私は何をしているのだろう、よくわからない。
ただ耳に届く卑猥な音と視界に映るもの以外何一つわかっていない。
「う…ぐぅ…姉、上…っ」
弟の顔が歪んでいる。苦しいのだろうか。
今まで弟が苦しいと思うことは自分の苦しいことだと思ってきた。
彼もまた、私が苦しいと思う時たとえ私が笑顔だろうと代わりに涙を
流していてくれたのに今は違う。
私は今、気持ちいいと思っている。
ようやく今感じているそれが「快感」だとわかった時、私は急に
胸を締め付けるこの思いに気付いた。
苦しい。確かに私も苦しいと思っている。
だけど体が感じているのは気持ちよさで、今はそれの方が増しているのだ。
私が弟にまたがり、その弟の陰茎が私の膣内に食い込む様に入っている。
弟は最初こそ逃げようと必死に腰を引いていたが、今では自ら腰を動かし
本能的に肉壁に陰茎を擦り付けていた。
固くなった陰茎、そして揺らぐ腰からも彼が私と同じくらいの快楽を
感じている事はわかったのにその表情は未だに苦痛に歪んでいる。
処女ではない柔らかな膣に、何か不満でもあるのだろうか?
ひくつくこめかみを押さえながら、いつもの笑顔で弟に語りかける。
「新ちゃん、どうしたの?姉上じゃ満足できないと、そういいたいの?」
「あね…うえぇぇ…」
口端からだらりとだらしなく涎を垂らす弟。
赤く染まり、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。
初めてだろう、この弟のことだから。
最高の快楽に違いないはず。この涙も鼻水もそのせいだろう。
なのにどうしてそう、眉間にシワを寄せて必死に自我を保とうと
するのだろうか。
全く理解不能だった。
「新ちゃん、早く出して…?ん、もっと突いて。そうしたらもっと気持ちよくなれるの」
「で、きませ…ん…」
「姉上の言うことが聞けないって言うの?…いけない子。」
いつもの笑顔を浮かべ、そのまま右腕を大きく振りかざし弟の頬を思い切り打ち付ける。
破裂音が部屋に響き渡った。
痛みにも音にも驚いたらしい彼の顔といったらなかった。間抜け。
私の弟だというのにこの子はいつもそう。
顔も、性格も、人生そのものも間の抜けた子。
この子は私がいないと何も出来ない。
私が手を引いてあげないと何も出来ないんだから。
「私が子供を作ってあげます。跡継ぎはその子にしましょう。
新ちゃん、私がずっと新ちゃんの面倒をみてあげます、いえ
見ていることができる……っ」
私が上下に体を揺するとずちゅずちゅと音が一層激しくなり、弟の口から漏れる息も声も
それに伴って荒くなっていく。
眉間のしわもやがて薄れていって、やがて弟は完全に気の抜けた表情をして私の体を
休みなく突いてくるようになった。
「あ、ああん、あっ新ちゃん、新ちゃん!もっと、もっと奥ぅぅ!」
ぐちゅぐちゅと溢れ出す体液、接合部分からは音が絶えない。
「うあ、あん、あ、あ、あ、あ、あ、あっ……あ!」
待ち望んだもの―白く濁った弟の精液が膣に放出された後も
「新ちゃん……しん、ちゃん……!」
弟の陰茎は逃げることなく、永遠と言わんばかりに打ち付けられ続ける。
「姉上……」
最後に大粒の涙を一粒流して呟いた一言が、その口から放たれるまで
永遠に。
「姉上はずるいよ……」
静かで暗闇ばかりが続く道場の真ん中で、お互いに何も身に纏っていない状態で寝転んでいた。
誰もいない。
数年前父上が亡くなったその日から、ここにやってくるのは目つきの悪い借金取りくらいだ。
弟が時々木刀を振りかざしている姿を見るものの、それはほんの数時間のことで
昔のように日がな一日中ここで武道を習うものはいなかった。
やってくるのは借金取りと、そして私と弟だけ。
「姉上は……ずるい……」
今もそう。
精液に塗れた床の上ですすりなく弟と、笑うことを止められない私だけ。
「姉上……」
「ふふっあはは!新ちゃん、ずっとここにいましょうね?」
「姉上……僕は」
言いかけて弟はやめた。
もう弟に選択権はない。
きっとこの先ずっとずっと、私達はここにいるのだろう。
私が弟の首に鎖を巻いたのだから、それを解かない限り弟は逃げ出すことができない。
「ふふふ……ふふ、ふふ……ッあはははは!」
かわいいかわいい弟。
絶対に行かせない。
どこにだって行かしてたまるものか。
父上のように遠くへ行ってしまうだなんて、絶対に許さない。
私は何をしているのだろう。
弟を犯している。
私は何をしているのだろう。
弟をこの道場に縛り付けている。
「あ、ん……っ新ちゃん、新ちゃん…」
「ん、んん…!」
また泣いてる。泣き虫。
人より小さいといわれる胸、それにしゃぶりつきながら弟がまた涙をそこに落す。
いい加減諦めたらいいのに。バカ。本当にバカな子。
私がいないときっとだめね。弱い子だから。
だからずっと一緒にいてあげる、ずっと一緒にいなきゃだめ。
「新ちゃん…ずっと、一緒だから…」
(私は何をしているのだろう?)
あふれ出してきたこの想いも涙も、きっと幻。
END