誰ですか。ジューン・ブライドなんて日本で流行らせたヤツは。
6月に結婚した花嫁は幸せになれる―――。
そんな6月の花嫁(ジューン・ブライド)にあやかって日本でも近年、6月に結婚するカップルは多い。
おかげでアロマパークホテルは6月に入ってからは猛烈に忙しい。 大安吉日ともなると殺人的なスケジュールで
何組ものカップルの挙式をこなさなくてはならない。
不手際があったら洒落にならないイベントなだけに、アロマパークホテルでフロントをしている綾は何か見落としはない
かと胃をきりきりさせている。
それに気分がブルーなのは、忙しいという理由だけではない。
私が薬指に付けていた指輪を外して、このホテルのバイトをしている亮くん――和泉 亮が恋人になってまだ半年も経っていない。
教会の前で並んで神に誓っているカップルを見ていると、自分にもあんな時期はあったのに……と、ちょっと複雑な気分になる。
別れた直後は結婚はもうコリゴリ、と思っていたのに。 幸せそうに微笑む花嫁が羨ましい。
もし。 もし、あの純白のドレスを着る日が、またくるとしても。 亮くんはまだ大学生だから、当分無理だと思うし。
それに……。私より若い彼がいつまで私の側に居てくれるのかもわからない。
彼はいつも愛してるって言ってくれるけど、なかなか素直にその愛を信じることができなくて。
今みたいに仕事が忙しくてなかなか会えないと、そのまま距離が離れて終わってしまいそうな気がする。
目の前で式してる幸せそうなカップルが羨ましくて。
いつもは心から祝福するウェディングのお客様だけど、ごめんなさい。 いまはちょっとそんな気になれなかった。
☆★☆
ところが私が思っていたよりもずっと早く、またウェディングドレスを着るはめになった。
鏡の前に自分の理想が具現化した形で立っていた。
純白のウェディングドレス。 マリアヴェールをまとい、白と青のカラーでまとめた花束を持った、清楚な花嫁。
「あ、綾さん!それっ!!」
花嫁の控え室で着付けをしてもらって、出番を待っている私のところに亮くんがやってきて驚いた声を上げた。
彼は今からバイトだ。
「ああ、亮くん。 今日のブライダル・フェアでね。 教会での模擬挙式に出る花嫁のモデルさんが電車の車両故障に
巻き込まれて急遽来られなくなっちゃって。 朝から急病とかと違って、あまりにも急すぎて代役のモデルさんも間に
合わないのよ。 で、しょうがないから私が出ることになったから」
「……なんで、綾さんが」
「しょうがないのよ。 ドレスが身長の高いモデルさんにあわせたサイズで、うちのホテルのほかの女の子達には
着られなかったの」
「だったらドレス替えればいいじゃないですか」
「あのドレスは有名なデザイナーさんの物で、アクセサリーの宝石と併せて、今日の模擬挙式の目玉なの。
もう宣伝しちゃってるから変更できないし。 私ならなんとか底が高いクツを履けばなんとか着られたし。 だから私が
出ることになったんだけど……どっかおかしい? 似合ってない?」
「……似あってますよ。 すっげー、むかつくくらい。 似合ってる」
「??? もしかして怒ってるの?」
彼はすぐに気分が顔に出るから解かりやすい。
「べつに。 怒ってませんよ」
「え?……どうして? このドレス、凄いでしょ? さすがよね。デザイナーさんのイチオシなんですって。 パールとか
本物で凄く重いよー」
亮くんの目の前でクルリと回ってみせる。
「……ファッションショーじゃなくて、模擬挙式の方に出るんですよね」
「うん」
「もう、何で綾さん、そういうの受けるかな…」
「え?」
「……別になんでもないです。 俺、もう行きます。 これからドアマンだから。 そのドレス、本当に似あってます。 じゃあ」
「え、ええ。いってらっしゃい。 がんばってね」
「はい」
最後は笑って出て行ったけど、やはり怒ってる、気がする。
……どうして? 褒めてくれると思ってたのに。
ぼんやり考えていると、スタッフの女の子がドアをノックして入ってきた。
「綾さん、もうすぐ出番です! 衣装やメイク大丈夫ですか? クツ高くて歩きづらいから私に捕まってください」
「あ、はい。 ありがとう」
私は釈然としないまま、手をとって貰って会場に向かった。
