「ここはペットショップじゃねーぞ」  
準備室の椅子の背もたれをキィキィと揺らし、くわえ煙草+ずり落ちそうなメガネ+気だるそうな顔つきで面倒臭そうに答える銀八。  
「…パフェで…案外何でもしてくれると、妙ちゃんに聞いた」  
あの女ぁっ!もっとマシなこと言いやがれぇぇ!!  
「いや何でもって…万事屋じゃねーし。一教師だし」  
「そうか…」  
残念そうに下を向くセーラー服にジャージを履いた女子生徒―九兵衛。その見下ろした目線の先には…胸に抱える一匹の子猫。  
甘えているのか、うみゃうみゃ鳴いている。  
心無しかショボンとして見える九兵衛。  
「誰か育ててくれる人はいないだろうか…」  
「つーか、お前が親になってやれば?」  
「僕は…育て方が分からないんだ…だから先生に相談に来た」  
片方の眼で、銀八を見ながら真面目に答える。  
―こっちを見る真っ直ぐな瞳。  
あああもう!俺こーいうの苦手なんだよな〜…と、溜め息をついて煙草を消し、キィと椅子にもたれかかる。  
「…ほら、東城とか知ってんじゃねーの?」  
「あれはだめだ。カーテンのシャーに詳しいだけで、全くあてにならん」  
小さな頃からの付き合いにしてはヒドい言われようだぞ東城。あ、いつものことだった。  
その時―子猫が“みゃっ”と鳴いて、九兵衛の手から逃れて散らかった部屋の隅に走って行った。  
「おい、逃げたぞ」  
「逃げられた」  
子猫の予想外のスピードにマヌケな会話を交わす。  
椅子から立ち上がり、逃げた方に向かってみる。静まり返る準備室。子猫の姿はどこにもなかった。  
「ま、腹でも空けば出てくるさ。ん?」  
ふと九兵衛の手に目がいく。  
子猫が逃げた時に引っ掻いていった痕が赤く浮き、じんわりと血が滲んでいた。  
「お前痛くねぇ?」  
九兵衛の手を取り、眉を潜めて銀八の方が痛そうな顔をする。  
「あ…」  
取られた手を見て初めて気が付いたようだ。  
「あーあ…もー」  
掴んだ柔らかい手を唇にあて、ペロリと傷口の血を舐めとる。  
「なっ…何をっ!」  
かぁっと赤くなった…様に見えた。  
――だからだ。だから、つい倍増しで可愛く見えただけで。あー俺って悪い先生…かもしれない。  
 
「九兵衛、投げ飛ばさなくなったのな。合コンでちっと免疫でも出来たか〜?」  
ちゅ、と唇を離しニヤつきながら問う。  
「いや…何でか…先生だけは平気になった」  
3年Z組主催・バベルの勇者達(銀八含む)による合コン以来、何故だか銀八には触れられても平気になったらしい。  
何か本編と混じってるし、いつやったんだそんなの?って……そういう設定で。  
「それは口説いてんのかー俺を」  
「口説く?何でだ?口説いたつもりはないが」  
この天然んんんっ!!あ、天然は俺もか…パーマだけど。  
「お前さぁ…女子なんだから…言葉には気を付けろ?」  
「何をだ。僕は普通に話してるぞ」  
「‘先生だけ’なんて言われたら、あんなことやこんなことや期待しちゃうでしょーが」  
「本当のことだ。先生だけは平気なんだ。今も…嫌じゃない」  
握られた手を見て言うその姿。  
無論、銀八の方が背が高い。銀八の口元にあてられた手を九兵衛が見る様は、上目使いで―わざとではないが。  
目が合った瞬間にもう駄目だった。  
と、後に銀八は自己反省したようなしてないような。  
 
「……っ!?」  
握った手を引き寄せ、もう片手を腰に回して口付けた。  
と、言ってもただ唇を合わせただけ。  
「九兵衛、口開けろ」  
「…キスなんて好きな人と…やる。離せ」  
ぷいと顔を横に背ける。  
「志村姉とするってかぁ?」  
「先生には…関係ないだろう」  
掴んでいた手を離し、九兵衛の頬を掴み再度唇を付ける。  
頬にあてた指先に力を込めて九兵衛の口元を摘む。  
「なっ…」  
言いかけた隙を見落とすことなく、己の舌を侵入させる。  
銀八の舌先が口内を這った瞬間、九兵衛はゾクリとした。  
そのまま舌を絡め取られ、吸い上げられる。  
「…う…」  
不快な生き物の様な舌の感触に耐えられず抵抗を試みるが、その抵抗に気付いた銀八が頬から手を離し、脇腹を伝いセーラー服の下からその手を突っ込み胸に辿り着いた。  
 
