきゃ……。陽の光浴びすぎたネ。力も入らないし、こいつヤバイアル。  
 
刺し貫かれた左腕が燃えるようだった。  
吐き気と眩暈と、なにより底が解らない相手への恐怖と嫌悪で心拍数が上がっていく。  
浅い呼吸を繰り返し、汗で髪の毛が張り付いた頬を強張らせる。  
逃げ出すチャンスを全神経を使って窺う。  
心の中で銀髪の天然パーマを思い浮かべた。  
竦みあがってしまいそうな自分を奮い立たせた。  
 
―――銀ちゃん……!   
 
 
沖田は目の前の子兎の瞳から、怯えの色を敏感に感じ取り、ますますその色を引きずり出してやりたい欲望に駆られていた。  
一番相手に苦痛を与え、最も相手が恐れることは何か。  
どんどん色を変えていく夕日の下で、沖田の視線は娘の肌蹴た胸元に注がれていた。  
すっかりぼろぼろになった襟元は大きくはだけ、呼吸に合わせて上下する鎖骨と、その下に繋がる幼い胸元の膨らみを夕日に晒していた。  
泥がついていても白く、華奢で、愛しまれる為にあるような、その造形。  
 
―――ああ……ぶっ壊してェ……。  
 
沖田は前触れなく、少女の胸元の袷を引きちぎって開いた。  
 
「……ッッ!!!」  
 
あまりのことに目を見開く神楽。  
ショーツ以外の下着を身に着けていなかった神楽は、小さな乳房を急に外気に晒されて、息を呑んだ。  
鳥肌と一緒に、小さな桃色の乳頭がぴんと立ち上がる。  
沖田は気に留めた風もなく、左の手の平で乱暴に神楽の胸をわし掴んだ。  
右手は神楽の腕を突き刺した刀の柄に置かれたまま。  
 
「い…た…ッ!」  
 
眉を顰めて少女が苦痛の声をあげる。  
小さな白い胸は握り潰されんばかりに歪められている。  
柔らかい肌に男の指が、つめが、痛々しく食い込んでいる。  
握った痕が残るほど強く、白く柔らかい肉は荒々しい動きで蹂躙された。  
青い果実は小さいながらも、確かな弾力と、吸い付くような瑞々しさがあった。  
甘い香りと、汗の匂いと、生臭い血の匂いが沖田の興奮を煽る。  
そのまま手を滑らせ、柔らかい腹の肉に爪を立て、臍の下、下腹の下、太腿の閉じ合わさる奥へと指を走らせる。  
 
「やめ……ッヤメロ……ッッ!!!」  
 
神楽は起き上がろうとして、串刺しにされた刀に繋ぎとめられた。  
激痛に、再び小さな頭を地面に横たえて。  
 
苦痛と屈辱に、頬を涙で濡らし、顔を真っ赤に染めて耐える神楽に、沖田は瞳を煌かせた。  
 
「……ココ触られんのが嫌なのかィ?」  
 
沖田はニヤリとしながら、ぴら、とチャイナ服のスリットをめくり上げた。  
白い下着ごしに、ぷっくりとした肉が盛り上がり、縦筋が走っているのが見えた。  
その筋に指の腹を押し当てて、擦りあげてみる。  
 
「きゃぅッッ…!!! や……ッッ!!!」  
 
ぎゅ、と目を閉じた神楽が悲鳴を漏らす。  
急いで下唇を噛んで、息を押し殺そうとしているが、真っ赤な頬と震える胸が、彼女の呼吸が乱れていることを伝えていた。  
 
「……嫌、ってわけじゃなさそうだ。……まんこ触られんのがそんなに好きなのかィ?」  
え?オイ、チャイナぁ―――耳元で煽るように囁くと、少女は噛み付かんばかりの勢いで睨んできた。  
 
