「雪待ち」を出、半年余りが過ぎかけている。そんな旅の途中、高嶺響と天野漂はとある町に立ち寄った。
色とりどりの綺麗な着物を着た女性、酒瓶を片手に肩を組み合った男たち。
人をかきわけて宿を探す天野の視線は、もはや女性にしか目がいかないようだった。
「ひゅ〜っ♪綺麗な姉ちゃんが一杯いるねぇ」
「…漂さん」
口笛を吹いて目の前を通って行く女性をマジマジと見つめている。
響は少し遠慮しがちに天野の後ろをついて歩いていたが、町に入った途端、天野の歩行速度が速くなったので、足早にその後を追う。
「……漂、さん…てば…待って……」
小さな声で天野を呼ぶ響の声は聞こえていないのか、そこら辺の女性に声を掛けている始末。
天野の姿を見失わないように小走りで追い、ようやく追い付いた、と息を切らせて天野の背に触れようとしたとき。
不意に天野が響のほうに向き直った。
「おう、響。悪いがお前さん独りで此処の宿へ先に向かっていてくれ。そこの女主人は知り合いだから、俺の名前を言えば分かるはずだからよ。寝床を二つ取っておいてくれ。な?」
「…一緒に、…行ってくれないんですか」
わざと拗ねたような表情を見せると、天野は、まるで子供をなだめるような態度で響の頭を撫でたまわした。
「土産買って帰るからよ。先に休んでて良いからな」
そう言い、天野はひらひらと手を振って人込みの中へ消えていった。
「……もう…漂さんの馬鹿」
撫でられてくしゃくしゃになった前髪を手櫛で直し、天野の歩いていった方向と逆の方向へ、響は独りでトボトボと歩いていった。
天野から渡された紙切れを見ると、【宿 秋姫】と書かれている。
それらしき宿の前に着いたのだが…紙切れと宿を見比べる。
………どう見ても、連込み宿。
うら若き女の子が、独りでこんな宿の前にたたずんでいるのは、居心地が悪いことこの上ない。
暫くその周りをうろちょろしていたが、溜め息をついて、仕方がない…と覚悟を決めて深呼吸してから中へ入る。
響が思い描いていたより、小奇麗な造りだった。
外からの見た目は、他でもない【連込み宿】といった感じだが、意外と中は普通の宿と大差のないものだった。
「いらっしゃいまし〜。……あらァ?お嬢さん独りなの?」
女将らしき女性が奥から出てきた。
若い女の子が独りでこのような宿を訪れたことに、少々驚いているようだった。
「ご宿泊かしら?」
「あ……天野漂さんの連れの者なのですけれども…」
「天野…?あァ、漂ちゃんのことね?」
握った右手を、左の掌にポンと叩く。
「私は此処の女将よ。漂ちゃんはここの常連なの。…あら?その漂ちゃんは?」
「…あの……お酒を飲みに行っている…と、思います…」
「そうなの〜。まったく、悪い人よねェ…こんな可愛らしいお嬢さんを独りで此処へよこすなんて。…まあ、良いわ。お宿を取りに来たんでしょう?」
「…あ、はい」
「今、丁度良いお部屋が二つ空いているわ。普通に泊まったら良いお値段がするお部屋なんだけど、お友達価格でお安くしてあげるわね」
「あッ、有難うございます…」
こっちよ、と響の荷物を持って手招きする女将の後を続いて、奥へと歩いて行く。
広い宿内は、沢山の部屋があった。【朱の間】、【蒼の間】、【橙の間】、【黄の間】、【白の間】。何処の部屋も薄明かりが灯っていて、それぞれの部屋には人が居る、という証明がなされていた。
独りで顔を赤く染めていると、女将がある部屋の前でふすまを開けた。その部屋には、【緑の間】と書かれている。
「ここよ。お荷物はこっちに置いておくわね。今、お布団を持って来るわ」
荷物を部屋の入り口に置き、奥の部屋に置いてあった布団をかかえて来る。
手触りの良さそうな羽毛布団を手際良く敷き、最後に枕を置いた。
「あ…わざわざ有難うございます。…あの、漂さんのお部屋は…?」
「漂ちゃんのお部屋は右隣、【紅の間】よ。そうねぇ、あと二、三時間くらいで帰ってくるんじゃないかしらね」
