深夜、机に向かって家計簿をつけていた新八は、突然、背後から物凄い力で羽交い絞めにされた。  
「しーんちゃん♪」  
「ぐはぁ!!! ……って、姉上!! 何するんですか!!」  
新八が何とか首だけ動かすと、背後に妙の美しい笑顔があった。  
「新ちゃんに、良いもの持ってきたわよ」  
にっこりと、菩薩の微笑を浮かべている妙の口元からは、強いアルコールの匂いがした。  
嫌な予感を感じ取りつつも、新八は尋ねた。  
「……良いものって、何ですか?」  
「じゃあ〜ん お通ちゃんのステージ衣装〜〜 」  
妙は得意そうに、幾重にもフリルをあしらった、派手な極ミニのワンピースとジャケットを掲げている。  
かなり古いタイプの「アイドル」のイメージである。  
黄色いスカートと青いジャケットのコントラストが目に痛い。いろんな意味で。  
「……お通ちゃんは、そんなもの着ません」  
唐突に出現したアイテムに、低いテンションでツッこむ新八。  
酔っているのだろうが、姉の真意がわからない。  
しかし妙は、にこにこ顔で続ける。  
「アイドルのステージ衣装なんて、こんなものでしょう〜?  アイドルといえば、○高じゃない」  
何の根拠か謎の発言に、一瞬、ツッこむかツッこむまいか迷ったが、姉に敬意を込めて、新八はテンションを無理から上げた。  
「森○って、いつの時代のアイドルだよ!! 同じ千里なら、せめて○下の方にしてください!!  
ジャンプ読者でこのネタわかる人なんていませんよ!!」  
「大丈夫よ、新ちゃん〜 ここは21歳以上しか見られない事になってるんだから〜」  
「姉上……、だいぶ前からここは18歳以上からになりましたから……。てか、21歳でもこのネタは厳しいんじゃないの!?  
そもそも、姉上が森○に拘るバックボーンが謎なんですけど!!」  
お通ちゃんの衣装にも全然似てないし!とツッこむ新八に、妙の表情が一変する。  
「いいから黙ってコレ着ろや」  
真冬の鉄門並みに冷たい目をした妙は、新八の眼前に森○の衣装を突きつけた。  
「なんで僕が着なきゃいけないんですか!!」  
至極もっともな新八の反応などお構いなしに、妙は続ける。  
「今日、お客さんからプレゼントされたのよ〜。  
 私より新ちゃんの方が似合うもの。アンパンには牛乳並みに似合うもの。いいから着なさい」  
妙がこうなってしまっては、もう引かない。  
大人しく妙から衣装を受け取り、しぶしぶ着替える新八を見て、妙は嬉しそうに呟いた。  
「なんだか、昔を思い出すわ〜  
 小さい頃、よく新ちゃんに女の子の格好させたっけ」  
1ミリも気が乗らなかった新八だが、その妙の言葉を聞いて、ほんの少しだけ、ハッとした。  
妙が昔を振り返るのは、寂しくなっている時なのだ。  
まだ父が生きていた頃。家族三人で暮らしていた頃のこと。  
寂しくなると、素直に口には出さずに、その当時の思い出話をする姉の癖を、新八は知っていた。  
普段、不満らしい不満も口にせずに、笑顔で家計を支えている妙だけに、新八は感傷的な気持ちになった。  
単に客からいらないプレゼントを渡されて、新八に押し付けたいだけなのかもしれなかったが、新八は妙の気持ちを汲んで、この酔狂な遊びに付き合うことにした。  
 
――――姉上……それでもやっぱり、無理がありますよ……。  
妙が新八を人形代わりにして遊んでいたのは、それこそ年端もいかない幼子の頃のことだ。  
あの頃は、本物の姉妹のように、二人は似ていた。  
しかし、今の新八は身体の線こそ細いものの、肩幅や筋肉のつき方など、まるで妙とはかけ離れていた。  
妙のサイズが入りきるはずもなく、背中のファスナーは閉じられなくて丸開きだったし、ベアトップの衣装は新八の乳首のラインギリギリまでしか隠れなかった。  
勿論、ジャケットなどは気孔の達人でもなければ到底、着られないようなレベルのもので、今の新八は単なる“みすぼらしい黄色い布を身体に巻きつけた哀れな少年”でしかなかった。  
新八は内心、「なんの罰ゲームですかコレぇぇぇ!!」と叫んで、こんな衣装は脱ぎ捨てたかった。全裸でいるほうがまだマシだとすら思えた。  
しかし妙を見やると、ノリノリで化粧セットまで準備して微笑んでいる。これから本格的に人形扱いされるらしい。  
16にもなって、何が悲しくて実の姉と二人で、女装ごっこなどというマニアな遊びをせねばならぬのか。  
新八は情けなさで一杯だったが、妙がはしゃいで自分に化粧を施している笑顔を見ているうちに、どうでもよくなってしまった。  
妙の笑顔が見られるのなら、大したことでもないような気がしてきた。  
新八は、子供のようには喜ぶ妙を見守りながら、されるがままになっていた。途中、吐息がかかるほど近づく姉の顔を、少々くすぐったく感じながら。  
 