―――ああ……そうこなくっちゃあ……。  
 
ぞくぞくと這い上がる快感にくつくつと喉を震わせ、沖田は少女の両の膝頭をわし掴んだ。  
ぐっと力を込めて、わざと大股に開かせる。  
沖田の眼前に少女の無防備な局部が晒される。  
白い綿の布地に覆われていても、尻の割れ目や、恥骨、ぷっくりと膨らんだ陰唇の形が見て取れた。  
柔らかい内腿を大きく左右に押し広げるとあらわれる、幼いながらも、女の形をしたその膨らみ。  
沖田は膨らみを覆う布地に手をかけた。  
途端に、神楽の顔色がさっと青くなった。  
 
 
大股を開かされた時は、羞恥よりも左腕に走る激痛が勝っていた。  
沖田の手が刀から離れたことで、反撃のチャンスになるかと隙を窺っていたのだが、思っていたよりも失血量と日照時間がこたえたらしく、まったく体に力が入らなかった。  
体は地面に縫いとめられたまま。覆いかぶさるのは、豹変して得体の知れなくなった少年。所は人の来ない夕暮れの河原。視界も薄暗くなり、大きな声を出しても人に気づかれる確率は低い。  
相手は容赦なく強く、警察の身分を持っていて、今の自分は衰弱していて、不法入国の身分しかない。  
最悪の条件だった。  
何より神楽を竦ませたのは、少年の目だった。  
以前からドSと周りから呼ばれるような変態臭い奴なのは知っていたが、こんなに冷たくて気違いめいた目で見られたことは、神楽には無かった。  
今までと違っているのは――少年が神楽の下着を嬉々として引き裂いている、この状況が一番に物語っている。  
獲物を屠る獣の目が、うれしそうに細められた。  
犯される――目の前の「男」に。  
ぞっとした。  
こんなにも理不尽で悔しいことに、逆らえないことが信じられなかった。  
わけもわからない状況で、良いように弄ばれて、体の内側に穢れた肉体を受け入れさせられる―――。  
胸に冷たい鉛の球を埋め込まれたような不安と恐怖に、神楽がおもわず悲鳴をあげるのと、少年が神楽の下着を完全に毟り取ってしまうのと、ほぼ同時だった。  
 
「いやぁああああッッ!!! ぎんちゃああんッッッ!!!!」  
 
沖田が少女の下半身を覆う布地を全て剥ぎ取ってしまうのと同時に、少女の口から思わずついて出たその名。  
それを耳にして、沖田の瞳に宿る暗い炎は一段と勢いを増した。  
陽の傾きかけた河原で少女が放った言葉を思い出す。  
 
―――ガキは大人しく帰るヨロシ。  
―――ガキはテメェだろィ。補導されたくなかったら口の聞き方に気をつけな。  
―――もう、ガキじゃないアル!!……ぎんちゃんに「オトナ」にしてもらったネ。  
 
一瞬、言われている意味が沖田には解らなかった。  
が、少女が今まで見せたこともないような、はにかんだ表情を浮かべたので、直ぐに察しがついた。  
 
―――ああ……、「そういう事」かィ。  
 
急に、頭の奥が冷え切ったような、白けた気持ちになった。  
次いで、ひどく凶暴な気持ちが湧き上がり、歯止めが効かなくなった。  
目の前の少女は、沖田の与り知らぬ時にあの男に体を開き、沖田の与り知らぬところで抱かれたのだ。  
ただそれだけの事を、さも大事な思い出を語るように話す少女が、沖田には無性に癇に障ってしょうがなかった。  
目裏に、男に抱かれる少女の姿が浮かんだ。  
反吐がでそうになった。  
気づくと、少女を殴り倒し、組み敷いていた。  
 
