『とみ子、やっと起きたか。パパも山さんもお前が起きるの待ってたんだぞ。』  
『・・・。』  
『なんだ貴様、朝っぱらから仏頂面しよって』  
 
(こいつが我が家に居座り始めてからもう1ヶ月近く経とうとしている。しかし私はこの暑苦しい2ショットに未だ慣れる事ができない。いや、慣れるのも嫌だけど。)  
『ハァ・・・』  
『どーした、悩みがあるなら話してごらん?パパ、とみ子のしょっぱい顔なんて見たくないゾ☆』  
『じゃあ頭上の異物から自立することから始めてもらおうか。』  
『バッ・・・、お前、パパはヅラに依存しているんじゃない!共生してるんだ!』  
『屁理屈こいてんじゃねェェ!ヅラはあんた無しでも生きていけるわァ!』  
『貴様、親に向かってその口のきき方はなかろう。』  
『納豆こねながら調停者気取るな!私のため息の原因はお前だァ!』  
とみ子はそう言い放ち、山本の手から納豆を奪い取った。  
『オイ、その納豆は俺が10分間ひたすらこね続けた逸品だ。横取りは許さんぞ。』  
『アホか!10分以上こねる食べ物は水あめだけだァァ!』  
『朝食時からそんなにテンション上げると死ぬぞ。仕方ない、その納豆を4粒やろう。それで心を落ち着かせろ。』  
『いるかァァァ!』  
叫ぶと同時にとみ子は納豆を山本に思いきり投げつけた。  
『甘い!』  
山本は条件反射で払いのけた。納豆は先ほどまでの持ち主の元へと跳ね返り・・・  
『あ』  
3人の声が重なった。次の瞬間、とみ子は頭からソレをかぶっていた。  
 
『ミッコ、あんた今日臭くない?』  
『うん・・・ちょっとね・・・。』  
納豆のぬめりは何とか落としたものの、その強烈な臭いはとみ子の髪にしみついてしまった。できることなら徹底的にシャンプーしたかったのだが、時間が無かったためそれは叶わなかった。今日は平日。学校だった。  
『何があったか知らないけど、女子高生の放つ臭いじゃないね。』  
『アハハ・・・。』  
感情のこもってない声で返しつつ、とみ子は心の中で叫んだ。  
(・・・山本ォォっ!)  
――復讐を誓った瞬間だった――  
 
 
その日のうちに、計画は実行へと移された。皆が寝静まった頃、山本の部屋の前にとみ子の姿があった。  
その右手にはビニール袋をぶら下げている。  
『私が受けた屈辱、思い知らせてあげるわ。』  
ポツリと呟くと、キィ・・・と静かにドアを開けた。そろりそろりと山本の布団に近づく。  
山本は仰向けに寝ていた。その枕元に立つと、とみ子はビニール袋から白い物体をつまみ出した。  
(フフ・・・目には目を、歯には歯を、悪臭には悪臭を・・・)  
不敵な笑みを浮かべ、2本の指でつまんでいるソレを山本の頭上1、5メートルほどの位置にぶら下げる。  
『服部先輩のパンツ(ミソつき)、まさかこれが役に立つとはね・・・くらえェェ!』  
指を離そうとしたまさにその瞬間  
――シュルルッ――  
何かがとみ子の腕に巻き付いた。  
『・・・っ!これは呪脈マフラー!?』  
 
