「…ん…」
やけに今日の枕は気持ちいい、と思った。
寝返りをうっても硬くない。屯所の枕はいつからこんな贅沢になったんだ?二度寝したくなるじゃねーか…と、頬にあたる柔らかい感触に土方は思った。
―二度寝…?
ゆっくりと目を開ける。薄暗くて周りがよく見えない。
ああ、昨日は懲りもしない近藤さんの付き添いで、お妙のスナックに飲みに行ったんだったか?
―ってかスナックのソファかここ…どこで寝てんだ俺ァ。
また寝てしまいそうになる重い身体を起こそうとした。
「ん…?」
ふと、近くに人の気配。土方はただならぬ悪寒がして、心底マヨネーズ王国のゲートを探したかったようだ。が、寝息が聞こえて少しホッとした。それでも心臓爆発寸前で恐る恐る見上げてみた。
女物の着物。
花柄の飾り。
目が慣れてきた暗がりの中で見えたもの。そして、枕だと思っていたものはその女の太腿だと気付いた。
「ーーっ!!」
一気に酔いも怖さも吹き飛び跳ね起きた。
「…あー悪ィ…おた…ぇ…」
えぇぇぇ!?じゃねーよ!これぇぇ!
スナックすまいる=お妙だとばかり思って言いかけたが、それは知らぬ女で。
華奢な身体つきに、少し長い髪を左右で結び、片目に花柄の飾りを付けた少女だった。
「…ぅん…」
小さな唇から漏れる声。
起こしてしまったかと言う罪悪感より先に、その姿に何故か淫欲感を駆られた。
女に不自由してる訳じゃない。酔いが抜けてないのと、この薄暗い空間のせいで―と土方は思いたかったが。
気が付いたら、その少女に口付けていた。自らの舌を半ば無理矢理に押し込む。
「!?」
少女が目を覚ましたのか、軽く抵抗するのが胸元に押し付けられる手で分かった。少女のその華奢な両腕を片手で掴み、抵抗を遮る。
乱暴にソファに押し倒してから、更に舌を押し込み、少女の舌を絡め取り吸う。
「…はっ…」
唇の少しの隙間から少女が吐息を漏らす。
少女は短い丈の着物を着ており、先程まで枕にしていた太腿は露わになっていた。
つ、とそこへ手を這わすと、少女の身体がピクリと反応する。そのまま着物をまくし上げながら、脚の付け根へと手をやる。
軽く下着が土方の指に触れたが、秘部には触れず、周りをゆるゆると指でなぞる。
その度に、少女の脚は反射して動き、ビクビクと身体を仰け反らす。
お互いの唾液にまみれた唇を離し、首筋へと動かしてから一舐めして軽く耳たぶに噛みついた。
「…ひゃっ!…やっ…おっ…妙ちゃ……」
聞いたことのある名前を不意に口にされて、土方の動きが止まる。
マジマジと少女を見つめて目を見開いて―つかいつも瞳孔開き気味だが―理解した。
「…てめェ…柳生んとこの…!?」
「…ぇ…?」
うっすらと目に雫を溜めた九兵衛も土方を見る。
最近『これも修行よ?九ちゃん』とお妙に騙さ――いや好意的に誘われてスナックに時折姿を見せていたのであった。
昨晩は、お妙・九兵衛・近藤・土方と一緒で、いつもよりストーカーハイテンションな近藤にお妙が、
ゴリラフルボッコじゃぁぁぁ!!