今は、およそ午後九時。天野が帰ってくるのは、早くても十二時ごろということになる。
「これから漂ちゃんのお部屋にもお布団敷いておくわ。それじゃあ、ゆっくりお休みになって下さいね」
礼儀正しく、丁寧に床に手をついて頭を下げる女将。立ち上がってふすまを閉めようとしたとき。
「ま、待って下さい…!」
「……え?どうなさったの?」
少し驚いた顔で、女将は響を見つめる。
「あの…そ、そのッ……………お…お願いがあるんです…!」
「うぃっく〜…良い酒は美味いねぇ〜」
天野が宿に帰って来たとき、すでに深夜二時をまわっていた。
この時間になると、先程まで賑わっていた町も静けさを取り戻し、町は日が昇るまでの束の間のあいだ、休息を得ることが出来るのだ。
【宿 秋姫】の暖簾が上がり、酒瓶を片手に天野が入ってくる。
「あ〜ら、漂ちゃん。お久しぶりねぇ」
「よぉ〜う、女将。相変わらず綺麗だねぇ。今宵こそどうだい?俺の部屋で一杯?」
酒を飲むアクションを見て、女将はクスッ、と笑った。
「ふふっ、残念ね。私はまだまだ仕事があるのよ。それより、あんな可愛らしいお嬢さんをこんな連込み宿に独りで来させるなんて……可哀想じゃない」
「…ん?あ〜…あの子はしっかりしているからさ…独りでも大丈夫かと思ったのさ」
「そう。まあ良いわ。漂ちゃんも長旅で疲れているんでしょう?早くお休みなさいな」
「ちぇッ。まあ仕方ねぇ…部屋で一人で飲み直すか〜。おっと女将、俺の部屋は何処だい?」
「うふふふ、漂ちゃんのお部屋は、いつも通り【紅の間】よ」
「おう、そうかそうか。んじゃ、お邪魔すっかね〜」
歩き慣れた廊下を渡り、天野は【紅の間】に向かった。
各部屋の薄明かりは既に消え、もはや明りが灯っているのは天野の部屋だけだったので、ふらりとした足取りでも用意に辿りつくことが出来た。
他の部屋の迷惑にならぬよう、ゆっくり静かにふすまを開ける。
「ん」
部屋に入ると、薄明かりの向こうに、気配を感じた。
「…誰だ?」
「………」
警戒しながら男前を片手に構え、近づいていく。後ろ向きに人が座っている姿が見えた。
明りのそばへと近づくにつれ、徐々にその人物の姿が浮かび上がってきた。
「響?お前さん、響か?」
いつもは縛っている、腰まである長い髪の毛をおろし、肌着だけのその人物は、紛れもない響だった。
「…何で、お前さんがここに?部屋が足りなかったのか?でも、何で一つの布団に枕が二つ…」
「私が、女将さんに頼んだんです」
困惑したような天野の声を遮り、後ろ姿のまま響がつぶやく。
「お部屋は一つで良いです、お布団も一つで良いです、って」
「おいおい、幾ら俺たちが金無しだからって、そんなにケチケチしなくたって大丈夫だぜ?…やっぱり、女将のところに行って…」
「待って!」
そう言って、響は振り返った天野の背に抱きついた。
「漂さんは……私のこと、嫌いなの?」
「なっ…そんなこと、あるわけねえだろ?」
「じゃあ、好きですか?」
「へ!?……えー、っと…それは…まあ…」
抱きつかれたまま、右手の人差し指で頬杖をつく。
「私は…好きです。漂さんのことが」
「あ、そうなんだ………って!お前さん…」
「…好き、なんです…だから……」
「………」
声が震え、抱きしめる腕に力がこもる。
「わ、私を…………抱いて、下さい」
「!!!!!」
どきん、と天野の心臓が高鳴った。
───源蔵
ふと、半年以上前に他界した響の父親、源蔵の顔が浮かび、天野の脳内で、理性と性欲の葛藤が繰り広げられた。
「お願い…漂さん…好きなの……」
天野は、涙声でつぶやく響の手を取ろうか取るまいか、迷っていた。
響はとても可愛くて魅力的な女の子だが、響が幼い頃から源蔵に「手を出すな」と釘を差されていた。そのときは、そんなことあるもんかい…と、笑い飛ばしていたのだが。
───源蔵、すまん!
