無数のネオンが輝く夜のかぶき町。  
今夜は非番だったが、  
近藤に今夜の夜勤交替とスナックまでの送迎を頼まれてしまった。  
「…ったく、近藤さんには呆れるな」  
土方は煙草を吸い、呟いた。  
毎晩のように会いに行って、よく飽きないものだ。  
今夜もまたボコボコになっているであろう上司の姿を想像し、苦笑する。  
土方はもう一服し、気分を入れ替え夜間パトロールを開始した。  
 
 
 
歓楽街をパトカーでゆっくりと進んで行く。  
人込みの中に、見慣れた少女の後ろ姿が目に止まった。  
「万事屋のチャイナ娘か?」  
「多串君?」  
少女が見知った神楽であることを確認し、  
神楽のそばでパトカーを止めた。  
「土方だ。何やってんだ?ガキが外出する時間じゃねーだろ」  
「私、かぶき町の女王アル。  
だからたまにこうやってパトロールしてるのヨ」  
神楽は得意気に言った。  
いくら住み慣れたかぶき町とはいえ、今は深夜である。  
昼とは違い、犯罪が起きやすく危険である。  
こんな少女が一人歩きをしたら、誘拐や買春に巻き込まれるかもしれない。  
「パトロールは警察の仕事だ。ガキは早く帰って寝ろ。万事屋まで送ってやるからよ」  
パトカーから降りて後部座席のドアを開けてやり、  
神楽に乗るよう促す。  
しかし、ここで素直に頷く神楽ではない。  
「嫌アル!かぶき町の女王としてパトロールを中断するなんてできないヨ!」  
予想通りの返事に、溜息をつく。  
神楽と話すのが苦手な土方だが、警察としてできるだけ優しく話しかける。  
「夜のこの町は、お前の知ってるかぶき町じゃねー。ホラ、早く乗れ」  
明らかに不満そうな神楽は、暫く沈黙し俯いた。  
 
煙草を吸いつつ神楽がパトカーに乗るのを待っていた土方だったが、  
神楽は俯いたまま数分間動かなかった。  
少し言い過ぎただろうか?  
土方が声をかけようとしたとき、少女は何か思いついたように顔を上げた。  
 
「多串君、今夜は私に付き合うヨロシ!」  
「は?」  
土方の返事を待たず、神楽は素早くパトカーの助手席に乗り込んだ。  
「オイ、何偉そうに助手席に乗ってんだ。後ろを開けてやってただろうが」  
文句を言いつつも、神楽の気が変わらない内にとりあえず自分も運転席に乗った。  
 
二人を乗せたパトカーがゆっくりと走り出した。  
シートベルトは着けとけという指示に素直に従う。  
神楽は嬉しそうに窓の外を眺めながら、  
「多串君、私を今夜だけ真選組に入れてヨ。私もパトロールするネ」  
と、おそらく先ほど思いついたことを提案してきた。  
一方、土方は  
「万事屋につくまでの間だけな」  
と、軽く受け流した。  
明らかに子供扱いする土方の態度。  
それはかぶき町の女王としての神楽にとって面白いものではない。  
―――今夜もし事件が起きたら、多串君より先に見つけて私が解決してみせるネ。  
 
 
今夜のかぶき町は穏やかなようだ。  
神楽を乗せてから今まで、不審者は見あたらなかった。  
この薄暗い路地のつきあたりで曲がれば、万事屋はすぐである。  
「そろそろ着くぞ」  
そう云って助手席を見ると、神楽は窓に額と手のひらをつけて町を観察していた。  
オイオイ、ガラスに指紋をつけんじゃねぇよ。  
「あっ!多串君!!あの二人怪しいアル!」  
神楽が指さした先には、酒に酔ったカップルがいた。  
ここは繁華街なので酔っぱらいなんて珍しいものではない。  
このまま歓楽街のホテルにでも行くのであろう。  
しかし、二人の傍らには路上駐車の空車が一台ある。  
飲酒運転は警察として止めなければならない。  
土方はカップルに気づかれない程度離れた場所に停車し、二人を観察することにした。  
「多串君、車が動いたら出動カ?」  
「ああ。だがお前はここにいろ。警察の仕事だからな」  
すっかり真選組気分の神楽は土方の言葉を無視し、カップルの様子を伺った。  
 