とブチキレてしまい―当社比3.7倍辺り?―店が崩壊するからぁぁぁ!との店長の悲痛な訴えに、銀時・長谷川コンビが面倒臭そうに近藤を連れ、新八がお妙を殴られながらも連れ帰り、放置された酔っ払い2人が残されて今に至っている。
「ふーん…そーいう格好もすんだな」
組み敷いている九兵衛を見下ろしながら言う。
「…見るなっ…」
潤みかけていた目を肩にあてゴシゴシこすり、土方を睨む。
知らなかったとは言え―昨晩も気付かぬままで飲んでいた―少女に欲情した熱が、九兵衛と知って一気に冷める訳でもなく、無言のまま胸元に手をやる。
「やっ!…離せっ!」
「止めねェよ」
次の言葉を言いかけた九兵衛の唇を再度塞ぐ。
「…!」
時折ちゅくと鳴る音と、土方によって口内を弄ばれている九兵衛の苦しそうな呻き声だけが、シンと静まり返る店内に響く。
その間にも胸元に置かれた手は着物をはだけさせて、小さいながらも形のいい乳房を露出させる。
その頂にある突起をきゅうと摘ままれ、九兵衛は全身に衝撃を隠せなかった。
唇を塞がれたままで思うように呼吸が出来ずに気を失いそうな姿に土方が気付いたのか、少しだけ唇を離して余り厚みのない下唇を舐めた。
「…はぁっ…ごほっ…ぇ…ほっ…」
離されても呼吸が上手く出来ずにむせている。土方はお構いなく、胸の突起の周りを撫でたり、弾いたり痛い位に摘み上げたりしている。
「いっ…あぁっ…んっ…!」
矯声の様な声。
「何だ?初めてでもねェのか?」
「!」
「…なら遠慮もねェな」
先程までその手のひらで弄んでいた胸の突起に口付けて、軽く噛みつく。
「いっ…たっ…!」
九兵衛がのけぞり背中を反らす。浮いた隙間から手を回し、グイと己の下半身に押し付ける。か細い脚に膨張した土方自身が当たり、九兵衛はギュッと脚を閉じた。
「んなに抵抗しなくったっていいだろーが」
「っ…僕は……妙ちゃんが…」
「女同士でいちゃつくってか?他の男受け入れてるんなら義理立てすることもねェだろ」
「受け入れてなんか…ない…っ」
「へェ……初めてか…?」
ふと考え込み、愉快そうに続ける。
「じゃあ…やっと借りが返せるな、ここで」
「借り…?」
「愛刀にヒビ入れてくれた分、返してやるよ」
九兵衛と初めて会ったのは、忘れもしないここ―スナックすまいる―である。
真選組の面々を蹴散らし、土方の刀に傷付けた場所。負けてねェと沖田には豪語したものの、その炎は未だくすぶっていて。
「!?…ぁああっ!!」
前触れもなく土方の指先が九兵衛に侵入してきて、更に仰け反る。
「あ?指も初めてか?…てめェで突っ込んでんじゃねェのか?」
「…ち…がっ…やぁぁっ!」
十分濡れてないそこに、土方の指が2本無理にねじ込まれる。
「いたっ…ぃ…いっ…」
明るければ、九兵衛がポロポロと涙している姿に更に欲情したかも知れない。突然の衝撃に、九兵衛の涙は止まらず頬を伝う。
ねじ込まれた指が中の粘膜を引っ掻く様に動き始めて。
「…ぅぐ…ゃめ…ろ…っ…」
「そりゃ却下だな」
痛みに耐え、初めての異物に耐え、そして弄ばれる屈辱に耐える九兵衛が満足に濡れる訳もなく。
「…っはぁ…いた…ぃ…はっ…ぁっ…」
苦しそうに呼吸を繰り返す。そこには歓喜の声などなく、しばし苦痛の訴えのみが無情に発せられていた。
ふと、九兵衛の下腹部から鈍い痛みが退き、同時に太腿を左右に開かれた。
「まだ濡れねェな…仕方ねェ」
と、九兵衛の秘部を指で押し広げて、土方は自身をそこに当てた。
薄暗く見えなくとも何が起こるかは予想がついた。
「…やだぁぁ…っ…あああ!」
指なんかよりも太い異物の感覚。ピ、と粘膜が裂ける様な痛み。下腹部に火がついた様な熱感。
「はっ…狭いな」
先端のみ挿入した九兵衛のそこを更に指で無理矢理開き、腰を奥へと押し進める。
「いっ…やぁぁぁっ!!」
「まだ半分だ」
九兵衛の腰を両手で掴み、己に引き寄せ一気に奥底へと貫く。
