普段なら耳障り以外の何ものでもない、屋根瓦を打つ激しい雨音に意識を集中した。
じっと奥歯を噛み締めて、土方は目の前の異様な光景を見つめている。
「まだよ、どうして待てないのっ」
広い座敷の片隅で声を荒げる妙の足が、桃色の着物の裾を割って畳の上に座る男を蹴っている。
「雨が降って、もっともっと降って、それで……!」
女とは思えないほど力強い蹴りを受けて、座っていた男が畳の上に仰向けに倒れこむ。
どこで拾ってきたのか、趣味の悪いネクタイを首に結んだ近藤はそれ以外何も身につけておらず、
堂々と晒した股間には天井を貫くかのように、太い根がそびえていた。
「待てって言ってんだろうがぁあ!」
雨音をも掻き消すような大きな声を轟かせ、妙が近藤の脇腹を蹴り続けている。
激しい雨音が、あの、志村邸を土砂が飲み込んだ悪夢のような夜を彷彿させて
妙の精神を崩壊させたのだ、と。
土方は思いながら、天井をじっと見据える近藤の太い根から白い精が放たれるのを
じっと待っている――せめて。
せめて近藤が九百五十を超えるのを待ってくれたら、と願いながら。