突然の出来事に、とみ子の手から服部先輩のパンツ(ミソつき)がすべり落ちる。  
ベシャッ  
パンツはパンツらしからぬ音をたてて着地した。しかし服部先輩のパンツ(ミソつき)の落下地点に山本の顔は無かった。  
寝返りをうつ形でパンツの直撃をかわしたのだ。  
『あんた・・・起きてたの。』  
山本は布団から身を起こし、立ち上がった。その瞳は静かにとみ子を見据えている。  
『これほどの殺気を放たれて、おとなしく寝ていろという方が無理だろう。』  
『・・・チッ!』  
忌々しげに山本を睨みつける。  
『こんな夜更けに何の用だ。』  
なんと、服部先輩のパンツ(ミソつき)にはまだ気づいていないらしい。  
『さては・・・夜這いか。』  
『なっ・・・!』  
思いもしなかった山本の発言に、とみ子は絶句した。  
『貴様のような色気皆無の小娘に誘われても嬉しくないのだが・・・』  
『なんですってェェェ!』  
いつもの勢いで殴りかかろうとするも  
『うぁッ』  
両足にも呪脈マフラーが絡みついてきた。四肢を封じられたとみ子はバランスを崩し、前のめりに倒れこむ。  
(ぶつかる!)  
地面が目の前に迫り、覚悟を決め目を瞑る。しかしその瞬間は来なかった。  
恐る恐る目を開ける。とみ子は山本の腕の中にいた。  
 
『ちょ、ちょっと・・・離れてよ!』  
山本の体温を布越しに感じ、気が動転してしまう。  
『せっかく助けてやったのに可愛げがないやつだな。』  
『あんたのせいで転びそうになったんでしょ!』  
『口の減らない奴だ。』  
『わわっ!』  
山本はとみ子の体をひょいと持ち上げた。世に言う、お姫さまだっこの形で。  
『ちょっ、降ろしなさいよ!』  
『言われなくとも。』  
とみ子の体は山本の布団の上に寝かせられた。その上に山本がのっしと覆い被さる。  
『何のつもりよ。』  
『抱いてほしいのだろう。素直にそう言えば良いものを。』  
山本はとみ子の顎をクイと持ち上げると、顔を近づけた。  
(――ヤバイ――こいつ勘違いしてる!)  
『夜這いなんかじゃない!復讐しに来たのよ!』  
唇まであと数センチのところまで迫っていた山本の顔が止まる。  
『復讐される様な事をした覚えはないが。』  
とみ子から体を離して、サラリと言い放つ。  
(コイツ・・・)  
その態度に、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。  
『納豆!』  
『あぁ、そのことか。しかしアレはこっちが謝ってもらいたいくらいだぞ。丹精こめて練り上げた納豆をダメにされたのだからな。』  
『そのくらいまた練れば良いことでしょ!私は髪に臭いが染み着いて大変だったんだから!』  
『・・・どれ。』  
山本はおもむろにとみ子の髪に触れ、フンフンと香りをかいだ。  
 
『・・・ッ!』  
突拍子の無い山本の行動に、とみ子の体はピクリと反応した。  
『洗髪料の匂いしかせんぞ。』  
サラサラの黒髪を指で弄びながら呟く。『あ・・・当たり前でしょ!念入りに洗ったんだから!』  
『ならばもう良いだろう。過ぎた事を根に持つ女は嫌われるぞ。』  
そのケロリとした態度に、とみ子はますます腹をたてた。  
『原因を作ったあんたに言われたくないわァ!言っとくけど、私はまた復讐しに来るから。』  
両手両足を拘束され、男に組み敷かれている状況にも関わらず、なお気丈に振る舞う。  
そんなとみ子を見て、山本はヤレヤレといった感じで頭をかいた。  
『何よ。』  
『貴様にはちょっとばかし仕置きが必要な様だな。』  
『え、仕置きって・・・ッ!』  
とみ子が言い終えるのを待たず、数本の呪脈マフラーが伸びてきた。  
『何する気・・・あっ!』  
マフラーはとみ子の体を這い回った。慣れない感触に思わず声があがる。  
『あっ・・・あははははははッ!』  
布の先端はとみ子の首や脇腹をくすぐり始めた。  
『あはははッ、はっ、や、やめて!苦しいッ!』  
叫ぶと同時に、マフラーの動きは止まった。  
『ハァ、ハァッ、』  
『どうだ、改心したか。』  
山本の問いかけに、息を荒げながらも答える。  
『誰が、こんなことで・・・ッ』  
圧倒的に不利な位置に立っていながら、自分の意志を曲げようとはしない。  
そんなとみ子の様子に、山本はため息をつく。  
『厄介な娘だな。多少痛い目を見なければわからんか。・・・仕方ない。』  
そう言いながらとみ子の後頭部に手を伸ばすと、自分の唇をとみ子の柔らかな唇に押しあてた。  
『んむっ!』  
 
