「先生!先生!」
「真夜君!真夜君!!」
高苑真夜と松之宮遥のつなごうとした手は、指先が触れそうになったところでむなしくすり抜ける。
真夜は突如あらわれた男によって強引に担がれ、車に乗せられた。
助けようとした遥といえば、別の男ともみ合っている。
二人の男は、慣れた手つきで真夜の腕を後ろ手に縛り、目隠しをつけ、さらに猿轡を噛ませた。
何もできない達磨になった真夜をシートに横たえてからまもなくのこと。
車の車輪の駆動をしめす振動が走った。
(・・・。)
車が動き始めると男たちは聞きなれない言葉で会話をしている。
(ロシア語・・・。)
真夜は独学だが、ロシア語の知識がある。
自由に会話することはできないまでも、聞き取ってみる価値はあるかもしれない。
「なかなかの上玉だが、青臭い。本当に損害分の金額になるのか?」
「ならないだろうね。目的はこの小娘じゃない。見せしめさ。残りの分はあの探偵にきっちりはらわせる。」
(・・・・。)
事態の全容は把握できないが、遥が何らかの事件を解決したことで、この男らが大きな損失をこうむった事。
そして、真夜は遥に対する見せしめに拉致されたということはわかった。
(月等も車には追いつけない・・・。なんとか自力で抜け出さないといけない。)
車に乗せられてから2時間程が経過した。真夜は目隠しをされたまま車からおろされ、目隠しと猿轡だけはずされた。しかし後ろ手に縛られた手はそのままだった。
そこは小高い丘の上でだった。近くに海岸があり、船舶の往来がみえる。
(港・・・。丸の内から車で2時間弱程度の港・・・。)
そんなことを考えながら、立ち尽くしていたところ真夜に男の声。
「さっさと歩け!」
「まって下さい。私をどうするつもりですか。それにここは・・・」
「さっさと歩けっていっている!!」
「あうっ!!」
真夜は後ろから蹴られ、縛られたままの腕のせいで受身も取ることもできずにその場に、うつ伏せに倒れる。
「いいか?俺たちのいうことを聞いていれば少しは長生きできるんだ。ぐずぐずするな!!」
と男はいらだった様子で真夜の頭を踏みつけながら怒鳴る。
「わかったか!?わかったのか!!?」
男はうめいている真夜の腹を、何度も蹴りつづけた。
「か・・・ひ・・・・・申し訳・・・申し訳ありません・・・。」
苦痛に耐えながら声を絞り出す。
倒れている真夜にもう一人の男が歩み寄る。
「おい、あんまり傷をつけるなよ。」
そういって相方をたしなめると、真夜に耳打ちをする。
「いいか。変な気を起こすとアレくらいじゃすまないから、そのつもりでな。」
「はい・・・。」
「よし、いい子だ。ついてこい。」
真夜が捕らわれの身になってから丸一日がすぎた。
木造の大きな建物の倉庫に監禁された。
足こそは、ここまで歩いて来る為に自由だったものの、腕はあいかわらず後ろ手に縛られたままだった。
(・・・・・・先生は無事だろうか・・・。)
別れ際、遥は複数の男ともみあいになっていた。
遥は決して肉体派というわけではない、どちらかといえば頼りないくらいだ。
そう考えるとここでこうしてはいられない。
しかしどれだけ事務所に帰る手立てを考えても、現状で現実的な手段は思い浮かばなかった。
無力な小娘である自分を真夜は恨めしくおもった。
突然、部屋の入り口のドアが開き、4人の男がはいってきた。一人は真夜をさらった男だ。
「毎日ご苦労様。ご褒美とっちゃあ難だけどね。その娘を君達にあげるよ。」
真夜をさらってきたが男そういうと、3人の男たちはまるでなめ回すように真夜の方を見た。
「そうか悪いな。」
「なあに。積荷の阿片をつまみ食いされても困るからね。この娘をつかってせいぜい憂さ晴らしするといいよ。」
