どうしてこうなってしまったんだろう。  
我ながら、巧く隠し通せていると思っていた。  
剣の腕だって他の男に引けをとらない、  
むしろ勝っているといってもいいほどな筈だったのに。  
涙はもう枯れ、声も既に掠れてきている。  
 
鎖で拘束された白く細い手首は、紅く蚯蚓腫れが浮かび痛々しい。  
桂は光の消えた空ろな瞳で暗いコンクリートで出来た壁を見つめた。  
 
いつになったら、俺は解放してもらえるのだろうか。  
いつになったら、また剣を握る事ができるのだろうか。  
年少の頃からの付き合いである彼らは、  
若しかしたら薄々感づいていたのかもしれない。  
水浴びを断じて一緒にしようとしなかった事、鍛えても筋肉の付く事がない身体。  
 
 
がちゃり、と音がして扉が開いた。  
まだ自分が『男』として戦っていた頃傷を受けた左目は、もう光を見ることはないのだろう。  
「高、杉……」  
掠れた妙な艶のある声音で相手の名を呼ぶ。  
高杉は酷薄そうな唇を歪めた。  
 
 

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