普通に挙式をするだけならそれほど時間はかからないが、模擬挙式はそのつど来場者に説明をしながら行うので結構
時間がかかる。最近では花嫁の希望にしたがって、和式からはじまって各国の結婚式も行えたりするのだが、やはり
主流は洋式ウェディング。 未来の花嫁候補たちは目を輝かせてどの挙式の様子を眺めている。
それが終わると綾の周りには幾人もの女性客が取り囲み、ドレスの説明や着心地を説明したり、写真を撮ったりしている。
(ふー、本当に重いなこのドレス。 足も痛いし)
営業スマイルを顔に貼り付けて、カメラのフラッシュに耐える。
なんとか一通りのイベントをこなして、やっと模擬挙式が終わる。
「おつかれさまー」
「おつかれさまー」
皆に挨拶をし、またスタッフの子に手をとって貰って控え室に戻る。
もう足も身体も限界で、とにかく早くこの窮屈で重いドレスを脱ぎたいそれだけだった。
「ありがとう。 じゃあ、私、これから着替えるから手伝ってくれる?」
「いいですよ」
二人で控え室に入ろうとすると、亮くんが廊下を歩いてくるのが見えた。
そして私に手を貸してくれていたスタッフに声をかける。
「すみません、今日の参加者の方がドレスのレンタルの日時について聞きたいことがあると言われているのですが、
いま披露宴の打ち合わせのテーブルでお待ちくださっています」
「そうですか。 それじゃ長くはお待たせできないですね。 ……綾さん、ドレス一人で脱げますか?」
「うん、大丈夫だと思う。 ダメなら誰かにに手伝って貰いますから。 お客様の応対お願いします」
「そうですか。 もし、ダメそうだったら内線で呼んでくださいね」
慌てて彼女が足早に去っていくのを見た後、控え室に入ろうとすると、その後を亮くんがついて入ってきた。
「亮くん?」
「綾さん……」
後ろからいきなり抱きしめられて驚いて振り返る。
「亮くん?どうしたの? 仕事は?」
「今、休憩中」
「そう」
「挙式してきた?」
なんだか泣きそうな声に聞こえる。
「ええ、終わったわ。 どうしたの? なんだかヘンよ」
「綾さんは俺以外の男と結婚式するの、全然平気なんだね」
トクンと心臓が跳ねる。
「……それは……仕事だし」
「綾さんが、また別の男と式、挙げるの。 ……俺、指咥えてみてるだけだった」
「亮くん……ごめん」
亮くんに言われた言葉が胸に突き刺さる。
彼が純粋であれば在るほど、自分がいかにスレた大人であるかを思い知らされる。
ごめんね。 もう一度ウェディングドレスを着て、式をして、夫婦生活を体験して、その後、修羅場の末、別れる。
そんなとこまで経験した自分にはお芝居でまたウェディングドレスを着るなんてこと、全然なんとも思っていなかった。
ただの仕事だから、と。
「これは仕事なんだし、俺、こんな事言うの、ほんと、どうしよもないガキだって、自分でも解かってるけど。
でも、綾さんが前の旦那と結婚したって聞いたとき、足元から地面が割れて闇にひきずりこまれるみたいだった。
……もうあんな思いするの絶対にごめんだ」
身体を抱きしめる腕に力がこもる。 まるで逃がさないとでもいうようにキリキリと身体を締め付ける。
「亮くん……」
「すみません。俺……。 こんなこと言って。 バカみたいですよね」
そう亮くんは自嘲気味に話すが腕は解かれないままだ。
彼の言っていることは確かに子供っぽい独占欲だ。
でもこんなにもハッキリと嫉妬されてうれしいと思う自分がいる。
「亮くん。 腕放して」
「え……」
亮くんが慌てて腕を放し、怒られた子犬のように頼りない瞳を向ける。
「……それからドアの鍵、閉めてきて」
「は?」
何を言われたか解かっていないようでポカンとしている。
「人が来たら困るから。 時間ないし、早く」
「え……それって……」
「フェアでドレスを着たモデルさんたちは別の控え室が用意されてて……だから……その……。 今はこの部屋、私が使っていい事
になってるの。 ……この部屋の中なら、何してもいいから。 この後の時間、亮くんの好きにして、いいよ」
もの凄く恥ずかしい。 でも亮くんが喜んでくれるのなら、この恥ずかしさも耐えられる……はずだったんだけど。
「えっ」
亮くんは目を見開いたまま、動かない。
(……なんで固まってるの? ……ひょっとして引いた!? 急にこんな変なこといいだしたから、もしかして引いちゃった!?)