「おう、こちとら毎日荷の積み下ろしで吉原も木場もご無沙汰だ。これだけ上玉なら子供でもかまわねえよ。なあ。」
「へ、へ、へ、オレもこ、ここ、この子。き、き、気に入った。」
「それじゃ、ゆっくり楽しんでいくといいよ。今日は海も荒れるし作業はおわりだ。」
部屋には3人の男が残り、さらった男は出て行った。
「へへ。しかしよく見ると毛並みのいいお嬢ちゃんじゃねえか?学生さんかい?」
「違います。わたしは松之宮探偵事・・・。」
「わかってる。いいとこのお嬢さんなんだろ?」
「何も分かってねえ女学生さんにゃたっぷりと教育してやらないといけないっすね。」
「そそ、そ、そ、そうだなあ。お、お、お男と女のいろはってやつをオレおしえてやる。」
そういって男たちは卑猥な笑みを浮かべて近づいてくる。
「・・・・・・。」
どんな目にあわれさるか、予感はあったが、決して覚悟ができていたわけではない。
少女は体は反射的に後ずさりをしていた。
「逃げるんじゃねえよ」
男の一人が、真夜に抱きつく。
「嫌!!やめ、」
拒絶の言葉をいいかけた瞬間。
「ーーー!!ーーー!!!」
声にならなかった。喋ろうとした真夜の口は男の唇によっておおわれ、他の男たちによって
体も動かないようにおさえつけられる。
同時に港の工夫特有の汗と潮の匂いが混ざりあったような臭気に襲われる。
誰にも許したことのなかった唇を強引に奪われ、少女の心は屈辱感に満ちる。
なんとか逃れようともがくが、少女の力では太刀打ちできるはずも無い。
「ほうら。お行儀が悪いでごぜえますぜっとお!」
「ああ!!」
ブラウスの胸元が引きちぎられ、真夜の小ぶりで幼さの残る乳房があらわにされてしまう。
「いっちょ前に膨らんでやがるぜ。」
「たまには、ガキのもわるくいっすね。兄貴。」
男たちはわれ先にと、真夜の胸をわし掴みにしてもみ砕く。
「痛っ!!」
「痛いってのはここのことかあ!」
「あっ!あっ!・・・あぐっ!」
発展途上の少女の胸は、個人差はあるもののもみ砕いたりすれば、かなりの苦痛があることを男たちは知っていた。
真夜の苦痛を面白がるように男は、真夜の胸を握りつぶりたり、引っ張ったりする。
真夜の悲鳴や哀願など男の性欲を高ぶらせるだけの音色であることを、生娘の少女が知るはずも無い。
「おめえらよ、蕎麦屋じゃねえんだ。女の乳ってのはこうやって楽しむもンなんだよ。」
そういって男が、もう片方の乳房に顔をうずめる。
「な、何を―。」
ガリッ!!
「ひいッ!!!」
乳頭に男の前歯が食い込む感触がすると、体中に電撃が走ったかのようにのけぞった。
「がはははは。飛び上がったぜ!」
「ヒ、ヒ、ヒ.お、オレもこの子の乳、すいたい。」
「お願いします・・・やめてください・・・。」
そう真夜が訴える。
「おつむの悪い女学生さんだぜ。女の仕事っていったら男に股ぁ開くことだろうがよお!」
そういって男の一人が真夜のワンピースのスカートを下着ごと強引に引っ張る。
はいていたブーツを残し、一糸まとわぬ姿にされる。
「・・・・・・。」
「みろよ。こいつ!まだろくにはえそろってもねえや。」
「おっと。閉じるンじゃねえよ。股を開けっていってるだろうが。」
男はすかさずを腿をつかみ、真夜が股間を閉じることの出来ないようにした。
3人の男が真夜の成熟していない女性器を視姦する。
「・・・・・下さい・・・・やめ・・・・・・さい。」
真夜のかすれた声に男達は耳をかさず、男達は真夜の体を貪る。
「へへっ。どーれお嬢様のオメコってのはそこらのおんなとどう違うか見せてもらうかな。」
そういって男は、真夜の尻を持ち上げ、身を逆さまにさせる。
えび反りの状態にさせて、足だけをひらかせて固定させるという屈辱的な姿にされた。
