「総悟!おまっ、まだ帰ってなかったのか・・。」  
とっくに帰ったもんだとばかり思っていた。  
「二階の休憩室で寝てたんでさァ。帰ろうとしたら、  
何やら声が聞こえるんで部屋を覗けば、土方さんがアホみたいに  
腰振ってて、驚きやした。」  
「アホみたいって・・てめっ」  
反論しようとしたが、この状態では何を言わんやである。  
「小さな女の子を無理やり犯したんですから、これは大問題ですぜィ。  
副長の座は俺のもんでさァ。」  
「ちょ、待て総悟、これは・・」  
「言い訳は聞きやせん。」  
だめだ。一番最悪な奴に見られた。  
明日には、このことを鬼の首を取ったかのように、  
屯所中にスピーカーでふれ回っていることだろう。  
 
「いつまでつながってんですかィ?」  
沖田は腕を組み、土方を見下した目で見た。  
土方はこの展開についていけず、頭が働かない。  
体も固まったままだ。  
 すると  
「こうすると、気持ち良いネ。お前知らないのカ?」  
くいくい と神楽が土方とつながったままの腰を動かした。  
沖田が目を丸くする。  
土方はふぅ〜と意識が遠くなった。  
こいつ、恥じらいとかってもんがねぇのか!  
 
「ふん・・。土方さんの粗末なモンじゃ、  
満足できなかったんじゃないですかィ?」  
「総悟ってめぇ、粗末ってなんだこらぁあああ!!」  
「いやいや、粗末なりになかなか良かったアル。」  
「否定しろよ!!」  
 
「っだからアンタいつまで挿れてんだよ!!」  
沖田が怒鳴った。  
沖田が普段声を上げることはほとんどない。  
いつもの余裕然としている様子が今は感じられない。  
しかも、沖田が放っているもの  
―――これは殺気だ。  
 
視線は神楽に固定されているのに  
―――こいつ俺に向かって殺気放ってやがる。  
沖田の瞳孔が開いている。  
沖田の迫力に押され、  
土方は自身を神楽から抜いた。  
ちゅるっ と卑猥な音が出る。  
その音がさらに沖田の神経を逆撫でしたらしい。  
 
「土方さん、そのチンケなモノいつまでぶらぶらさせてんですかィ?  
さっさとしまわねぇと、さけるチーズみたいに裂いてってやりますぜ。」  
イタイイタイイタイイタイ  
「チーズよりかは、ぶち切って焼いてソーセージにするヨロシ。」  
聞いてるだけで不能になりそうなので、急いでしまう。  
 
「土方さん、荷物まとめる準備でもするんですねィ。  
さ、チャイナ娘帰りなせェ。」  
「?何ピリピリしてるアルか?沖田も一緒に楽しむヨロシ。」  
何言ってんの??!  
「・・・・・・・・・土方さんが突っ込んだ穴には挿れたくねェや。」  
神楽は立ち上がってめくれたスカートを直し、  
沖田に向かって小首をかしげた。  
土方には表情はわからないが  
きっとたまらなく男心をくすぐる顔をしているのだろうと思った。  
事実  
「チャイナ娘、ついてきなせェ。」  
ガラ  
強引に神楽の腕を引っ張り、沖田は部屋を出て行った。  
 
 そうか 総悟 お前チャイナ娘のこと  
 
きっと、自分の首はつながった。  
ほっとしたとたん  
もう少し神楽の体を楽しみたかった  
という いやしい思いが湧いてきた。  
 
ふう―――。  
煙草に火を点ける。  
 少しの間だけだったな  
 煙草を忘れることが出来たのは  
 
土方はさっきの沖田の顔を思い出す。  
長い付き合いだが、  
あんな顔は見たことがない。  
あの沖田があんな顔をするなんて  
―――大したガキだ  
神楽の体を思い出す。  
 
ふう―――――。  
しかし  
大丈夫だろうか  
 
あいつはサディスティック星の皇子だからな  
 
煙草の煙をぼーっと見ながら  
土方は少し心配になった。  
 
 
「どこ行くアルか?」  
強い力で腕を引っ張られ、  
目的地がわからぬまま、神楽は沖田についていく。  
「黙ってついてきなせェ。」  
屯所内は思っていたよりも広く、  
角をいくつも曲がっているうちに  
自分がどこにいるのか、わからなくなった。  
帰ろうにも、自分一人では玄関まで行けないだろう。  
神楽は黙って沖田についていく。  
   
