「ダッコなんてだいきらい!」
悦ねぇが駈けていく。
私はやってはいけないことをしてしまった。寝ぼけていたとは言え、悦ねぇを泣かせてしまった。
大事にすると決めていたのに。
「悦ねぇ!」
私はすぐさま悦ねぇを追いかけた。
私は悦ねぇが好き。大好き。
せっかく差し延べてくれた手を。
強がってた私に差し延べてくれた手を。
その手を離してなるものか!
外に出ると、走る悦ねぇの姿が遠くに見えた。
必死に追いかける。こんなときにローファーなんて。走りづらい。
だけど悦ねぇより私の方が足は速いし、体力もある。
やがて追いつき、私は悦ねぇの腕をつかんだ。
「待って・・・悦ねぇ」
呼吸が整っていないせいで、うまく言葉がでてこない。
事故だったと、私は悦ねぇが大好きだと、伝えたいのに。
「離しぃ!もう私ダッコなんて知らん!リーとでも誰とでも付き合ってしまえばええんや!」
手の力が抜けてしまうのがわかった。
「・・・ダッコ?」
私は何を言おうとしていたのか。
走りながら伝えたいと思っていたこと全てが吹っ飛んでしまった。
何も、考え付かない。
そのうちに足の力まで抜け、その場にへたりこんでしまった。
「どうしたんよ、ダッコ」
悦ねぇ!
「ちょっ・・・なんでダッコが泣くんよ!」
悦ねぇ!悦ねぇ!
私の心が叫び始めた。
「悦っね・・ぇ、きらいにならんといてぇ」
口が勝手に動く。
「私は、私は、私が愛しとるのは悦ねぇや!みんなのこと好きやけど、愛しとるのは悦ねぇだけや!悦ねぇおらんようなったら、私生きていかれへん!嫌いになんてならんで!お願いや!嫌いになんてならんといて!」
体中が熱い。
目が霞んで悦ねぇの姿がぼやけてしまう。
「嫌いになんてならんといて!お願いやから!」
悦ねぇがおろおろしている。だけど、私は叫ばずにはいられない。
「悦ねぇが大好きや!悦ねぇが、悦ねぇが・・・」
再び声が出なくなった。体はまだ熱く、心は悦ねぇに叫び続けていた。
と、悦ねぇに抱きしめられた。
「嫌いになんてなれん・・・ダッコのばかぁ」
泣いている。悦ねぇも泣いている。
「悦ねぇ・・・大好きやぁ」
私たちは気の済むまで泣いていた。
帰り道、私たちは手をつないで歩いていた。
普段の悦ねぇは外でそういうことをするのを嫌う。私はいつも触れていたいと思うのに、恥ずかしい!と悦ねぇは拒否する。だけど今日は悦ねぇのほうから手を差し出してきた。
「なぁ、なんでリーにキスしてしもうたん?」
悦ねぇは下を見ながらそう言った。
「だって・・・悦ねぇのベッドで寝てたんよ私。悦ねぇのベッドで・・・いっぱいキスとかしてきたけん、いつも悦ねぇがそこにいたけん、クセでやってしもうたんやと思う・・・寝ぼけとったし」
悦ねぇは外でイチャつくのを嫌う。私は自分の家が嫌い。だから悦ねぇに触れられるのは悦ねぇの部屋だけ。
悦ねぇの部屋だけが、唯一恋人らしくいられる場所。
「もう・・・偶然だったとしても、二度とせんといてね。私をこんな想いにさせんといてね。次やったら本気でダッコのこと嫌いになるけんね」
つないだ手をさらに力強く握り締められた。
二度と同じ過ちは犯さない。
二度と悦ねぇを哀しませない。
私はずっと悦ねぇの隣にいたい。
「もう絶対せぇへん。悦ねぇを泣かすようなこと、絶対せぇへん」
私は手を力強く握り返した。
「悦子、あんたどこ行ってたんよ。みんな帰ってしまわれたよ」
悦ねぇのお母さん。少し怒っているようだった。
「うん・・・」
「おじゃまします」