「後悔。…しないかい?」
「……っ、しません…絶対に」
「そうか……」
小さな手を握り、天野が響の方へ向き直る。
「きゃっ」
軽々と響をお姫様抱っこし、布団の上に優しく下ろした。
「本当に後悔しないんだな?」
「…何度も言わせないで下さい…恥ずかしいから…」
「ああ、分かったよ」
「…漂さん」
「ん?」
「あの…私、初めてだから…優しくしてください…」
響の顔を見ると、妙に大人びて見えた。いつもと違う髪形をしているせいか、とても十七歳の少女とは思えなかった。
左手で肌着の紐をほどき、ゆっくりと肌着を脱がせてゆく。
白い肌が薄明かりで露になるにつれ、響の顔が紅くなってゆくのが分かった。
肌着を脱がせ終わったところで、そっと響の唇に口付ける。
「…ん」
口付けたまま、小振りだが形の良い乳房を左の掌で包み、優しく揉みほぐす。
「はっ、あ…」
唇が離れると、呼吸を整えるように響は大きく息を吐き、天野の着物にしがみつく。
柔らかく温かい乳房を揉みながら、天野は空いた手で響の長い髪の毛を梳いた。
左の親指と人差し指で、硬さを帯びた桜色の乳首を摘むと、ぴくんと体を震えさせ、小さな声を漏らした。
「…あっ……や…ぁ」
不意に天野は響の体を抱え込み、仰け反らせる。そして、響の乳首を舌で舐めた。
「はっ…、…ぁん…ッ」
口に含んで吸い付くと、着物を握り締めていた響の手が震えだす。
ぴちゃりぴちゃりと音を立て、念入りに乳首を舐め回す。
「あ…っんぅ…」
歯で少し噛んでやれば、艶っぽい声で喘いだ。
明りに照らされ、唾液に濡れた響の胸元がてらてらと光る。
布団の上に響の体を寝かせ、両手で乳房を揉みしだきながら、天野はなおも執拗に乳首を舐めたり吸い付いたり、を繰り返した。
「ぁん……あ…んん」
再び響の唇を奪う。舌を絡ませ合い、歯茎をなぞる。
唇が離れると、唾液の甘い糸が引き、響の頬を伝う。
頬、首筋、鎖骨、乳房、おへそ、と箇所にキスをしながら、少しずつ下へと進んでゆく。キスを施すたび、響の体は過剰に反応を示す。
ふと秘部に指が触れると、びくん、と響の体中が揺れ、口元に右手を当てた。
「漂…さん…ッ………私……わ、たし…」
「だい、じょうぶだ……痛いことは、無いからよ…」
秘部を中指で割り、指の先を挿しこむ。
「あっ………」
既にそこは潤っており、するり、と難なく第二関節まで挿しいれた。
「んんっ…あ…、ぁ…ん」
「…響…凄いぞ。…ほら、今触れたばかりなのに、こんなに指が入っちまう……」
「やッ…やぁん………そ、んな、こと……言わな………あ、っん」
ゆっくり指を動かすと、響が布団の端を掴み、声を大きくして喘いだ。
ニ、三度指の出し入れを繰り返した後、指を引き抜いた。
「……………?」
不思議そうな表情を見せる響の脚を立ててM字型にして、脚を腕で固定する。
秘部が天野に丸見えの状態に気付き、響は羞恥の余り脚を戻そうとするが、それより早く天野が秘部に舌を這わせた。
「きゃっ……あ、やっ………ぁあ!」
溢れ出る愛液をぴちゃ、ぴちゃ、と、わざと音を立てて舐め取る。
処女だからかそうでないかは定かではないが、秘部は桜色で、陰毛は薄く生えている程度だった。
「ふ…ぁ、……あ…あんっ」
秘部の中へ、舌をゆっくりと出し入れする。それに伴って、とろりとした愛液が溢れていく。
「ひ……ひょ、う、さ…んっ………!ぁんっ…」
「…分かるか?お前さんの、こんなに沢山溢れてくるぞ…」
「…ぃ、あっ………やぁ…」
指で襞を開き、ちゅるる、と吸い立てる。
「ふぁ……あぁ…っ…あッ…」
初めて感じる快楽に、響きは声を張り上げてしまう。そんな自分に気付き、はっとして口をつむぐが、天野は容赦な響をせめたてる。
天野の垂れ下がった髪の毛が響の腿をくすぐり、何とも言えないむず痒さを感じた。
「あ…ぅんッ………ひょう、さん…」
「…ん?……おわっ」
響の呼びかけに、天野は響の顔をのぞき見た。
布団の端を掴みながら何とか響が上半身を起き上がらせる。そして起き上がった勢いのまま天野の胸へ倒れこむ。
「どうしたよ?」
「…………たいの…」
「ん?」
「ひょうさんにも……して、あげたい…の…」
