春の穏やかな日差しが部屋を優しく照らす。  
キッチンに軽やかな鼻歌を響かせ、赤いおさげをぴょこぴょこさせながらフライパンを振る命。  
それをただ見ているだけの俺。  
はたから見れば新婚夫婦そのものだと思う。・・・実際は「まだ」恋人なんだけどな。  
 
三重連太陽系との壮絶な戦いから一年経ち、バイオネットのテロも一段落ついたので、機動部隊の俺は長期休暇をもらった。  
だが、−こんなことあってはならないことだが−俺は戦いに慣れすぎてしまったみたいで、  
休暇の使い方を全く覚えていなかった。  
とりあえず一週間だけなんとか休みをとって来てくれた命と、こうやって俺の家で過ごしている。  
・・・そして、今日は7日目。最終日だ。  
命は明日の朝一番にオービットベースに帰ってしまう。  
・・・−その前に、なんとしてでも。俺はポケットに入れた小さな箱を握りしめた。  
 
「はい、出来たよー」  
母さんのエプロンをばっちり着こなした命が焼き飯やらいろいろと運んでくれる。  
「何か手伝えばよかったな、ごめん」  
「久しぶりの凱のお休みだもん、これぐらいしたいの」  
椅子に腰掛ける。  
「じゃあ、さっそくいただきます」  
「はーいっ」  
とりあえずサラダに手をつけようと、目線を小さいボールにやると。  
「なんだ・・・これ、こんにゃく・・・か?」  
ぷるぷるした物体があった。  
「うん。好き嫌いはダメよ」  
そういってこんにゃくを箸てつまみ、俺の口元までもっていく。  
「はい、あーんっ」  
「え、あ、これは無理・・・」  
「もぅ、ダメって言ったでしょ」  
そう言うと、命はこんにゃくを自分で食べてしまった。  
俺は少し安心して命を見つめると、いきなり顔が近くに寄って来た。  
「・・・!?」  
唇を重ねたあとに、ぬるっとしたものが入って来る。  
舌じゃないし、これは・・・  
「これならちゃんと食べてくれるよね」  
「・・・う」  
今更吐き出す訳にはいかない。  
とりあえず噛もう。喉につまらさないように。  
 
「ごちそうさま」  
「ふふっ、おそまつさまでした。」  
カチャカチャと音を立てながら、食器を洗いかける。  
先に食べ終えた命はテレビから流れているドラマを見ていた。  
・・・所謂昼メロってやつだろうか。  
「あ、いいってば。私洗うよ」  
「2人分ならすぐに終わるさ。それ、見てるんだろ?」  
「・・・じゃあお言葉に甘えて」  
そう言ってウサミミカチューシャをテーブルに置き、ソファの上に寝転んだ。  
 
ほんの5分で洗いものは片付いた。  
「命。ちょっと頭あげてくれ」  
「あ、ごめん。座れないよね」  
体ごと起き上がろうとする命。  
俺は開いた場所に座って、命の頭を膝の上に置いた。  
「えっ!?あっ、が、凱!?」  
「たまには俺のひざまくらもいいだろ?命のよりは寝心地悪そうだけどな」  
うー、と言いながら素直にまくらにしていてくれる。  
ちょっとくすぐったいが、微妙に伝わってくる体温が気持ちいい。  
「で、何を見ているんだ?」  
「うーん、よくわからないけど、なんだかドロドロのメロドラマみたい。私初めて見た」  
確かに女ふたりが罵りあっている。  
俺にはわからない世界だ。  
・・・少なくともカップルで見る番組じゃないな。でも命は真剣だ。  
場面が切り替わった。  
・・・ベッドシーン。  
男女が手を握りあう甘い時間・・・  
「・・・凱?もぅっ、見とれてないでよ」  
「え、あっ、違う」  
「そうだよねー、えっちな凱にはこんなのヌルいよねー」  
俺のふとももに俯す命。  
「な・・・」  
「凱のことならなんでも知ってるつもりだもん。パソコンのデータフォルダに」  
「あーっ!その先はいいから、な?」  
「もっと胸の大きいコがいいの?」  
「そ、そんなことはないさ!ほら、命だって、その、結構あるだろ?」  
・・・照れ臭いな。  
「そ、そうかなぁ?」  
ぐるん横返りをして俺のほうを向く。  
ちょっとだけ顔が赤くなっていた。  
「まぁ、命以外の胸とか触ったことないけど、その、柔らかいし」  
何気にセクハラ発言しちまってる。  
「や、やだなぁ〜・・・そんな、改まって言われると恥ずかしいよ・・・」  
照れ笑いを浮かべながら、俺と目線を合わせた。  
 
何秒か見つめ合い、ゆっくり目を閉じる。  
そして、どちらともなくそっと唇を重ねた。  
すぐに顔を離すと、いつものようにねだってくる。  
「ん…凱、もういっかい」  
…可愛いなぁ。  
ぎゅっと抱きしめたあと、そっとキスをしてやる。  
徐々に舌を入れると、彼女はいとも簡単にそれを受け入れた。  
舌と舌が触れ合う音が響く。ここまでくれば、テレビのワイドショーはただのノイズへと成り果ててしまう。  
俺の右手はいつものように命の発育のよい胸にあてがい、揉みしだいた。  
「ん…ふ…」  
てのひらから鼓動の高まりが伝わってくる。  
甘い吐息が漏れてきたので、俺はゆっくりと唇の拘束を解いた。  
服を一気にまくしあげ、ブラジャーをずらし、姿をみせた乳首に吸い付く。  
「あっ、もう・・・凱のバカっ!」  
抵抗を見せながらも、体はしっかりと反応していた。  
少し見つめ合うだけでこんな展開に持ち込まれる命に少し同情する。まだ真昼間なのにな……  
 

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