青白い月が浮かぶ夜空に、禍々しく黒い影が浮かんでいた。
ゴゥンゴゥンと、物々しい機械音を響かせて進むその影は、高杉晋助が率いる鬼兵隊の船体だった。
配管やダクト等が剥き出しの、無機質で冷たい船内の一室に、また子は居た。
窓から差し込む月光以外に、明かりのないその部屋で、また子は何度目かの悲鳴をあげた。
「ん…ッぁあッん…ッ…ひ…ぁッあッ…ん…んッ……あああッッ!!」
天井から吊るされた鎖で両手を戒められて、膝立ちの姿勢で拘束された彼女は、この部屋で、もう小一時間程ばかり、腰をくねらせ続けていた。
頭上で一纏めに括られた手首から細い二の腕にかけて、じっとりと浮き出た汗が伝い、袂から仄見える脇へと流れていく。
首筋や胸元に浮かぶ珠の汗が月影を反射して光っていた。
妖しく腰を揺らす彼女の瞳には涙が浮かび、切ない悲鳴を漏らす口元からは、涎がだらしなく伝っていた。
びくんびくんと痙攣を繰り返す彼女の体の奥には、船内に響く機会音とは別の振動が響いていた。
ミニの巻きスカートの奥、太腿が擦りあわされるその先から、音は聞こえる。
ヴヴヴヴヴ……と、一定のリズムを崩さずに。
「あ…っくぅうっ……あふ…っ…し…晋助…さま…」
弱々しく、また子が呼びかける。
その視線の先には、簡素な寝具が設えてあり、一人の男が腰掛けていた。
その男の瞳は部屋と同じように、無機質で冷たい色を湛えていた。
見世物小屋の客のように、男はまた子の姿をにやにやと眺めている。
「は……すげぇな……水浸しじゃねーか」
唇を歪めて嗤うその男は、咥えた煙管の煙をゆっくりと吐き出した。
また子の内腿は、スカートの奥から溢れ出す粘液で濡れ光り、彼女が膝を付いた床の上には、彼女から伝い落ちた雫が溜まっていた。
「も……ゆるして……くだ…さ…」
わなわなと唇をわななかせて懇願するまた子に、男はゆっくりと歩み寄る。
男は親指と人差し指でまた子の小さな頤を捕えると、くいっと強引に上を向かせた。
「んあ…ぁ…ッはぁあああああっっ!!」
男と目が合った瞬間、また子の体はびくびくと痙攣し、大きく撓った。
「くっくっ……大した好きモンだな、お前。 何回イッた?」
赤い顔に荒い呼吸のまま、また子は男を見上げた。
「……ろっかい…っス」
「ここ弄られんのが、そんなに好きか」
男はそう言うと、乱暴にまた子のスカートの中に右腕を潜り込ませ、既にローターが挿入されている膣内にさらに節だった己の指二本をねじ入れた。
無理矢理広げられた内壁に男が爪を立てる。
「ッッうああぁあっ!!!」
また子の顔が苦痛に歪む。喉から悲鳴が搾り出される。
しかし、男はその悲鳴を心地良さそうに聞いていた。
男の口の端が更に吊り上り、瞳に残忍な色が浮かぶ。
「きもちイーか?」
不似合いに優しい猫撫で声で男は尋ねる。
また子は、涙を流しながら、それでも男を真っ直ぐに見つめた。
「気持ち……イイッス。 晋助様が、触って下さるなら……」
「……へーぇ?」
男は珍しい玩具を眺めるように、また子の顔を覗き込んだ。
また子は、触れられる距離で自分を見つめる男の隻眼を、恍惚と見つめ返した。
―――何度見ても、ゾクッとするッス。
初めてこの瞳に撃ちぬかれたその瞬間を、今でも鮮明に憶えている。
新たに組まれるという鬼兵隊の志願者として、また子はその他の攘夷浪士たちと共に高杉の前に整列していた。
――――……お前、女か。
儀礼的な顔合せのみだと思っていたが、高杉はまた子の前で立ち止まった。
――――女でも! 早撃ちなら誰にも負けないッス!!