小さい声で言い終わると、響はおもむろに天野の着物を脱がし始めた。
上半身がはだけたところで、首筋にキスをする。
天野が響にしたのと同じように鎖骨や胸板に口付け、その口付けは、徐々に下へ下へと下がってゆく。
そして一瞬躊躇うように手が止まったが、その躊躇いを振り払うように小さく首を横に振り、手を進めた。
「っ!?…お前さん…」
褌の上からそっとそれに触れると、既に形は変化しており、熱く脈打っている。布をよけ、躊躇いがちに朱い舌を出し、先端をちろりと舐めた。
「………っ!」
天野の体が跳ねる。
ちら、と上目遣いで響が天野を見ると、きつく目を瞑って眉間にしわを寄せていた。
透明な液体がほとばしる先端を舌で舐め取りながら、温かく柔らかな掌で肉棒を握り、その掌をゆっくり上下に動かす。
「………ッ…」
天野はごくん、と生唾を飲み込んだ。
視界を邪魔している響の前髪をかきあげてやり、頭を優しく撫でる。
「…響」
「……?」
手の動きと口を休め、顔を上げる。
「向こう側を向いて、俺に尻を向けてまたがりな」
「………」
響は浅く首を縦に振り、従順に腰を上げ、言われた通り尻を天野の方へ向けてまたがる。
「いい子だ」
右手で太腿を支えて秘部の襞を開き、左手の中指と人差し指を入れる。
ぷちゅ、ぷちゅ、と何の抵抗も無しに指が秘部の肉に飲み込まれていく。
「あ………ぁ…あぁっ」
ひく、と体をよじらせ、体を支える腕がガクガクと振るえた。
それでも左腕で体を支えながら、右手で天野の肉棒を包む。
「ふあぁっ……んん…っ…」
何とか口に含む。唇で先端をはむはむと挟んだ。
鈴口を舐め上げ、今度は竿に舌を這わせる。
「(……ん…)」
「はっ…んむ………ちゅるっ…ちゅむ…」
決して『巧い』とは言えないが、下手なりに必死で奉仕しようという響の行為そのものが、天野を余計に舞い上がらせ、気持ちを高ぶらせた。
響の秘部から指を引き抜くと、ぬるりとした液体が指先にまとわりつく。
口を秘部に近づけ、襞を下から上へと丁寧に舐めあげる。
「ん、んむ……っ、ん…んぅん…」
指で秘部の皮をむき、その奥のぷくりと膨れた小さな粒を舌で舐めた。
「…!?ああっ…ふぁあ……!」
突然襲った感覚に脚を閉じようとするが、天野の腕がそれを邪魔して閉じさせなかった。
粒に吸い付き、溢れる愛液をじゅるる、とすする。
「ふ……っ、はぁっ…あ…んっぁ、んんっ」
涙目になりながらも、更に大きくなった肉棒を口にくわえる。
咽喉の奥までくわえ込み、少し吐き気がこみ上げてきたが、それでも響は口いっぱいにほおばる。
「ふぁ……っ…あぁんっ…ん、ん…ん…」
「ひ、びき……」
「…ふ……ひょ、う、さん…?」
名を呼ばれ、天野の方を顧みると、仰向けの体形を戻し、響に重なるように抱きしめる。
響の脚を折り曲げ、獣のような体形を取らせた。
「あっ……!」
そして硬くなった肉棒の先端を秘部に擦りつけ、響の秘部の入り口を良く湿られた。
「少し辛いかもしれねぇけど…我慢してくれな…」
───源蔵、本気(マジ)ですまねぇ
一応心の中で源蔵に詫びを入れると、ゆっくり響の秘部へ肉棒を挿入し始めた。
「…はぁっ…ひょぉ…さ………ぁああッ!」
がくん、と響の腕が折れたが、それを天野が支える。
「あ、あぁ、あんっ…はあ…あッ…い、痛いっ…!」
「も、少し…だからよ…」
涙声で痛みを訴える響を強く抱きしめ、流れる髪の毛を梳く。
先端が入ってしまうと、後はするりと入っていった。
「はあっ…あ、あ、ァっ…ふ……ふぁ…あ」
中へ入っていくたび、響の腰がふるふると小刻みに震える。
「ほら……も、だいじょぶだろ…?全部、入っちまった、よ…」
「ふぇ…ァ……あ…ああ、あ…」
腰を静かに動かす。響の小さな体が上下に揺れる。
段々動きは速さを増していき、そのたび響の髪の毛が揺れ、布団に落ちる。
「あんっ……はあ…ッ…!…ん…あぁんッ」
後ろから耳の裏やうなじを舐めると、響は声を出して悦ぶ。
思いの外響の中は狭く、天野が響の体を揺するたびに肉棒を締め付けた。
「あふ……ふぁあっ………ぁん…」
「………っ…」
「……ひょ、う…さん…?」
突然肉棒を引き抜かれ、響は身震いする。