自分の顔がみるみる赤くなっていく様が、鏡をみなくても解かる。
(やだ、もうこんなことしなきゃよかった)
「…………好きに……して、って?」
地球外生物でも見たかのように、頭のてっぺんからつま先まで、何度も視線を這わせられて、どんどんいたたまれなくなる。
「やだ、なんかもう恥ずかしい……亮くん、あんまりジロジロ見ないでよ」
きびすを返して視線から逃れようとすると、後ろからさっきよりもっと強い力で抱きしめられた。
「ちょ、ちょっと亮くん、放して。 腕痛い…」
慌ててもがいてみたが腕の力が強すぎて、全然振りほどけない。
と、耳元で囁かれる。
「……当ですか?」
「え?」
小さすぎてよく聞こえなくて思わず聞き返す。
「本当に?本当に、好きにしていい? 遠慮も…我慢もしなくていい…んですか?」
亮くんは私より背が高いから、私に両腕を回した状態で、少し屈んで、耳元で囁く。
さっきまで拗ねたり怒ったりしていた声とは違う。
子宮に響く、低くて甘い声。
いつも私の方が職場の先輩で、年上で、話していても、立場が上である事が当たり前だと思ってるけど、こうされると自分が彼よりも
ずっと小さくて弱い生き物である事を自覚させられる。 それが、こんなにも胸をドキドキさせる。
「…………うん」
「本当に? いいの? 知らねーよ? 泣いて『許して』って言っても、今日は我慢してあげられないけど、いい?」
したたるような欲望を隠そうともしない、亮くんがその声にドキッとする。
”泣いて『許して』って”って、ナニ?
自分の中で生命的な危険信号がチカチカ点灯するのを感じる。
ぞくりと、鳥肌が立つ。 OKを出したのは自分だ。 もう今更撤回なんて無理だろう。 けど―――。
彼が足早にドアの鍵をかけて戻ってくる。 自分が頼んだのに、閉じ込められた気分になる。
「その、あ、あんまり無茶されると明日の仕事が……あっ!」
いきなり首スジを噛まれた。
戒めてた両腕が緩んだかと思うと、直ぐにその手が私の両胸を揉みしだく。
「そんなこと今更言ったって駄目だから。 もう俺、止まんねーし。 俺の事煽ったの綾さんだから」
後ろから熱く硬いものがお尻に押し付けられて、焦る。
「……ちょっとまってっ! やっぱり……キスだけじゃだめ? 今日は家に早く帰るから。 そうしたらゆっくり、いくらでも
つきあうから……ね?ね?」
「もう言質とったから。 今更そんなつもりなかったなんて言わせない」
圧し掛かられてドレスの重みで足元がふらふらしてよろけると、そのまま壁際に押しやられ、冷たい壁にむき出しの肩や
背中が押し付けられる。
今、このときまで、酷い話だが、私は彼の事を、いつも素直に言うことをきく、よく躾られた子犬みたいとか思ってたフシがある。
でも全然違う。間違ってる。
大きな黒い獣だ。 まるで狼が私の上にのしかかって、頭から食われるような感覚。
ハアハアと荒い息を吐いて、顔中をキスされる。 両腕は抵抗できないよう壁に縫いとめられたまま動けないようにされて。
「綾さん……綾さん……綾さん……」
夢中で胸元にむしゃぶりついてくる。
「ね、待って、ド、ドレスが。 ウェディングドレス。 汚したら困るから! ちょっと待って! 脱ぐから。 直ぐだから。
本当に直ぐに脱ぐから!!」
もう火がついてしまった彼を止めることはできない、と判断したのでせめてドレスだけでも脱ぎたいと懇願する。
「駄目。 これ着たまんまでしたい」
「ちょ、ちょっとーっ!やめてっ!!」
