誰かにつけられている……?  
妙は背後に人の気配を感じながら、足早に道場までの夜道を急いだ。  
(やっぱり新ちゃんに迎えに来てもらえばよかったわ……)  
仕事が終わるのは午前5時。弟が低賃金の仕事場で朝早くからこき使われているのを考えると、わがままは言えなかった。  
「……あっ」  
妙は石につまずいてたおれこんだ。  
ついてくる足音も止まる。  
立ち上がると同時に妙は走った。もうすぐだ。もうすぐ道場に着く……!  
しかし、  
「ん……っ!」  
いきなり後ろから伸びてきた厚い手に口をふさがれ、腰に手を回される。  
そのままあらがうこともできず、妙は路地裏に引きずりこまれた。  
そのときである。  
「……あーあ。こんな朝早くから呼び出しなんて、ほんと銀さんて人使い荒いんだから」  
新八だった。妙の目の前を新八が横切っていく。  
(新ちゃん……!)  
妙は声をあげようとした。しかし、  
「おとなしくしてください。抵抗するなら、新八くんのほうも無事では済みませんよ」  
「え……!?」  
妙の口から男の手が離される。  
「なっ、なんだお前ら……!」  
通りからは新八の声。まさか……。妙は息をのんだ。  
自分のいる路地裏に、屈強な男に拘束されて、新八がやってくる。  
「むっ、むがっ……!」  
口を押さえられた新八は声が出せない。  
「新ちゃん……!」  
妙は新八に手を伸ばす。しかし、男はその手をつかんで、妙の体を壁に押さえつけた。  
「なにすんだこの……んっ……!」  
妙は二重に驚いた。  
男がいきなりくちびるを重ねてきたことに。  
そして、その相手が近藤だったことにーー。  
 
妙は近藤の急所をおもいっきり蹴りあげた。股間を押さえてうなり声をあげる近藤を突き飛ばし、新八を拘束している男に飛び蹴りを食らわせる。  
「なめるなァッ!」  
「姉上ぇぇぇッ!」  
新八は妙の手をひいて路地裏に飛び出した。しかし、  
「…うっ、ぐ……」  
「新ちゃん……?!」  
完全に表通りにでる前に、新八は胸を押さえてたおれこんでしまう。  
「ふふ……。新八くんには薬を打たせてもらいました」  
「なんですって?!」  
路地裏から出てきた男の手には、小さな瓶がにぎられている。解毒薬だ。  
「あなたが近藤さんのいうとおりにしてくだされば、薬はさしあげます」  
「卑怯者!」  
妙は腕をつかむ男の手をふりはらおうと身をよじる。しかし、新八から離されてふたたび近藤のもとにつれて行かれた。  
「妙さん。あなたはどうしていつも俺の思いを拒むんですか」  
近藤は立ち上がり、怒りに目を震わせていた。  
「妙さん……」  
まるで子どもが母親にすがるように、近藤は妙の体をかき抱く。男たちはふたりから離れていった。  
「……んっ!」  
耳朶に荒い息を吹きかけられ、妙は首をのけぞらす。その白い首筋に、近藤は夢中で舌を這わせた。たれた唾液をすすり、赤い跡をいくつも残しながら、妙の帯をほどきにかかる。  
「妙さん……妙さん……」  
名前を呼びながら、髪をわしづかみにし、妙の顔を上向かせる。悩ましげなくちびるに、近藤は噛みつくようにくちづけた。  
「!」  
その瞬間、微かな痛みが近藤のくちびるに走った。血の味が唾液にまじる。妙が噛みついたのだ。  
「あなたって人は……最低だわ! こんなことで人を服従させようとするなんて……!」  
「ふふ……。妙さん、あなたのそういう強気なところが、俺はたまらなく好きなんです。もっとなじってください。もっと俺を最低なクズ野郎だと責めてください」  
近藤はほどいた帯ひもで妙の腕を後ろ手に縛りあげた。  
「やめなさいッ……あッ……」妙は必死に抵抗しようとする。しかし、近藤は襟もとから手をさしいれ、乱暴に妙の胸を揉みしだいた。  
「……んッ」  
妙は歯を食いしばって耐える。絶対に声は出さない。こんなやつのために声を出してやるもんか……!  
 
