激しい雨の音で土方は目を覚ました。
雨はもう三日も続いている。
窓に目をやるとビル郡の向こうに一際高いターミナルが見える。
その風景は何も土方の部屋からだけではなかった。
侍の国に現れた天人。そして彼らを召喚するバカみたいに巨大なターミナルは江戸中どこにいても見ることができる。
昔ながらの木造瓦葺の長屋の路地から遠くに近未来の外観のターミナルが見える。
それはごくありふれた江戸の風景であった。
そのターミナルが江戸の風水に異常を起こしていると主張する人もいるが、実際のところ良く分からない。
ただ、こんなに雨が続くのには正直うんざりだった。
布団に寝そべったまま最後の煙草に火を点け、箱を握りつぶす。
ごみ箱に投げ捨てるが外れて傍に落ちた。周りには同じように握りつぶされた煙草の箱が散らばっている。
休暇をとってから3日間、土方はこの部屋から一歩も外に出ていない。
部屋には煙草の煙と、男と女の匂い――情事の匂い――が充満している。
そのすえたような空気の中に、また煙草の煙が揺らいで消えた。
「ん・・・・」
隣で妙が目を覚ます。土方も妙も裸だった。
土方が休みのときは妙が部屋に訪ねてきては貪るように体を重ねる。
妙と男と女の関係になったのはいつからだったか・・・思い出そうとしていた土方に妙が言う。
「煙草・・・・やめてって言ってるでしょ。髪に臭いがつくから」
「誰も気にしねーよ」
土方は構わず吸いつづける。妙は別に怒る様子も無く身を起こし、周囲に脱ぎ散らかした着物に手を伸ばす。
部屋に着いた途端、獣のようにお互いの体を求め合ったままにしていた―――。
そのことに軽く嘆息すると、長襦袢を羽織る。
「・・・・・帰んのかよ」
背中から土方が声をかける。
「ええ。もういいかげんお店も休めないもの」
すると土方は妙を背後から抱きすくめる。
「ちょッ・・・んッ・・」
妙は抗議の声をあげて振り返るが、その唇を塞がれる。
土方は妙の舌を激しく絡ませながら唇を吸い、胸元に手を差し込んだ。
小ぶりだが形のいい乳房を優しく撫で上げると、我慢できないように乳首が硬くとがり始める。
「アイツに会いに行くのか?」
土方は愛撫を続けながら言った。
「んッ・・・ちが・・う・・わよ・・・あんッ・・」
妙はなんとか答えようとするが土方に乳首を擦られ、声が出ない。
うなじから耳の裏に口付けし、耳たぶを軽く噛む。
それだけで妙の顔は紅潮し、息が荒くなった。
土方は、妙の耳に口をつける。
「オメ―は俺のもんだからな。アイツにはやんねーよ」
そう言って耳の中まで舐めた。
(そう思うんなら、ずっと離さずにあたしだけを見てよ)
妙はその言葉と耳の感触を噛み締めながらそう思った。
真選組副長・土方十四郎。それがこの男の肩書きである。
江戸の治安を守るために結成された組織の2をはる土方にとって、
自分たちの正義を貫く事こそが、何においても優先されるべきことであった。
局長・近藤勲を支え、自らの士道背くに能ず。
それが土方にとっての全てであり、妙もそれを感じ取ったからこそ、
体を重ねれば重ねるほど余計に不満に思うのであった。
アタシはあなたのモノだけれど一番にはなれない―――。
だからこそ、妙は土方だけではなくあの銀髪天然パーマとも関係を持った。
それは純粋に銀時に惹かれた他に、土方に対する子供じみたあてつけも多分にあった。
クリンクリンの天然パーマと、いつも死んだ魚のような目をした男―――。
知る者はあの男をそう言い表すが、妙は違った。
あのやる気の無い眠たそうな目の奥に鈍く光る銀色の魂。
それを知るからこそ、見つめられれば妙の方こそ死んだ魚のように息が上がるのだった。
「ひぁッ・・・・やッ・・・あんッ・・・・」
土方の手が恥毛をかき分け、秘裂をなぞる。
「もう濡れてるじゃねーか。大分いやらしくなったな」
「ぅ・・・ちが・・・うもん・・・」
「それともアイツに仕込まれたか?」
土方は包皮を剥きあげ、陰核を露出させると指でこねくり回す。
「やッ・・・そこ・・・・ああんッ・・・ダメ・・・」
ダラダラと垂れ流れる愛液をすくい、陰核に塗りつける。
指でこね回すと陰核は完全に勃起し、さらなる愛撫を求める。
土方は肩口やうなじを甘噛みし、乳房を揉みしだいた。
「あんっ・・・んっ・・んんっ・・・・イ・・イィ・・・んああっ・・・」
(アタシ、悪い女だ・・・)
妙は土方の執拗な責めで飛んでしまいそうな意識の中で思った。