女だと云う理由だけで、舐められたくはなかった。
強い語気で相手を見返したまた子は、しかし、高杉と目が合った瞬間、凍りついた。
攘夷戦争の生き残り、この腑抜けた世界において未だ志を捨てない、伝説の男の一人。
また子が初めて目にしたその英雄は、想像していたよりも遥かにずっと―――恐ろしかった。
――――………まぁ、何かで使えるか。
まるで、モノでも見定めるように、男はまた子に冷徹な一瞥をくれた。
その瞳に撃ちぬかれた瞬間に、また子は理解した。
自分はこの男に従う為に生まれてきたのだ―――と。
それは圧倒的な感覚。
冷たくて、恐ろしくて、悲しくて―――強い。
不安定な危うさを漂わせながら、男が放つ眼光は、また子に一つの答えを提示していた。
自分を支配する絶対者の存在を。
自分が従うべき王がこの男なのだと。
じゃらッと音がして、また子を繋いでいた鎖が外された。
長時間、頭上で戒められていた手首は血の気を失い、痙攣のたびに鎖で擦れてすっかり痣になっていた。
「ぼーっとしてんじゃねぇよ」
高杉はまた子の前髪を掴みあげて、顔を仰向かせた。
「もうちっと、愉しませてくれや」
「晋助様が……お望みなら……」
また子が息を整えながら答えると、高杉は掴んでいた髪を離して立ち上がった。
「手ぇ使わずにナカのモン出せ」
肩で息をするまた子とは対照的に、高杉は静かな低い声で告げた。
上から見下ろして命令する。その声に、また子は逆らえない。
「オラ、もっと脚拡げて、よく見えるようにしろよ」
言われた通りに、床に尻を着いたまた子は己の両膝を掴んで、高杉の目の前でM字に開脚した。
ミニのスカートの中身は何も身に着けておらず、割れ目に沿って薄っすらと生えた陰毛は、ぐっしょりと濡れていた。
その割れ目の奥から一本のコードがのびている。
コードの先にあるスイッチは彼女の太腿に括り付けられている。
スイッチは「弱」に入っていた。
「はっ…はぁんっ…んっんんぅ…っあ…!」
また子は頬を真っ赤に染めながら、己の膣内に力を込めた。
膣内に埋め込まれたローターを強く感じてしまい、力のコントロールが上手くいかない。
中のものを押し出そうと意識すれば、するほど、奥に咥え込んでしまう。
今度は体を弛緩させて、愛液と一緒に滑り出させようと試みた。
ずりゅ…りゅ…ちゅぷ…と、徐々に中のものが下におりてくる。
感じてしまうと膣口が締まってしまうので、なるべく何も考えないようにした。
瞳を閉じて、膣内の感覚に集中する。
――――あと……少し……。
ところが。
急に激しい電流を体の芯に流されたように、また子は痙攣した。
「きゃああああぅっっ」
また子が目を開けると、高杉がまた子のクリトリスの包皮を剥いて、摘み上げていた。
「俺も手伝ってやるよ」
言うと、また子の淫裂から溢れだす愛液を指に絡めて、また子のクリトリスを捏ね回し始めた。
「ひゃああああんっ!!やっやめてくださッ…あんっふあぁああっっ!!」
絶え間なく強い刺激を受けて、また子の膣内が強く収縮する。
外に出掛かっていたローターは、再びまた子の体の奥に潜り込み、その振動で彼女を犯した。
高杉は舌なめずりをしながら、指の腹でまた子を攻め立て続けた。
膣内と淫核を同時に攻められて、また子は激しく首を横に振った。
「はあああんッッだ…だめッス! あうゥッ…ぁ…あ…あ…あああッッ!!!」
強くまた子の背が撓り、腰を突き出してまた子は達した。
ぷしゃぁっと、勢い良く愛液が噴き出し、また子はガクガクと痙攣を繰り返した。
力が抜け切った状態のまた子の膣口から、ぬりゅう、とローターが頭を出し、腰の痙攣で落ちて、床でカツンと音を立てた。
深く達したせいで、また子の息は絶え絶えだった。
顔は汗と涙と涎で汚れ、下半身は己の愛液でべタベタになっていた。
くったりとその場にくずおれたまた子に、高杉は喉の奥を鳴らしながら、言った。
「よく、頑張ったなァ……褒美、くれてやろうか?」
その言葉と同時に、また子の腰にある拳銃に高杉の手が伸びた。
反射的に、また子の手はその手より先に、己の銃を握ろうとした。
それは彼女の分身であり、命だ。
ほとんど本能での動きだったが、彼女の両手は途中で凍りついた。
「俺に……逆らうのか?」
獣の目が、また子を射抜いていた。