そして、一文字に閉じた真夜の性器を強引にこじ開ける。肉の花が奥まで見通せるほど咲いてしまった。
「く・・・。」
「さすが初物だけあって綺麗なもんだぜ。」
「おう。おう。小せえ豆がついてるなあ。」
そういいながら、真夜の陰核をつねる。
「きゃあああああ!!」
「へへへ。こ、こ、このまま千切っちまうかあ?」
男は、その厚みのある爪で真夜の陰核をつねって弄ぶ。
もし、男が本気で力をこめれば、真夜のその部位など難なく千切れてしまうだろう。
「ほれ。ほれ。」
「あああああああああ!!」
狭い部屋に真夜の苦痛の叫びがこだまする。
男は千切れてしまわないように力を加減しているものの、繊細な部分を蹂躙される苦痛は少女には耐えがたい。
「許してください!!ち、ちぎらないで!」
「なーんか言ったかよ!!」
「あぐっ!」
最後に真夜のうすい陰毛を毟り取り、男は手を離した。
「ま、どうしてもっていうんだったら、お前の態度次第では千切らないでいてやるよ。」
「・・・・・・・。」
「千切ってほしいのか!?ほしくねえのか!?黙ってねえでなんとかいえ!!」
「・・・・・・どうすれば、いいのですか?」
これは取引ではない。今自分は人権などはなく、奪われるだけの存在だ。
そのことを聡明な真夜は理解していたが、それでも女性器の一部を失うことは避けたかった。
「・・・私で・・・私できることでしたら、いたします・・・。」
「へへ。そうだな。」
男の一人が自分の帯をとって、真夜の顔の上に男性の一物をさらす。
「じゃぶれ。」
「・・・・・・・。」
「いいか。噛んだりしてみろ、おめえのものを、千切るだけじゃすまさねえからな。」
「そ、それだけじゃ・・・お、おお、面白くない、いいぃ。」
「そうだな。じゃあこうしようぜ。そこの砂時計が全部落ちるまでに俺が満足できなかったらそんときゃ、やっぱり千切る。」
「・・・・・・。」
男性を満足させる術など、真夜が知るはずも無い。男性器を目の前にしてどう扱ったらいいかも分からない。
つくづく無理難題だが、それでも真夜の返事はきまっていた。
「はい・・・。します・・。」
「ああん?『お相手させていただきます』、だろ?このガキが。」
「・・・お相手させて頂きます。」
ぜいぜい3〜4分程の砂時計が落ち始める。
真夜の顔のに上から男性器が押し付けられる。思い切って口の中に含むも、えび反りにされた体位のせいで、口に含むとかなり息苦しい。しかも、魚がすえたようなひどい匂いだ。
「ん・・・んん。う。」
「もっと喉のほうまでつかって全部いれろ。」
「んん!!」
喉に強引に押し込まれ、むせそうになる。
「さっさと舌を動かせ。」
「ん、んぐ・・・。」
真夜の口にはそれは大きすぎてとても舌まで動かせる余裕は無い。
「さっさとしねえと・・・。」
「んぐうう・・・!!」
真夜の股間を開かせている男が、再び陰核をつねる。
苦痛に顔を歪めた真夜だが、歯を立てるわけにはいかない。
「ん。お・・・んん。」
真夜は一心不乱にほおばり、なんとか舌を動かしつづけた。
「おう。初めてにしちゃなかなかだな。さすがお嬢様はものおぼえがいいや。」
「んん・・・。ん・・・。んー。」
男の体が邪魔して砂時計は見えない。そのことが真夜の焦りを加速させる。
「んむ・・・。ん。」
「玉のほうもだ。交互にやれよ。」
「んん・・・。ん。」
かわって肉の袋が口に押し付けられ、それをほお張る。剛毛に包まれているため、口に入れた瞬間むせ返りそうになる。
「んん!!ん。」
代わる代わる、男性器のあらゆる部分に奉仕をさせられる。焦りとは裏腹に、無理に明けている口は徐々に疲れてくる。