「ああ、妙さん、耐えしのぶあなたの顔も素晴らしい」  
近藤は妙を壁際に立たせたまま、胸の突起を口にふくんだ。舌で転がし、噛みつく。  
「あ……っ」  
妙は顔を背けて、のどを震わせた。足の力がぬけていく。しかし、近藤は妙の体を壁に押さえつけたまま、けして横にならせてくれない。  
「や、めて……、やめなさい……ッ!」  
「そうです。もっと嫌がってください。あなたが嫌がるほど、俺は本気になるんです」  
「あぁッ!」  
近藤は妙の地首に歯をたてた。そして同時に、妙の脚のあいだに手を這わせる。  
「震えていますよ、妙さん……。それに、濡れている」  
「やめ……て……!」  
「やめてほしいのなら、あなたはもっと俺を拒むべきだ。そうでしょう」  
「だって、新ちゃん……!」  
「新八くんのためだっていうんですか? だから俺にこんなことされても黙っていると……!?」  
「んッ! んんんッ……!!」  
近藤は妙の秘部におもいっきり指をさしいれた。  
「ほら、二本もはいるじゃないですか。よろこんでいる証拠です」  
「ちが……ッ」  
妙はめまいをおぼえた。近藤の指の動きが激しくなると、脳を揺さぶられたように快感が身体中を駆け巡る。  
脚が震えて立っていられない。  
「あぁ……」  
妙はがくっと膝をついた。しかし、近藤は執拗に妙の性感帯を刺激してくる。太ももに舌を這わせ、胸をひねるように揉みながら、名前を呼び続ける。  
「あぁ……妙さん……妙さんッ……」  
近藤は自らも服を脱いだ。股の間には、すでに猛りきった陰茎がある。  
「妙さん、俺の肉棒を、小さいとなじってください」  
「え……」  
「ほら、小さいでしょう。小さいと言ってください」  
妙は息を呑んだ。こんなに大きなもの、見たことがないのに……!  
「さあ、言ってくださあ!」  
近藤は妙の髪をつかんで、自分の股間に顔を近付ける。妙は汗のにおいに眉をひそめながら、叫ぶ。  
「……ち、小さいわね。小さすぎるのよ……!」  
「ああ、もっと……もっとなじってください……!」  
「そ、そんな小さなものじゃ、あたしを満足させることなんてできないわよ!」  
「もっと……、もっと……!」  
妙に罵声を浴びせられるほど、近藤の陰茎は大きくそそりたっていった。妙はさらに何か叫ぼうとする。しかし、その口に、無理やりに大きくなった陰茎が押しこまれた。  
 
「……んッ、んん……ッ!」  
息もできないほど大きく硬い。近藤は妙の髪をつかんだまま、自らも腰をふった。  
「ああ、妙さん……妙さん、ごめんなさい……! こんなことあなたに……ああッ!」  
「んッ、んッ……!」  
苦しい、けれど妙は舌を使って必死に近藤の肉棒をしごきあげた。  
「あ、あね、うえ……! 姉上ぇえッ!」  
路地にへばりついて、新八がふたりの行為を見ている。妙はこみあげてきた羞恥心に目を見開き、涙を浮かべた。  
「……ああ、妙さん、ありがとう……。今度は俺が、あなたを気持よくさせてあげます」  
近藤は新八のことなどおかまいなしに、妙を地面に横たわらせたーーうつぶせに。  
「ちょ、ちょっと……!」  
妙は四つん這いにならされた。顔は新八のほうを向いている。  
「やめてよ! 新ちゃんにこんな……!」  
「妙さん、いきますよ、妙さん……ッ!」  
「いやアッ!!」  
背後から突き刺された肉棒の熱さ、そしてその太さに、妙はたまらず声をあげた。  
突き上げてくる衝撃に、んッ、んッ、と熱い息が洩れる。  
こばめない。もう逃げられない。妙は自分を犯しているけだもののような男のために、自ら腰をふっていた。  
新八は目を丸くして、ふたりが体を揺らす姿を見ている。  
「妙さん、イキますよ、妙さん……ッ!」  
近藤の腰の動きが速くなる。妙はくちびるを噛みしめた。新八の顔を見ないよう、目をつむる。  
「……あぁッ……!」  
温かい液体が、体の中に注ぎこまれる。背後からどっと、近藤が妙の背中に抱きついた。  
「妙さん、……へたくそでごめんなさい……あなたを満足させてあげられなくて……」  
そんなことないわ。妙はそう言おうとした。けれど、  
「まだまだね。あなたなんかに、あたしを征服することはできないわ……出直してらっしゃい。今度は正々堂々、正面からね 」  
「妙さん……!」  
近藤は妙の体を抱いたまま、鳴咽を洩らした。  
 
「新ちゃん、このことは銀さんには秘密よ」  
解放されたふたりは朝焼けに染まる町を並んで歩きながら、約束する。  
「姉上……ぼくのために……」  
「ちがうわ。新ちゃん、あたし……」  
あの人のことが、すこしだけ好きだったかもしれない。だから、本気で拒まなかったんだわ。  
妙はその言葉を呑み込んだ。  
 
 
おしまい。  
 

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