やはり、二人とも酔っているらしい。  
お互いに支え合い、おぼつかない足取りでやっと車に乗り込んだ。  
彼らが車内に入って数十分経ったが、ライトもつけずエンジンをかける様子もない。  
相当酔っていたようだったしこのまま一晩車で寝るのであろう。  
土方は飲酒運転はないと判断し、パトカーの発進の準備を始めた。  
ほんの数秒、目を離しただけだった。  
しかし、車は明らかに様子が変わった。  
「多串君、やっぱりあの車おかしいヨ!爆発しそうアル!!」  
神楽のその言葉に、思わず振り返る土方。  
見ると、先ほどは微動だにしていなかったあの車が、  
今は妖しく揺れているのである。  
 
真夜中に、人気のない路地で、カップルが車を止めている。  
そしてあの揺れ。  
たまに目にする光景ではあるが、よりによって未成年に見られるなんて…  
土方は一瞬、気が遠くなった。  
「多串君、爆発しちゃうアル!助けにいかなきゃ!!」  
土方は我に返り、今にも助手席から飛び出しそうな神楽を必死で止める。  
「待てェェェ!!大丈夫だから!!!行かないでいいんだよ!!!ってゆーか、行くな!!!!」  
「かぶき町が爆発して消えちゃうヨ!」  
ジタバタと暴れる神楽の力は強く、大人の土方が押さえるだけで精一杯だ。  
「あれは爆弾なんかじゃねー。オトナのお愉しみの最中なんだからよ、そっとしといてやれよ」  
このハイテンションになった神楽の気をカップルからこちらに引こうと、  
土方はあえて挑発的な言葉を選んだ。  
果たしてこの少女に性知識はあるのだろうか。  
少し考えこんだ顔つきをしたかと思うと、頬を赤く染めて呟いた。  
「―――男と女の、合併アルか?」  
「合併、ねぇ…」  
いかにも神楽らしい表現に、土方は思わず笑った。  
土方の笑みが自分の言葉を肯定したのだと確信した神楽の顔はますます赤くなった。  
―――銀ちゃんも、多串君も、誰かとしてるアルか?  
聞きたいけど、恥ずかしいヨ。  
先ほどの勢いはすっかり無くなり、神楽は真っ赤な顔のまま黙り込んでしまった。  
 
一方の土方も、神楽が怒ってもうこの件から話題を変えるだろうと思っていたが  
先ほどから神楽は大人しくなり、土方からも何を話せば良いか分からず  
二人は気まずい雰囲気になってしまった。  
真夜中の薄暗い路地で、狭い車内に年頃の少女と若い男が二人きり。  
冷静に考えれば、このパトカーも十分に妖しい空間である。  
土方はこのことに気づいてしまったと同時に、自分の半身が少し反応してきたことに驚いた。  
ルームミラーから覗くカップルの車は未だ激しく揺れている。  
視覚に新たな刺激を受け、さらに半身が熱を持ち土方は泣きそうになった。  
勘弁してくれよ…  
冷や汗を流し普段以上のペースで煙草を吸い続けることで自分を保とうとした。  
しかしそのせいで、助手席の神楽は、慣れない煙草の匂いに少し酔ってしまったようだ。  
「…気持ち悪いヨ…」  
「悪い、大丈夫か?少し横になるか?」  
換気のため窓を開けたが真夜中の外気は冷え切っている。  
自分の隊服を横になった神楽に着せてやると、少し楽になったようだ。  
神楽は、制服までヤニ臭いネ、と小言を言いつつ  
大きな男の服に自分の小さな体がすっぽり覆われてしまったことに少しどきどきした。  
「…土方…」  
「なっ、何だ。どうした」  
突然呼ばれた本名に驚き、声が上ずってしまった。  
「あのカップルは、本当に爆発しないのカ?」  
神楽は横になったまま問うた。表情は隊服に隠れて見えない。  
「ああ。…もうさっき見たことは忘れろ」  
話しながらパトカーを再び万事屋を目指して発進させた。  
神楽を無事帰宅させるために一刻も早くあのカップルから離れたかった。  
 
何分もかからないうちに万事屋についた。  
土方はパトカーを降り助手席のドアを開けた。  
「ついたぞ」  
「………」  
「中に入るまで見ててやるから」  
「………」  
しかし、神楽は起き上がる気配はない。  
「おい、まだ気分が悪いのか?」  
「多串君…」  
神楽が、消え入りそうな小さな声で何かを呟いた。  
それを聞き取ろうと、口元に顔を近づけた瞬間、  
土方は車内に引き込まれた。  
 