「あら、多恵子ちゃんも一緒だったんか。おかえりぃ」
悦ねぇのお母さんは、私をいつも『おかえり』と言って迎えてくれる。
私と悦ねぇの関係は知らないだろうけど、私の家の家庭環境は知っているから。
私はよく、悦ねぇの家に転がり込む。
昔みたいにバカな真似をして今を忘れることができなくなった。家に一人でいると、たまにどうしようもなくなる。
そんな時、悦ねぇに助けを求めた。何故あの時悦ねぇの家の前に立っていたのかはよくわからない。だけど、他の誰でもない悦ねぇの家の前に私はいた。
悦ねぇは私を迎え入れてくれた。
今日は泊まってきぃ!と泊まらせてくれた。
泣きたかったら泣いてもええんよ、と泣かせてくれた。
気がつくと、私は悦ねぇにみんなとは違う気持ちを抱いていた。
「なぁ、今日どうする?泊まってく?それとも帰る?」
部屋に入るなり悦ねぇが聞いてきた。
私は答える前に悦ねぇを抱きしめた。
「ダッコ?」
離さない。絶対悦ねぇを離さない。
「ん?あぁ・・・泊まってってもええ?私のせいで悦ねぇの勉強あんまり進まなかったやろ。教えたる」
「うぇ・・・勉強・・」
私は悦ねぇにキスをした。
「赤点とったら、ボート漕げんようなるよ」
「それは嫌や・・・」
再びキス。
「そんならちゃんと勉強しよ?な?」
会話の合間にキスをしながら、夕食を待った。
夕食をごちそうになった後、勉強を始めた。
やっぱり悦ねぇは勉強が嫌いらしい。悪い姿勢で勉強をしている。
「悦ねぇ、しゃんとしぃ。真っ直ぐやないと頭働かんよ」
「だって・・・」
上目遣いにこっちを見てくる。
そのまま押し倒してしまいたくなる衝動を必死に堪えた。
「だってやなくて・・・」
考える。どうしたら悦ねぇはちゃんと勉強するだろうか。
結局あまりいい考えも浮かばず、とりあえず悦ねぇの手にキスを落とした。
「ダッコ?」
「悦ねぇが今日の分終わらせな、私、悦ねぇに甘えられへんやないの」
そう耳元でささやいた。
悦ねぇは顔を赤くし、ばか、と一言だけ言った。
あの後、悦ねぇはちゃんと勉強した。私もちゃんと教えた。
多分赤点は免れられる・・・と思う。
お風呂に入って、布団を出してもらって。
せっかく出してもらっても、数えるほどにしか使ったことはないけれど。
私のTシャツとジャージと下着は、悦ねぇの家に置いてある。
悦ねぇのお母さんが、急に泊まるときに困るだろうから置いていきと言ってくれた。
なんで同じ母親といいものなのに、私のお母さんと悦ねぇのお母さんは違うのだろう。
髪を乾かして、悦ねぇが上がるのを待った。
悦ねぇがお風呂から上がった。
私は悦ねぇの髪をドライヤーで乾かしてやる。香るシャンプーの匂いが心地よい。
「悦ねぇはなんで髪伸ばさへんの?」
ショートの悦ねぇはもちろん可愛いけれど、きっとロングの悦ねぇも可愛い。
色んな悦ねぇが見たい。
「ボート乗っとるせいで髪焼けてしまうからなぁ。パサパサするけん、切っとるんよ」
「悦ねぇの髪、弱いんか」
「うん」
いつロングの悦ねぇを見られるようになるだろう。大人になってからか。
「よしっできた」
乾かし過ぎないように、且つ寝癖がつかない程度に乾かしてやった。
「ありがとなぁ・・・うわっ」
堪らず床に悦ねぇを押し倒した。
「ダッコ・・・」
「悦ねぇ、大好きや」
私は悦ねぇにキスをして、舌を絡ませた。
生暖かい感触に、気持ちが高ぶってくる。
「・・・ええ?」
「うん・・・ええよ」
私はもう一度キスをすると悦ねぇを抱き起こした。