「ほらぁ、思った通り。新ちゃんの方が可愛いわ」  
程なくして、新八は鏡の中に、奇妙な人間を目にすることになった。  
薄く白粉をはたいて、艶やかな紅を唇に引いた、少年の顔。  
顔立ちは妙に似ていたが、妙よりも幾分、頬のラインなどが引き締まっていて、硬い印象を受ける。  
今まで意識することなくモッサリとしていた眉毛は美しく整えられ、代わりに眉墨で優美な曲線を描かれている。  
妙に似た大きな瞳を縁取る睫や目元は、淡い陰影で彩られ、なかなかに蠱惑的な光を放っている。  
――――び、ビミョ〜〜〜〜ッ………  
鏡の中の己の姿を、正直、新八は直視できなかった。  
いっそ、笑えるほどに酷いメイクを施してくれたなら、こんなにもむず痒い思いはしなかっただろう。  
実に微妙な仕上がりなのである。パーツパーツで見れば、女でも違和感がないように思えるから嫌だ。  
眼鏡を奪われた視界で捉えるせいもあるのだろうが、ほんのちょびっとでも可愛く感じられるレベルの仕上がりなのである。  
女装させられている恥ずかしさよりも、その己の姿を見て、少しでもアリかな、と思えてしまう己自身に、新八は壁に激しく頭を打ち付けたい衝動に駆られた。  
新八が、猛烈な自己嫌悪と恥ずかしさで一杯なのを、知ってか知らずか、妙は嬉しそうに新八の肩に擦り寄って、一緒に鏡を覗き込んだ。  
「本当に、女の子みたいねぇ、新ちゃん」  
実際に、新八は毛深くもないし、顔もまだ幼さの残る中性的な顔立ちだった。  
それなりに筋肉もついているのだが、銀時や長谷川など身の回りの成人男性とは異なり、その骨格は少年特有の不安定さがあった。  
まだ男として出来上がっていない。しかし、子供とも違う。少女の持つ柔らかさや可憐さとは異なる、けれど、若木を思わせるような瑞々しさ。  
化粧を施すと、その少年特有の危うさがかえって際立って、なんとも言えない妖しい生き物になる。  
それまでは笑って眺めていられた半裸に近いような衣装も、とたんに淫靡な姿に映ってくるから不思議だ。  
いつもは縁のない、甘ったるい化粧品の匂いが、自分の体から発せられていることにも、軽く陶酔した気分になる。  
――――へ、変態か!! 僕は!!  
このままでいると、なんだか妖しい性癖に目覚めてしまいそうで、新八は戦慄した。  
新ちゃんが妹だったら良かったのになぁ…と寄りかかる妙をかわしながら、新八はうろたえて言った。  
「あ、姉上、もう気が済んだでしょう。僕、着替えてきますから…」  
いたたまれなくなった新八が、そそくさと部屋を出ようとした、その時だった。  
「ちょっと! まだダメよぅ!!」  
「うわっ!!」  
妙が新八の手を掴んで、強引に引き寄せた。  
不意のことでバランスを崩した新八は、勢い余って、妙を押し倒すような形で、倒れこんでしまった。  
「あたたた……大丈夫ですか。あねう…」  
え、と声に出す前に、新八は固まった。  
息がかかるほど近くに、存外にも艶かしい視線で自分を見つめる、姉の顔があったからである。  
今まで見たこともないような姉の表情に、新八の心拍数は一気に上昇した。  
 
