体の中から湧き上がる震えはどうしようもなく、ただじっと己を抱きこむように
腕をまわして必死に耐えている。
暗い土の中に埋もれゆく男の、天を睨むように見開いた眼が脳裏に焼きついている。
「寒いのか」
布団をめくって顔を覗かせた男が声をかける。
頭から足の先まで、すっぽりと布団に包まっているのに、まるで体が凍り付いて
しまったかのように寒かった。
「……」
激しい震えによって歯の根が合わず、男の顔を見返しても何も言葉を発せずにいる。
開いたまま閉じる事も出来ない目蓋に眼球が乾くと、自ずと涙が溢れて気がつくと頬を伝っていた。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめ……」
布団の中に隠れるようにして潜り込んでいる妙が、壊れた機械のように、
涙を零しながら何度も繰り返している。
見かねた土方は少しだけ捲った布団を更に捲ると、その中にそっと滑り込む。
「――あんただけが悪いわけじゃねぇ」
言いながら妙に寄り添うように体を横たえると、彼女の震えを止めるようと
強く抱きしめる。
外から帰って着の身着のまま布団に飛び込んだ妙の体から、湿った土の臭いがした。