は、と大きな息をついて、胸の上の重みをいとおしみながら  
さっきまできつく爪を立てていた背中に抱きつく。抱き返される。  
言葉がなくても、『愛している』という想いが嫌というほど伝わってくる。  
こんなに優しい人を、こんなにも大きな愛を持った人を、どうして今まで私は憎めたのだろう。  
そのうちゆるゆると圧迫感がなくなっていって、音がしそうなほどリアルに  
彼はぬるり、と私の中から抜け出していった。  
とたんに感じる、身体の奥からの違和感。  
即座に懐紙を股座にあてがうと、ぎゅっと太股を締めて  
どうしようどうしようと訴えた。まるで粗相をしてしまった子供みたいに。  
 
先ほどの秘め事が夢か幻のように、二人そろって馬鹿みたいに狼狽した挙句、  
まったく妙案が浮かばずに沈黙が訪れる。  
 
布団を汚すだろうけれど、このまま寝てしまおうか。  
そう囁かれた声に、そんな恥ずかしいことができるかと、  
 
 
ついいつもの癖で、殴り飛ばしてしまった。  
 

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