深夜のかぶき町。薄ぐらい路地裏。
ビルとビルの間に挟まれた暗がりの中で、音が響いた。
ポリバケツが倒れ、壁にぶつかり、その側で激しく争い合い、縺れ合う音。
発情期の猫か、酔っ払いの喧嘩か、或いは男女の痴情の縺れか―――どちらも大して変わらない。
ここ、かぶき町の掃きだめでは、どんな生き物が争おうが、他人は興味を示さない。
生きる為には皆、醜い本性も剥き出して争うのが、この街の姿だからだ。
諍いの音は、しばらくして鎮まった。
筋向こうから届くネオンに浮き上がったのは、壁に押さえ込まれた小さな人影と、それに覆いかぶさる大きな人影。
小さな影は女、大きな影は男のようだった。
両者の頭髪からは猫のような獣の耳が覗いていた。
猫は猫でも、天人らしい。かぶき町では珍しくもない。
漸く押さえ込んだ女に、男は顔を近寄せた。
「久しぶりだってのに、随分じゃねぇか、え?」
痛めつけられ、押さえ込まれて、なおも敵意を宿す女の視線を、男は愉しそうに覗き込んだ。
「こっちは別にイジメたくて会いに来たわけじゃないんだぜ?
ただ、ちぃっとばかり、昔の仲間に力を貸してくれってお願いしてるんだ」
男は女の手首を後ろ手に捻り上げ、女の顔が苦痛に歪むのも気に止めずに、冷たい壁に女の頬を押さえ付けていた。
そして、不似合いな猫撫で声を、女の耳に吹き掛けた。
―――そうすりゃあ、昔みたいに可愛がってやるからよ。
口元に薄ら笑いを張り付かせて、男は愛撫するように女の耳を口に含んだ。
ちゅぴ…ちゅぷ…と、舌でねぶられる音に続いて、カリッと小気味のいい音がした。
耳に歯をたてられて、女はその身を震わせた。
真っ直ぐな黒い絹糸のような髪から覗く、柔らかな猫の耳。
敏感な獣の耳を男は軽く甘噛みし、ぬめった舌先で内側をなぞった。
唾液でしっとりと濡れた猫の産毛が満月で光る。
男の舌が往復する度、女は眉をしかめ、唇を噛み締めた。時折、ビクリと、その体が跳ねる。
「ハ…ァッ……ヤメ…ロ…ックリカ…ンッ…!! 」
男は乱暴に女の着物の裾を割り、下着の中に直接その手を潜り混ませた。
女は脚を閉じようともがいたが、男の指は容易に女の中心にたどり着く。
「うるせぇな。もうしっかり濡れてんじゃねぇか。 オメーのカラダは俺が1番よく知ってんだよ。 なぁ?
思い出させてやろうか……キャサリン」
「ンアァッ…ア・ア…アアッッ!!」
男の指が蜜壷の奥まで侵入した。
緩くカーブを描いた鉤爪が、女の柔らかい粘膜を引っ掻く。
女は苦痛とも快楽ともつかない表情で喘いだ。
ぽってりした唇の端から透明な液体が伝い、首筋まで垂れる。
「ヒヒヒ……上のお口も下のお口もヨダレ垂らして喜んでやがるじゃねぇか、えぇ?」
男は下品な笑みを浮かべ、膣内での指の動きを激しくする。
「アンッ…アゥウン…ッイ、アーッッ!!」
女の膝はガクガクと震えだし、既に両手は男から解放されていたものの、力無く壁に縋り付くしか出来なくなっていた。
壁に手をついて尻を男に突き出すような姿勢は、犯してくれと言っているようなものだ。
男は愛液でぐっしょりと濡れた女の下着に手をかけ、ゆっくりと引き下ろす。
着物は腰までめくれ上がり、女盛りの熟れた尻が月明かりに晒されていた。
ヒクヒクと震える尻穴の上で、猫のシッポが淫靡に揺れている。
濡れ光る蜜壷に再び指を差し込むと、尻尾がビクンと硬直した。
隆起した豊満な尻肉の下で、男の指をくわえ込んだ肉厚な花弁が、くちゅくちゅと卑猥な水音を発した。
「ヒャハハハッ!! ……どスケベ売女が。 本性は隠せねェぜ。
このスケベな穴ン中に、チンポ嵌めて欲しくて堪らなかったんだろう? え?」
女は耳元で囁かれる男の言葉を否定したかった。
しかし、男に正確に性感帯をつかれ、泉から溢れる蜜を止める事は出来なかった。
それどころか、抗いようのない快感を前に、女は淫らに腰を揺らし始めていた。
じゅぷっ、ぷちゅっと、粘液を纏った男の指が潜り込み、引き抜かれる音が続く。
「ア…アウゥ……ンッ…ン…ッダ…、メ……」
「ダメじゃねぇだろ? イイんだろ? テメェで腰振ってよがってるじゃねぇか。
気持ち良くて、気持ち良くて、イキそうなんだろ?
