「…寒」  
 
 昼間の陽気な天気は何処へ行ったのだろうか。  
 長い冬にもようやく終わりを告げ、春を迎えようとしているこの時期。  
 夜更け、それも夜明け間近ともなれば、  
 涼やかな風が吹き付けて未だ晩冬だということを嫌でも身体に思い知らされる。  
 上掛けも何も無い状態では、冷えを感じて目が覚めてしまうのは当然のことだった。  
 「ったく、今何時だよ」  
 布団脇に置かれた時計に目を遣れば、示された時刻は午前四時。  
 土方は忌々しそうに舌打ちをした。  
 いつもならこんな半端な時間に目が覚めてしまうことなどないのに。  
   
 突然冷ややかな空気が身体に纏わりつき、  
 それまで漂っていた夢の世界から、瞬時に現へ引き戻されたのだ。  
 ふと、隣に視線を移せば安らかな寝顔の、沖田の姿。  
 どうやら、沖田が寝返りを打った時に上掛けを、全部持っていかれたようだ。  
 沖田は、暖かい上掛けにすっぽりと包まれて、規則正しい寝息を立てている。  
 「…っつーか、何でコイツが俺の部屋に居るんだ」  
 沖田が布団に忍び込んできたことに気付けない程までに  
 油断しきって眠っていた自分に僅かなショックを感じて、土方は思わず嘆息を落とした。  
 眠りを妨げられて腹ただしくも思えたが、  
 気持ち良さそうに眠る沖田を無理に起こしてしまうのも気が引ける。  
 運悪く、部屋には予備の上掛けは無い。  
 とりあえず土方は、手近にあった隊服を上から被るとゴロリと再び横になった。  
 これでも、多少の寒さ凌ぎにはなる。  
 横で眠る沖田から上掛けを奪うつもりは毛頭無い。  
 きっと無理に引っ張れば、目を覚ましてしまうに違いないだろう。  
 
 少々肌寒いけれど、今日は我慢する事にした。  
 気付けば、空が徐々に白み始めていた。  
 障子の隙間から、光が細く差し込んでいる。  
 起きるにはまだ早すぎる時間。  
 けれど、すっかり目が覚めてしまった。  
 これではもう一度、眠る事が出来るかどうかも分からない。  
 「ん…」  
 寝返りした後の体勢が気に食わないのか、  
 小さく身じろぎした沖田が、布団の隅で縮こまっていた土方の方へとすり寄って来る。  
 「…」  
 ぴたり、とくっ付いた身体から、熱が伝わってきた。  
 土方は、ぼんやりとその寝顔を間近で見つめる。  
 こんなに近い距離で彼女の顔を見たのは久しぶりだった。  
 (道場にいた頃はよく一緒に寝ていたモンだけどな)  
 幼い頃の面影を残しつつも、どんどん洗練されていく沖田に  
 何とも言い難い焦りを感じている自分に気が付いたのはごく最近のことだ。  
 
「昔はもっと素直で可愛かったんだがなァ…、生意気になりやがって」  
 口を開けば憎まれ口ばかり叩く沖田の姿を思い浮かべて、  
 土方は無意識に口角を上げた。  
 時折、沖田の唇が震える。  
 何やら言葉を紡いでいるようだけれど、あまりに微妙な動きで全く見当が付かない。  
 
 一体、どんな夢を見ているのだろうか。  
 穏やかな表情で。  
 戦の最中に見せる表情とはまるで別物。  
 
 そこ等の男より格段に強い割に、何処か危なっかしくて放っておけない。  
 あまりにも鋭く削られた刀は、些細な衝撃で折れやすい。  
 どうしても、いつか彼女が壊れてしまうのではないかと思ってしまうのだ。  
 「あはっ」  
 沖田の唇から小さな笑い声を漏れた。  
 目を覚ましたのかと思いきや、仮にも真選組一番隊隊長ともあろうものが  
 だらしなく口を半開きにして薄ら笑いを浮かべている。  
「…ったく、こんなんじゃ隊士に示しがつかねェじゃねえか」  
 土方は微苦笑を湛えながら、小さな溜息を落として  
 沖田の顎を人差し指で軽く押し上げて口を閉じさせる。  
 それに反応したかのように、一瞬しっかりと閉ざされていた瞼がピクリと動く。  
 併せて長い睫が、僅かに揺れる。  
 起こしちまったか、と内心慌てるも、それでも彼女が起きる気配は一向に無い。  
 
「何だよコイツ。こんなに鈍くて良いのかよ?」  
 呟いてみるが、その問いに答えが返ってくる筈もなく。  
 気付くと土方は総悟の唇に自分の唇を重ねていた。  
 柔らかい感触が唇に伝わるのと同時に、土方は舌で総悟の舌を撫でた。  
 
 互いの舌を絡みあい、唾液がいやらしい水音をたてる。  
 「お前・・・・・起きてんの?」  
 再び土方が問いかけるが、一向に目を開ける様子は無い。  
 こんなにも熟睡して起きない沖田を見て、土方はうっすらと笑って  
 服の上から沖田の乳房を揉み始めた。  
 いつ起きてもおかしくないこの状況に、僅かなスリリングを感じていた。  
 「……っ…ぁ………」  
 聞こえてきた小さな喘ぎ声に目を覚ましたかと冷や冷やしたが、目は閉じたままで安心した。  
 乳房を揉みながら、反対側の手で沖田の服を脱がせ始めた。  
 