真夜にとっては長いくも短い3分が経過する頃、口の中で男性器が怒張をまし、脈うつ速度も心なしかはなくなってきた。
「で、出る!!」
「!!んっ!!!」
なにか苦い味のする物が、口の中に入り込んでくる!性器が脈打つたびにおびただしい料の液体が真夜の口のなかを満たしていった。
「こぼすんじゃねえ!全部ののめ!」
「んふ・・・・。ん・・・・。」
(男の人のものを飲むなんて。)
真夜は必死に飲み下そうとしたが、すべてを飲みきれず、頬をつたって床にこぼしてしまった。
「ふざけんじゃねえぞ!!このクソアマァ!!」
「はうっ!!」
少女の頬に平手打ちがとぶ。
「礼儀作法ってモンがテメエにゃ、わからねえのか!!床のも飲め!!」
「は、はい!」
えび反りの姿勢をとかれ、今度は地面に這いつくばらされ地面についた精液を舐め取るよう
頭を床に押し付けられる。自分の生活とは天地の差があるであろう金持ちの子女が裸で、床に落ちた自分の精液を舐めるのをみて男は満足感に満たされていた。
「ま、砂時計も落ちきってねえ見たいだし、千切るのはやめておいてやるよ。」
「・・・。」
その言葉を聞くと同時に安堵の吐息がこぼれる。少なくとも体の一部が切り取られることだけは回避できた。
「オラ!礼節はどうした!」
「・・・・お相手させて・・・いただきまして・・・ありがとうございました・・・。」
ブーツを履いている以外は全裸というアンバランスな姿のまま土下座する。
(こんなことで、あきらめてはいけない。必ず―。)
「じゃ、仕上げてやるか。おめえら、動かねえように押さえてろ。」
「ず、ず、ず、ずるいよ。あ、兄貴。オレもこの子にいいい入れてみたい。」
「少し待ってろって。俺の後で犯らせてやるからよ。」
「き、きき、きっとだぞ。」
男の一人が、真夜の腕をつかんで持ち上げる。すると、後ろ手に縛られている真夜は否応無しに体を倒して尻を高く突き出す姿勢にさせられる。その突き出された尻を猛一人の男が限界まで広げる。
真夜の女性器と肛門が丸見えになり、足をどんなに一生懸命閉じても隠すことはできない。
「・・・・・・・。」
「なーんだよ。全然濡れてねーじゃねえか。ま、痛てえのはお前の勝手だし、濡れてねえ方が押し込みがいがあっていいけどな。」
男が真夜の秘部に竿の先を押し付ける。男性器が触れた瞬間、少女の体はこわばり、かすかに震える。
(されるの・・・?さてれしまうの・・・?先生・・・月等・・・。)
恐怖と羞恥心にまみれた真夜は祈るように救いをもとめた。しかし、その祈りが伝わる事などないことを真夜本人がもっとも理解していた。
「よ、おっとっと。」
ズリュッというとても小さな音とともに真夜の小さな穴に強引に押し込まれる
「きゃあああああああああああ!!」
「ふー。やっと入った。」
挿入が終わると、真夜の入り口付近まで引き抜かれ勢いをつけて、更におくまで押し込まれる。
「ひぎっ!! あうっ!!あ!!」
濡れもしない小さな膣の摩擦は、男にとっては快楽にかわり、少女にとっては苦痛にかわった。
「オラァ!音をあげてる場合じゃねえだろ!!」
「ああっ!!ああっ!!ひあっ!!」
一度入れば出し入れは更に激しさを増し、少女の尻と男の体があたってパン、パンと音を立てる。
少女の頬を苦痛の涙がつたい、少女の足には処女喪失の鮮血がつたう。
内臓すべてが腹の中でかき回されるような苦痛に狼狽しながら、真夜は何とか耐えようとする。
「んっ!!んっ!!」
「おお、小せえ穴はよく締め付けるぜ。」
「ん。んん!!ん。ああ!!」
真夜の性器が何とか異物を吐き出そうと収縮をつづけるが、その刺激が男に射精を促す結果になる。
「いくらガキだって初潮はもうでてるんだろうなあ!!せいぜいガキの腹にガキができねえ事を祈るんだなァ!!