思わず声が漏れる。そして驚きから生じた隙間を山本の舌は見逃さなかった。  
「ん゙ぅっ!」  
異物が強引に侵入してくるも、頭を固定されているため逃れられない。  
その感触に眉根を寄せたが、山本はお構いなしといった感じで口内を舌で犯す。  
歯列をなぞり、舌を絡める。  
「ん・・・ふ・・・」  
ぴちゃぴちゃという水音と、時折漏れるとみ子のくぐもった声。その2つの音だけがこの部屋を支配していた。  
(息が・・・できな・・・っ)  
山本はしばらくとみ子の柔らかな唇と舌を味わっていたが、とみ子の体から力が抜けたのを感じとると、ようやくその唇を解放した。  
「はぁ、はっ・・・」  
とみ子は新鮮な空気を求め、深く息を吸い込んだ。  
しかし先ほどの行為によって量を増した唾液が気管に入り、むせこんでしまう。  
「ごほっ、ケホッ」  
その苦しさに目に涙を浮かべた。  
「な・・・んで、こんなこと・・・」  
「口で言ってわからん奴には身体で教える。これを言うのは2度目の筈だが。」山本は話しながら、胸の前に置かれていたとみ子の両手を持ち上げ、ちょうどバンザイの様な格好にした。  
当然、拘束されたままなので抵抗はできない。  
「だからってこんな・・・ひぁッ!」  
山本はおもむろにとみ子のパジャマに手を突っ込んできた。  
「やぁっ!」  
直に肌に触れられ全身が粟立つ。  
そしてその手が膨らみに触れ、山本はあることに気付いた。  
「貴様、下着をつけていないのか。」  
「!!」  
今は深夜。復讐を済ませたらさっさと寝るつもりだったので、とみ子はブラを着けていなかった。  
「こんな時間にこんな格好で男の部屋に忍び込むとは・・・やはり夜這いに来たのではないのか?」  
 
「ちがっ・・・ンッ」  
話しながらも、その手はとみ子の胸をやわやわと揉んだ。  
服の下で直接胸に触れられ、身体が強張る。  
「やめ・・・てよ・・・っ」  
唯一自由がきく口で抵抗の意を示すが、その言葉が受け入れられる筈もなく、とみ子のはりのある双丘は山本の手によってぐにぐにと形を変えられていた。  
 
──プチン──  
とみ子の中で何かが切れた。  
「ヤメロって・・・言ってんだろがァァァ!」  
ゴッッ  
「「つぅ・・・っ!」」  
鈍い音が部屋に響き、互いの頭に鈍痛が走る。  
それまでの甘い空気は一気に消え去ってしまった。  
とみ子の頭突きが炸裂したのだ。  
「貴様ァ、何をする。」  
頭を抱えながら山本が問う。  
「それはこっちのセリフよ!私のファ、ファ、ファーストキス奪った上に生チチまで揉みやがってふざけんなァァ!さっさとマフラー解きなさいよ!」  
山本の愛撫に吐息を漏らしていた少女はどこへやら。  
烈火の如く怒るとみ子の姿がそこにあった。  
「ある程度の抵抗は男をそそるものだが・・・度を過ぎるといささか興ざめだな。」  
「だから早く解放し・・・う、あッ」  
頭突きをお見舞いした瞬間わずかに緩んだマフラーが、再び強くとみ子の躰に絡みついてきた。  
「ふっ・・・ぅ」  
生命力を奪われていく妙な感覚。  
それは過去に1度体験したものと同じだった。  
そう、初めて山本と出会った日、この方法でとみ子は意識を奪われたのだ。  
しかし今回その効力は気を失う一歩手前、脱力感から体を動かせなくなる程度に留まった。  
先ほどの深い口づけの後の様に頭がポーッとする。  
「呪脈マフラーの力、思い出したか。」  
「・・・っ」  
悪態をつきたいところだったが言語中枢がうまく働いてくれず、とみ子の抵抗は睨みつけるだけに終わった。  
 