「ウェディングドレスってそそるよな。 なんかすごいエロい。 結婚式場から花嫁拉致って、無理やり犯してる気分。
俺、前から思ってたけど、このスカートの中どうなってんの?」
「ひっ!」
ペラリとドレスの裾をまくられる。
やっと両手が開放されたかと思ったら、彼の両手は私の身体をあちこち撫で回していた。
「もう、ちょっと、落ち着いて。 ね、あ、まだ、クツ脱いでないし。 レースとかスパンコールとか繊細だから。 お願いだから破らないで〜」
「うわっ。なんだこのボタンの数。 どうしてこんなに背中にボタンがあるんだよ。 花婿をイライラで狂わせるためか?
やっぱムリだ。 俺もう待てないから、このままする」
「やだー、だめだめぇーー!」
私の悲鳴なんて無視して、彼は私の膝を舐めながら、厚底のクツを取って後ろの床になげ、足を広げられて、その付け根を凝視される。
「やっ」
慌てて両手で覆い隠そうとするが、すぐにまた両手首をつかまれてしまう。
「綾さん、ドレスの裾、持ってて」
「え?」
「このドレス、汚したくないでしょう? だったらこのままスカートの部分、持っててください。 じゃないと俺、ぶっかけちゃうよ」
「えっ! だめ……お願い……」
しかたなくスカートの裾を両手で持つハメになる。 これで手が塞がって、私はまったく亮くんに抵抗できなくなってしまう。
「下着もかわいーね。 真っ白でフリフリで。 これ、自前?」
「下着はレンタルできないから、ウェディング用の、業者から買ったの」
「へー。 うわ、やらしー。 これ横がちょうちょ結びになってる。 これも汚す前にさっさと脱いどこ?」
ガーターとストッキングを残したままでショーツだけを脱がせていく。
ピンッっと紐を引っ張ると、ちょう結びが解けて恥ずかしい部分を覆ってる小さな布がぱらりと落ちる。
ドレスを着たまま、ヴェールも、二の腕まであるシルクのウェディンググローブも、純白のストッキングもガーターもそのままに、下着だけがない、
という背徳的な姿にさせられてしまう。
先ほどまでショーツで覆われていたそこは、まだ濡れてはいないまでも、視線にさらされてヒクリと勝手にうごめいてしまう。
「純白のドレスの中は、こんな風になってたのか」
両手の親指と人差し指で、クパッっと割れ目を押し広げる。
「……すげ、ピンク色」
「やだ、見ちゃヤ」
職場の、こんなに明るい部屋でなんかしたことがない。 そんなところで、ありえない部分をしげしげと観察されて恥ずかしい。
亮が自分の指をペロリと舐めて湿らせてから、ツツッと裂け目を撫ぜる。
「はぅっ!」
浅いところをゆるゆると出し入れされて、すぐに其処は、はしたない液でぬめりだす。
何とか亮くんの手を妨げようと、ついドレスを離して手を伸ばそうとする。
「綾さん。 手、放したらだめですよ。 ドレス、汚れてもいいんですか?」
慌ててまた両手をドレスに戻す。
「…は………んっ……今日の、亮くん……いじわる…い…よ……うぅっ!それになんだ、か怖い……やんっ……」
「怖いですか? ……そうですよね。 でも、綾さん、いい機会だから、少しは俺が怖いヤツだってこと、学習してください」
「…ん………ふ……っそんなの……知って…る……から。 ちゃんと、解かってる……から……」
「まだまだ全然ですよ。 いつもいつも。 客にも、誰に対しても無防備なんだから。 俺、見ててどれだけ嫉妬してると
思ってるんですか。 今日だって、どれだけ理性を総動員させて、笑って式に行く綾さんを見送ったと思ってるんですか。
