(今日から新しい学校…。口下手の僕でも友人ができるだろうか…。)
ツインテールにパーカーと半ズボンのボーイッシュな少女九兵衛は、
鏡に映るランドセルを背負った自分を見つめながら思う。
(前の学校では………でも今度こそ。)
口下手もそうだがこの無表情。これが人を寄せ付けない原因なのだが、
でもこう見えて九ちゃんの心の中は不安でいっぱいなのである。
「若〜。お支度できましたか〜
……って、なんで私が用意したフリフリを着てくれないんですか!」
そんな九ちゃんの心情を察しているのかいないのか、能天気な声で
彼女のお世話役東城が登場する。
「…そんな派手な服着たらどんなキャラだと思われるだろう…。」
「え〜こっちの方が可愛いのに〜。」
ぶつくさ文句を言いながらゴスロリを畳む東城を見やる。
(こんな馬鹿でも一応年上、人生の先輩だ…。ちょっと相談してみるか…。)
「ふむふむ、ご学友を作る方法ですか。
まあ無理もありませんね、若は下賎の者が近寄れない高貴なオーラをまとってますから。」
「それで、どうすればいいと思う?」
いつもの如くの東城のヨイショコメントを無視し、九ちゃんは真摯な瞳で尋ねる。
(ハウァァ〜なんという可愛さ!健気さ!…これではご学友どころか
妬まれいじめられてしまうかもしれない!!
…まあそうなったら柳生の力でその人物を抹消しますが…
しかし若はご自分ではいじめられてることを言わないかもしれませんね…。)
しかし、である。
(………しかしなんて可愛いんだー!!!ランドセルがよく似合って…
…いじめたい!いじめたいぞおお!!)
東城の中の何かがはじけました。
「若…まずですね、好き嫌いを直す、コレですよ。」
「好き嫌いを直す…?」
「そう、給食は全部食べるまで居残りさせられるんですよ。掃除の時間になって机がさげられても、
周りに粉塵が舞う中、
完食するまで嫌いな食べ物とにらめっこです。下校の音楽を涙目で聴くんです。
なんともみじめな光景です。これは馬鹿にされ、いじめの格好の標的にされます。
何しろコレ書いてる本人がそうでしたから。」
「でも前の学校ではそんなこと、」
「教諭の方針によって違うんですよ。今回の先生はそういうタイプかもしれない。
……たしか若はキノコがお嫌いでしたよね…。」
東城はスッと立ち上がり、変質者よろしくズボンとブリーフを下ろす。
「さあ若!キノコを克服するのです!こんな立派なキノコをマスターできたら怖いものなしですよ!」
既にビンビンにウホッいい形な東城のキノコ。
「………気持ち悪い…。」
九ちゃんのキノコ嫌いが悪化したのは言うまでもなかった。