見知らぬ部屋で妙は目を覚ました。
体が酷くだるい。
何とか動く首だけを動かして辺りを伺う。
行燈が一つだけ灯された殺風景な畳敷きの部屋。
その中央に敷かれた布団の上に妙は横たわっていた。
――ここは…どこなの?
ぼんやりとしていた意識がはっきりとして来るにつれてだんだんと不安になる。
仕事が上がりスナックすまいるを出た帰り道、その途中で記憶が途切れていた。
起き上がって状況を確かめようにも体がうまく動かない。
何とか畳の上を這い廊下に向かうとその先からかすかに足音が聞こえた。
ぎくりと妙は動きを止める。
緊張に鼓動が高まる中、足音が通り過ぎることを期待したが無情にもそれは裏切られ
妙の目の前の襖が静かに開く。
「気がつきましたか!お妙さん。いやぁ、よかった」
襖の向こうから現れたのは良く見知った人の良さ気な笑い顔だった。
緊張の糸が解けた妙は思わず微笑み返す。
「よかったわ。近藤さんだったのね。銀さんのせいで私まで何か良からぬことに巻き込まれたのかと…
私、気を失ってしまっていたのかしら?ごめんなさいね。でも、まだ本調子じゃないみたいで立てないの」
いつになくしおらしく近藤を頼る妙の態度の所為か近藤はますます上機嫌で妙を気遣った。
「それは良くない。もう少しここで横になっていってください」
軽々と妙を抱き上げ布団に寝かせる。
たくましい腕と少し高い体温がなんだか心地良い。少しだけ幼い日の記憶の父を思った。
――根は良い人なのよね。あの思い込みとストーカー癖さえ無ければ少しはましなのに。
気が緩んだ所為かすぐそばで微笑みかける横顔を眺めながら珍しく近藤に対して前向きな感情が妙に芽生えていた。
しかし、すっかり安心しきった妙が布団の上で目を閉じかけたそのとき
「少し薬が強すぎましたね。すみません」
近藤が変わらぬ表情のままそう言った。
「え?」
妙は閉じかけた目を見開いた。
反射的に目の前で薄気味悪く笑う顔に殴りかかる。
「お前の仕業かぁぁ!ケツ毛ゴリラぁぁ!!」
が、相変わらず妙の手足はその機能が麻痺したままで少し上体を浮かしただけで妙はがくりと
その場に崩れてしまい近藤がそれを抱きとめた。
「お妙さん。いけませんよ、まだ無理をしては」
優しく言い聞かせる様に言うが最早信用ならないその男の腕から逃れようと妙は体をよじる。
「やだ。ちょっと、離して」
弱々しくもがくほど抱きしめる腕に力がこもる。
何とか反撃しようと睨みつけた先には今迄妙が見たことが無い表情が、
欲望にかられた男の凶暴な眼差しがあった。
――何とか逃げなきゃ、でも、どうやって?
考えている隙にも妙を抱きすくめたまま離さないこの男は妙を下敷きにしてその上に覆いかぶさってきた。
「いいかげんにしなさい!これ以上変な事したら承知しなっんっ…んぅっ!」
唇を奪われ言葉をさえぎられる。
「どう承知しないんです?」
耳元でいつもより低い声で囁かれ背筋がぞくりとした。
「や、やめろっていってんだろうが!発情ゴリラが!離っ…せ…んぐっ」
背筋をかすめた快楽の予感を振り払うように罵詈雑言を吐き散らす妙の口を近藤が口付けでふさぐ。
「んー!んっうぅっっ!!うっぐぅ!」
なおももがく妙の着物の前が乱暴に肌蹴られ胸の小さなふくらみを近藤の手が包み込み強く握った。
妙の口内で暴れる近藤の舌は的確に妙を高ぶらせるよううごめく。
握られた胸の先端ときつく閉じた両足の間でざわつき熱を持っていく自身の欲望に
妙が気付くまで大して時間はかからなかった。
――だめよ。流されちゃ。こんなヤツにこんな風に抱かれて感じたりなんて!