「ああ!!出さないでください!!お願いします!!お願いします!!」
「うおっ!!」
「ああっ!!」
真夜の体の中で、男のものは大きくうごめき、はじける感触がした。続けざまに数回はじける感触がつづく。
「・・・・・・・・・。」
真夜の体を押さえていた男たちが手をはなし、そのばにへたり込んだ。
へたり込んだその場からうっすらと、血と精液がこぼれて床に広がっていく。
(こんなに・・・・。こんなにも・・・。)
「女になった感想はどうだよ?ああん?」
心の中が大きな諦念で満たされる。
「・・・・・・して頂いて・・・ありがとう御座いました。」
正座をし、頭を下げる真夜。言葉とは裏腹に、こみ上げてくるのは静かな怒りだった。
「じゃ、次は俺っすよね?兄貴?」
「おお、お、お、オレは?オレは?」
(まだ、私を抱こうというの・・・。まだ私を辱めると・・・。)
真夜が貞操を失ってから2時間がすぎた。
真夜の息は荒く、疲れきっている様子は誰がみても明らかだった。
「じゃ、またな。学生さんよ。」
「学生じゃなくて便器娘だろうがよ。」
「へへ。そうっすね。」
「べ、べ、便所娘。あ、明日も相手してや、やる。」
「明日には、尻の穴に焼付いた火箸でも突っ込んでおどらせてみるかよお。」
「へっへへ。そういつはいいっすね。」
男たちは満足気に部屋を後にした。
足、股間、腹、胸、髪の毛、どこを見ても男たちの精液が付着していた。
少し腹に力を入れようものなら、真夜の小さな膣穴からも、おびただしい量の精液がこぼれる。
自らの惨めな姿と男たちに対する怒りに唇をかみ、拳を握り締める。
しばらくすると真夜をさらった二人の男たちが入ってくる。
真夜は剥ぎ取られた服を拾い、女性の最低限の部分だけでもと体に押し当てて隠す。
「やれやれ、ひどいものだね。服や下着まであの連中のモノで汚れ放題か・・・。」
「ああ、臭いな。」
「・・・・。」
真夜は二人を睨みつけて言う。
「・・・・Вы, делающ этот вид вещи, удовлетворительный?〔・・・ご満足ですか?このような事をして?〕」
抵抗できない真夜はささやかな皮肉を言葉に込め、気丈にふるまってみせた。男たちは顔を見合わせる。
「・・・驚いたな。」
「あなたたちは一見日本人に似ていますが、ロシア出身のヤクート人です。」
相手の素性を見透かしてみせること。今の真夜の精一杯の抵抗だった。
「まったく、君は本当に油断ならないね。あの探偵よりもよほど強敵だよ。」
「・・・・・改めてお聞きします。私をどうするおつもりですか?」
真夜自身むなしい質問であることは自覚していた。
丸裸にされて、体まで奪われた真夜に何ができるというのだろう。質問したところで真夜にとって有利な未来がもたらされるわけでもなければ、駆け引きができるわけでもない。
「言葉が聞き取れたのなら分かるだろう?君は見せしめだって。せいぜい身をやつしてもらうよ。頭脳明晰なお嬢さん。」
―数ヵ月後―
「んっ・・・んっ・・・。」
市ヶ谷の路地裏。
ござを敷いただけの場所で少女は四つん這いになり、中年の男に貫かれている
「おら。もっと腰をふれってんだよォ」
「・・・はい・・・。」
男は獣の様に少女をより激しく犯し始める
「あうっ!!あっ・・・ああっ・・・。」
少女は道端で客を取らされる羞恥に身を震わせながらも、精一杯の奉仕をする。
「で、でるっ!」
「待ってください!お願いです・・・飲ませてください。」
少女は男性の精が飲みたいわけではなかった。
妊娠して客が取れなくなれば少女は『処分』されてしまう。それを避けて客を満足させるにはそれしかないのだ。
男の前にひざまずき、少女は口に男性器を含む。
「おおっ!!」
「んっ!!」
男は立ったままの姿勢で少女の口の中に精を放った。あたかも、道端の石に放尿するかのようだ。
(・・・これでは便所娘と呼ばれたとしても仕方がない・・・。)