――――え? あれ!? 姉上だよね?  
 ぇえ!? なんか、いつもより、色っぽくない!?  
動揺しつつも、新八は、その体の下に、姉の身体を感じていた。薄い着物に包まれた、暖かくて、柔らかい、甘美な少女のからだを。  
新八の着ていたスカートは捲れあがっていたので、新八は下に履いていたトランクス一枚で、その感触を味わうことになっていた。  
それまでの倒錯的な自分に動揺していた事とも相まって、新八は強い混乱と興奮状態に陥った。  
「ごめんなさい、新ちゃん……口紅が曲がっちゃったわね……」  
妙はこの不自然極まりない体勢を気に留める風もなく、新八の頬に細い指先を伸ばした。  
新八の唇の端からはみ出た紅を、妙の白い指の腹が、ゆっくりとした動きで拭い取っていく。  
それだけの動作なのに、新八は眩暈を覚えて、気が遠退きそうになった。  
妙の体温と一緒に立ち上ってくる甘い香りと、ほんの数ミリの布地越しに接している「女のからだ」を意識してしまい、泣きたくなる。  
相手は実の姉だというのに。どこまで自分は変態なのだろう。ヘンな趣味に目覚めかけてみたり、血の繋がった肉親相手に欲情してみたり。  
――――全く堕落した弟、略してマダオだ!!  
急いで妙から身体を退ければいいだけなのだが、何故か新八の体は痺れた様に、動くことができなかった。  
それでいて、臍の下に急速に血が集まっていく変化は止められない。  
不道徳な、と思えば思うほど、後ろめたい興奮が湧き上がり、新八の動きをぎこちないものに変えた。  
姉の上で奇妙に腰を引いた姿勢のまま、新八は脂汗を流した。  
そんな新八の状態を見透かすかのように、妙は新八の耳元に熱い息を吹きかけた。  
「どうしたの、新ちゃん……すごい汗よ……」  
びくり、と新八の身体が震える。  
くすくすと、耳元で妙の笑い声が響いた。  
妙の柔らかい指先が、誘惑するように、新八の頬を撫でる。  
「新ちゃん可愛い……」  
耳に絡みつく妙の甘い声が、思考を停止させる。  
自分がおかしいから姉に欲情しているのか、姉がおかしいから自分までおかしくさせられているのか、あるいは、その両方なのか、判別がつかなくなる。  
新八は悪夢の中にいるような気分だった。妖しくて背徳的な物語の、登場人物になってしまったかのようだった。  
いっそ、夢ならこの状態を楽しめただろうに、現実に肉親を相手にして、股間を腫らしている事実は、新八をひたすら後ろめたい気持ちにさせた。  
姉に対して欲情するなんて。自他共にシスコンを認める新八でも、その一線は最もタブーとする所だった。むしろ、大好きな姉だからこそ、そんな目で見てはいけない、という、強い戒めの気持ちがあった。  
油断すれば湧き上がろうとする、肉の欲で姉を犯したい、という願望を、新八は必死に否定しようとした。  
それなのに、当の妙は新八の反応を見て、面白がっている節すら覗えた。気まずいやら恥ずかしいやら、姉がどういうつもりでいるのか恐ろしいやら、新八は全く生きた心地がしなかった。  
妙はそんな新八を弄ぶように、己の着物の裾が乱れるのも気に留めず、両脚で新八の腰を挟み込んだ。  
腿の付け根まで露わになった妙の長い素足が、艶めかしく、新八の腰を、ぐい、と自分に引き寄せる。  
妙はわざと腰を前後にくねらせて、着物越しに新八の股間を刺激した。  
傍目にはまるで、性交しているような動きである。  
「ぅわわッッちょッ」  
「……新ちゃん、コレは一体ナニ?」  
―――なにか硬いモノが当たっているわ。  
意地悪く、耳元で訊ねる妙の唇には、妖艶な笑みが引き結ばれていた。  
背中や腰に回された妙の指が、脚が、新八に甘美な刺激を与える。  
新八は泣きそうになっていた。  
 
「やめて……くださ…ッ」  
耳まで真っ赤にして眉を顰める。瞳には涙を滲ませて。化粧した少女のような容姿とも相俟って、その新八の表情は、妙の嗜虐心に火を着けたようだった。  
妙は、腰を引かせて自分の上から逃れようとする新八の、ミニスカートの中に手を差し入れた。  
そのまま、新八の履いていた下着を摘んで引っ張る。  
「新ちゃん……何を履いているの? 女の子の服を着ているのに、こんなもの履いてちゃ、駄目じゃない」  
 
―――女装するときは心まで、女の子の服を着るときは下着まで、女の子になりきらなきゃ。  
 
いつものように、弟を諭す口調で無茶苦茶を言う。  
新八は、女装する前と同じく、スカートの下にトランクスを履いていた。前と違うのは、トランクスの前が痛いほどに張り出してきていることである。  
妙はそのトランクスを無理やり脱がそうとした。  
「だっっだめです…って!! あ…っ姉上!!」  
慌てて止めようとするのに、妙は一気に、新八の膝の上まで、トランクスを引きおろしてしまった。  
臍に張り付かんばかりに反り返った新八の肉茎が、ポロンと飛び出る。  
赤味を帯びた敏感な肉茎は、ミニのスカートを押し上げて、その頭をフリルの隙間から覗かせた。  
先端に溜まった透明な雫が、糸を引いて床に落ちる。  
間抜けで、情けなくて、破廉恥なことこの上ない。  
恥ずかしさで全身が燃えてしまうような感覚を新八は味わった。  
 
――――見られてしまった!! 姉上相手に欲情して腫らしたモノを、姉上自身に見られてしまった!!  
 