裸に剥いた少女の身体は、とても「女」とは呼べない代物だった。  
薄い胸、骨盤も狭く、肉のつき方は子供こどもしていて、とても男を受け入れるようにはできていない。  
それでも、白く柔らかく薄い肌は、男には無いものだった。  
甘い匂いも。しなやかな曲線を描く体のラインも。  
柔らかくぷっくりとした乳頭や、それと同じ色をした、薄く濡れた肉の割れ目も。  
成長しきっていない肉体は、けれど既にあの男を受け入れたのだ。  
少女はきっと喜んで男に抱かれたことだろう。  
幼いからだを精一杯ひらいて男を包み、先ほどのように男の名を呼んで、破瓜の痛みに耐えたに違いない。  
するすると浮かんでくる悪趣味な想像を打ち消すように、沖田は少女の局部を乱暴にまさぐった。  
「ひっ……」と、小さく少女が息を呑んだ。  
ふっくらとした大陰唇を指でつまんでゆっくりとひらく。  
綺麗な桃色をした肉の花弁があらわれた。  
ヒクヒクと動いていて、濡れている。  
沖田はにカサついた指を少女の花弁にいきなり押し込んだ。  
ぐちっと音がして、のぷり、と長い指が少女の中に差し込まれた。  
 
 
いきなり指を突き入れられて、神楽は体を強張らせた。  
自分とは違った体温が、全く別の異物が、体の中に挿入される嫌悪感に、思わず涙が溢れる。  
 
「あふっ…!! ひ、ぎ…ッ!!」  
 
眦(まなじり)から涙を流し、反射的に膝を持ち上げる。  
まだほとんど毛も生えそろっていない神楽の秘部が、沖田の指を飲み込んでいた。  
沖田はきちきちに締め上げてくる神楽の内部で、指の関節を折り曲げた。  
 
「痛っっ!! ヤメ…ロ…ッ!!!」  
 
充分な前戯もなしに、無理やり性器に指を挿入されたのでは、苦痛しか感じなかったらしい。  
もとより、腕を抉られた状態で、抉った張本人相手に欲情などするはずもない。  
恐怖と嫌悪と、ありったけの憎悪を込めて、神楽は涙で滲んだ瞳で沖田を睨みつけた。  
 
「なんでェ。お気に召さなかったのかィ。万事屋の旦那はもっとお上手かィ?」  
 
組み敷いた状態で、沖田がわざと男のことについて囁くと、神楽の瞳はさらに苦痛の色を深めた。  
その色が、ますます沖田の苛虐心を煽る。  
体を傷つけたときより、少女本人を愚弄したときより、何よりもその色は憎悪と苦痛と不安に苛まれていて、美しかった。  
 
―――ああ……。やっぱりそうだ。  
 
沖田は相手に一番の苦痛を与える方法を探り当て、気持ちが昂ぶっていくのを押さえきれずにいた。  
 
「旦那に抱かれた時はどんな声出して、どんなふうに腰振ってみせたンでェ。 なぁ……俺にも見せてくれよ」  
 
相手を揶揄するかのような、ゆっくりとした声音だったが、その声には僅かに憤りのような感情がにじみ出ていた。  
沖田自身、男と少女がまぐわっている姿を思い浮かべると、なぜか胸がカッとなり、平静ではいられなくなった。  
沖田はそのことに目をつぶり、振り切るかのように、少女を乱暴に扱った。  
わざと荒々しく腿を掴み上げ、秘唇に差し込んだ指の数を無理やりに増やした。  
 
「ぃ…ッぎッッぐ…ッあああッッ……!!」  
 
そのまま乱雑に出し入れを繰り返す。  
じゅぼっ!じゅぶっ!ぐちゅっ!と、沖田が指を押し込む度に音が漏れた。  
苦痛しかない辱めに、神楽は歯を喰いしばって耐えた。  
小さく未熟な少女の性器に太く節だった男の指が3本、4本とねじ込められ、少女の秘部には愛液ではなく、血が滲んでいた。  
白く柔らかい肌が紅い血や泥で汚されていく。細く白い喉から激痛に耐え切れずに悲鳴が引き絞られる。涙と唾液で幼い表情が汚される。  
そのことが沖田の胸を締め付け、息を苦しくしていく。  
その息苦しさは沖田にとって、この上ない快感でもあった。  
徐々に呼吸が熱を持ち、心拍数が速くなる。  
体の中心が熱く滾り、興奮が肉の杭を硬く変えていく。  
ぎゅちっぎちゅっ、と乱暴に少女の秘唇をこじ開けて掻き回せば、少女は呼吸を乱して喘いだ。  
官能の甘さなど微塵も無い。痛みと感情の波を堪える為に息を殺し、そのために益々苦しくなる息を繋ぐためだけの、その喘ぎ。  
頬を赤く染め、眉を苦しそうに歪め、睫毛を涙で濡らし、喰いしばった唇の端から血を滲ませた唾液を滴らせる。  
哀れな少女の姿を見て、沖田は更に手の動きを激しくさせた。  
 