天野が響を起こしてこちら側を向かせ、布団の上に座らせる。天野はあぐらをかくように座って、響を抱き寄せた。
「もう痛くないかい?」
照れたようにこくん、と浅く首を縦に頷かせるのを見て、安心したように抱き寄せた響を自分の肉棒の上へ、ゆっくりと降ろす。
「んん…ぁ…あ…!」
響の秘部は、先程とは比べものにならぬほど潤い、激しく熱を帯びている。
根元まできっちり収められ、今にも中がとろけてしまいそうだった。
倒れてしまわぬように右手で響の体を支え、左手で乳房を揉みほぐす。
「ひぁ……っ!あっあ…っあ…ぁん…!」
瞳に涙を浮かべ、顔を真っ赤に染めながら、響は天野に貫かれる。
響は中を貫かれるたび、今まで感じたことのない快感に襲われた。
熱く、一つになった場所から融けてしまいそうなほど…。
気がつくと、知らぬ間に響も天野の動きに合わせて腰を動かしていた。
「ひび、き…っ」
「ひょう、さ……ひょ…ぅさぁ…んっ……!」
二人の肉が擦れあうと、ぷちゅ、ぷちゅ、と液体の漏れるような音が聞こえた。
それがまた厭らしくて、響は聞こえないふりをした。
「響………お前さん、可愛いよ…」
「あっあっ……あぅ……ひょ………ひょ…う…」
胸に垂れた髪の毛を指先ですくい、その髪にキスを施した。
「あぁ…ん……も…わた…し……っ…だめ…………ひょう…」
呂律が廻らない口調で言い、天野の肩に抱きついた。潤んだ瞳で言う響は、妙に甘ったるく、色艶っぽかった。
「分かってる……ほら、響…」
「…んむっ……ふ…」
唇を近づけると、響自ら天野の口付けを求めた。
いっそう動きが激しくなり、響も天野も果ててしまいそうだった。
「…ひょう………わ…たし……あ……ぁ…!」
「………っ!」
両人が達しそうになると、咄嗟に天野は苦い顔で響を引き離した。
「……っ…、ひょう…?どうしたの……?」
「…………流石に…中に出しちゃマズイだろ?」
荒い息を正しながら、天野は口惜しそうに言った。
「…………いい」
「…え?」
「……ひょう、なら……いいから…っ…」
「…おいおい……お前さん、自分が何を言ってるのか…」
「おねがい……おねがい…だから、ひょう………来て………」
ぷちん。
天野の脳内で、理性の糸がぷっつりと切れた。
「……どうなっても知らねえぞ…」
響を引き戻して頬にキスし、再び動き始めた。
「はあ…っ………あ…あ、ぁ…ひょう……い…ぁ…」
「ここ?…ここがイイのか?」
過敏に反応する箇所を突く。首が縦に何度も頷かれ、びくんと体が跳ねた。
「だ、め…そこ……だめッ……あ…ぁん……もぉ…ふぁ…」
天野の首に腕を回して倒れこむ。
何度も性感帯を貫かれ、狂ってしまいそうだった。
「ひ…ぁ……も、う、…んぅ……ほんとに……だ、め……あ…っ!」
「響…ひびき……ッ」
響の頭を撫でながら、天野も自らの限界に達しかけていた。
「ひょう……………あ…あぁっ…!」
「…っく…ぅ……」
動きが止まったかと思うと、びくん、びくん、と何度か中で脈打ち、響の秘部の中に熱い精が注ぎ込まれるのが分かった。
全て注ぎ終わって、響の中から肉棒を引き抜くと、くたりと天野の胸板に滑り落ちた。
「…響?」
「………」
心配そうな天野の言葉を聞いてか知らずか、響は既に眠っていた。
「無理、させちまったもんな」
起こさないように肌着を着せ、厚い掛け布団をかけてやると、響は
───ひょうさん…
と、呟いた。
「参っちまうね…」
窓際に腰かけ、キセルに火をつける。
煙を口いっぱいに吸い込み、外に向かって吐く。
既に太陽が昇り始めていて、あと数時間もしないうちにニワトリが鳴く。
「……源蔵。お前は、俺を軽蔑するかい?」
呟いて、眠っている響を見た。
「可愛い愛娘を取られちゃ…そりゃ恨まれるか」
たはは、と微笑しつつ、再び視線を空に移した。キセルを口に含み、煙を吸い込む。
「……俺は、これからお前の宝物を一生護って行くからよ。…許してくれよな」
キセルを窓際に置いたまま響の元へと歩み寄る。
そして優しく髪を撫で、額に口付ける。
「俺が、お前さんを一生護るからよ。何があっても…たとえ、この命にかえてもな」
<終>