本当はドレスのまま掻っ攫ってつれて帰るか、新郎役のヤツぶん殴って俺が代わりに式にでようかと思ってましたよ」
「バカ……もう……あんっ……はぅ……」
「でもちゃんと我慢したでしょう? 褒めてくださいね」
そう言いながら、先ほどまでドレスとパニエの向こうに見え隠れしていた亮の頭がドレスの中に潜り込む。
「んぅっ……」
無理やり片足を持ち上げ、足を開かせ、淫らに硬くしこったその部分に熱い息がかかる。
「や、……しないで……それ…いや……」
懇願は無視され、ぬめる舌が卑猥な音をさせてそれを舐め溶かし、溢れる泉に激しく吸い付かれ、腰がそれに応えるように
勝手に激しく跳ね上がる。
啜っても啜っても溢れる恥ずかしい液が滴るその泉の中に彼の指がぐっと中にねじこまれた。
「んくっ……やっ…!」
深く突き抜けるような快感が背筋を駆け抜ける。
「やっ…すぐイッちゃうぅから。だめっ……」
その時だ。 外から部屋のドアをノックする音がした。
『綾さん? 大丈夫? ドレス脱げましたか?』
先ほどのスタッフが商談を終えて戻ってきたようだ。
どうしよう、どうしようとオロオロしていると、亮はにやりと笑って立ち上がり、私が快感に震える手で持っていたドレスの裾を
下げ、キレイに直した。 そして耳元に唇を寄せ、小声で囁く。
「どうします? 俺も貴方も服脱いでないし、このまま部屋に入ってもらいましょうか?」
「そんなっ! 亮くんがここに居る事をどうやって説明するのよ」
「貴方が気分が悪くなって介抱してたとか、なんとでも言いますよ」
確かにこのままごまかせなくもない。 ただ私の顔が不自然に赤いことくらいで変に思われることもないかも。 でも―――。
私はドアに向かって叫んでいた。
「大丈夫です。 さっきほかの人に手伝ってもらってちゃんと脱げましたから。 いま下着姿なので、ドア開けられないの」
『そうですか。 わかりました。 また後で声かけて下さい。 ドレス片付けにきますから』
「ありがとう」
ドアの前から人の気配が消える。
「いいの?……本当に最後までしちゃうけど?」
「………………ドレスだけはぜぇったいに、汚さないで」
今日、初めて私から彼に抱きつく。 初めてしたときのような性急なキス。
荒い息の中、舌と舌を絡められて飲みきれない唾液が頬を伝うと、それを追うように彼が舐め取る。
チューブトップなドレスで、大胆に胸元が露出しているデザインなので、肩の紐もないから引き下げるとすぐに胸が露になった。
そのまま浅いカップのブラも下げられて、胸を揉みしだかれる。
浅ましく先が尖って快感を待ち焦がれる胸を突き出すと、両手でじかに掴まれて、口に含まれ、軽く噛まれる。
「あ……あぁ……は……」
気持ちよくてたまらない。
「きれいだ……。 すげぇエロい花嫁さんだ。 綾さんのこんな姿、見られるの、俺だけですよね? もう誰にもほかのヤツに見せたり
しないですよね? ん……はぁ……俺だけの……俺だけのものだ……俺だけの……ちゅ……」
半端にドレスを脱がされ、体中にキスをされる。
全身が火であぶられているかのように熱い。 汗でまとわり付くドレスがもどかしくて、脱いでしまいたいのに、背中の部分にボタンが
あるせいで自分では脱げないのが忌々しい。
亮がついに自分の制服のジッパーを下げ自身を取り出す。 私も早く繋がりたくて、またスカートとパニエをたくし上げる。
「はやく」
私にせかされて亮くんが少し笑ったように見えた。