 こんなに強く腕を握らなくても わたしは逃げようがないアル  
 
どこか広い場所で決闘でもする気だろうか。  
後ろ姿だけでは、沖田が何を考えているのかわからない。  
間が持たない。  
神楽はしょうがないので、さっきの土方の指を思い出す。  
 もっと あの指が動くところ 見たかったヨ  
土方とは、これからのところだった。  
あのときの顔も声も  
まだまだ見足りないし、聞き足りない。  
もっと楽しみたかった。  
不完全燃焼の神楽の体は、再びうずうずと熱を帯びてきた。  
 今は 戦う気分になれない  
 
「着きましたぜ。」  
ガラガラ・ガラ  
 
そこは屯所の奥まったところにあった。  
沖田が電気を点けたその場所は、少し小さめの脱衣所だった。  
「入りなせェ。」  
「お風呂アルか・・?」  
真選組の屯所には、大きめの風呂が設置されていた。  
任務の際に付く、返り血を洗い流すために。  
ここで不浄なものを洗い流し、隊員達は家に帰る。  
それでも、大抵の者は心にどろりとした、  
黒く重い澱を持ち帰らざるを得ないのだが。  
人を斬って、平気な顔をしていられるのは  
数名の隊員達だけ。  
沖田もその一人だ。  
 
神楽がぽかんとしていると、  
沖田は着ていた隊服の上着を脱いで、近くのかごに掛けた。  
真選組の隊服は見ていてとても窮屈そうだ。  
堅苦しいというか。  
真選組内の厳しい規律がそのまま服に現れている。  
 しかし  
沖田だけは隊服を着ていても、拘束されてる感がない。  
いつでも自由なのだ。  
神楽も、常に自分の感情に正直に行動している。  
神楽は、常に無表情のために、何を考えているのかよく掴めない  
沖田の顔を見た。  
  こいつはわたしと よく似てるネ  
 
外見も内面も、二人はよく似ている。  
沖田も色素の薄い人間だ。  
多分地毛であろう薄茶色の髪は、さらさらとしていてくせがない。  
一瞬女の子と間違えてしまいそうな甘い顔立ち。  
普段、わりと無表情なところも  
外見に似合わず毒舌で、やたらと強いところも  
二人は合わせ鏡のように似ていた。  
決定的に違うのは   
性別 と 戦いを好むか好まないか  
この二つである。  
神楽は戦いを好み、人を傷つけることで喜ぶ自分の本能が嫌いだが、  
沖田は戦いも、人を傷つけることにも抵抗がない。  
だから  
  こいつとは合わないアル  
近親憎悪か。  
うらやましくなるのかもしれない。  
  他人の幸せ見るくらいなら、壊してしまった方がましヨ   
二人が会う度に殴り合いになるのは、それが理由なのかもしれない。  
 
沖田は黙ったまま  
ベストを脱ぎ、スカーフを取り、シャツの前のボタンを二つ開け、  
袖をめくり、ズボンの裾を膝下までまくり上げる。  
 
 何する気ネ?  
 
沖田のシャツの間から、引き締まった胸元がのぞく。  
いつも厚い隊服に隠れている沖田の体は、全体的に細身だが、  
腕も足も上半身もほどよく筋肉が付き、  
決して弱々しくはない。  
この年頃の男子の身体は無条件で美しい。  
ちょうど少年と大人の中間である沖田の体は、  
若い男特有の絶妙なバランスを保っていた。  
脱衣所の照明のせいでさらに魅力的に映る。  
神楽は少し見とれた。  
 あの肌に 触りたい  
 
「何ぼーっとしてるんですかィ?  
こっちが脱いでるんだから、アンタも脱ぎなせェ。」  
沖田は脱衣所にあった椅子に座り、  
神楽を上目遣いで見る。  
右口角がいやらしい上がり方をしている。  
「風呂に入るのに、服を着たまま入るんですかィ?」  
 
どうやらあの肌に触れるには  
沖田の要求をいくつかこなさなければならないらしい。  
 
「さァ、どんな身体してんのか、俺に見せてくだせェ。」  
 
歌舞伎町の女王と  
サディスティック星の皇子  
いつもとは違うやり方で  
主導権争いが始まった。  
 
あの部屋で土方と神楽が交ぐわっているのを見たとき、  
沖田は全身の血が凍るような感覚を覚えた。  
初めての感覚だった。  
喪失感というものを  
今まで沖田は味わったことがない。  
そのため  
二人を見たときに生じたその感情が  
なんなのかよくわからなかった。  
ただ 不愉快だった。  
 