「ぐッうッウゥゥッ!!ぃぎッ!ひッ!ぎいぃいッ!いッ!」  
「 ぐっちゃぐちゃじゃねぇか。 感じてンのか?   
それにしたって、こんなに傷ついちゃあ、もう使いモンになんねェかもなァ。  
余所の男に好いように慰みものにされるような女ァ、万事屋の旦那だっていらねぇだろうよ」  
「アアアアアアアアアアアアアッ」  
 
どんなに最悪の状態でも、今までの神楽であれば戦えた。何者にも屈しない自信があった。  
なのに、沖田に辱めを受ける度に、お前のような女は銀時に嫌われると吹き込まれる度に、神楽の心はズタズタに切り裂かれた。  
必死に声を抑えようとしたが、沖田の拷問のような仕打ちに、神楽は涙を流して泣いた。  
溢れる涙と涎で顔はぐちゃぐちゃだった。  
無力な自分が許せなくて、目の前の男を殺してやりたくて、何よりも銀時の顔を思い出しては、熱い涙を溢れさせた。  
 
体と心に苦痛を強いられて、既にしゃくり上げるような呼吸しかできなくなっていた神楽は、急に沖田の指が膣内から引き抜かれたときも、まともに反応ができなかった。  
夜兎の能力で出血はほとんど治まりつつあった。腕に冷たい刀が突き刺さっているのは相変わらずだが、体は回復に向けて機能していた。  
反撃には千載一遇のチャンスであったにもかかわらず、神楽は逃げることができなかった。  
攻撃を仕掛けるには心が乱れすぎていた。  
憎しみと悲しみと怒りが激しすぎて、泣くことしかできなかったのだ。  
凶暴な夜兎族といっても、まだ13、4の小娘だ。性的な陵辱を受けて、精神的に傷つかないはずが無かった。  
沖田は体を離しても、少女が反撃してこないのを確認して、突き立てていた刀を引き抜いた。  
引き抜くと同時に、また赤い鮮血が少女の左腕からあふれ出した。  
 
 
痛みに体をしならせつつも、神楽は嗚咽を止められなかった。  
子供のように泣きじゃくり、現実逃避に近い精神状態に追い込まれていたのかもしれない。  
しかし現実は、お姫様が泣けば王子様が助けてくれるというセオリーが通じるほど、甘くは無い。  
泣きじゃくる少女の前で笑みを結ぶのは、悪魔のような少年だけだった。  
 
 
刀に滴る赤い血をべろりと舐めとって、沖田は泣きじゃくる神楽を見下ろした。  
裸に剥かれた痛々しい体を横たえて、嗚咽を漏らしている。  
いつもの神楽の面影は、その姿には無かった。  
しゃくり上げ、震える唇で、ひたすら神楽は一人の名を呼び続けた。  
 
「く…っ、ひッ……ぎんッ、ちゃ……っ」  
 
濡れた唇から消え入りそうに紡がれるその名を聞き取って、沖田の表情はみるみる能面のように冷たくなっていく。  
 
―――まだだ。まだ足らねェ……。  
もっと無様で哀れで、屈辱的で、みすぼらしい姿に。  
              もう、元に戻れないくらいに、ぶっ壊してやる。  
 
