「どこ見てんですかィ、メス豚さんよ」
背後に気配を感じ、始末屋さっちゃんは数瞬のうちに飛びずさった。
首筋にははっきりと鳥肌が立っていた。
こんなボウヤ相手に私どうしたっていうのかしら。
声をかけてきた青年は、まだあどけなさが残る顔にさわやかな笑みを浮かべていた。
ただ一瞬、さっちゃんは体の芯にある何かが揺さぶられるのを感じたのだ。
「…何か用かしら、真選組のボウヤ。今、銀さんをティンカーベル的に見守っているの。
邪魔しないでもらえる?」
大通りに面したファミレスでは、銀時ら万事屋メンバーがいつものごとく、備品の破壊をともなうボケとツッコミを連鎖させていた。
さっちゃんは路地からそれをうっとりと見つめていた。
あぁ銀さんっその内角をえぐりこむような一撃を私にはぶちかましてくれないのかしら
…という甘く爛れた妄想は既に霧散してしてしまっている。
さすがは元御庭番衆だけあり、一般の通行人からは完全に死角になる位置をキープしていたはずだった。
「用? 言わねーでもわかるはずでさァ」
沖田は当然のように近づいてくる。
言葉を交わすことで、体の芯が再び疼く。
視線が交わり、もはや目をそらすことができなくなる。
さっちゃんはじりじり狭まる距離を保とうと、忍者らしからぬ無様な動きで後ずさった。
体の奥底で警鐘が鳴り響く。
ダメ、銀さん、銀さん、銀さぁん!
そう、あのキャバクラで初めてまともに話したとき、気づいてしまったはずなのだ。
問答無用で惹かれあっていることに。
「来ないでっ!」
気づけば路地の突き当たりまで来てしまっていた。
煤けた石壁を背に、さっちゃんはもはや逃げられないことを悟った。
一歩、また一歩、近づくにつれ心臓は高鳴り、頬が火照る。
二人の距離は残り数歩。
沖田は無造作に手を伸ばし、さっちゃんの襟巻きをつかみあげた。
容赦ない力で引き上げられ、目線が同じ高さになる。
息苦しさに半ば開いた唇へ、沖田のそれが重なった。
不気味なほど優しく甘い口付けの後、チクリと唇の端に痛みが走る。
獲物の味を確かめるように滲んだ血を舐めとると、沖田はさっちゃんを後ろの壁へと叩きつけた。
「さあ、始めやしょうぜィ」
痛みに意識が明滅している合間に沖田はさっちゃんの襟巻きを解き、
壁沿いに上へとのびる配管へ後ろ手に縛り付けた。
背中と手首のジンとした痛みとゾクッと背筋を走った何かをを押し隠し、
さっちゃんは氷のようなさめた目で沖田を見つめた。
「いい加減にしなさい。私で遊びたかったら血糖値3倍にして出直すことね。
脳みそまで皮かむってるようなボウヤに付き合う気なんてないわ」
「そうです…かいっ」
シュッ!
風音と銀のきらめきの後、忍者服の胸元は大きく切り裂かれていた。
そこから覗くむっちりとした谷間は、しっとりと汗にぬれてほのかに上気していた。
「つれねえふりしても無駄ですぜ?あんたみたいな最上のメス豚がよっ」
沖田の指は忍者服の裂け目からとろけるように柔らかなふくらみへと這い進み、
その中心で既にとがっていた先端をギュッとひねり上げた。
「ぁぐっ!」
さっちゃんは痛みと痺れとで熱い吐息をもらす。
メガネの奥の隠しようもなく潤んだ瞳を覗きこみながら、今度はやわやわと両方のふくらみをもみしだきだした。
沖田の目は土方に砲身を向けている時のようにギラギラと輝いていた。
楽しくってたまらねえといった風である。
「ぁふぅっ…んっ…はっ…やめなさ」
「物足りねえでしょう?」
そう言うと沖田は、乳房に爪をたてて強くつかんだ。
「い゛っ!…ぅ、ああっ」
痛みに悶えながらも、とろんとした眼差しは明らかに情欲の色に染まっていた。
節操のない反応を恥じ、さっちゃんはわずかながら理性を取り戻す。
「ふっ…ぅ、ダメ、よ、銀さん以外にされて、感じたりなんか、しないのっ」