少女は心の中で自嘲した。
「・・・飲ませて頂いてありがとう御座いました・・・。」
男は何も言わず、代金をほうり投げた。僅か7銭。
道端で客を取る最低位の情婦である少女には、屋台の蕎麦価格にも満たない代金がやっとだ。
稼ぎが悪くても『処分』されてしまう少女は一晩に何人もの男性に抱かれなければならない。
そんなすれすれの生活でも阿片を飲まされて壊されるよりはよほどいいのかもしれない。
(今夜は・・・後一人は何とか・・・。)
しばらくすると、若い男性が一人。
深夜になれば人通りもなくなる。今日最後の客だ。
客を引くつもりで近づくと、それは少女にとって意外な人物だった。
「・・・・・・そ、そんな・・・先生・・・。」
「ま・・・・・・真夜・・・君・・・なのか?」
まだ、一年も経たないというのに遥に会えた事が真夜にはひどく懐かしく思えた。
「真夜君!探したんだぞ!」
遥かは痛いほどに真夜の方を抱きしめる。
「・・・・・先生がご無事でなによりです・・・。」
真夜も遥かの腕を抱く。
「月等が待っている。さあ、一緒に帰ろう。」
「・・・・・・・・・。」
真夜にもう自由など無い。帰ったとしてもまたさらわれるだけのことだ。
そうなれば命は無いだろう。
「・・・先生・・・。ありがとうございます。・・・でも・・・私は帰ることは出来ません。」
「・・・真夜・・・君?」
真夜はゆっくりと遥かの腕を解くと心配をかけないよう。精一杯の笑顔をみせる。
しかし、その見せ掛けの笑顔からは涙がこぼれていた。
「一晩だけ・・・。せめて一晩だけでいいです。先生・・・。私を・・・私を抱いてください・・・。」
例え遥の一夜妻になったとしても、次の日には遥のことを忘れ別の男に抱かれなければならない。
「そんなことできない。」
「・・・そう私が望んでもですか?」
「・・・・・・・。」
遥に手を引かれ、真夜は雑司ヶ谷の街にまでにきていた。
雑司ヶ谷は明治初期、墓所のない民衆のために共同墓地が設けられ、それ以来歓楽とは縁遠い街となった。
「・・・お墓・・・?」
「・・・この近くに馴染みの茶屋があるんだ。」
その茶屋はまさに墓地のすぐ近くにあった。
そんな縁起の悪い場所に茶屋があるのも不思議だったが、道端ではなく座敷で抱いてもらえるなら気になる問題でもなかった。
「よろしくお願い致します・・・。先生。」
真夜は襦袢姿で畳の上で三つ指をつき、頭を下げる。
多難を乗り越えて、やっと結ばれた花嫁のようだ。
遥は何も言わなかった。話したくないのではない。何もいうことが出来なかったのだ。
遥は、突然真夜の細い腕を握り締めるとそのまま抱きしめ、唇を重ねる。
真夜の口の中に遥の舌が侵入し、真夜もそれにこたえ、遥を求める。
「ん・・・。んんっ・・・んん。」
互いの唾液が絡み合い、互いにそれを飲み下していく。
二人の唇が離れてもなお、二人の唾液が糸を引く。
「真夜君。いいな?」
「・・・はい。先生。」
真夜の胸元に手がかけられ、真夜の襦袢の上半身が脱がされる。
小さいわけでもなければ、大きいわけでもない微妙な線で形作られた乳房があらわになった。
遥が真夜の体を見つめる。
「綺麗だ・・・。」
思わず遥はそういい、真夜が紅潮する。
多くの男に抱かれた真夜だが考えても見れば、遥の助手をしていた時、遥の前で裸になることなど想像もつかなかったことだ。
真夜は、遥にその身を預け、遥はゆっくりと真夜の胸に触れる。
「んっ!」
真夜の胸を指が這い、真夜はくすぐったいような甘味な感触を覚える。
しばらくすると、真夜の胸の全体が丁寧にもまれる。
「んっ「んっ・・・。ああっ・・・。」
(・・・・・・こんなに・・・こんなにも、優しく抱いてもらえるなんて・・・。)
それは真夜にとって始めての経験だった。
真夜の体が火照りのために少し汗ばんでくる。
「自分で脱げる?」
「・・・恥ずかしいです・・・。」