冷たくて、恐ろしくて―――そして強く、美しい。
火照っていた体の熱を一気に奪われたように、また子は青くなった。
殺される―――そう、思った。
殺されてもいい―――同時に、そうも思った。
また子の背筋を冷たくなった汗が伝った。
彼女の支配者は彼女の鉄の分身を引き抜くと、冷たい瞳で彼女を射抜いたまま、ゆっくりと口を開いた。
「褒美をくれてやる――――股ァ、開け」
また子は言われた通り、獣の目をした君主に、己の脚を広げて見せた。
君主は歪んだ笑みを浮かべながら、拳銃の安全装置を外した。
冷たい音が部屋に響いた。
近づいてくる高杉の動きが、また子には、やたらとゆっくりに感じられた。
曝されたまた子の淫裂は、恐怖のためか、快感のためか、ヒクヒクと震えていた。
「オラ、褒美だ……じっくり味わえ」
高杉はそう言うと、達しすぎて敏感になっているまた子のそこに、冷たい銃口を無理矢理、捻り込んだ。
「ぃ…っやぁああああああああッッッ」
鋼鉄の凶器を腹の中に突き入れられて、また子の顔が歪む。
「ひゃはははっ オラ、褒美なんだから、もっと歓べよ」
高杉は嬉しそうに、握った鋼鉄で彼女の内部を掻き回した。
容赦のない男の力で出し入れされるそれは、また子の肉を傷つけ、血を滲ませた。
「くぁぁああッッがッはぁああ…ッッ」
全身を貫く痛みに涙が溢れ、脂汗が滝のように流れる。
いや、痛みよりも恐怖の方がまた子には勝っていた。
安全装置は外されている。いつ暴発しても、または高杉が引き金を引いても、おかしくはない。
だが、その恐怖をも上回る感情が、彼女を支配していた。
苦痛に手足を強張らせ、恐怖に呼吸を止められようとも、それでも抑えきれず背筋を這い登ってくる、感覚。
恍惚感。
彼女の絶対者である王は、今、その瞳に彼女しか映していない。
彼女の悲鳴に愉悦の笑みを浮かべ、彼女の反応に瞳を輝かせている。
それはまた子にとって、代えがたい喜び。
彼が望み、彼が悦ぶのならば、また子は自分の命など、差し出したって構わないのだ。
絶望的な君主の餌食となっても、また子は快感を覚え、大量の愛液を溢れさせた。
また子から悦楽に溺れる表情を感じ取って、高杉は手の動きを止め、彼女の中から銃口をずるりと引き出した。
黒い鋼鉄にぬらぬらとした愛液がたっぷりとからみつき、糸をひく。
持ち主の愛液や血を纏って、濡れて光る銃口を見て、高杉は満足そうに喉を鳴らした。
「お前……イイな……」
高杉は真っ赤な赤い舌を突き出して、その銃口に纏わりつくまた子の愛液を、下から掬い上げるように、舐め上げた。
「お前……イイよ……」
興奮してきたのか、高杉の声に微量ではあるが、熱が宿り始めた。
「脱げ」
君主の命令にまた子はよろりと立ち上がり、ぐっしょりと濡れて張り付く己の着物を脱ぎ始めた。
上着の合わせ目に手を掛ける。
白い乳房が闇の中で露わになった。
細い肩や腕とは対照的に、たっぷりと量感を感じさせる柔らかな果実を、また子は庇うように片腕で抱いた。
「下も脱げ」
腰に装着していたもう一つの拳銃も外し、スカートの留め金を外すと、それはいとも容易にまた子の足元に滑り落ちた。
身に纏うものが無くなった状態で、また子は己の体を抱きしめた。
改めて高杉の目に己の裸体が晒されているかと思うと、体の奥に赤い火が灯るのを感じずにはいられなかった。
太腿をぴったりと閉じて、胸と腰に両腕を這わせて立ち竦む彼女の裸身には、いくつもの痛々しい傷跡があった。
縛られた痕や切りつけられた痕、鬱血した紅黒い痕や、歯形に刻まれ、引きつった皮膚の痕―――それらは新しく生々しいものから、薄れて消えかけたものまで。
全ては目の前の男がつけたものだった。
戯れにまた子を呼びつけては、男は“遊び”に興じた。
その“記録”が彼女の肌には刻まれている。
月光だけが差し込むその部屋で、また子の体は一層青白く、それ自身が発光しているようにも見えた。
「来いよ」
高杉はいつの間にか元の寝台の上に腰掛けていた。
また子は裸足の足を一歩ずつ、高杉の待つ寝台へと進めた。
彼に体を開いた回数は、もう覚えていない。
けれども、何度体を重ねてみても、目の前の男は計り知れなかった。
冷たく、虚ろで、掴みどころがなく、それなのに激しく凶暴で、常に圧倒的な力でまた子を翻弄する。