「九兵衛…思ったより胸でけーのな」  
セーラー服の中でもぞもぞと動く手。  
触られ揉まれる自分の胸。  
―僕は……ちゃんと女なのか?それとも…?  
思考する中、新たな刺激が訪れてくる。銀八の指先が胸の突起を弄び始めたから。  
「ひっ…ゃ…」  
「んなにして…やーらしいなぁお前。いちおー学校だぞここ?」  
お前も教師だ銀八!  
「…なら…余計やめろ」  
真っ赤になった九兵衛が銀八の腕から逃げようと、体をよじる。  
 
「お前も引っ掻いて逃げるのか?猫と一緒だな」  
「…」  
一瞬言葉に詰まった九兵衛を壁に押し付ける。  
「お前がにゃーにゃー鳴いたら子猫も出てくるかもよ?」  
にんまり笑ってジャージの上から太腿を撫でる。  
―気持ち悪い。気持ち悪い。僕は女じゃない。でも男じゃない。じゃあ…?  
「…怖いか」  
「先生は…怖くない…けど……」  
―僕が‘女’を自覚するのが怖い。  
太腿から腰に銀八の手が動き、ジャージを脱がす。しゃがみこんで足首まで落としてスカートを捲り上げ、顔を近付ける。  
「きれーな脚してんのに隠すかぁ?」  
股の間で喋られて、銀八の息が下着に隠れた部分にかかる。  
それだけで身体が熱くなった気がした。  
「やめろ…っ…ああっ!」  
下着の上から秘部に舌を押し付ける。  
足首にはジャージ、両腿には銀八の腕があり逃げることも出来ずに、両手で自分の股間に埋もれる銀八の頭を押さえるだけの九兵衛。  
「…ぁあっ…くっ…」  
緩むことのない舌遣いに下腹部が痺れてきて、脚がふるふると震えてきた。  
見計らった様に銀八の指が下着の上から陰核を強く擦り始めた。  
九兵衛の身体にピリッと衝撃が走る。  
「あああっ…!やめ…っ…」  
自らも他の誰にも触れられたことのない場所に激しい振動がくる。  
「九兵衛〜下着濡れてきたぞ?何でか先生に答えてみろ」  
また更に強く指をあてて擦る。  
―何だか…もう……脚に力が入らない…  
その瞬間、ビクビクっと身体を痙攣させて、九兵衛は初めて達した。  
「…んんっ…」  
とても立ってられなくて、壁沿いにずるずると崩れ座り込む。  
はぁはぁと熱い息を吐いて、紅潮する顔。  
じんじんする下腹部と自身に何が起こったのか理解出来ず、説明を求める様に銀八を見る。  
「イッちゃったなぁ?どーだ、気持ち良かったかぁ」  
「……わ…からん…」  
―ただ…身体が熱い。下半身が痺れる。気持ちいい…?…イッた…僕が…?  
信じられない顔付きで座り込んでいる九兵衛の背中を抱え、床に押し倒す。  
「分からないなら」  
下着に手をかけ、まだ足首に残したままのジャージまで下ろして開かない両脚を真上に持ち上げる。  
「…っや…何を…」  
銀八からは丸見えであろう光景を想像して、ますます熱くなった。  
「頼む…僕を見ないで…くれ」  
恥ずかしさの余り顔を両手で覆う。  
「こーんな濡れてるヤツは見られるだけじゃ満足しねーだろ」  
くちゅ、と無防備な秘部に指先が入る。  
 