目を強く瞑って、羞恥に全身を固くした新八を、妙は意地悪そうに詰る。  
「新ちゃん、心まで女の子にならなきゃ、駄目だって言ったでしょう? 何? これは。  
厭らしいわ。 こんなに腫らして、いったい何を考えていたの? 」  
妙の紅い唇が動いて、新八の欲望を咎めるように、言葉を紡いだ。  
しかし、妙の両手はその言葉とは裏腹に、新八のスカートの裾に潜り込んで、新八の腰や尻をゆっくりとした動きで撫で回している。  
内腿や腹に愛撫するように触れる指先は、しかし、ビクビクと脈打つ新八自身には、全く触れない。  
妙は面白そうに、新八の首筋に吐息を吹きかけた。  
新八は顔を真っ赤に歪めて、姉の仕打ちに耐えていた。  
 
だんだんと、呼吸が荒くなっていく新八をからかうように、妙は新八の耳たぶを甘噛みした。  
びくり、と、新八が震える。  
新八の様子が可笑しいのか、妙はふふふ…と笑みを零し、可憐な唇から舌の先を覗かせて、つつつ…と、新八の首筋から鎖骨、鎖骨から胸板を舌でなぞった。  
少年の肌の上で踊る少女の舌は、その胸の突起にまで伸び、苦しげに吐息を漏らす少年を嘲笑うかのように、彼に快楽を与え続けた。  
唾液で潤んだ柔らかい舌の表面が、新八の立ち上がった乳首を舐っていく。  
「は…っぁっ……あね…うえ…?」  
背筋を這い登る、むず痒いような、痺れるような感覚と、焦らされ続ける肉の欲を堪えて、新八がやっと声を出す。  
どんどんエスカレートしていく姉の行動は、混乱している新八の頭でも、はっきりとその異常性が認識できた。  
この姉の様子は、どう考えてもおかしい。ふざけて弟をからかっているにしても、いい加減、やり過ぎな感が否めない。  
だいたい、妙は口では下品な言葉も乱暴なことも平然と言うが、結婚までは純潔を守る、という信条を貫くほど、潔癖な少女なのだ。  
妙らしくない言動の数々に、新八は自分の下にいる「女」が、本当に自分の姉なのか、という不安を抱き始めた。  
「……新ちゃん」  
そんな新八の気持ちを増幅させるかのように、少女は新八に微笑みかけた。  
「いやらしい子、悪い子。……いやらしい所をこんなに大きく膨らませて……。」  
―――悪い子にはお仕置きが必要ね……。  
続いて囁かれた言葉に、新八はごくりと生唾を飲み込んだ。  
それが戦慄の為だったのか、期待の為だったのか、新八自身にも解らなくなっていた。  
 
新八はこの状況に従うべきなのか、拒むべきなのか、それすらも、もう判断が出来なかった。  
現実と妄想が入り乱れていく。日常が非日常に溶け出していく。  
高鳴る心音と激しい眩暈の中で、新八の瞳を妙の視線が捉えた。  
それっきり、新八は術をかけられたように、動けなくなった。  
妖しい少女の瞳に絡めとられて、目を逸らすことすら叶わなくなってしまった。  
悪魔に魅入られた生贄のように、新八は己の体を己の意思で、動かせなくなってしまった。  
今度は妙が、新八の上に覆いかぶさるように、ゆっくりと新八を押し倒した。  
軽く胸に手を添えられているだけなのに、新八の体は簡単に沈んでいった。  
畳の上に、少年とも少女ともつかぬ異形の生贄が横たえられる。  
サイズの合わない衣装は、まるで乱暴に着乱されたようで、いっそう哀れに、そして、いっそう淫靡に、見るものの目に映った。  
妙は舌先で、新八の体をゆっくりと屠るようになめ上げた。そして、新八の肌を、目に見えぬ媚薬をすり込むかのように、手のひらでまさぐった。  
新八は美しい姉の手が自分の身体を撫でていく感触に、唇を震わせた。  
 
「イッていいって言うまで、出しちゃダメよ……」  
 
耳にまとわりつく妙の囁きと共に、ついに、新八の芯に、ゆるゆると擦りあげられる刺激が加えられた。  
散々、焦らされたそこに与えられる刺激は、新八を快感の渦へと巻き込むのに、さほど時間を要さなかった。  
ただでさえ、妙が己の欲望に触れている、という意識の為に、新八は異常な興奮を覚えていた。  
背徳的な官能の世界に、今にも堕ちそうな弟に対して、姉は弟の芯を軽く握りしめて、リズミカルにその手を上下させた。  
「んッ、ふっ、くぅ…ッ」  
妙の手の中で、新八の肉茎がにちゅにちゅと音を立てる。  
知らず、新八も堪えきれずに、鼻に抜けたような吐息を漏らしてしまう。  
その声を耳にした妙は、淫らに微笑んで、ますます小刻みに右手を動かし、新八を追い上げる。  
すっかり高潮した頬に、乱れた呼吸を繰り返し、妙に縋りつくような視線を寄越す新八。  
そんな彼を見つめ返す妙の呼吸も、徐々に弾みだし、その表情にも、ありありと色欲の色が浮かんでいた。  
 