「つまらねー意地はほっときやしょーぜ?今あんたを鳴かせてるのは旦那じゃねえ」
乳首に爪が食い込み、さっちゃんはビクンビクンと腰を震わせた。
爪をさらに食い込ませながら、沖田は低く訴えかけるような声で続けた。
「あんたの気持ちも俺の気持ちも関係ねえんでさァ。
最っ高に具合のいいSとMが出会っちまった。それで十分なんじゃねーんですかィ?」
言葉を紡ぐひたむきな視線、微かに上気した頬、そして何より腰に当たる張り詰めた熱の塊が沖田の異常な興奮を物語っていた。
さっちゃんももはや体の芯に走る疼きを抑えきれない。
沖田の熱に溶かされてみるのもいいかもしれない…さっちゃんの中の何かがささやく。
心からの拒絶なんてできないことは、追い込まれた瞬間から感じていたはずだ。
二人はもう出会ってしまったのだから。
「私の眼鏡を…眼鏡を外しなさい」
世界は一瞬にしてぼんやりとした闇に覆われた。
明日が見えないなんて言っていたとおり、もう今しか感じられない。
視界が奪われたところで沖田を銀時と思えはしないし、さっちゃんもそんなことをしようとしたいわけではない。
銀時以外を受け入れる自分に対する精一杯のごまかしである。
「メス豚モードONですかィ?楽しみやしょーぜ」
沖田はさっちゃんのショートパンツを下着ごと引き下ろした。
邪魔なブーツごと足から剥がし、そばに放る。
「やっ、いきなり?」
ぼんやりとしか世界が見えない今、ひとつひとつの行為が予測つかない。
「おもしれー色ですねィ」
しゃがみこんだ沖田は、薄紫色のアンダーヘアを触れるか触れないかの手つきでなでた。
そして、中心付近の数本に指を絡ませ、一気に引き抜く。
「んくぅっ!」
涙目になりながらも、さっちゃんは満たされなかった衝動が癒されていくのを感じた。
知らず息が荒くなっていく。
「あーあー痛えでしょう?血が滲んでますぜ」
ズキズキと脈動を伝える傷口に、突然ぬめっとした生暖かいものが触れる。
ぴちゃぴちゃと傷口を這い回ったそれは、つつつと降りて尖りかけていた芽をなぞった。
「ふぁあっ…んぅっ!あっ、あっ、あうっ…はぁぁ…」
それは敏感な芽をチロチロと往復し、ふっと離れる。
次の瞬間、尖りきった芽がちゅうぅっと吸引された。
「…ぁ」
世界が真っ白に明滅し、ビクンと体がこわばったその刹那、
吸われ尖った芽に牙が突き刺さった。
「ゃああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
もはや区別もつかないような痛みと快楽の狭間で、さっちゃんの意識と体はビクビクと跳ね回った。
強烈な刺激に、声を抑える余裕すらない。
「ああぁっ!!…あぁぁ…ぁぁ…ぁ」
あまりのことに、極を越えても余韻に体がびくつく。
「ぁぁ…はっ、はっ…ひどい、わ」
さっちゃんは息絶え絶えに、沖田の顔があると思しき場所を睨む。
乱れた髪が頬に張り付き、焦点の合っていない眼は熱っぽく視線を彷徨わせる。
「物欲しそうな顔しやがる。まだ足りねえんですかィ?」
沖田はさっちゃんの片足を抱えて立ち上がった。
引き締まった形のいい足を肩に担ぎ上げ、隊服の前をくつろげた。
「待っててくだせェ、すげーもんぶち込んでやりやすぜ」
これだけのことをしておきながら、肉棒で入り口を探る沖田の動きは年相応のぎこちなさがあった。
さっちゃんにとっては焦らされているようでたまらない。
嫌悪に身をよじる風を装いながら、ちょっとだけ腰をあげて位置を合わせた。
沖田は口の端に笑みを浮かべ、さっちゃんはばつが悪そうに顔を背けた。
顔に似合わないボリュームある物体がさっちゃんの中心部に添えられる。
ちゅく。
わずかに先端が食い込む。
あふれ出る蜜が沖田のモノを伝って流れた。
しかし、腰を固定したままそれ以上動かそうとしない。