土方の最大までに膨張したそれを受け入れる準備も余裕も九兵衛にはなく、ブチブチと引きちぎれる様な痛みだけが頭と身体を支配する。
―今まで死闘を繰り広げてきた。傷つけられた経験はある。幼い頃に片目を失った時も、お妙のために痛みに耐えた。
けど今は、闘いでもなく誰かを護っている訳でもない。ただ男の欲望のためにだけ痛感するのみで。
「たまんねェなら抵抗してみろよ」
「…くっ…」
ポロポロとまた涙が溢れる。痛さのせいなのか屈辱のせいなのか、九兵衛にも解らずにいる。
「このままでも気持ちいいんだけどな…動くぞ」
ゆっくりと律動を始める。
生まれて初めて大きく開かれた秘部に無粋に入り込み動くもの。開口部が擦れる度に、ジワリと奥底が熱と潤いを帯びてくる。無論、九兵衛の気持ちとは裏腹に。
「指じゃ物足りなかったか?くわえ込んだらしっかり濡れてきてるじゃねーか」
言われてビクッとした。痛みはあるが先程までの痛みとは異なる痛みを確かに九兵衛は感じとっていた。
動くにつれ、ぐちゅりと粘膜質な音が鳴る。それは次第に激しさを増す。卑猥な水音がどんどんと結合部から響く。
「…ぁっ…ああ…ひっ…ぅっ…」
無意識に喉から声が漏れる。それは明らかに女の声で。
見計らった様に、うっすらと生える毛をかき分けて、ぷくりと膨らみかけている蕾に指をあてがう。
「ぃやぁぁっ!…あぁっ…やっ…だ…」
きゅっ、と土方を締め付けて九兵衛が軽く腰を浮かす。
そのまま指腹で押したり、ゆるゆると撫でる度に九兵衛は身体をビクッとさせて締め付ける。
「あっ!あぁっ…ぅ…ん…んんっ…」
「もっと声出せよ」
土方は更に力を込めて撫で上げる。
「んっ…はぁ…ぃや…っ…んっ」
撫でる度に、自ら腰を浮かせてよがる様は初めてとは思えない程にいやらしく見えたに違いない。
愛撫でぷっくりと膨張した蕾をぎゅと摘み、そのまま上下に動かし刺激を与えた―途端、
「ひっ…ゃあぁ…っ…ああっ…んんっ…ああ…あっ!!」
それまでにない声が九兵衛から発せられて、きゅううっと膣が土方を今まで以上に締め付けながら身体をビクビクとさせた。
「…う…はぁっ…はっ…あぁっ!!」
初めて絶頂を迎え、全身身震いする九兵衛の腰に手をあてて掴み、一気に律動を激しくする。
剥き出しの小さな胸が動きに合わせて揺れる。また突起を指で摘む。触れただけで硬さを増す。
「…やっ…だ…」
絶頂に導かれてからまだ余韻の覚めやらぬ無垢な身体は、その突き上げに耐えることを知らず、与えられる刺激をただ素直に受け止めるだけであった。
「あんっ…やっ…んっ…うぅんっ…」
「…はっ…ぎゅうぎゅうに締めて…んなに欲しいのかよ…っ」
「ちっ…が…んっ!あっ…あっ…ん!!」
更に激しさを増して動かす土方。互いの身体がぶつかり合う音と、じゅぶじゅぶと溢れてくる音と、九兵衛の喘ぐ声が混じる。
「くっ…いくぞっ…」
ズンと奥に突き上げられた。
「ああんっ…いっ…や…っ」
限界を迎えた九兵衛の粘膜の一番奥に、同じく限界を迎えた土方の白濁とした液が放たれる。ドクドクと流し込んだそれが溢れないように、しばらく動かないでいた。そのまま、もう一度…のためにでもあったが。
九兵衛の膣内はヒクヒク痙攣しながら、土方の吐き出すそれを受け止めて、再び勃起したそれを感じていた。
―その後、九兵衛が何度も何度も絶頂に達して、やっと土方から解放されたのは数時間後の話で。
チッとライターで煙草に火をつける土方。ふーっと煙を吹き出しながら、
「借り…返したからな。これでおあいこだ」
ソファに寝たまま両膝を立てている九兵衛に言う。
―僕の中がじんじんと熱い。熱くて熱くて…まるで―
「次は手加減してやるよ」
―まるで…身体に火がついたみたいだ―
「僕は…」
「あ?」
「……負けない」
「上等だ…おもしれェ」
土方が笑いながら煙草を灰皿に押し付けた。
九兵衛が身体に感じた火は火の粉を散らし、九兵衛の闘争心の導火線に静かに火をつけたのだった。
〈おそまつ〉