妙はペロリと舌なめずりすると、不意をついて、新八の、いきりたって汁を滲ませたモノに、舌を伸ばした。  
流石に、目の前の少女が姉であることを思い出した新八が、我に返り、制止しようとする。  
「ちょッッ…何す…! あッ…!! くぁ…ッ! 」  
だが、新八の亀頭に、柔らかい妙の舌が当てられた途端に、新八の理性はあっけなく霧散した。  
にちゃ、にちゃっ、と亀頭と皮の間に舌を差し込んで、そよがせるように動かす妙。  
鈴口の中を穿るように舐めたり、皮の内側の恥垢をこそげとるように舌を躍らせる。  
姉がどこでこんな真似を覚えてきたものか、そんなことを疑問に思う隙すら与えられずに、新八は快楽の渦に完全に呑み込まれた。  
妙は愛おしそうに、新八の陰嚢を揉みしだきながら、びくびくと張り詰めて震える陰茎を扱き上げた。  
いやらしい音を響かせながら、先端へのくちづけも忘れない。  
精液が上がってくる感覚に、苦悶の表情を浮かべた新八は、腰を震わせた。  
絶頂の予感に、自然と息も荒く激しくなっていく。  
頭を真っ白にして、解き放たれる瞬間が近づく―――。  
しかし妙は、一旦、皮ごと新八の陰茎を扱き上げると、そこでピタリと手の動きを止めた。  
亀頭から唇を離し、陰茎を掴んだまま、意地悪くニヤニヤと新八を覗き込む妙。  
寸前で絶たれた快感を、待ち望むように、新八は腰をひくつかせた。  
 
脈打つ陰茎が、狂おしいほどに、更なる快楽を!開放の為の刺激を!と訴えている。  
新八は、息も絶え絶えに懇願した。  
「はぁ…っ、…ぁ…ねうえぇ……っ、お、ねがい、ですっ……は、やく…! 」  
悶える新八の様子は、妙を少なからず興奮させたらしい。  
うっすらと頬を上気させ、淫蕩な笑みを浮かべた少女は、その瞳をいっそう輝かせた。  
そして、少年が分泌した透明な液体と、彼女の唾液でぬるぬるになったその手で、彼の皮を引き上げ、また引き下げる動作を、猛烈な勢いで繰り返し始めた。  
皮ごと加えられるカリ首への刺激に、新八の顔がひときわ歪む。  
妙は親指と人差し指で輪を作って、激しく上下に扱いた。  
「んんっ! あッ! ふぉあっ! 」  
新八の腰が浮き上がり、妙に突き出される。  
彼の頭の中で、何かが弾けた。  
「あ、くぅぅぅぅっっ!!!」  
ところが、新八が絶頂を迎える瞬間、妙は亀頭の皮を勢いよく上に引き上げ、彼の皮を鬼頭の上で、巾着状に閉じてしまった。  
ペニスを巾着状態にされてしまったため、熱い白濁は出口を失い、結果、新八は悶絶した。  
「ふぅあ…はあ…っあねう…ぇ…」  
びくんびくんと震える陰茎を手にした妙は、その皮を、すばやく輪ゴムで縛り、結わえてしまう。  
「イッていいって言うまで、ダメだって言ったでしょう? さっき言った言いつけも守れないの?」  
―――本当に、ダメな子。  
耳元で囁きながら、妙は新八の尻に爪を立てた。  
肉に食い込む鋭い痛みも、何故か今の新八には、全身を走る甘美な電流に感じられた。  
がくがくと腰が震えだし、新八はだらしなく口の端から涎を垂らしたまま、姉に懇願した。  
「お……ぉねが…っ……も…もぉ…っ」  
閉じ込められて溜まった欲。縛りつけられる痛み。姉の甘い香と、肉欲をそそる表情。全身に流れる異常な興奮と官能。  
新八は気が狂いそうだった。すでに意識の半分は、おかしくなっていたかもしれない。  
しかし無情にも、妙はなかなか新八の願いを聞き入れてくれなかった。  
妙は新八の震える陰茎を間近で見つめながら、己の指を咥えて見せた。  
その表情は、これからどうやっていたぶろうか思案しているようにも、先ほどまで咥えていたそれを、物欲しそうに思っているようにも見えた。  
妙は己の指をこれ見よがしに嘗め上げると、その濡れた指先で、縛られた新八の芯を、勢いよく弾いた。  
ピシン!と弾かれた衝撃でゴムが外れ、溜まっていた精液が出口から飛び散り溢れる。  
青臭い匂いを放つその液体は、妙の美しい顔にも付着し、彼女の着物をも汚した。  
「あーあぁ、……新ちゃんのせいで、汚れちゃったわ」  
そう言うと、妙は汚れた着物の帯に手を掛けた。  
目の前で、するすると解かれていく着物の一枚一枚を、新八は信じられない気持ちで眺めていた。  
「自分で汚してしまったものは、責任を持ってキレイにしなくちゃね……」  
妙の声を聞きながら、新八の視線は彼女の裸体に釘付けになっていた。  
薄い胸の先で震える桃色の突起、細く引き締まったウエスト、なだらかな起伏を描いて吸い込まれていく、腰、太腿、恥丘。きゅっと窪んだヘソや、ぷっくりと柔らかそうな陰唇の肉。肌は抜けるように白く、薄っすらと控えめに生えた陰毛が、閉じあわされた股間から覗く。  
淫らで美しい肢体を持つ少女の口元には、先ほど新八が放った濃い液体が付着し、顎から首筋に流れ、胸へと伝っていた。  
先ほど出したばかりなのに、新八は、また己の芯に熱が戻っていくのを感じていた。  
「……新ちゃん……」  
―――新ちゃんの舌で、キレイにして……。  
妙が裸の胸を新八に突き出したときには、彼の理性は完全に失われていた。  
 