 着物は左右に大きく開かた。土方の手のひらが、沖田の乳房を直に揉み始める。  
 「ひ…ぅ…」  
 初めて触る沖田の乳房は、土方の躰のどの部位にもない柔らかさだった。  
 男と女の躰のつくりの違いを改めて感じ取り、土方の男の本能が動きはじめていく。  
 「あっ……んっ……。」  
 乳房を揉まれるたび、沖田が何度も小さな声を漏らす。  
 土方は、沖田の乳房の前に顔を近づけると、小さな突起をつくっている乳首に吸い付いた。  
 「はぅっ……」  
 沖田がびくんと反応する。  
 ちゅっ…ちゅぱっ…ちゅぱっ……  
 布団の中で、小さな音を立てながら、土方は沖田の乳首に吸い付き、乳房を激しく揉み上げる。  
 暫くそうしていたが段々物足りなくなり、  
 ゆっくり空いている方の手でもそもそと彼女の腰の後ろ下の膨らみを掴んだ。  
 「……っぁ…」  
 少し間を置いて、土方は沖田の後ろから乗りかかって手を腰まわりに添わせた。  
 そして袴の紐をスルリと解き、臀部を出させた。  
 「……んん…」  
 どうやら沖田は寝相の体制を変えようとしているらしいが、押さえ込む状態でそれを阻止する。  
 
「あ?あんだコイツ……寝ながら感じてやがる」  
 「ひっ!」  
 ズブリと指が濡れている沖田の穴を挿す。  
 「ひ、土方さっ……やぁ…………」  
  沖田の声が掠れる。その声にハッとする土方。  
 「って………やっぱ起きてたのか」  
 土方は穴の中で蜜と指を掻き回し、刺激しながらそう言う。  
 「んっ……んっうぁ…………、殺す……土方ぁ…………。あっ、ソコ、は」  
 土方は沖田の言葉にニヤリと笑うと、反応のよかった部分を激しく突いた。  
 クリトリスも同時になぞりながら、沖田の顔色を伺う。  
 「………っ!!!死ね………土方コノヤロー……!」  
 顔を真っ赤にしてそう呻く。土方は沖田の全身の力がふわりと抜けるのを感じた。  
 その身体から土方は指を抜き、仰向けにさせる。  
 「ハイハイ。…イッちゃいましたか総悟クン」  
 「……こんなのっ……犯罪…」  
 「じゃあソレに感じちゃった総悟クンも共犯ね」  
 力の抜けた沖田の両足を開く。息を荒げる口を塞ぎ、そのまま身体を重ねる。  
 「……もっといいもの射れてやるよ」  
 土方の根が沖田の未知の部分に差し込まれた。  
 「ひ!?……あぁ……!!」  
 沖田の腰がビクリと跳ねた。  
 
 「いっ…!そんな締め付け…んな…落ち着け…」  
 「そ、そんなぁ……土方さ…………抜けぇ……」  
 「ここは嫌がってないぜ?しっかりくわえ込んでるしな」  
 涙を浮かべた虚ろな瞳に土方の心臓が高鳴る。  
 すらっとした沖田の太股がさらに興奮を煽った。その太股をぐいぐい押して、限界まで脚を開かせる。  
 奥まで土方の根を込めて行く。  
 「いたぁ…………。うぁ、んっんっ……!」  
 突き続ける土方に対して、喘いで自然と快感を求める沖田。  
 「もう駄目っぽいわ……おい総悟ぉ、日頃の恨みだ、晴らさせてもらうぜ…!!」  
 沖田は土方の発言に混乱している。  
 ただ、徐々に膨らむ感触と刺激が込められた穴を濡らす。  
 「い、いやぁだ………外に、外に出して……!」  
 沖田の必死の懇願も聞き入れず、土方はそのまま中で射精した。沖田は、自分の奥で注ぎ込まれる熱を感じた。  
 暫くして自身を抜くと同時に、膣口から愛液があふれ出している。  
 沖田の脚がぐったりと投げ出された。  
 その脚を撫でながら土方は口を開いた。  
 「意外と感じてたのか」  
 「違………!!変態副長、生で出すし…。子供でも出来たらどうすんでィ…」  
 涙目でむくれる沖田に、土方は言う。  
 「安心しろ。ちゃんと責任はとってやる」  
 「な…………!!」  
 沖田は頬を真っ赤に染めて、土方を凝視する。いつもなら湯水のように出てくる悪態も、今日は何処かに置いてきたようで…。  
 「もう寝る!!」  
 そう言って強引に目をつむると、向こうを向いてしまった。  
 
「絶対責任トレヨ……」  
 その言葉に笑を浮かべて、土方の傍らで、夜明け間近ということですぐさま眠りについた沖田を見つめた。  
 いつまた襲われるか分からないというのに、無防備な体制。どこまで隣にいることを許しているのだろうか。  
 土方は、再び小さく身じろぎをした沖田をその胸に抱き寄せた。  
 滑り落ちた上掛を、華奢な肩にしっかりと被せて。  
 (最後の最後に、お前が許せる相手が俺しかいないようにしてやる)  
 
 人差し指に沖田の柔らかな髪を一筋、巻きつけた。  
 するりと抜けるように解けるそれは、まるで絹糸のようだった。  
 彼女の髪を梳いているうちに不意に襲ってきた眠気に  
 土方は素直に意識を委ねるように、ゆっくりと瞳を閉じた。  
 
 自身の胸に、すっぽりと包まれている沖田を、  
 もう一度強く抱き寄せてから彼女の細い指に自分の指を絡めて口付けを落とす。  
 
 夜明けは、もうすぐだ。  
 きっと、目が覚めた彼女に散々な目に合わされるに違いないだろうと薄れていく意識の中で思った。  
 
 
 
 
 
 
終われ。  
 

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