「こら神楽。お前何回早弁するなと言えば分かるんだ?」  
 いつものようにやる気のなさそうな声で銀八は注意した。三限目の国語の時間、  
神楽は教科書を縦に弁当を食べていた。  
 微かに漂う弁当の匂いに気づいた銀八が便所サンダルを鳴らしながら神楽に近づく。  
神楽は近づく銀八に気づく余裕もないくらいに、弁当に夢中になっていたのだ。  
 銀八が教科書を取り上げると、弁当を貪る神楽の姿が教室内の生徒全員に見える。牛乳瓶の  
ような瓶底めがねをかけた少女が、口いっぱいに食べ物をほお張っている姿を見て、銀八は  
溜め息をついた。  
「お前これで何度目だ? 今日と言う今日は許さねェぞ。放課後国語準備室まで来い、いいな?」  
「チッうるさい教師アル」  
「誰がうるさいだコルァ。大体授業中に弁当食ってる方が非常識だろうが。とにかく来ないと、  
お前だけ特別課題出すぞォ」  
 特別課題、その言葉を聞いて神楽は青い顔をした。神楽の苦手な漢字ドリルを山ほど出される  
からだ。神楽は漢字の書き取りが大の苦手だった。  
 放課後になって、生徒たちは部活に行ったり、下校したりと廊下があわただしい。全員が昇降口や  
体育館に向かう中、その人を掻き分けて神楽はだるそうな足取りで銀八の居る国語準備室へと向かう。  
 国語準備室は神楽の教室の二階上にある最上階だ。他に社会準備室や、あまり使われることの無い  
調べ学習室、第二図書室などがある非常に埃臭い階だ。最上階ということもあって、夏が近づくと大変  
暑い。初夏の風吹くこの気候では、階段を上るだけでも体温が上がりそうだ。  
 インクの酸化する匂いと、埃臭さがむっと漂う廊下を息を止めながら歩いて、神楽は国語準備室の  
ドアをノックする。  
「先生ェ、約束どおり来てやったヨ」  
「おう、入れ」  
 ドア越しに入室の許可が得られたので、神楽は準備室のドアを開ける。廊下とは違い、ここはまだ換気も  
行き届いているため、十分過ごしやすくなっている。  
 銀八は奥の事務机に肘を付いて窓を開け、煙草を吸っていた。埃の匂いに比べれば大分ましだ。神楽は  
そこら中に散らばる資料や本を足でどけながら銀八の横に立った。  
 