「!!」  
それにピクリと反応する九兵衛。  
更に指がねじ込まれ、ゆっくりと出入りを繰り返し始めた。  
―僕の中に…入ってくる…嫌だ、いやだ…僕は何をされてる…?  
「…ぅっ…ぁ…あ…あ…」  
「そーか気持ちいいか」  
その問いかけに首を横に小さく振って答える。  
ちゅぷっと音が聞こえて下半身の刺激がなくなり、銀八が言う。  
「九兵衛…見ろ」  
うっすらと目を開くと、覆っていた手の隙間から銀八の指が見えた。  
それは九兵衛の蜜で滴っていた。  
「感じてんなぁお前…あ〜俺たまんねーわ」  
九兵衛に見えるように指を舐めながら、片手で己のものを取り出し濡れたそこに当てる。  
「九兵衛…いれるぞ…」  
ぬちゅ、と先端だけを挿入して。  
「…きっつ…」  
と更に腰を進める。  
「っ…いた…っ…!せんせ…ぃや…だ…ぁああっ…!」  
初めてのその激痛に耐えられず、顔を歪ます。  
ジャージで動かない両脚を真上に上げられた体勢で、嫌でも銀八のものが奥までずぶずぶと挿入されていく。  
「あああっ!?」  
―熱い……?…僕は、僕は………  
ゆっくりと律動を始め、また激痛が九兵衛を襲う。  
「ん…ぃや…うぅ…っ…」  
「大丈夫だ。お前…受け入れてるから」  
腰が動く度に、ぐちゅぐちゅと激しさを増す音が準備室に響き耳につく。  
―僕は…女……でいい?  
思った瞬間、身体が熱くなり出入りするそれにゾッとした。  
が、無意識に口から声が漏れる。  
「あっ…ぁあああっ…」  
「感じてきたか?もっと動くぞ…」  
先程よりも早くなる。根元までくわえ込む九兵衛の小さい膣は、最奥まで突かれる度にぐちょぐちょと音を立て、抜かれる度に蜜が外に溢れて、お尻にドロリと伝っていた。  
「…まだ痛いか?」  
ぽろぽろと涙を流す九兵衛が痛いなんて分かってる。  
分かってるけど、教え子が己の下で紅潮する姿とぎこちなく喘ぐ姿に反比例する熱い膣内がひどくたまらなくて。  
「…ひっ…ゃだっ!」  
九兵衛が恐怖に溢れた目で銀八を見る。  
「おいおい、んなに締め付けたら俺イクわ…」  
自ら締め付けている訳でなく、銀八の指が蜜と共に尻穴に向かってきたから。  
「…ぬるぬる…ったく学校だって言ってんでしょーが」  
「…っあ…あ…ぁ…あ…はっ…」  
腰を打ちつける度に、苦しそうに喉から声を出す。  
「九兵衛…出すぞ?」  
と、また尻に向かい指を無理に捻りこむ。  
 
排泄感に似た刺激が九兵衛を包み、気持ち悪くてどうしようもなく耐えられなくて。全身に力が入り膣口を自然と締めつける。  
「あ、もうだめだわ」  
どくん。  
――…っ…あつ…い…僕の中で……僕の奥で……先生の…が………  
それで思考が遮られた。  
 
 
「…先生…僕は…」  
素足を晒して床に寝たまま、恥ずかしそうに口を開く。  
「あ?」  
「僕は……女…でいいんだろうか」  
「おいぃぃ!!今更何言ってんのお前!何ならもっかいしとくか?」  
「…いや遠慮する」  
――そうか…僕は、男じゃなくて‘女’でいいんだ……そうか……  
ふ、と笑みと涙が浮かぶ。  
「九兵衛…?」  
“みゃーぉぅ”  
「!!」  
突然鳴き声がして振り向く。  
そこには先程逃げた子猫と―もう1匹子猫が。  
「おーい…何か増えてんぞ」  
「あ…あれ…」  
床に寝たまま指を指す先には―  
立っていた時には見えなかった机の下に、銀八の白衣が丸められ、その上に母猫ともう1匹子猫がいて2人を見つめていた。  
「どっか無くなったと思ってたんだよなー白衣」  
気だるそうに頭をぽりぽりとかく。  
「良かった…お母さんがいたんだ…」  
トコトコと2匹の子猫が母猫に近付き、みゃおーとすり寄っている光景を目にした九兵衛の顔は和らいでいた。  
そんな九兵衛に銀八が言う。  
「…ま、今は悩んでても…お前も大人になったらあーんな‘おかーさん’になるさ」  
「え……」  
驚く九兵衛の頭をぽんぽんと叩き、カチと煙草に火をつける銀八であった。  
 
 
 
〈終〉  
 
 

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