「いきますよ」
焼けた鋼のように熱いものがそこにあてがわれたと思うと、ぐっっと斜めに腰を推し進めてきた。
「はぁうっ! あぁあああーーーーっ!」
背中が弓のようにしなる。
「う……くっ……痛かったら……言ってください」
そう前置きして、亮が性急に腰を動かし始める。 ずぶずぶと奥まで犯されて、中からあふれ出した透明な液が太ももにまで伝っていく。
何度も何度も蹂躙され、華奢な身体が揺さぶられる。 繋がっている部分が、ひどく熱い。
「ぁあんっ!やぁ、あぁんっ…!」
綾が快感に声が抑えられなくなってくると、亮がキスで唇を塞ぐ。
「う……ンぅ……んん」
「は、……ぅっ……綾さん」
「ん……な…に?……」
「…はっ…この先、ほかの誰かと、……何回結婚しても。 …俺、何度でも……略奪するから」
「え?」
「逃がさないからっ」
吐露された強すぎる愛情に、嬉しさと、恐怖で背筋がゾクゾクする。
そして止めとばかりに、ぐりと最奥まで突き入れられた。 もともと亮の舌技で、イク寸前まで高められた身体だ。 ひとたまりもない。
「も、イクッ! イっちゃ……ぅんっ…やっ…見ないで、見ちゃダメーー」
自分の行く寸前の顔を獣の目をした亮に観察される。
慌てて顔を覆うが、彼の手が再度両腕を戒める。
「だめ。 見せて。 綾さんが俺のでかわいくイっちゃうところ」
一番恥ずかしい顔を見られてイヤなのに、もうイクのを自分の意思ではとめられなかった。
「あ、あ…やぁああああんっ!!」
私がイクのとほぼ同時に収縮する筒の締め付けに耐え切れず、亮もまた精を吐き出した。
どくどくと中を熱い液で満たしながら、亮がつぶやく。
「貴方の身も心も。 つま先から髪の毛の一本一本まで、全部俺のものだ。 もう誰にも渡さない」
☆★☆
亮くんが手間のかかるボタンを一個一個外してくれてようやく楽に息が吸えるようになった。 ホテルの制服に着替える。
ウェディングドレスはマネキンに着せなおしたけど。
「あーあ。 ぐちゃぐちゃのシワだらけ……」
確かに亮くんは汚さなかった。 だが……。見た目が……。これ、絶対に何してたかバレそう。
いや、それどころか、本当に返却できるのだろうか。
「大丈夫ですよ。 もし返品できなかったら、買っちゃいましょ。 これ。 今日の記念に」
「ばかっ! もう〜。着たまましなきゃこんな困ったことにはならなかったのに。 これ買える値段かな。 多分白無垢の和装よりは
安いと思うけど……デザイナーの一点もの……うう」
真っ青になりながら分割できるかな、なんて考えていたら。
「これ着て、いつか本当に俺と一緒に神の前で誓ってくれますか。 まだまだ先になると思うけど。 絶対に幸せにしますから」
真剣に聞いてきた。 これってもしかしなくてもプロポーズ?
「…………。 OKしたら今夜は、もうちょっと控えめにしてくれる?」
「ええー。 今日は寝かさないつもりだったのに」
「ふーん。そういう事言うんだー。 ふーん、どうしよっかなー」
「あ、ずるいよ。綾さん。 もう、綾さんが悪いんですよ。 かわいいことばっか言うから。 あ〜、やばい。 またしたくなってきた」
また抱きつかれそうになって慌てて飛びのく。
「休憩終わったでしょ。 さっさと仕事に戻りなさい!」
「ちぇ……」
「結婚式は6月以外でってことならいいよ?」
「えっ……それって、…OKってこと?………綾さんっ!!」
結局また抱きしめられた。
貴方となら、6月に結婚しなくても、幸せになれるわよね?