男に抱かれながら、違う男のことを考えてる。おりょうが聞いたらさすがに怒るだろう。
でももっとヒドイのはこの男たちだ。
女が違う男に抱かれても平気でそれを認める。それどころか楽しんでいる風にすら感じる。
結局、銀時にしろ土方にしろ、自分だけのものにしたがるくせに、1番にはしない。
そして両方の男から離れる事ができない妙自身が一番悔しかった。
「なに泣いてんだよ?」
土方は零れ落ちる妙の涙を舌ですくい、子犬のように舐めた。
「だっ・・・て・・・んんっ・・・・」
「もう何も考えるな。アイツのことも」
そう言って土方は妙の弱点である乳首をすり潰すように摘んだ。
「んはああっ・・・ち・・くび・・・もッ・・・と・・・」
堪らず妙は背を弓なりにそらし、土方にもたれかかった。
背中で土方の肉棒が固くそそり返っているのが感じる。
妙は土方の肉棒に手を回した。優しく握り締め、熱さと硬さを感じる。
「ね・・・んっ・・・もう・・・」
「わかったよ」
土方は妙を四つん這いにさせると、肉棒をグショグショに濡れそぼった膣口に当てる。
が、すぐには挿入せず、まわりに擦り付けて焦らした。
「んんっバ・・カァ・・・は・・やくぅ・・・」
妙が抗議の甘い声をあげると、土方は突如、肉棒を妙の膣内に挿入した。
「んああああっ・・・おっき・・い・・・んあっ」
妙は土方の肉棒をその膣内全体で感じると、無意識の内に腰を振り、さらなる
快感を得ようとする。土方もそれに負けじと律動を繰り返す。
薄暗い室内に肉と肉がぶつかり合う音、それに女の喘ぎ声と男の荒い息が響きあう。
「んっんっ・・・あっ・・ひあっ・・・あんっ・・ああっ・・・」
土方が妙の背から手を回し、揺れる二つの乳房を揉みしだく。
「やっ・・・揉んじゃ・・・んんっ」
妙が快感に抗おうと唇を噛み締める。
「その割には締め付けてくるぜ」
土方は乳首を指の腹で転がす。
「んはああああっっ・・・」
シーツを握り締める妙の手は力が入りすぎて真っ白だ。
「よっ・・・・と」
土方が肉棒を抜く。愛液が膣口から亀頭まで糸を引くほどだった。
腰が抜けそうな妙をひっくり返し、正上位で再び責めだす。
「こっちの方が好きなんだろ?」
「あっ・・あっ・・・んああっ・・好・・・きぃ・・・」
土方の肉棒が妙の感じる部分を探るように擦りあげる。
「アッ・・・・そこ・・・いいのぉ・・・んんッ」
肉棒が土方の予期しない所を擦りあげたが、妙はそれに慣れているようだった。
(あのヤロー・・・)
土方は、妙の秘所を新たに開発した銀時に頭の中で舌打ちした。
猛然と腰を突き立てる。全てを喰らい尽くすかのようだ。
「ああッ・・・あッ・・あッ・・・ああんッ・・・もっと・・・かき回してぇ・・・」
シーツの上をさまよう妙の手を取り、指を絡ませあう。
「んんッ・・・ね・・・キス・・・・して・・」
妙が誘うように舌をつき出す。土方は噛み付くように唇に吸い付いた。
「ぴちゃ・・・ん・・・んんッ・・・んむう・・・」
激しく舌を吸いあい、唾液を交換する。
「んんッ・・・・んはッ・・・名前・・・呼んで」
「・・・妙・・」
「もっ・・・と・・・!」
土方は妙の名を耳もとで何度も呼びながらラストスパートに入った。
妙は土方の首に腕を回し、厚い胸板に自分の乳首が擦れる感触を楽しんでいた。
「んッ・・んッ・・・あんッ・・・あッ・・・イッちゃぅ・・・んんッ」
「イケよ」
「はああああッ・・・んッ・・・あッ・・・ああんッ・・・イッっくうう!!!」
妙の肉ヒダが大きくうねり、肉棒を締め付けた。
「出・・・る・・・!」
土方はたまらず妙の膣内に精液を吐き出した。
「んんッ・・・」
妙は満足げに子宮口にまで当たるその刺激に声をあげた。
「妙・・・」
土方は肉棒を膣内から抜くと、妙の横に寝転んだ。そして体を抱き寄せる。
妙は嬉しそうに胸に顔を寄せた。煙草のにおい混じりの体臭をかぎながら、
店をまたもや休んでしまうであろうと思い、ゴメン、と頭の中でおりょうに謝罪した。
土方はもう寝息をたてている。
(現金なものね・・・そーいや明日はジャンプの発・・・売・・・日)
明日は帰ろう。あの男がいつも読んでるジャンプを買って。
(どんな表紙だったかしら・・・・確か赤いマルがついていたような・・・)
やむ気配のない雨音と煙草の匂いが二人を包み込む中でそんなことを考えながら妙も眠りに落ちていった。