そう考えるのとは裏腹に長い口付けから開放された妙の頬と胸元が紅潮している。
艶めかしく乱れた呼吸と尖り始めた胸の突起がいやらしく感じられ妙は自分の体の浅ましさに失望した。
「綺麗ですよ。お妙さん。…ここも」
妙の両足を割りそこへ潜り込んだ近藤が桃色の割れ目を舌でなぞり
既にたっぷりと溢れた愛液を舐め取っていく。
「やめなさい!変態!ゴリラ!いやぁぁ!!はぅっ、やめ……お願い…!」
内部を犯す舌に翻弄され抵抗する妙の声は途切れ途切れになっていく。
太ももをかすめる近藤のひげのくすぐったい感触にすら快感を見出していく体に妙は恥辱を覚え顔を真っ赤にさせた。
――うそ…こんなの違う…!
「どんどん溢れてきますよ。感じてるんですね?ほら」
そう言って近藤はあふれ出した愛液を指で救い妙の唇にあてがう。
「…!!」
「嬉しいなぁ。やっぱり俺のこと愛してくれてるんですね!お妙さん!」
「なに言ってんの!?勘違いもほどほどにしてください!こんなのどうせあなたの嗅がせた薬の所為でしょう!?」
勢いでそう言って妙は薬の所為ならこんなにも体が反応してしまうことに言い訳が立つ事に気がつく。
――そう、こんなことされて感じてしまうなんて私らしくないもの。なにか変な薬のせいなんだわ。
わずかな希望にすがるように自分に言い聞かせる。が、
「そんな効果はありませんよ。ただ少し気を失うくらいです。むしろ感覚は麻痺してるんじゃないですか。
…まだ手足は上手く動かないんでしょう?」
「そんな…!!」
希望はあっけなくも崩されてしまった。たしかに手足の機能はいまだ麻痺している。
そんな状態で強姦まがいの扱いを受けてこんなにも自分は高ぶっているのか…。妙は混乱した。
「ひっ!?やめて!いや…ぁっ!!」
その隙にも近藤が舌先で弄り口付けるように吸い上げ赤く尖らせた妙の淫核を甘噛みする。
びくりと跳ねた腰を抑え2本そろえた指を一気に深く差し入れた。
「あああっ!」
指を左右にねじり押し広げる。
「ひぁう!ああ…ぃううぅっ……!!」
節くれ立った無骨な指が膣内を前後に動き乱暴にかき回す。その間も舌は淫核を責め続けている。
「だめ…だめぇ…お願い…もう…」
涙ながらに懇願する妙は、酷く扇情的だ。しびれたままの手でもう止めてと自分を責める近藤の腕にすがる。
しかし、その意思は近藤には微塵も伝わらない。
「もう欲しいんですか?おねだりなんて、可愛いなぁ」
「なっ!違っ、やだ!いやああぁぁぁああぁっっ!!」
引き抜かれた指の代わりにさらに太く熱く凶暴なモノが妙の膣内を蹂躙する。
「っ…最高ですよ。お妙さん」
「ああ…」
膣内に深く近藤のモノが挿入っているのが分かる。妙はきつく唇をかんだ。
しかし、感じまいとする程敏感になる妙の膣内はくわえ込んだソレを強く締め付けていく。
「凄い、お妙さんのここ絡み付いてきますよ」
「やだ!抜いて!抜いてェ!ああぁっ!やだあぁぁ!」
近藤は激しい動きで膣肉を擦り上げていく。
――だめ!感じちゃだめよ。こんなヤツに無理やり入れられて感じるもんですか!
必死に自分に言い聞かせ目を閉じ体を強張らせる妙の胸を近藤が口に含み硬くなった先端の輪郭を舌でなぞっていく。
浅く入り口を弄り最奥まで一気に突き入れ深くつながったままさらに腰を押し付けるように揺さぶられると
妙の体の奥が酷く熱くなって行く。
――いや、いやぁ。ダメ。イっちゃう…。だめぇ!
「奥が凄く締まってひくついてますよ。イキそうなんですね。お妙さん。…俺ももうたまんないです」
再び近藤が動きを速める。
「やっ!やめてぇ!!あっ…ああっ、ふぅっ!あああああぁっぁァァ!!」
熱くなった体の芯を揺さぶられ妙は絶頂に至った。
締め付けが酷く強くなった膣内を堪能した近藤も程なくして果てる。
「うっ…!」
妙の膣内に生暖かい体液が大量に勢い良くほとばしった。
「あぁっ!!」
――…うそ!中に…出てる。ダメっ、やだ!