すっかり泥と血と体液で汚れてしまった白い裸体を、沖田は革靴で蹴って仰向けに転がした。  
冷たい地面の上で、か細い少女の背中が、「ごふっ」と息を吐いて、しなる。  
よろよろと、また丸まろうとする、その手足を押さえつけて、沖田は折れそうに細い少女の足首を掴んだ。  
片手で少女の脚を蛙のように開かせたまま、もう片方の手を己のベルトにかけた。  
 
 
かちゃかちゃというベルトが外れる音を聞かされても、神楽にはその状況が理解できていなかった。  
陰部を忌まわしい男の手で汚されたというだけで、神楽にとっては相当なショックだった。  
絶対に負けるはずが無いと思っていた相手に、手出しもできずに辱められるという状況そのものが神楽の自尊心を大きく傷つけていたし、  
なによりも、銀時について誹謗されることが、彼女を深く傷つけていた。  
そんなことがあるはずがないと思ってみても、絶望的な状況で沖田に吹き込まれると、銀時は自分のことを愛さなくなるという想像ばかりが浮かんで、神楽を追い込んだ。  
薄い胸を上下させて、ボロボロに傷ついた子兎が視線を上げると、静かに微笑む少年の顔が覗き込んでいた。  
悪魔がいるとすれば、きっとこんな顔をしている―――神楽がはっきりと確信すると同時に、その悪魔は無理やり神楽の両足首を持ち上げて、彼女の秘部を剥き出しにさせた。  
 
「―――――!!!」  
 
次いで、己の熱を持った肉棒をゆるゆると扱きながら、傷ついてヒリヒリと痛む神楽の秘唇に近づける。  
察した神楽は、今度こそ半狂乱になって暴れかけた。  
忌まわしい男の肉棒で汚されるなど、それこそ死んでも嫌だった。  
だが、沖田には神楽の動きなど全てお見通しだった。  
冷静さを欠いて動いた者こそが命取り。  
反撃を仕掛ける神楽の、今度は右肩に沖田の白刃が吸い込まれた。  
 
「ッッ―――ああああああああッッ!!!!!」  
 
痛々しい姿で再び引き倒される。  
左腕は血だらけで、右の肩もばっくりと大きな傷口を開けている。  
今度こそ、とばかりに、沖田は両手で神楽の両足首を取り押さえ、彼女の肩に押し付けるように持ち上げた。  
あられもなく晒された神楽の陰部に、禍々しい醜悪な男性器が押し当てられる。  
絶望的だった。  
これ以上無いというくらい最悪な気持ちでいたはずだったが、神楽の絶望には終わりが来なかった。  
 
 
ヤメテ――と、少女の小さな唇が声も無く動いた。  
瞳の色は脅えきり、本当に心の底から懇願しているのが窺えた。  
潤んだ大きな瞳から、透き通った涙が一筋流れた。  
見る者全てが彼女に同情してしまうような、美しい涙。  
可哀相に―――と、沖田は心からそう感じた。そして、悪魔のように歪んだ笑みを貼り付けて、少女の願いを打ち砕いた。  
 
「ッッッぃ……やああああーーーーーーーーッッッ!!!!!」  
 
断末魔のような少女の叫びが、完全に陽の落ちきった河原に響いた。  
凶暴に熱を持った男根が、未熟な少女の膣内に埋め込まれていた。  
 
「ひ…ッぐぅううッ…いやぁあッッ!! いやああああああッッッ!!!」  
 
泣き叫ぶ少女の声を心地良さそうに聞きながら、沖田は浅く呼吸を繰り返した。  
全身の血が沸騰しているような高揚感。  
未熟な肉を割り裂いて、無理矢理に己を相手にねじ入れる、この征服感。  
下らないと分かりつつも、万能感が全身に漲り、思わず笑いがこみ上げてくる。  
ふと、沖田が少女の腿を抱えなおすと、腕の血とは別の生暖かい血がべったりと付着していた。  
血の源を指でたどると、それは少女の小さな秘唇から滴っていた。  
 