己の体液で汚された姉の胸にむしゃぶりつく。鼻につく臭気に一瞬、眉を顰めるが、「ダメよ。ちゃんと飲みなさい。」という、妙の命令に従順に従う。  
犬のように姉の身体を嘗め回し、精液が流れた道を辿るように、舌を這わす。  
胸から首筋を辿って、姉の顎に吸い付く。  
頬に、姉の熱くなった吐息を感じた。  
強い眩暈を感じながら、舌を這い登らせ、妙の口元に唇を寄せると、ぬるり、と熱い舌が新八の舌を絡めとった。  
そのまま、引き寄せられるように、深く口付け合う。  
二人の口の中で、新八の精液と互いの唾液の味が広がった。  
既に、禁忌の念は打ち砕かれていた。  
妙の咥内の感触や、絶妙な舌の動きがもたらす、腰が抜けそうな快感に、新八は夢中になっていた。  
そうしているうちに、新八の芯は、すっかり硬さと熱を取り戻していた。  
 
新八は、目の前の少女と繋がりたくて、仕方がなくなっていた。  
猛った己を彼女の奥深くに沈めて、更なる快楽を齎してくれるであろう、彼女の秘肉の味を味わいたかった。  
しかし、美しい裸体を惜しげもなく晒す少女は、新八から彼女に触れることを、決して許してくれなかった。  
勝手に手を伸ばそうものなら、ぴしゃり、と厳しくその手をはたかれる。  
その度に、新八は飼い主に叱られた犬のように、妙に従うしかなくなってしまう。  
「新ちゃん……私と、したいの?」  
主導権を握った少女は、艶然と微笑んだ。  
新八は、余裕のなくなった表情で頷いた。  
姉だとか弟だとか、そんなことは、もう考えられなくなっていた。  
目の前の少女を抱きたい、という気持ちが、彼の全てになっていた。  
しかし、自分を求めて吐息を熱くする弟に、妙は、す、と真顔に戻って、告げた。  
「……ダメよ。……わたしたち きょうだい だもの」  
今更、何を言い出すのか――と言いたげな新八の頬を、妙は愛おしそうに撫でた。  
そして、悲しそうに続けた。  
「………新ちゃんが、本当に、妹だったら、良かったのに」  
支離滅裂に映る姉の言動に、新八は眉を八の字に歪める。  
妙の指先は、新八の唇を丁寧になぞり、ふ、と離れた。  
離れた指先は、新八の首の後ろに回される。直後、新八は妙に、ぎゅうっと力一杯、しがみ付かれた。  
温かくて柔らかい、しなやかな少女の裸体が、新八の身体に重なる。  
「私……新ちゃんが、好きなの」  
新八は先が読めなくて、されるがままになっていた。  
「好きすぎて、オカシイの。 ……新ちゃんを、誰かに取られちゃうのが、嫌なの……」  
「あの………今のところ、ソレ、取り越し苦労以外の、何ものでもありませんよ、姉上……」  
自分の肩に顔を埋める妙を、安心させるように、新八は言った。“何ものでもない”現状は、はっきり言って、新八自身には決して安心していい内容ではないのだが。  
「…………違うの……。新ちゃんが、他の女の子の話をするのも、嫌なの……」  
――――……お通ちゃんのことだろうか……。  
妙に抱きつかれたまま、密かに視線を泳がせる新八。  
――――……アイドルおたくはダメってことですか!?  
趣味の世界の事をツッ込まれると、いささか分が悪い。全然違う場面なのに、新八は何故だか、「仕事とアタシ、どっちが大事!?」と責められている男の気持ちになっていた。  
選択肢が仕事と恋人ではなく、アイドルおたくと近親相姦な時点で、変態の誹りは免れようもないが、今の新八には些細なことである。  
妙は、新八に抱きつく腕に一層力をこめて、声を絞り出した。  
「新ちゃんが女の子なら、他の女に取られる事も無いのに」  
「………………」  
新八の位置からは、妙の表情は覗えなかったが、その声に滲み出た想いが、新八の胸を締め付けた。  
いつもと違う様子に、本当に妙だろうかという疑惑まで過ぎったが、目の前の少女は、間違いなく己の姉だった。  
意地っ張りで、強引で、負けず嫌いなくせに、本当は人一倍寂しがり屋で、なかなか素直になれないことに、本人が一番泣きを見る―――幼い頃から、新八が見続けてきた、不器用な姉だった。  
寂しくて、不安になって、新八を繋ぎとめておきたくて、取った手段が今夜の女装ごっこなんて、回りくどいにもホドがある。  
新八は、強引で無茶苦茶で、不器用な姉の、華奢な背中に、そっと腕を回した。  
どうにも不器用な姉と、どうにも不恰好な弟で、大きく人の途からは逸れてしまったかもしれないが、二人は同じ気持ちで、お互いを想っていた。  
 