「…ってぇ…」  
助手席に押し倒され、頭を打ってしまった。  
見上げると、目の前には自分に馬乗りになった少女の切羽詰った顔があった。  
「土方…」  
やはりあのカップルに触発されたのか、頬は赤く、瞳も潤んでいる。  
それに加えて土方の煙草の匂いと隊服に包まれたときの体格差に、神楽は初めて男性という存在を意識した。  
「どうした?」  
優しく尋ねる土方。  
神楽はこの胸の高鳴り、昂ぶった気持ちをどう伝えたらいいかわからず、困惑していた。  
何もいえずぽろぽろと大きな瞳から涙が零れ落ちた。  
何もいわず涙を指で掬って宥める。  
「お子様には、ちょっと刺激的だったか」  
土方は上半身を起こし、神楽と向き合う姿勢になった。  
「子供じゃないアル…でも、早くオトナになりたいアル…今の私、中途半端ネ…」  
体はまだ未発達なのに、心は出会い急速に性に目覚めつつある。  
自分の成長途中の胸を服の上から包み呟いた。  
目の前でそんなことをされて、土方は嫌でも目線がそこにいってしまう。  
神楽の手の甲は真夜中に青白く浮かび上がり、その手の中にある胸の大きさや形がわかる。  
真っ白な肌から、体の線から、目が、離せない。  
「土方…私は、まだオトナになるには早すぎる?こんなに、ドキドキしてるヨ?」  
土方は、神楽の切ない問いかけに答える余裕がなかった。  
あまりの美しさに魅了されていた。  
土方、と何度も呼ばれる自分の名前。  
土方の雄の本能が、理性を吹き飛ばした。  
 
最初のキスから、どれくらい時間が経ったのだろう。  
締め切った狭い車内は二人の体温と吐息で熱が篭り、ガラスが曇り水滴がついている。  
「ゃ…ぁ…」  
鎖骨を甘噛みされ、神楽は小さく声をあげた。  
髪からつま先まで全身を土方の手や唇、舌が動き回る。  
神楽の思考は土方が与える快感を受け止めるのみだった。  
シートを倒した助手席と運転席の間に押し倒された神楽は、服も下着もすべて脱がされ、土方に全てを晒していた。  
月明かり無くとも、肌そのものが発光しているように青白い神楽。  
成長途中の体のライン、甘い香りがする艶やかな髪。  
全ての美しさに、土方は夢中になり全身を愛撫する。  
「はぁ…ぁ。…土、方…」  
「…どうした?…」  
欲で掠れた声。  
「…キモチ、ヨォ…」  
「そうか」  
「けど…さっきの車みたいに、、揺れないアル…」  
突然の言葉に、土方は苦笑した。  
「まだ揺れる過程じゃねーんだけど…」  
時間をかけて全身を愛撫したから、神楽のそこは受け入れる準備は整っていた。  
「お前の覚悟はできたのか?」  
初めての行為がこんな車内で、しかも自分でいいのか。  
土方は、神楽の返事を待った。  
「大丈夫ヨ…土方」  
土方の肩に口づけて目を閉じた。  
神楽の身体に覆いかぶさり、脚を広げさせる。  
すばやく隊服のスラックスから自身を取り出し、神楽の入り口に宛がう。  
そこは十分に潤い、土方を迎え入れた。  
先端から残りの部分を押し込めた一瞬、神楽の顔が苦痛に歪んだ。  
全てを収めて一息つくと、すぐに律動を開始した。  
優しくしてやるはずだったのに、内部の熱さに何も考えられなくなってしまった。  
土方の先走りと破瓜の血が混ざり合って、粘着質な音が聞こえる。  
「あっァ、ぁ、…」  
内部を擦られるたびに先ほどまでの愛撫とは違う快楽が襲ってきて、嬌声をあげ続ける神楽。  
息を荒げ遠慮や気遣いも無く、本能のままに性器を突き立てる土方。  
どちらからともなく唇を求め舌を絡ませ、激しいキスを交わしながら絶頂へ向かっていった―――――。  
 
 
 
 
煙草の残り香で目覚めると、そこは万事屋のソファだった。  
土方が運んでくれたのだろうか。辺りを見渡すと、だれも居ないようだ。  
窓から外を見ればパトカーはなく、土方も屯所に戻ったらしい。  
神楽は、自分が着ているのがチャイナ服ではなく隊服のシャツであることに気づいた。  
恐らく、気を失った神楽にチャイナ服を着せることができなかったのであろう。  
必死にチャイナ服のボタンをとめようとする土方を想像し笑顔になった。  
「このシャツ、返さないといけないネ」  
顔もあわせず立ち去られて少し寂しかったが、これで会う口実は作れた。  
また夜にかぶき町を歩いてみようか。  
昼の屯所に押しかけて、車以外の場所でデートもしてみたい。  
次々にデートプランを考えながら、煙草の香りがするシャツに顔を埋めた。  
 

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