その感触に身震いする妙を強く抱きしめて満足気な近藤に妙が罵声を浴びせる。
「てめっ!なに中に出してんだぁぁ!!」
吐息で途切れ途切れの声はうわずっていてもちろんいつもの迫力などない。
「大丈夫ですよ。お妙さん。責任は取ります。お妙さんの子供なら可愛いだろうなぁ」
冗談じゃないこんなゴリラ男との子供なんて真っ平ごめんだ。
妙は近藤を睨み付けた。
「もう気が済んだでしょう。離して―――きゃっ」
離すどころか近藤は妙の体を抱き起こし繋がったままひざの上に乗せた。
混ざり合った精液と愛液でズルズルになった妙の膣内で近藤の陰茎がまた硬くなっていく。
「ひっ、やだっ!もう止めて!抜いてちょうだい!」
早く膣内を洗い流さなければ、と妙はそればかり考えていた。
よしんば止めてもらえたとしても自分で動けない今の妙にはかなわないことなのに。
下から腰を打ち付けられ、イったばかりの妙の体が今まで以上に敏感に反応する。
「ふあぁぁっ…!んゃあっ!あっん…ぅぅあああぁ…」
膣内がひくひくと痙攣する。体が熱い。不随意的に涙が溢れた。
「お妙さんっ!さっきより凄いですよ。うわ、押しつぶされそう…」
大量の体液でぬめる妙の膣内がきつく締め付けるのを堪能しながら近藤がだらしなく喘いでいる。
それを意識の遠くに聞きながら妙の心はただ行為が終わることを強く願った。
「お妙さん腰動いてますよ。いやらしいなぁ。」
が、どこまでも心と裏腹の妙の体は勝手にいやらしくうごめき近藤を求めていた。
――うそ。なんで?こんな男にここまでされてなんで…
「こんなにいやらしい体に一体誰にされたんです?…万事屋ですか?」
「……!!」
「お妙さん、俺が見てるの知っててあいつに抱かれたんでしょう?俺にやきもちを焼かせようと思って」
たしかに妙は銀時と通じたことが何度かあった。
まだ恋人かどうかは良く分からなかったけど妙は銀時に惹かれていた。
求められるのが嬉しくて夢中で銀時に抱かれた。
それをこの男に見られているなどと気付かずに。
「なぁにがやきもちだ!このヘンタイ!見てたですって!?――ひぅっ!ああぁァ…っ」
近藤が激しく腰を使いつつ妙の淫核を指で押しつぶす。
本当は摘み上げようとしたのだが妙のそこは小さく結果的にそうなった。
それでも妙の反応は十分だったので指先を何度もそこにこすり付ける。
そのたびにびくびくと妙の細い背中がしなった。
「俺は全部見てましたよ。知ってるんです。お妙さんのことは全部。お妙さんが初めてあいつに…
男に抱かれた日の事も」
「なっ!?」
「あれから毎晩お妙さんを見てました。だから俺知ってるんですよ。お妙さんがどこが感じるのか。
あいつに抱かれてどんな風に感じてたのかどんな声を出してたのか。全部。でも今日が一番綺麗ですね」
この男は何を言っているのだろう。
「ぁあっ…残念…だったわ…ね…ぁはっ、処女じゃなくて……ああぁっ!」
精一杯気力を絞り蔑み笑って妙は言った。だが、無情にもその表情も口調も快楽に流されていく。
そんな妙の姿が煽ったのかさらにとんでもないことを近藤は言い出した。
「でも、こっちはまだ処女ですよね?」
太い指がぬるりと妙の後ろの穴をなでる。そこは妙の膣内から溢れ出した2人分の体液でぬめっていた。
「俺のためにとっておいてくれたんですね。お妙さん。あいつがせがんでもここは許さなかったですもんね」
「違うわよ!なに言って…!!ぃっひぃぃっ!!」
抗議する間もなく妙の尻穴に近藤の指がめり込んでいく。
「いやぁあぁぁ!抜いて!やっ、痛い!痛い!」
突き入れられた指が性急に増やされる。
限界以上に広げられひくひくと震えるそこが赤く充血していった。
妙は苦痛に目を見開きようやく自由の利き始めた腕で近藤にしがみついた。
「お願い、…もうやめて」
声が震える。
「大丈夫ですよ。じきに気持ちよくなりますから」
懇願する妙の言葉を聞き入れず近藤は指で妙の尻穴を犯していく。
妙は近藤に強くしがみつき痛みをこらえる事しかできない。痛みと屈辱に涙が溢れた。
ゆっくりと抜き差しされるうち痛みに熱くなったそこからしびれるような感覚が妙を襲い始めた。
「んっ…んんっ……ぅ」
喉の奥から声が漏れる。
――うそ、きもちい…い……っ!