「家に帰って再放送ドラマみたいから早く済ませるアル」  
 壁にかかっている時計の針は午後三時半を指していた。説教を受けて走って帰っても、十分間に合う時間だ。  
「早弁してる奴が偉そうに言ってんじゃねェよ。ったく、お前は何度言えばわかるんだ? 大体、お前が  
早弁してるとむかつくんだよ。俺だって食べたいの我慢してんだからよォ」  
「じゃあ先生も食べればいいネ。そうすれば無問題アル!」  
「ばっかおめェ、俺が食ったら教頭にがみがみ言われんの目に見えてるだろうが。それに、お前も注意してんのに  
毎回やってんじゃねェよ。日本語分からないんですかコノヤロー」  
「馬鹿にしないで欲しいネ。人間誰でも欲望はあるヨ! それにしたがって何が悪いアルか?  
それに、先生私が何やっても振り向いてくれないネ。前にメガネ萌えだって言ってたからメガネかけ始めたのに  
何か言うことないアルか!?」  
 神楽は眉間を顰めて銀八に訴えた。要するに、早弁をするのは銀八の目を引きたいからだと言う。  
「あァ? お前ェ何言い出すんだァ? 瓶底メガネで萌えるわけないだろうが。それに俺は熟女萌えなんだよ。  
お前ェみてェなガキんちょに興味はねぇ」  
「そんなのやってみないと解らないアル!」  
 神楽はむきになって銀八に噛み付いた。銀八は神楽の涙を浮かべる目を見て、少したじろいだ。  
銀八は、泣く子供と女を慰めるのがとても苦手だったのだ。今にも泣き出しそうな神楽をどうやって  
宥めるかという気持ちと、その潤んだ瞳に微かな女の色香を感じてしまい、神楽から思わず目をそらしてしまう。  
 神楽は数多く居る生徒の中の一人だ。ましてやその一人の生徒に欲情の火を微かでも灯してしまう自身が  
情けなく思う。  
 それに、神楽とは十歳ほど年が離れているのだ。手を出せば犯罪に近い行為になる。  
「ねぇ! 先生聞いてるアルか!?」  
 神楽は甲高い声を上げて問う。握られた手は、少女特有の体温の高さからか、とても熱く感じられた。  
「あー……聞いてるよ……」  
 銀八はどうしていいか分からず、ただげんなりと項垂れた声で呟く。熱心な瞳で見つめてくる神楽を、  
銀八自身ではどうすることもできずにいた。  
「私、先生が好きヨ……。なんで答えてくれないアルか、もっともっと先生と居たいヨ。もうすぐ私  
卒業しちゃうネ……そしたらもう先生と会えないアル」  
 もう三年生になる神楽は、あと半年と少しで卒業してしまうのだ。そうすれば、もう銀八と会う事は  
なくなってしまう。  
 途端に重くなる雰囲気に、銀八は何もいえなかった。確かに、今のクラスの担任になってから苦労も  
多かったが、それ以上に楽しい思い出ばかりなのだ。毎日騒がしい神楽が珍しく風邪で休んだときは、教室内が  
とても静かで寂しかったと思うこともあった。  
 それはもしや神楽に少なからず惹かれていたからだろうか。否、それは生徒を心配する教師として当たり前の  
感情だと思っていた。  
 しかし今、銀八のことを思い、涙を浮かべる生徒――少女がいる。  
 
「お前……一つ聞いておくがそれは教師として俺を好きなんでなく、男としてみてるのか……?」  
 銀八は劣情に掠れた声で問いかけた。このような質問をするのはずるいと思いつつも、問いかけずには  
いられなかった。  
「男、として……? 私、先生のこと考えると、なんだか胸の奥が苦しくなって泣きそうなときみたいに  
喉が熱くなってくるアル。それからなんだか恥ずかしくなるヨ。とにかく、私先生が好きネ」  
 それは、十分すぎる答えだった。銀八は思わず生唾を飲み込む。  
「――分かった。それじゃあ俺もお前の気持ちに応えるぞ。本当にいいんだな?」  
 生徒に呼びかける言葉ではなかった。銀八の一人称が先生から俺に、いつの間にかすり替わっていた。  
いや、神楽と話すときだけいつの間にか俺という一人称を使っていたのかも知れない。  
「いいヨ。先生が振り向いてくれるなら私なんだっていいネ! それくらい先生のこと好きアル」  
 銀八は、そんな少女の純粋な気持ちを利用しようとした。欲に塗れた手が神楽に伸びる。神楽の白い頬を  
捉えた手はその頬をなで、唇の輪郭をなぞる。  
「先生ェ……?」  
 神楽が不思議に思って声を漏らす。しかし銀八は劣情に染まった瞳を少しだけ細めただけだった。  
 神楽の小さな肩を掴み、顎を持ち上げると、そこに噛み付くような口付けを仕掛ける。形のいい小さな  
唇が貪られ、唇を割られて舌が侵入してくる。侵入した舌は、神楽の熱い粘膜を蹂躙し、歯列をなぞり、  
逃げる舌を絡め取られて吸い上げられる。  
 神楽の唾液を吸い上げるような音が部屋に響き、神楽の顎からどちらとも付かぬ唾液が伝った。  
「ん、ふあ……っせんせ、ぇ……」  
 突然のキスに、神楽は戸惑うことしかできなかった。そして、それに抗う術も持たず、ただ為すがままに  
唇を貪られるしかなかった。  
 銀八が神楽の腰を抱き、より口付けを深くする。神楽もだんだん酸欠状態になり、頭の中がぼんやりとした  
まま、心地のいいキスに身を任せていたが、腰を擦り付けてきた銀八に違和感を覚え、擦り付けられた腰に  
意識を集中してみると神楽は大きく目を見開いた。硬くて熱いものが神楽の太ももに当たる。  
「お前の所為で俺も勃っちまったじゃねェか……くそ、とうとう俺もロリ属性の仲間入りですかコノヤロー」  
 照れを隠すためか、自身の足元を見ながら銀八はそんな言葉をこぼす。口付けの余韻でぼんやりと立っている  
神楽を見て、銀八は立ち上がって白衣を脱ぎ、散らかった事務机の雑貨をどけると、そこに白衣を敷いた。  
 そして立ったままの神楽をそこに寝かせる。  
「こうすれば背中痛くないだろ? 怖くないか」  
 