私は悦ねぇとキスをするのが好きだ。
悦ねぇを抱くのが好きだ。
悦ねぇに抱かれるのが好きだ。
中学の時、付き合っていた男の子に抱かれたけれど、正直苦痛でしかなかった。
何故私は力によって組み敷かれなければならないのか。
何故感じもしないのに声をあげなくてはならないのか。
ただ相手を喜ばすためだけに抱かれてた。
そういうものだと思ってた。
だけど、悦ねぇはそれは違うと教えてくれた。
悦ねぇには経験なんてないのに、ちゃんと知ってた。
お互いに楽しまなければ意味はないと。
お互いを思いやらねば意味はないと。
本能を満たすだけなら誰とでもできる。
だけど心まで満たすのは誰とでもいいというわけではないと、教えてくれた。
言葉では言わなかったけれど、肌を重ねる度にそう強く感じるようになった。
悦ねぇがそう感じさせてくれた。
「バンザイして」
悦ねぇのTシャツを脱がす。可愛らしいキャミソールが現れる。その後ジャージも脱がした。
「ダッコも」
脱がし合いっこ。こうするだけで変な気分になる。
キャミソールと下着だけになった私たちは、明かりを豆電球にしてベッドに腰掛けた。
「ダッコ・・・ちゅうして」
キスを求めてくる悦ねぇ。私は言われなくてもする気。
唇を重ねて、そのまま押し倒した。
悦ねぇの体を全身に感じる。
柔らかくて、温かくて。
唇を離したら、悦ねぇに頭を引き寄せられた。そして再びキス。
口の周りが唾液でぐちゃぐちゃになるほどキスをした。
「ダッコ、私ダッコのこと大好きや。世界で一番大好きや」
「私も悦ねぇのこと世界で一番大好きよ。愛しとる」
普段なら照れくさくて言えないこんな言葉も、ためらうことなく言える。
だけどやっぱり少し照れくさくて、私たちははにかんだ笑いを浮かべた。
悦ねぇのキャミソールの下に手を滑り込ませ柔らかい胸を手にすると、悦ねぇは体をぴくんと震わせた。
もう片方の手も入れる。悦ねぇのキャミソールが捲れ上がる。
私は悦ねぇの胸に赤ん坊みたいに吸い付いた。
「やっあ・・・・」
何度この声を聞いてきただろう。私はこの声を、もっともっと艶っぽい声を聞きたがった。
体がうずく。
―もっと―
「ひぁ・・・あっ、ダッコぉ」
下着の中に手を入れると、体を震わせさらに声をあげてくれた。
―もっと、もっと―
なぜか今日は特に悦ねぇを激しく抱きたいと思った。
泣かせてしまったからかもしれない。
すべてを満たしてあげたかった。
悦ねぇのそこは徐々に湿り気を帯びてきて、指を滑るように這わせることができた。
その度に悦ねぇは声をあげ、女の表情を浮かばせてくれた。
こんな悦ねぇを見られるのは私だけ。
リーも、ヒメも、イモッチも、中田三郎も、そして関野も見たことのない、私だけの悦ねぇ。
体を震わせる度にぷるんと揺れるその胸も、すべすべしていい匂いのするその肌も、快楽に溺れるその顔も、私の名を呼ぶその声も、
全部、私だけの悦ねぇ。
「やっ・・・あぁ」
「悦ねぇ・・・」
私は悦ねぇの下着に手をかけると、一気にそれを引きずり下ろした。
「ひぁっ・・・ダッコぉ、恥ずかしぃ・・・」
何度も肌を重ねたというのに、悦ねぇは恥ずかしいのか体を横向きにした。
「見せてや、悦ねぇ」
私は悦ねぇの体を向き直らせると、足を広げさせた。
「ダッコ、そんなとこ見んといて・・・」
閉じようとする足を、手で押さえつけた。
「悦ねぇ、きれいよ」
いつもは指でいじくるだけだけれど、何故か今日はそれだけじゃ嫌だった。