苦笑する遥がそっと真夜の着衣を剥ぎ取り、真夜は生まれたままの姿になる。
(・・・私・・・私、先生に全部みられているんだ・・・・。)
真夜は遥と顔を合わせることすら出来なくなってしまった。
自分の股間がうっすらと濡れていることに真夜は気づいた。
今までどんな男に抱かれても、体がこわばり決して濡れることは無かったというのに。
そんなことを思い出しながら真夜は、遥の男性自身に手を伸ばす。
「真夜・・・・君?・・・・!!」
真夜は遥の男性器の先端に軽く口付けをした。
「うっ・・・!」
味わったとこのない感覚に遥がうめき、真夜は静かに笑みを浮かべる。
真夜は慈しむように男性器全体に舌を這わせ、遥に快楽の奉仕をする。
「ま、まてっ!真夜君!」
真夜は呼びかけには応じず、男性器への愛撫を続けている。
ついには遥のものを自分の喉まで通す。
(・・・先生の・・・おおきい・・・。)
口の中に含んでいると、更に怒張を増し、脈打つ速度も速くなる。
真夜がのどから出し入れを続けていると
「つっ・・う・・・。ま、真夜・・・・もう・・・・。」
「・・・わかりました・・・。」
真夜は再び、自らの体を遥に差し出す。
真夜の両手が遥によって敷布団に押さえつけられる。
互いの待ち望んだ時がきた。
真夜の性器の入り口に、遥の性器が押し当てられる。
「入れるよ・・・・。」
「・・・はい・・・・。」
真夜は遥を受け入れた。
「あっ、ああ、ああっ!!先生・・・先生・・・。」
少女の体に淫らな快楽がどっと押し寄せる。
真夜は遥の首に手をまわし、密着する。
「先生っ・・・・私っ・・・私・・・幸せです・・・・。」
遥は何も言わなかった。しかし、真夜の手は遥にきつく握られていた。
「んっ・・・・あっ・・あっ・・・あっ!」
遥の抽送が勢いを増す。
「はっ・・・はっ・・・・ああ・・・。」
真夜は性感の余り、息をするのも苦しいくらいになっていた。
まさに快楽の底におぼれるような思いだった。
こみ上げてくる感触に全て身を委ねたそのとき
「あうっ・・・あああああああああ。」
遥を子宮に感じながら、真夜はうまれて初めて絶頂に達した。
・・・・・・。
・・・・・・・すまない・・・真夜君・・・。
・・・・・・・・・僕はこれでもう帰るけど・・・。
・・・決して、あきらめちゃいけないよ・・・。
・・・・さあ、もう朝だ・・・。
「・・・・・!!」
まどろみの中にいた真夜は突然目を覚ました。
(・・・何だろう・・・今の声・・・。)
不思議に思い真夜はあたりを見回した。
そこには真夜と遥が床に入ったはずの茶屋は無く、墓場だけが広がっていた。
(・・・そんな・・・まさか・・・まさか・・・。先生・・・。)
真夜は商売道具のござを放り出し、走った。
・・・
・・・
聞くところによると、松之宮遥という男性は1ヶ月以上も前に殺されていた。
偶然、居合わせた2人組男によって殺されたのだという。
秋を迎えた雑司ヶ谷に遥の墓がたたずんでいる。
真夜が望んだ一夜の夢は、鮮やかに染まった銀杏の葉とともにはかなく散ってしまった。
今、真夜は遥の墓前に花を捧げている。
(・・・先生に私の体を買ってもらう夢を見るなんて・・・・とんだマッチ売りの少女もいたものだ。)
真夜はおとぎ話を思い出し、苦笑する。
「・・・先生・・・一人で勝手に逝ってしまうなんてずるいです。これまでのお給料だって頂いてないんですよ。」
墓の掃除もおわり、ため息をついて空を見上げたその時だった。
「つっ・・・・。」
真夜の足がふらつき、一瞬意識が遠のく。
(・・・そうか・・・もう薬が効いてくる時間か・・・。)
最後に真夜はいとおしい気持ちで遥の墓を眺めると、墓標に寄り添い、目を閉じる。
(ごめんなさい、先生。でも・・・もう、そっちに行かせて下さい・・・。)
夜鷹に身を落とした少女に、甘く優しい死が舞い降りた。
―『売られた花』・了―