イッちまえよ。シッポも耳もぴくぴくしてるぜェ。 オラッ 」
更に激しく、白濁した愛液が飛び散る程、男は女の入り口を攻め立てた。
男の掌と女の尻たぶがぶつかり、ぱんっ!ぱんっ!と、まるでスパンキングされているような音が女の陰部から漏れた。
すぼめた4本の指と鉤爪が、女の内壁を荒々しく犯す。
「アウゥ……ッッ!! ヒグ……ッ…クリカッ……!! …ヤメェ……ッ!! 」
強すぎる快楽に顔を歪め、喉首を反らせて女は悶えた。
「すげえな……手がふやけそうだぜ」
男は壁を掴む女の指先に力が入り、呼吸が早くなったのを見計らって、急に手の動きを止めた。
「アァッ…アゥ…ハァアンン…ッッ」
女は物欲しそうな視線を男に投げるが、男は唇の端を吊り上げるだけだった。
暫くの静寂の後、くちっ、くちゅっ、という音と共に、女の腰が前後に揺れ始めた。
自ら腰を回して快楽を求める女に、男は舌なめずりしながら、女の中で指の関節を折り曲げた。
「アァンッ…イイ…ッ…気…持チイィノォッ…!!」
歓喜の声を上げて、さらに夢中で尻を振る女に、男は満足そうに笑いかけた。
「ようやく素直になったなァ……。 でっかいチンポぶっさして、もっと気持ちよくしてやろうか?
欲しいか? 俺様のチンポが」
「欲シイッ……突イテッ!! 奥マデ……クリカンノ、太イチンポデ突イテッ…!! 」
太腿がべとべとになるまで愛液を滴らせた女の陰部は、男の指先でもはっきりとわかる程、内壁が充血して襞が起き上がっていた。
内部は柔らかくすべらかなから感触から、コリコリとした突起のある、男を受け入れる名器へと変化していた。
男は指先で天井の感触を愉しんだ後、女から指を引き抜いた。
ちゅぽんっという音と共に、女の唇が切な気な吐息を漏らす。
「さあ、素直におねだり出来たご褒美をくれてやる。
お前は雄と見りゃ喜んで腰振る、淫乱な雌猫だって事を思い出させてやるぜ」
男は熱くなった猛りを取り出し、女の腰を強く掴んで引き寄せた。
ぱっくりと入口を覗かせた女の花弁は、ヒクヒクとうごめいてそれを待ち侘びていた。
「ア…アァ……早ク……!! 」
「待てよ。 慌てなくてもたっぷり可愛がってやるからよ」
男は自身の亀頭に女の愛液をたっぷりと擦り付けると、一気に肉壷の奥まで突き刺した。
「 アォォォオ…オ…!! 」
女は獣のような鳴き声を上げ、男を締め付けた。
「ッ……気持ちいーか? ピッタリ吸い付いて、締め付けてくるじゃねぇか。
相変わらず、堪んねぇマンコしてやがるな 」
男は軽く眉間に皺を寄せた後、激しく腰を抜き差しし始めた。
ぶぱん!じゅぱん!と激しい音が薄汚れた壁に反響し、あられもないヨガリ声が深夜の空に響く。
本物の獣より浅ましい姿を晒していることに、女は一層の羞恥と屈辱を感じていた。
しかし、それ以上の強い快感に、腰は躊躇いなく振られていた。
男の剛直が抜き出される度に、女の内壁は名残惜しそうに男に纏わり付き、深く差し込まれる度に、熱い蜜と淫らな音を溢れさせた。
「イイッ!! 奥ニ…! モット深クニ…!!
クリカンノチンチン大好キナノ…! 奥マデ欲シイノォッ…!!!!」
「そーかい。 それならたっぷり味わいな 」
男は素早く一物を引き抜くと、女の体をひっくり返した。
力が入らない状態の女の背中を壁に押し当て、両膝を持ち上げる。
蜜を垂らした淫蕩な陰唇が、男を求めてぱっくりと口を開けているのを認めると、男は己の剛直でもって、その滴りの入口に栓をした。
下から突き上げる剛直に刺し貫かれて、女は歓喜の声を上げた。
「ハアァアアンッッ!!!!
チンポ気持チイイノォォッ!!
ンアアッ!! ンンーーーッッ!!!! 」
女は必死で、両足を男の背中に巻き付け、腰をくねらせた。
男は女を抱え上げたまま、一定のリズムで女を突き上げ続けた。
「奥ニィ、チンポ届イテルノォ…!!
イグ……! イッチャウゥ…!!」
女の爪先がぴんと反り返り、男の頭を抱く腕に力が篭る。
ビクンビクンと女の内部が痙攣し、強く波打った。
「あーッ、 クソたまんねぇ!
中に出すぞ!! キャサリン!! 」
「 ファアアアアーーーッッッ!!!! 」
男の白濁が女の膣底を激しく叩き、女は強烈なオルガズムに達した。
そしてそのまま、白目を剥いて失神した。
再び女が意識を取り戻した時、着物は完全に剥ぎ取られ、汚い地面に横たえられていた。
ひどい喉の渇きと眩暈を感じながら目を開けると、にやけた顔が女を覗き込んでいた。
しかし、その笑顔は先ほど女を激しく犯した男ではなかった。
新たに現れたその顔も、女が古くから知る顔には違いなかったが。
「服部……柏谷も…」
擦れた声で男たちの名を呟くと、背後から聞きなれた声が聞こえた。
「俺達4人でキャッツパンチじゃねぇか」
振り向くと、クリカンがいつものねちっこい笑顔を張り付かせて立っていた。
―――4人で仲良くしようぜ……。
どうやら、悪夢はまだ終わらないらしい。
これから始まる獣達の宴に、醜い本性を晒し合う争いの果てに、どれだけ正気を保てるのか―――。
薄汚れた夜の底で、女は静かに渇いた喉を上下させた。
<了>