いつもより悦ねぇを感じさせてやりたかった。
私は顔を悦ねぇのそこに近付けて茂みをかきわけ、赤くふくらんだものに口付けた。
「あぁっ・・やっ・・ぁんっ」
悦ねぇの足に挟まれそうになるのを食い止めながら、思い切り吸い上げた。
「ああぁぁあっ・・・ゃっあ・・」
独特の匂いが鼻につく。
けれど、私はやめたくはなかった。
「ダッ・・コ、やめぇ・・・あぁっ」
舌を使ってそれを舐め上げる。その下の方から、ぬるぬるが溢れ出てきた。
ぬるぬるも舐めとりながら、悦ねぇのそこら中を舐めた。
私はまるでキャンディをもらった子どものように、飽きることなく舐め続けた。
「っあ・・・」
悦ねぇの体が大きくのけ反った。
頭を上げると、そこには目をとろんとさせた悦ねぇがいた。
「悦ねぇ・・・」
私がそう声をかけると、悦ねぇはこっちを見て微笑んだ。
「ダッコ・・・」
愛しい。
悦ねぇが愛しい。
私は悦ねぇのためならなんだってできる、そう思った。
悦ねぇの横に寝転び、腰を抱き寄せた。
キスをしようとしたけれど、出来なかった。
あんなことをしたあとじゃ、悦ねぇが嫌がるかもしれないと思ったから。
だけど悦ねぇは気にする様子もなくキスをしてきた。
悦ねぇにギュッと抱きつく。悦ねぇの匂いがふわっと漂った。
悦ねぇの息が整い始めると、今度は悦ねぇが私の上にのっかってきた。
「ダッコ、なんであんなとこ舐めたん?」
首筋を悦ねぇの舌が這う。全身が震える。
私は首筋が弱い。
「ん・・・したかったからや」
「理由になっとらんやないの」
唇をふさがれた。
悦ねぇのあったかい手が、私のキャミソールの中に入ってきたのがわかった。
体がぞくぞくして、早く、早くと求めているのがわかった。
初めてのとき、私は悦ねぇを抱いて、それだけじゃ足りなくて、抱いて欲しくて。
そんな気持ちになるなんて、思ってもみなかった。抱かれたいなんて。
悦ねぇの手を取ると、そっと私の胸に当てさせた。
悦ねぇは顔を真っ赤にして、うつむいていたのを覚えている。
して?と言うと、ぎこちない手つきでしてくれた。
気持いいとか、そんなふうにはならなかったけど、すごく幸せだった。満たされた。
あとで聞いたら、自分でもしたことがなかったらしい。見よう見まねだったと。
それから何度も肌を重ねるうちに、悦ねぇは私を感じさせてくれるようになった。
私が恍惚の色を見せるたび、悦ねぇは嬉しそうに笑うようになった。
「なぁ、なんでしたん?」
悦ねぇは私の胸から手を離すとまたそう言った。
「だから、したかったからやって」
何故か言うのが恥ずかしかった。自分でも大胆なことをしてしまったなと思う。
「本当のこと言ぃー。言うまでしたらんよ?」
したり顔で悦ねぇは言う。私が悦ねぇを求めているのを知ってて。
「して・・・?」
目に涙を溜めて言ってやる。当然、わざと。涙を見せれば言わなくてもしてくれるかなと思った。
だけど、世の中そんなに甘くなかった。
「いや」
笑顔の悦ねぇ。
諦めて、私はゆっくり口を開いた。
「今日、私悦ねぇ泣かしてしもうたやんか」
「うん」
「すごくな、ものすごくな、ごめんでいっぱいなったんよ」
「うん」
「してしもうたもんは変えられないけん、いつも以上にしたりたいな思うたん・・・私もああいうこと初めてやし、上手にできるかわからんかったけど、悦ねぇを今まで以上に気持ちよくさせたかったんよ。だから、つまりは、なんていうか・・・」
悦ねぇは私の特別だと示したかったんだ。