「ん……だいじょぶネ……」  
 神楽は蕩けるような視線を銀八に向けて答えた。白衣の上に枝垂れかかる神楽は少女とは思えないほどの  
妖艶さに満ちていた。半開きになった唇は口付けの所為か赤く熟れ、白い肌は薄桃色に上気している。  
 そんな大人っぽい雰囲気に似合わないセーラー服がいかにも禁欲的で、銀八が今、禁忌にも似た行為を  
犯そうとしていることを明白にする。しかし、銀八にはもう犯罪だという概念は残っていなかった。理性を  
取り払った瞳は獣のように卑しく光っているのだ。  
「悪いが俺ももう我慢できん。優しくしてやれねェかもな……」  
 劣情に掠れた声で銀八は言う。そして己の胸元を戒めているネクタイを大きな衣擦れの音と共に抜き去った。  
 神楽の制服の赤いタイを抜き取ると、そのタイで神楽の両腕を戒める。それからセーラー服を捲り上げ、  
神楽の可愛いデザインの下着が露出した。神楽らしい薄黄色のレースのブラジャーだ。  
 ブラジャーのホックを外す手間さえ惜しくて、形が崩れるのを気にせず、銀八は神楽のブラジャーまでも  
捲り上げ、胸を露にする。その胸を両手で包み込み、やわやわと揉みしだき始めた。  
「あ、やぁ……せんせ、痛い、ヨ……っ」  
 銀八があまりにも強く揉むものなので、神楽は思わず震える声を上げる。夢中になって少女の乳房を包み込んで  
愛撫していた銀八は、少し力を緩め、今度は舌で膨らんだ突起を刺激し始める。  
 ぷっくりと立ち上がった乳首は白い肌に映えるようなピンク色をしていた。その小ぶりな乳首を唇で食み、  
舌先で突くと、神楽はくすぐったさか、快感からか、僅かだが身を捩った。  
「んあぁっは、ああ……」  
 銀八は空いたもう片方の乳房を包み込み、その乳首を指でこね始める。指で弄ると、立ち上がったそれの硬さが  
増す。そして唇で弄んだそれは、熟れた果実のように真っ赤に染まっている。それが更に銀八の欲情を煽ることと  
なる。熟れた突起に歯を立て、神楽を蹂躙すると、神楽はその強い刺激に甲高い声を上げて白い喉元を曝け出した。  
「ひ、あぁっあああ……っ」  
 そして銀八はそのまま舌を滑らせ、神楽のなだらかな腹筋をなぞった。肌を撫でる無骨な手も、女性特有の  
曲線を描く身体つきを明確になぞっていく。わき腹付近に触れると、神楽は小さく身体を震わせる。  
 臍の窪みを丁寧な舌使いで焦らしながら愛撫すると、神楽は神経をそのまま刺激されるような感覚に陥り、  
気持ちが悪いと首を横に振った。しかし、銀八はそれでも愛撫をやめることをせず、臍の窪みを舌で抉るように  
舐め上げると、スカートのホックを外した。  
「ふ……先生ェ、おへそのまわり弄られて、おしりがむずむずするアル……」  
「大丈夫だ。それも気持ちよくなってくるからな」  
 銀八はいつものようび間延びした声ではなく、いかにも切羽詰った、掠れた低い声だった。銀八は今、爪の先まで  
劣情で創られているみたいだった。赤く染まった舌でちろり、と唇を湿らせるが、それではまだ足りない。  
 今の銀八を満たせるのは、水でも酒でもなく、目の前に居る少女なのだから。  
 