今、寝台の上で待つその獣が、また子は恐ろしくて、しょうがない。
そして、その恐ろしい獣に、食い尽くされたくて、たまらないのだ。
高杉の目の前に、また子は辿り着いた。
ゴクリと、また子の喉が鳴った。
「股ァ広げて、上に乗れ」
高杉は脚を広げてそそり立つ己の雄を取り出した。
赤黒く脈打ち、反り返る剛直の上に跨り、また子は震えながら腰を落とした。
ぐちゅぅ…と、淫裂に潜り込んだ亀頭に、また子の愛液が溢れ伝い、高杉の男根を根元まで濡らした。
「く…ぁ…はぁあ……」
凶暴に熱を持った剛直が、また子の内部に埋め込まれてゆく。
内襞を掻き分けながら押し込まれる熱に、また子は歓喜の声を上げた。
「はぁああんッッぃ…ぃいッッ…ッス」
また子の内部は男の肉の形に添ってうねり、絡みついた。
高杉は苛立ったように眉根を顰めると、また子の腰を強引に掴んで、己の腰を突き上げた。
「んぁあああッッ」
腰を引かせて高杉の上で身を捩じらせるまた子の尻の肉に、高杉の右手の指が食い込んだ。
「呆けッとすんな……腰振れ」
「は……はいッス……」
また子は恐る恐る高杉の肩に手を乗せると、己の腰をゆっくりと前後に揺すりだした。
「あっふぁっあんっあっし…しんす…け、さ…ま…」
互いの息がかかるほどの距離。下半身は根元まで繋がっている。
シーツには、どちらのものとも知れない体液が伝っている。
体の熱が殆ど同じに熔け合う程抱き合っているのに、また子はどこか悲しかった。
同じように激しくなっていく互いの呼吸。
同じように熱くなってゆく互いの体温。
けれど、男の瞳はどこまでも冷たかった。
ゾクッとする―――獣の瞳。
―――それでも……それでもいいッス。
晋助様が一時だろうと喜んでくれるなら。
それが晋助様の心を少しでも慰めるなら。
いくらでも己を差し出そう。
また子は高杉の上で懸命に腰を振った。
高杉は揺れるまた子の胸乳に舌を這わせ、噛み付いた。
「あくぅッッ…はうっ」
また子の白い胸乳に、赤い歯型が刻まれた。
痛みに、また子の膣内が強く引き絞られる。
高杉は愉悦の笑みを零した。
「もっとイイ声聞かせろよ……」
そう囁くと、高杉は急にまた子を引き倒して、上に押し乗った。
また子の足を蛙のように開かせて、最奥まで己を突き入れる。
乱暴に突かれたまた子が己の腹の下で上げる悲鳴に、高杉は狂ったような笑い声を上げた。
――――擦り切れるまで擦り上げて、舐って、しゃぶって、貪り尽す。
朝が来るまで。
高杉は上を向いても形の崩れないまた子の胸の頂に、再び歯を立てた。
今度は軽く。焦らすように。
舌で転がして唇で甘噛みする。
「はうぅうんっ……ぃやぁあ……っ」
また子の悲鳴が甘く擦れた吐息に変わったところで、狙っていたように強く噛み付く。
痛みを与える度、また子の内部は高杉を締め付けた。
高杉は何度もまた子の体に傷を付け、その体を犯した。
また子の白い肌に、赤い滲みが更に数を増した頃、高杉の節だった両手が彼女の喉首に巻きついた。
既にまた子は何度達したかも分からない程、朦朧としていた。
彼女の細い首は、男の両手の中にすっぽりと納まっていた。
二人の下半身は未だ深く繋がったまま。
高杉は両の指に力を込めながら、また子の耳元に囁きかけた。
「なぁ……殺してやろうか…?」
圧迫される呼吸に、更に朦朧とする意識。
気が遠くなるような眩暈の中で、また子は擦れた声を出した。
「し…んすけ様が…望む…なら……」
また子の答えを聞いて、高杉は静かに口の端を吊り上げた。
「イイ………イイよ、お前………」
高杉はまた子の首をゆっくり絞めながら、その唇を己の唇で塞いだ。
舌をまた子の喉の奥まで突き入れて、上と下で深く繋がる。
また子の膣内が限界まで引き絞られた。
高杉はまた子から唇を離して小さく呻いた。
そのまま腰を痙攣させて、高杉はまた子の奥を己の白濁で汚した。
「……ッッかッ…かはッ…ごほっ」
漸く息を吸えたまた子は、自分に覆いかぶさる男の重みと、腹の中を満たしてゆく熱を受け止めながら、目を閉じた。
男の心音を感じる。
それは何故だかひどく悲しく聞こえた。
―――この音を守る為に己は居る。
また子は男の背に両腕を回し、抱きしめた。
恐ろしくて、冷たくて、悲しい瞳をした、獣の背中を。
<了>