「胸は小さめでも、きれいな身体、してるじゃないですかィ。」  
神楽は着ているチャイナ服を、素直に沖田の前で脱ぎ、  
これ以上なく無防備な姿を晒していた。  
目は沖田を睨んでいるが  
頬は赤く紅潮している。  
 
このきれいな身体を  
先ほど土方は堪能していたのだ。  
また腹が立ってきた。  
 
「そんな顔してブラジャーもパンツもはいてないなんて、  
なかなかいい性趣向を持ってるみたいですねィ。」  
「ブラジャーは買えないから持ってないだけアル!  
パンツは・・・あ。さっきの部屋に忘れてきたヨ。」  
パンツをはく間もなく沖田に連れて来られたのだから  
しょうがない。  
 
「その胸の前にある手をどかしなせェ。  
どんな形かわからないじゃないですかィ。」  
「いやヨ。」  
神楽が抵抗する。  
「はい、バンザーイ!」  
神楽の両腕を取って、むりやり上に上げる。  
「!この野郎!何するアル!」  
「おぉ、すごくきれいですぜ。乳首もかわいらしい桜色じゃないですかィ。  
ん――?」  
沖田が手を離すと、神楽はまた急いで胸を隠した。  
「・・・チャイナ娘。」  
その胸にあるのは  
「それは、誰が付けたんでさァ?」  
さっき見た土方との行為は服を着た状態だった。  
じゃぁ、そのキスマークは?  
 
「?この胸の印?これは・・新八が付けたアル。」  
新八?――・・・・あの眼鏡か。 えぇっ!!?  
「こっちの印はマダオネ。」  
    マダオ?? 誰?!  
神楽は臍の横に付いている小さな赤い印を撫でている。  
 
「チャイナ娘・・・。アンタ・・・何人もの男と関係持ってるんですかィ?」  
全て今日一日で付いたものだと知ったら  
さすがの沖田も卒倒するだろう。  
 
「うん アル。」  
神楽は普通に頷く。  
「いや、うん って・・・・。特別好きな男はいないんですかィ?」  
「す き   ?」  
神楽の目が何か別のところをみつめている。  
「好きと言えば・・  
  新八は地味で小姑みたいに細かい奴だけど  
 気が付くし、なかなか優しいから、まぁ好きアルよ。  
  マダオはまるでだめなおっさんだけど  
 まるでだめなおとこではなかったヨ。だからまぁ好きネ。  
  土方は瞳孔開いててヤニ臭いし短気だけど  
 わかりやすい性格してるから、まぁまぁ好きアル。」  
みんな微妙じゃん ってかマダオっておっさん?  
 
「はぁ。」思わずため息が出る。  
「チャイナ娘、じゃぁ、」  
俺は?と言いかけて 黙った。  
自分から聞くのは、なんかプライドが許さない。  
しかし、神楽は悟ったらしい  
「沖田のことは・・・好きでもないけど」  
  嫌いでもないヨ  
 
「頼むから好きって言ってくだせェ。」  
思わず本音を出してしまった。  
「大体にして、アンタ、俺の下の名前も知らないんじゃないんですかィ?」  
神楽の目だけを見つめる。  
「知ってるヨ・・・。」  
 
総悟――――。  
神楽の可憐な唇から、自分の名前が洩れる。  
「あ・・・。」  
 
神楽は顔を真っ赤にしている。  
「お前ずるいネ!自分だって、わたしを名前で呼ばないアルのに!  
わたしの名前、ちゃんと知ってるアルか?」  
 
知ってる。  
けど、絶対呼ばない。  
「おいで。」  
神楽を引き寄せて抱きしめる。  
「答えろヨ。」  
嫌だ  
神楽って 呼ぼうとするたびに  
緊張して 何も言えなくなるなんて  
そんなの  
 サディスティック星の皇子 失格でさァ  
だから 呼べない。  
 
くちゅぅ  
「はぅっ!や ・・。っいきなり何するネ!?」  
神楽の秘部をいきなり指で押し開く。   
指を入れて、ぐるっとまわす。  
「い やぁ・あ・・」  
「この中、きれいにしないと。」  
 
どうやら土方以外の男のも  
この中に放たれているみたいだし  
きれいにしてから 俺のを挿れてあげましょう  
 
皇子の顔は おもちゃを見つけたときの子供のように  
無邪気な笑みを浮かべていた。  
 

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