そう言う前に悦ねぇは私の唇をふさいだ。
絡まりあう舌が生暖かくて、少し息苦しくて。
体が熱くなっていった。
「んっ・・ふ」
悦ねぇの手が私の太股を這う。やがて下着の上から触れてきた。
「・・んんっ」
キスだけでも必死なのに、悦ねぇの手は敏感なところを擦ってくる。
悦ねぇの手が動く度、冷たいものがひたひた触れてくる。
私はこんなに濡れていたのか。
下着に染み込んだ体液が、冷えて私にひたひた当たる。
少し、恥ずかしくなった。
「んっ、はぁ・・・ダッコ、すごい濡れとるなぁ」
「ひぁっ」
耳を舐められて、体が大きく震えた。
「私、上手になった?」
「・・・うん」
悦ねぇはにこっと笑った。
「悦ねぇやもん。悦ねぇやから、私こんなんなるんよ」
悦ねぇを抱いていたついさっきと違い、受け身になる。
逆に悦ねぇは攻めに転じる。
役割など決まっていない、自由な関係。
私はこういうの、好きだ。
再び唇をふさがれた。
悦ねぇの舌が自分のと絡み合うと、私のスイッチが入ったようになる。
必死に舌を絡めた。響く音がやらしい。
生暖かい悦ねぇの息も、唇に触れる柔らかい感触も、流れ込んでくる悦ねぇの唾液も、
全部、私の心を昴ぶらせていく。
悦ねぇは唇を離すと、私のキャミソールと下着を脱がした。
これで二人ともハダカで。
お風呂上がりの肌が触れ合うのは、すべすべしていてとても気持ちいい。
「いれるよ?」
私がうなずくと、悦ねぇは私の中に指を押し込んだ。
「あ・・・んっ」
私はその指をあっさりと受け入れた。
―足リナイ、もっと―
「悦ねぇー・・・」
悦ねぇにギュッと抱き付く。
何かにしがみつかずにいられない。
「ダッコ、もっと欲しそうやな」
「ゃあっ・・・あっ」
指が2本に増えた。私の中で、動き回っている。
私の中が、どんどんぬるぬるになっていく。
「ダッコ、すごい可愛い」
悦ねぇの目の色が、いつもと違う。
私の上に乗っかって、どうしようもなく悦ねぇを求める私を笑っている。
どうしようもないほど求められることに、喜びを見出だしている。
「あっ・・悦っ・・・ねぇ、もっとぉ・・・ぁんっ」
指が更に増えた。
中で動き回らずに、入れたり出したり、ピストン運動に変わった。
「ダッコ、もう少し足開いてや」
言われた通りにすると、奥の方まで悦ねぇの指が入ってきた。そしてまた何度も何度も突いてきた。
もう、何も考えられなかった。
悦ねぇにしがみついて、女の声を上げるしかなかった。
「やっ、あっ、悦っ・・・ねぇっ、ぁあっ!・・・」
体が二、三回痙攣して、全身の力が全部抜けていった。
悦ねぇはそんな私の様子を見ると、指を抜いて私にキスをした。
「ダッコ、すごい可愛かった」
「っはぁ・・・何言うてるの・・どう考えてもさっきの悦ねぇのが可愛かったわ」
目と目が合って、私たちは思わず笑い出した。
「寝よか」
「うん、寝よ」
そこらに散らばっているキャミソールと下着を拾って着る。
ハダカのままだと、またしたくなるから。明日寝不足になってしまう。
着てしまうと、悦ねぇに抱き付いて布団をかぶった。
「なぁ悦ねぇ、今日、本当にごめんな。私の好きなのは、愛しとるのは、悦ねぇだけだけんね」
ギュッとしがみついた。悦ねぇはあたたかかった。
「もう怒っとらん。だけど、もう絶対絶対せんでね。次やったら私、どうなってしまうかわからんけん」
悦ねぇが少し哀しそうな顔をした。
「せぇへん」
私はさらにギュッと抱きしめて、そのまま眠りに落ちた。