「…………チャイナぁ……オメー、初めてだったのか」  
 
暗く、灯りの乏しい夜の河原で、沖田の擦れた声が響いた。  
それを肯定するかのように、一層激しく神楽の嗚咽が覆いかぶさった。  
 
 
銀時に神楽が思いを寄せていたのは事実だった。  
くちづけを強請り、体を摺り寄せて、彼の布団に潜り込むことなどはしょっちゅうだった。  
しかし、銀時は一向に神楽を相手にはしてくれなかった。  
ところが一昨日の晩、銀時は初めて神楽と深くくちづけを交わし、「もっとオトナになったら、続きもしてやる」といって、神楽の体を愛撫してくれたのだ。  
初めて想いが通じたことに神楽は歓喜していた。  
女として見てもらえた喜びと、銀時に触れられるだけで少しずつオトナになっていくような嬉しさでいっぱいになっていた。  
一線こそ越えなかったものの、銀時が神楽と同じ気持ちを共有していることが確かめられただけ、神楽は大満足だった。  
 
―――「オトナのキス」をしてもらえたアル。これからもっと「オトナ」にしてもらうネ!  
 
今日の陽が暮れかける前までは、あんなに幸せな気持ちでいっぱいだったのに、陽が落ちきった今、神楽の心は夜の闇よりも暗い色に染まっていた。  
 
「ふッ…くッ……は……あははははははは」  
少女の泣き声に被さるように、今度は少年の高笑いがこだました。  
「ひーッヒ! ハ! ハハハハハハハハ!!」  
可笑しくて堪らないといった風情で、沖田は笑い続けた。  
 
―――初めてがレイプで、あまつさえ大ッ嫌いな俺なんかに犯されたとあっちゃあ、死ぬより悔しいだろうよ。  
 
神楽の心中を察するだに、沖田は笑わずにはいられなかった。  
薄闇の中で神楽の目には見えなかったが、大声で笑う少年の顔は、それまでの歪んだ笑みと違い、何故だか今にも泣き出しそうな顔をしていた。  
 
「……ハハハハ……良かったじゃねェかィ。昨日よりも『オトナ』になれたぜィ」  
 
いつもの声音で沖田が揶揄すると、神楽は嗚咽をぐっと飲み込んだ。  
暗くても、少女の瞳が怒りと憎悪と屈辱に震えているのがわかった。  
沖田は改めて神楽の細い腰を掴みなおすと、乱暴に腰を突き上げた。  
 
「あうッ!…あッ!…アアッ!! アゥウ…ッッ!!」  
 
沖田が眉を顰め、白い歯を剥き出して、神楽の内に己の肉を打ち込むと、神楽は両目をぎゅうと閉じて、苦しそうに喘いだ。  
膣の奥、未熟な子宮口まで肉の杭は届き、腹の中に響くおぞましい衝撃と感触に、神楽は悶えた。  
己の欲望を満たすためだけの容赦のない腰の動きは、神楽をガクガクと揺さぶり、まともな思考をすることを一瞬たりとも許さなかった。  
激しい怒りと悲しみと、相手への憎悪が異常な興奮状態を生み、神楽の体を熱くさせていった。  
期せずして、それが神楽を快楽へと目覚めさせていく。  
夜兎の血によって回復機能をフル稼働させている今の状態は、夜兎の本能を強く発揮させる状態にもなっていた。  
神楽がどんなに相手を憎み、嫌悪しようとも、強かな夜兎の血は、貪欲に快楽を受け入れていく。  
直接的な刺激を受け続けて、神楽の意思とは裏腹に、十代の少女の体には、強い生殖欲求が生まれつつあった。  
心臓が激しく脈打つのにあわせて、相手の一突き一突きに甘美な痺れを感じ始めて、神楽は言い知れぬ嫌悪感で泣きそうになった。  
己の唇から甘ったるい嬌声が溢れ出し、無意識に腰を小刻みに振ってしまう。  
ねっとりとした濃い愛液が沖田の欲望に絡みつき、より深くへ誘うように柔らかい膣壁が締め付ける。  
神楽の体の変化を敏感に察知した沖田は、淫蕩な笑みを浮かべて、神楽の耳たぶを食んだ。  
 