「…ぅ…ぶちこんで、くれないの、かしら?」
何かに耐えるようにさっちゃんは恥ずかしげに体を震わせた。
沖田はさっちゃんの頬をなでると、そのまま優しく梳くよう長い髪に指を絡め、
ぎりっと引っ掴んだ。
「っ、言葉遣いが、なっちゃいませんぜ?」
興奮に震えながらも、その眼は相手を屈服させる鋭さを発していた。
わずかに触れ合っている秘部の感触が脳を支配する。
さっちゃんは痛みと屈辱とそれ以上の期待を滲ませて懇願した。
「お願い…ぶち込んで、くださぃい!?」
ぐぢゅぅうっ。
一気に貫かれ、意識が飛ぶ。
「あぁ―――きゃふぅ!…ううぅ!」
「くぅ…」
最奥まで繋がったところでともに動きを止める。
「はあっ、はぁっ、はふっ」
「…ぅ…見込んだ、通りでェい」
沖田は担いだ足をしっかりと抱えなおし、空いた方の手で腰を抱き込むと容赦なく動き出した。
ぢゅ、ぐちゅ、ぢゅっ、ぢゅっ。
「はぁんっ、あっ、あっ、はぁっ!」
膣いっぱいに満ちた剛直が壁をえぐるように出入りする。
不安定な姿勢で固められたさっちゃんは、されるがまま自分から合わせることもままならない。
蹂躙されるがままの状況に、声のトーンはますますあがる。
ずっ、ぢゅうぅっ。
沖田は剛直をぎりぎりまで引き抜いたかと思うと、一気に子宮口まで突き入れた。
「あくっ、ぐぅっ!」
そのまま最奥をぐりぐりとこね回す。
「はっ、どう、ですかィ?メス豚さんよォっ?」
メス豚―――間近でささやかれるその言葉に、さっちゃんの背筋にぞくりとしたものが走る。
知らずキュウッと中を締め付けていた。
「くっ…」
「んうっ!…ぃぃ…いい、わよ、っ…ボウヤっ」
ぎりりと腰をねじ込んだ沖田は、担いださっちゃんの足首に唇を寄せると、ガッと噛み付いた。
「いぁ!」
「ボウヤじゃ、ねェ…沖田、総悟だ」
かすれたような声で言った沖田は、はっきりと歯形に滲んだ血を、傷口を抉るように舐めた。
ジクジクと響く傷の痛みに合わせて、さっちゃんの中は沖田を締め付ける。
縛られた手首、胸の爪あと、傷つけられた陰部、左の足首、全ての痛みが共鳴しだす。
ゾクゾクとした衝動がもう止まらない。
「あぁ…そう…ごぉ!」
どちらにとってももう限界だ。
沖田はゆっくりと腰を引き、全体重でたたきつけた。
さっちゃんの背中が配管にバンとぶつかる。
「ぐぅ、んんっ!」
叩きつけられる度に響く奥も背中も、体の芯を焦がしていく。
今のさっちゃんにとって、もはや痛みと快楽は一つとなった。
沖田はそのままの抽挿を何度も繰り返す。
飛び散る汗と乱れた髪が、舞うスピードを速めていった。
「はっ…はっ…はっ…はっ…ぅ、いきやすぜっ!」
「がっ…ああっ、あ゛あぁ、あああああ、イクゥッ!!!」
さっちゃんの意識は信じられないような光に飲み込まれ、体はビクビクッと大きく跳ねあがった。
その体を折れるほどきつく抱きしめ、沖田は最奥に精を放った。
腰ごと持っていかれるんじゃないかというような強烈な快感、そして征服感。
恍惚の一瞬は永遠に続くんじゃないかと感じられた。
その一瞬、二人は互いの脈動のみを感じていた。
しかしゆるゆると時間は忍び寄る。
息が落ち着いたのを見計らい、沖田は自身を抜き取り、担いでいた足を下ろした。
「うくっ」
重力に従い垂れ落ちる精の感触に、さっちゃんはぶるりと身を震わせた。
手を縛っていた襟巻きを解くと同時に、立っていられず崩れ落ちる。
そんなさっちゃんにあったのは、後悔ではなくたとえようもないほどの充足感であった。
ざっと自分の身なりを整えた沖田はさっちゃんの前にかがみこみ、
そばに放り投げてあった眼鏡を丁寧にかけてあげた。
眼に焼きついたのは鮮やかな色の髪。
もう忘れられそうにないだろう。
「俺に飼われたくなったら、いつでも言ってくだせえ。」