 スカートが、微かな衣擦れの音を残して床に落ちた。銀八は、曝け出された少女のピンク色をしたショーツに  
顔をうずめる。神楽が必死に足を閉じようと心がけるが、快感で力の抜けた身体ではそれもままならず、銀八の  
為すがままになってしまった。白く伸びた足が高く掲げられ、下着をつけたままだと言えど、銀八の前に秘所が  
露になっている。そう意識しただけで、神楽の下腹部はずっと熱くなった。  
「最近暑いからなァ。お前のここ、汗とやらしい液体の匂いがすげェ匂ってくる。パンツに染みできってっぞ、神楽ァ」  
「いやぁっせんせ……そ、なこと……言わないでヨ……っふうう、んっ」  
 神楽が銀八の言葉を拒んでいるにも関わらず、銀八は神楽のショーツの上から潤む秘所を舐め始めた。ちょうど  
神楽のクリトリスの辺りを舌で突き、大きく口を開けると、その舌で大陰唇を割り開き、秘所の奥深くを刺激  
する。その合間に、前歯でクリトリスを少しずつ刺激してやると、神楽は甘い声を上げてその快楽を享受する。  
 銀八が愛撫を続けると、神楽の秘所はショーツの上からでも分かるほどに愛液に塗れ、更なる快楽を待ちわびて  
いる。神楽はとうとう耐えかねたのか、かさかさに乾いた唇を開いた。  
「せんせえ……もっとちゃんと、……めて欲し、アル」  
「ああ? なんだって?」  
 銀八は聞こえているはずなのに、神楽にもう一度言葉を求める。神楽は羞恥心を煽られ、更に頬を紅潮させた。  
「もっと、なめ……て欲しいアル……」  
「よく言えたな、」  
 銀八は短く答えると、神楽のショーツを引き下ろして秘所を露にする。縦筋にそって閉じられた秘所は、  
銀八の愛撫によって愛液が滴らんとしている。指でその縦筋を割り開いてやると、神楽の子供っぽい身体つきの  
わりには成熟した女性器がひくついていた。  
 銀八は生唾を飲んで神楽のそこに舌を宛がい、上から下へとなぞる。奥まった箇所にある膣がひくり、と  
反応し、更なる淫楽を求めてくる。それに応えるように銀八は舌を膣内に潜りこませた。  
「ああっい、いった……痛いヨ……っ」  
「初めてなんだろ? なら仕方ねェよ。ローションもなんもねェから気持ちよくなるまでもう少しだけ我慢してろ」  
 銀八が舌を抜き去り、そう言うと今度は唾液で濡らした指を神楽の膣に宛がい、空いたもう片方の手でクリトリスを  
刺激しながら指を挿入する。  
 未開拓のその場所に押し入ってくる異物感。慣れない刺激に、神楽は少しだけ気持ち悪さを感じる。挿入された  
指が神楽の膣内をまさぐるたび、不快感が神楽を襲う。しかし、それも束の間のことで、銀時が指を一本二本と  
増やしていくと、神楽の小さな呻き声がやがて甘い声へと変わっていく。  
 一通り神楽の膣内を蹂躙すると、銀八はようやく指を引き抜いた。神楽の愛液に塗れた指は淫靡に光っている。  
 それから銀八は自身のズボンのジッパーを下ろし、雄々しくそそり立ったペニスを取り出した。神楽の痴態で  
勃起したそれはどくどくと脈打ち、欲情を隠し切れないでいるようだ。  
「……力抜いとけよ」  
「ん……っ」  
 銀八が神楽の耳元で囁いた。銀八の質量の増したペニスが神楽の小さい身体を穿つのかと考えると、自然と  
心が高揚してくる。まるで壊してしまいそうだという畏怖と、壊してしまいたいと願う強烈な劣情。その二つが  
銀八の中で混濁し、神楽を犯そうとしている。宛がったペニスの切っ先がどんどん神楽の中に埋まっていく。  
 