「さて・・・」  
ポツリともらすと、山本はとみ子のパジャマのボタンを1つ1つ外していった。  
「・・・!」  
抵抗しようにも体が動かない。とみ子は自分の肌が少しずつ露わになっていく様子を、ただ見つめることしか出来なかった。  
1番最後のボタンも外され、留めるものが無くなった布は山本の手によって左右に開かれた。  
羞恥からとみ子の顔がみるみる紅潮していく。  
「い・・・や、見ない・・・で」  
やっとのことで紡ぎだした言葉にも、力がこもっておらず、説得力は全くなかった。  
きめ細やかな肌、形の良い2つの膨らみ、そして桜色に染まった小さな突起が露わになる。  
「と・・・とみ子サマのハダカ見て・・・タダですむとおもっ・・・む゙っ」  
少し黙っていろ。  
そう言いたげに再び唇を重ねられる。  
山本の唇は唇から首すじ、首すじから鎖骨へと移っていき、遂には乳房にまで達した。  
「どこに・・・キスし・・・あぁッ!」  
かり。  
乳首を甘噛みされる。突然の刺激にとみ子は思わず声をあげた。  
「・・・っ」  
片方の乳首は執拗に舐められ、時に甘噛みされ、もう片方の乳首は親指で軽く押しつぶす様に刺激される。  
その甘美な刺激に、とみ子は体の芯が疼くのを感じ始めた。  
しかしそんな自分を認めることを恐れ、喉の奥から湧き出ててくる声を漏らすまいと唇をキュッとつぐんでいる。  
「何やら我慢しているみたいだが、躰は嘘をつけないようだな。」  
山本の舌から解放された突起は芯を持ち、ぷっくりと勃ちあがっていた。  
「う・・・」  
欲望に正直な自分の躯が恨めしい。  
 
「こちらはどうなって・・・ん?」  
「ひゃぁっ!?そこはダメ・・・っ」  
山本の手がとみ子の下腹部へと伸び、何の予告も無しにパジャマの中へと侵入してきた。  
とっさに両足を閉じたが、時すでに遅し。  
山本の手を挟みこむ形になってしまう。  
「や・・・っ」  
その指がショーツ越しに秘部を探ると・・・ほのかに湿り気があった。  
「そんなとこ・・・触んないでよ・・・っ」  
顔を真っ赤にして絞り出すように呟く。  
「貴様の『そんなとこ』はちゃっかり濡れているようだが。」  
そう言いながら山本の指はゆるゆると何往復も秘裂をなぞった。  
「んっ・・・ふ・・・」  
その度にとみ子の口からは切なげな吐息が漏れた。  
とみ子は困惑していた。  
自分が今山本にされている行為は強姦以外の何ものでもない。  
しかしその唇から、舌から、指から、確かに快感を得ている自分がいるのだ。  
「感じているのだろう。」  
「なっ・・・!」  
心を見透かされた様な山本の突然の問いかけ。  
「そ、そんなこと聞いてくる奴にテクニシャンはいない・・・ぁンッ!」  
精一杯の虚勢も、その指使いに遮られる。  
「自分の置かれている状況を考えてみろ。虚言など無意味だ。」  
「・・・?」  
今、己の自由を奪っているもの・・・それは呪脈マフラー。  
ふと、ある日の会話が頭をよぎった。  
──あんた人の心でも読めるわけ──  
──コイツで繋がってる時ならちょっとだけな──  
「!!」  
つまり、今の自分の思考は山本に筒抜けなワケで。  
「ようやく気付いたか、愚か者。」  
 

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