「新ちゃん、好きよ」  
 
妙は顔を上げると、新八に唇を重ねた。  
優しい口付けの後、妙の頭はゆっくりと下りてゆき、新八の勃ちかけの陰茎の前で止まった。  
まだ、吐きだした白濁で濡れたままの陰茎に、妙の白い指が巻きつき、その先端が彼女の温かい口の中に含まれると、新八は熱い息を吐いて、腰を震わせた。  
妙は上目遣いに新八を見ながら、彼の亀頭の皮に舌を差し入れ、剥き始めた。  
ビクビクと震える新八を、愛おしそうに見つめる妙。  
目元が赤く染まって、新八を見上げる視線が切なそうに歪む。  
妙は、剥きたての新八のカリを激しく舐りあげた。  
残りの精液も吸い出すように、頬が凹むほどしゃぶり、唇の裏で扱き上げるように、カリ首を攻め立てた。  
「姉上……ッ」  
再び、達しそうになった新八は、必死で堪え、妙の頭を引き剥がした。  
「っんむ……今度は、お口の中で、全部出していいのよ……新ちゃんのだったら、全部飲んであげる」  
舌なめずりしながら見上げてくる姉の表情に、心臓を掴まれる。  
新八は愛しい少女の目線まで腰を下ろして、彼女の目を見て言った。  
 
「今度は、姉上が気持ちよくなる番ですよ……僕だって、姉上のこと好きなんです……気持ちよくしてあげたいんです」  
新八の言葉に、今更ながらに頬を赤く染めた妙は、「新ちゃんに、そんなことできるの」と言って、顔を背けた。照れているらしい。  
「……できますよ?」  
新八は、妙の両膝に手を掛けると、そのまま、膝裏を持って、妙を押し倒した。  
 
膝頭を左右に大きく広げて、妙の脚をM字に開脚させる。  
「やだ…っ、新ちゃんっ、ちょっと…ッ」  
先程の、新八を翻弄していた姿はどこへやら。形勢が逆転した妙は、可愛らしいくらいに狼狽していた。  
「んっ……だめぇ…っ、んはぁあ…っ! っぁ、あ、あっ!! 」  
新八は、妙の滑らかな太腿を、指が食い込むほど押さえつけて、開かれてあらわになった彼女の秘唇に、己の舌を差し込んだ。  
既に溢れるほど蜜を滴らせたそこに、新八の舌が音を立てて出し入れされる。  
妙は淫らに腰を揺らして、溜まらず嬌声を上げた。  
己の股間にしゃぶりつく弟の頭をどかそうと、彼の頭に両手を伸ばすが、震える指先は力なく、新八の髪をかき乱すに止まった。  
新八は更に激しく舌を使って、妙の内部を掻き回す。  
「……姉上の、味がします」  
「しゃ、べらな…でぇっ!…んああッ…あうぅ…ッ」  
妙の体の奥から、ぬるぬると粘度の高い液体がとめどなく溢れだす。別の生き物のように動く新八の舌が、彼女の体を更に熱くする。  
新八はまさに犬のように、ぴちゃぴちゃと音を立てて、姉の秘唇を舐めあげた。  
赤く充血した敏感な突起も、小刻みに叩くように舌でねぶる。  
妙はびくんびくんと派手に体を痙攣させた。彼女の全身に甘く激しい電流が流れ、彼女の中の欲望を大きく膨らませる。  
「だめなのぉっ…!! …っあんっ、ぃっ、いっちゃうぅっ!! …しんちゃあん!!! 」  
妙は、彼女の太ももを掴む新八の手をその上から強く握り、彼のもたらす快楽に、その身を預け―――達した。  
 
小刻みに痙攣し、頬を桃色に染め、潤ませた瞳で浅い呼吸を繰り返す妙。達した直後の、快楽に溶けきった無防備な表情が、新八の情欲を更に煽った。  
すでに抑えが効かなくなっていた新八は、もどかしげに猛った己を、ぐちょぐちょに蕩けた妙の秘唇に宛がった。  
「姉上……限界です。……姉上の『純潔』を、僕に下さい。」  
熱に浮かされた表情で、少女の衣装を身に纏った少年は、己の姉を組み敷いた。  
 