「はっあぁ……あ、」  
「……っきつ……」  
 膣内をぐっと締め付けてくる神楽に、銀八は些か苦痛の色を浮かべる。少女の中は、とても熱かった。まるで  
ペニスが融けてしまいそうだ。そして、締め付けられてちぎれるかと思うくらいの強い快感。  
 クリトリスを指でつまみあげると、神楽は甲高い声を上げて身体を震わせる。その瞬間、膣内の収縮が少しだけ  
緩んだので、その間に銀八は中で膨張したペニスを奥まで穿ちいれた。  
「ああっ」  
 神楽が嬌声を上げたのを合図に、銀八は律動を開始した。太い亀頭部分が、神楽の膣内を引っ掻き、抉るように  
貫いてくる。初めは中の動きに違和感w覚えていた神楽だったが、いくらか腰を揺るがすうちに、それが快楽だと  
享受するようになる。自然と銀八の動きにあわせて腰を揺らし、短い喘ぎ声が室内に響いた。  
 あまりにも早くに快感を身体で受け止めることが出来、神楽の身体はすっかり弛緩していた。途端に膣内の  
締りが処女のそれではなくなってしまい、銀八は少し物足りなくなってしまった。贅沢な悩みかもしれないけれど、  
もう少しだけ強い快感を得ていたかった。  
「ん、あっああ……っひ、あ、あん……っ」  
 喘ぐ神楽を見つめながら、銀八はおもむろに事務机の上に手を伸ばした。そして、掴んだのは一本のボールペン。  
 きちんとキャップが締まっていることを確認すると、それを神楽の尻の穴に宛がい、先端だけを挿入する。  
「ひあああっあぁっせんせ、な……に……」  
 突然排泄感にも似た感覚が神楽に押し寄せ、神楽は頭だけを擡げた。しかし、その位置から自身の下半身を  
確認することは出来ない。  
「お前ェのケツの穴にボールペン入れただけだ。この方が、締まりもいいだろっと……っ」  
「いあああああ……っやだ! せんせ、も……ダメェ……っ」  
 尻に違和感を覚えた神楽が、ぐいぐいと膣を締め付ける。下腹部に常に力が入った状態となり、銀八に与えられる  
快楽も並大抵のものではなくなった。絶頂が近い。更にペニスが脈打つのを感じられた。  
 そして次の瞬間、銀八は神楽の中に射精してしまった。  
「――っ」  
「やああああああ――っ!」  
 どくどくと神楽の膣内に白濁が注ぎ込まれる。その熱を感じながら神楽は背筋を弓なりのように撓らせた。  
 
 
 
 
 神楽の後始末を簡単に済ませ、銀八はぐったりと力なくした神楽を部屋の隅にある古ぼけたソファに  
横たわらせた。神楽の吐息が僅かに聞こえる。銀八はそれを聞きながら椅子に腰掛け、煙草を吸っている。  
 ついに生徒にまで手を出してしまった。そんな罪悪感と、禁忌を犯したことに対する興奮が相成って、銀八は  
未だ気分が高揚している。  
 別に、先生と生徒が関係を持つことは誰も禁止していないことだ。ただ体裁がとても悪く感じられるため、  
禁忌ともいえるくらいにタブーとされていることなのだ。  
 しかし、銀八は別に神楽と関係を持ってもいいと思っているのだけれど、問題は神楽がそれを受け入れるかどうかだ。  
 もしも神楽が拒否したならば、銀八は処分されることとなる。  
 どちらにしろ腹をくくらなければ現状は変わらない。そんなことを考えていると、神楽が目を覚ましたようで、  
背後から小さな溜め息が聞こえた。  
「神楽ァ、起きたのか」  
「ん、起きたネ……。ねぇ、先生ェ」  
「なんだ?」  
 まだセックスの余韻をひきずっているのか、神楽は甘い声で銀八に話しかける。銀八は、つとめて冷静に神楽の  
次の言葉を待った。  
「また……さっきみたいにしてくれるアルか?」  
 少し舌足らずな口調で、神楽は銀八に望みを伝える。それは、銀八との行為を肯定する言葉に他ならなかった。  
「――まあ、お前が望むなら、だな」  
 銀八は今の先生と生徒という関係もあって、少しだけ曖昧な言葉で応えた。その言葉がはっきりするのは、  
あと半年後のことである。  
 
 
 
 
 END  
 
 

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