「犯されて感じてらぁ世話ァないなァ。え?オイ、チャイナぁ――ぐっぽり咥え込んで腰振ってやがるぜ」  
―――こんなに淫乱じゃあ、万事屋の旦那に捨てられちまわぁなァ。相手かまわず腰振る女なんざ、メス犬以下でェ。  
続いて囁かれる言葉の数々に、神楽は本気で憤った。  
しかし与えられる快楽に体だけは従順で、屈辱を感じながらも、神楽は確実に絶頂へと押し上げられていた。  
じゅぱんっじゅぽんっじゅぼっじゅぽっ、と、神楽の愛液を纏った沖田の男根が出し入れされる音が神楽の耳を犯し、湿った沖田の熱い息が彼女の心を逆撫でた。  
こんな責め苦に遭うくらいなら死んだほうがマシだと思うのに、忌まわしい男のペニスを気持ち良いと感じてしまう。  
このまま犯され続けて、快楽が天辺までたどり着けるなら、そこまで達したいと思ってしまう。  
 
「あうっ!はうぅんっ!ああんっ!ああっ!!あんっっ!!だめぇええッッ!!」  
「ダメじゃねぇだろィ。まんこン中ぐっちゃんぐっちゃんにしといてよく言うぜ。  
気持ちイイって言え。おまんこイクって言ってみろィ。」  
 
少しでも気を抜くと、目の前の悪魔の囁きに従ってしまいそうになるほど、神楽の心は掻き乱されていた。  
絶えず打ち付けられるリズムに、理性を奪われそうになる。  
頭が真っ白になって、男の体にしがみ付きたくなってしまう。  
もっと快楽をねだって、体の奥深くに硬く尖った肉の先を擦り付けて欲しくなってしまう。  
快楽に神楽の意識が溶かされかけるころ、沖田が神楽の唇を急に奪った。  
咄嗟の事に、呼吸困難を起こした神楽の喉の奥にまで舌をねじ入れて、沖田はがくがくと腰を震わせた。  
次いで、神楽の膣内に勢い良く生温い「何か」が流れ込んできた。  
 
「ふぁっはあああッッアアーーーーーッッッ!!!」  
 
「何か」は神楽の膣底をびしゃびしゃと叩き、その刺激で神楽の膣内はこの上ないほどに収縮した。  
びくんびくんッ、と激しく内腿を痙攣させながら、神楽は始めての絶頂を経験した。  
 
己の中の欲望を全て出し尽くすと、沖田は神楽の膣内から萎れた自身を抜き取った。  
ごぽり、と溢れてきた白い粘液が、神楽の汚れた内腿に垂れる。  
すっかり解けてしまって、団子に結った髪は片方だけになっていた。  
いつもくるくると表情を変えていた大きな青い瞳に生気は無く、暗く澱んでいる。  
全て奪われて、何もなくなってしまったかのような小さな肩に向けて、沖田は告げた。  
 
「今日のこと、旦那に言ったらどうなるだろうなァ。  
初めてなのに自分から腰振って、アンアンよがりまくってましたぜって――」  
 
途端に、それまで人形のようだった少女の瞳に、ぞっとするほど冷たい殺気が宿った。  
最低の屈辱を味わったのだ。絶対に殺してやる――と、その瞳は語っているようだった。  
どんなに踏みにじられても、どんなに打ち砕かれても、この少女は必ず戦意を取り戻し、向かってくるのだろうと沖田は思った。  
それでいい。そうでなくては――。  
 
―――面白くねェ。  
もっと憎め。そして本気で殺しに来い。  
そしたら、そいつをまた、ひねり潰してやらぁ。  
 
厚い夜の雲の切れ間から、大きな満月が覗いていた。  
その光を宿す少女の瞳は煌煌と輝き、その瞳に真直ぐに打ち抜かれた少年は―――悪魔のように不敵に笑った。  
 
 
 
 
<終>  
 

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