「新ちゃん……ダメよ……。 結婚するまでしないって、決めてるの……。  新ちゃんとは、結婚できないもの  」  
「そんなの…いまさら…っ」  
散々挑発してきて、新八をここまで追い込んだのは妙の方だった。しかし妙は、最後の一線だけは踏み切らないようだ。  
互いが互いを求めているのが解るだけに、新八は妙の態度が解せなかった。何より、新八は妙を抱きたいという衝動が膨らみすぎて、このまま力任せに挿入して、無理矢理繋がってしまおうか、と考え始めていた。  
新八の考えを、その表情から読み取ったのか、妙はとっさに搾り出すような声を出した。  
「お父上に…っ、結婚するまで純潔は守るものだって……、約束したから……」  
亡き父のことを語られては、新八も思い留まるしかなかった。  
二人にとって、最も大切な人間の一人であったから、流石に父を裏切ることだけは、新八も避けたかった。  
しかし、どうにも治まりきらない情欲の炎と妙への想い。  
新八は宛がった己の先を、腰をグラインドさせて、妙の肉の芽に擦り付けた。  
「あはぁあ…っっはぅんッッ!!」  
官能の吐息を漏らして顔を歪める妙に、新八は囁きかけた。  
「じゃあ、ナカには挿入れません。……これは、一緒に気持ちヨクなるだけです……。ただの、スキンシップです。」  
そういうと、亀頭の先を、妙のクリトリスに執拗に擦りつけ始めた。  
 
陰茎全体を妙の秘唇に押し付け、前後に腰を振って、擦り上げる。  
ぶじゅぶじゅと卑猥な水音が、擦りあわされる妙の秘唇から溢れた。  
その愛液が新八の肉茎に纏わりつき、絡まって、ますます滑りを良くしていく。  
 
「ああぁあっっんんぁあっ…き、きもちいいよぉっ…しんちゃぁんッッ…!!」  
 
淫らに喘いで、妙も自ら腰を突き出した。  
新八は妙の太腿を閉じ合わせて掴み上げ、間に己の肉茎を挟み込んだ。  
先端はヌルヌルの妙の入り口を擦り、竿の部分は、妙の太腿で扱かれる按配になる。  
新八の陰茎全体は、すっかり妙の愛液で覆われて、ぬらぬらとイヤラシイ光沢を纏っていた。  
「新ちゃんのおちんちん……気持ちイイ…っびくびくいってるぅ……っ」  
「姉上のここも、ひくひくいってますよ…、いやらしい汁で、とろとろになってます……」  
新八は妙のクリトリスと自分の陰茎を擦り合わしながら、妙の秘唇の奥に指を差し入れた。  
脚を閉じ合わせて持ち上げられているので、余計に強く、妙の膣内は収縮し、新八の指をしっかりと咥え込んだ。  
―――本当に、処女なんですか? こんなに淫乱で、感じまくってるのに?  
新八はわざと、意地悪く囁いた。  
妙は喘ぎで声を途切れさせながら、首を横に振った。  
「やぁ…んっ…ち…ちが…っっ」  
「何が違うんですか?……お漏らししたみたいに、びしょびしょに濡れてますよ」  
「あぐぅうう…っしん、ちゃ、……あひ…っ、だぁ…だめぇえっ……!!!!」  
新八が妙の中でばらばらに指を動かすと、妙は早くも限界に近づいたようだった。  
「あね…うえ…っ」  
 
―――最高にいやらしくて、最高に素敵です……。  
 
新八は歯を食いしばると、妙の太腿をしっかりと抱え、腰を激しく振り出した。  
猛スピードで陰部同士が擦り合わさって、妙は何度も痙攣した。  
汗や愛液が飛び散って、畳に染みが出来た。  
尻を硬くして、何度も執拗に妙の陰唇の間に己の先端を滑り込ませ、擦り上げる。  
妙の陰部と己の陰部が直接擦りあわされる快感に、新八はついに意識を手放した。  
真っ白に焼ききれる、数秒間の後、新八は妙の白い腹の上に、己の白い欲望を吐き出していた。  
 
己の上に吐き出された弟の精液を、妙は愛おしそうに腹の上に塗りたくった。  
「いっぱい出たわね……」  
どろどろになり始めた腹と右手を気にも留めずに、満足そうに繰り返す。  
新八は、出しつくした後で、何やらとんでもないことをしてしまったのでは……と、己の行いに罪悪感を覚えていたのだが、妙が幸せそうな顔をしてくれるので、救われたような気持ちになっていた。  
――――しかし、一体どうするんだ? きょうだいでコンナコトになってしまって………。  
眼鏡を探してかけてみれば、化粧は崩れ、身体は様々な汁で汚れ、お互いの口紅が身体の至る所に付着している二人の姿は、凄絶なものがあった。  
――――とりあえず、風呂、だな……。  
難しい事を考えるのは後回しにして、新八は「お風呂沸かしてきます……」と、席をたちかけた。  
すると妙は、新八の手を握って言った。  
 
「一緒に入りましょう?」  
―――また、しましょうね。スキンシップ。  
 
にっこり笑う妙の笑顔をみながら、新八は心の中で呟いた。  
今度「スキンシップ」をすることがあるなら、そのときは「間違って」彼女の中に挿入ってしまうかも知れない………と。  
 
 
 
 
<了>  
 

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