恥ずかしさに体中熱くなり犯され続けている尻穴と膣がきゅうとしまる。
もう痛みは無かった。
ずるりと妙の膣内から陰茎が抜かれその先端がさらに下へと潜り込む。
指が抜かれるとかわりに硬く怒張したモノが妙の尻穴を支配した。
「ひぎっぃっ!」
熱く硬い陰茎がそれまでよりも深く妙の尻穴を抉っていく。
仰け反る妙の中へ根元まで突き入れられたそれが一気に入り口付近まで引き抜かれる。
「ああああぁぁっ……ぁぁっ!」
――こんな、ストーカー野郎に…こんな、こんなこと!
思い人にすら許さなかった部分を犯され感じている自分が酷く惨めだった。
カシャ
聞き覚えのある音とともに一瞬、ひどく視界が明るくなった。
嫌な予感がする。
「俺とお妙さんの愛の記念ですよ」
振り返ると近藤がポラロイドカメラを構えている。
被写体は言うまでも無く…
「……!!」
あまりのことに妙は言葉を失う。
挿入する角度やアングルを変え何度かシャッターを切ると近藤はカメラを置いた。
「お妙さん!最っ高ですよ!!お妙さん!お妙さん!愛してますっ!お妙さん!!」
近藤が何事か叫んでいるが妙にはもう分からなかった。
何度も腰を打ち付けられるうち何も分からなくなっていく。
――おしり…おかしくなっちゃう。いや…!だめよ。こんなのでイっちゃ……!
幸いというべきか妙よりも近藤の方が早く限界を迎えた。
「お妙さんっ!俺っもう、イキます!おしりに出します!!うっ!!」
どくどくと注がれる熱い精液とそれに伴って脈打つ陰茎の感触が直腸を刺激し妙を絶頂へと追い立てた。
――だめ!だめぇぇぇっ!
「っ!あぁあ――――っっ……!」
妙の全身が戦慄き強張った下半身が濡れていく。
「はっ…あぁ……」
「うわ、派手にイっちゃいましたね。すごく綺麗ですよ。お妙さん」
やっと開放される。そう思い妙は脱がされた着物をかき集めた。
その手をつかんで近藤が妙に詰め寄る。
「これからは俺がずっと守ってあげますから」
「離してください」
ばしっ
何の事だか分からず妙は近藤を振りほどき張り手をお見舞いする。
一瞬表情をゆがめた近藤がすぐにまた気味が悪いほどの笑顔を浮かべ傍らにあった戸棚の引き出しから
何枚かの紙切れを取り出した。
「…これなんだかわかります?」
差し出されたのは写真だった。写っているのは銀時と妙。
2人が淫らに絡み合う姿がはっきりと写っている。
「なに…これ!?」
「新八君は何も知らないんですよね?」
そこまで言われて妙は初めて気付いた。
「脅迫のつもり?」
「こうでもしないとお妙さん、素直になってくれないですからね。その写真はお妙さんにあげます。
ちなみにネガはここにはありませんよ。大切にしまってありますから」
そう言う近藤の表情に悪意は見えない。
「あしたから毎晩”すまいる”にお迎えに上がります。女の子の一人歩きは物騒ですから。待っててくださいね。
約束ですよ。破ったらその写真、新八君に見てもらおうかな…ああ、さっきとったこれも。良く取れてますよ。ほら。
結婚まで貞操を守るって言ってた姉君がこんな淫らな姿を晒してるなんて知ったら新八君どう思うでしょうね?」
呆然として、妙は目の前で相変わらず笑ったままの近藤を眺めた。
――この人は壊れてしまった。壊したのはきっと私。そしてこれから、私はこの人に…壊されるのかしら……。
目の前がゆっくりと滲んでいく。妙は絶望のうちに再びその意識を手放した。
(終)