浩之が悦子に己の気持ちを伝えてから  
どのぐらいの時間が経ったのだろうか  
季節は春、夏、秋、と過ぎていった。  
時間が経つのは早いもので  
季節は冬を迎えていた。  
浩之が気持ちを伝えてから約一年が過ぎようとしていた。  
「あいつ…俺の事どう思ってるんやろうな………」  
浩之は溜息混じりにベッドに横たわった。  
東京に来てからと言うもの  
いや、正確には気持ちを伝えたあの日からだろうか  
彼女が彼に対してよそよそしくなったのは  
別に東京に来てから一度も顔を合わせていない訳ではない。  
ただ、態度がよそよそしいのだ。  
目を合わせようとすれば、ぱっと目線を外され  
会話もぎこちなく進んでいく。  
昔みたいに、松山にいた頃みたいに  
自分に接して欲しい。  
浩之は心の底からそう感じていた。  
──いっそ、気持ちを伝えない方が良かったのかも知れんな。  
考え出せばキリがない。  
キリがないとは分かっていても考えてしまう。  
浩之の頭に浮かぶのは  
気持ちを伝えられて呆然と立ち尽くす悦子の姿だった。  
その日、浩之は悦子を家に送ったものの  
何を話したかは覚えていない。  
覚えているのは下を向いて  
自分と顔を合わせようとしない悦子の姿だった。  
「俺じゃ駄目なんか…悦子…やっぱり、俺じゃ…でも、俺はお前の事が………」  
──好きなんや  
小さい頃から  
浩之は悦子をずっと見ていた。  
ボート部員と衝突した時も  
悦子が中田三郎に恋した時も  
大会に出られない悔しさを紛らわす様に  
ボートから離れていく姿も  
全て見ていた。  
 
悦子の近くで、ずっと………  
彼女を見守ってきた。  
ずっと、ずっと、これからも見守っていきたい。  
例え、悦子が他の男の物になろうとも  
──そんなもん俺には関係ない。  
俺は悦子をずっと見守っていく。  
そう割り切る筈だった。  
──中田三郎が現れるまでは…  
悦子が彼に恋心を抱いたと知った時  
浩之の心は乱された。  
中田三郎への叶わぬ恋に涙する  
悦子の姿は浩之の心を乱すには十分過ぎる程だった。  
生まれて初めて人を憎んだ瞬間でもあった。  
──もし、自分がいなくなっても悦子は泣いてくれるんやろうか?  
そんな馬鹿な考えが頭をよぎった。  
「しょうもない事ばかり思い出すんやな…俺は………」  
目線を時計の方にやる。  
時計の針は十二時を差している。  
──そろそろ、寝るか?起きててもろくな事考えんしな──  
そう思い浩之が瞳を閉じようとした時だった。  
──ピンポーン──  
静まり返っていた部屋にそれは馬鹿みたいによく響いた。  
「誰や…こんな時間に………」  
浩之はベッドから起き上がると  
チャイムを鳴らした主を確かめに玄関へ向かった。  
──もしかして…悦子だったりしてな………  
こんな時までも悦子の事を考えてしまう自分に浩之は苦笑いした。  
「はーい…どちら様ですか………?!え、え、悦子?!」  
鍵を解いてノブを捻りドアを開けると  
そこには悦子が立っていた。  
「え、え、悦子…お、お前、こんな時間にどうして…しかも、なんや、その格好は………」  
浩之が驚くのも無理もない。  
東京に来てから会うが初めてではないとは言え  
最近、顔を会わせていなかった。  
いや、会わせていたとしても驚いたに違いない。  
「ブー…そ、その、ひ、久しぶりやね…あ、あの、中に入ってもええ?」  
「あぁ…ええけど…お前、その格好………」  
浩之は乱れる心を必死に抑えて  
目の前にいる愛しい女を見つめる。  
何をどう思ったかは悦子にしか分からないが  
悦子はサンタのコスプレをしていた。  
サンタと言っても普通のサンタの格好ではない。  
胸元は大きく開いていて  
下手したら胸が丸見えになるんでは?思えるぐらい開いている。  
スカートは膝上何センチぐらいだろうか?  
パンツが見えるか?見えないんじゃないか?のギリギリの線だ。  
黒い編み上げたブーツがまた何とも言えず色っぽさをかもし出している。  
純情少年の浩之とて  
男である。  
愛しい女のそんな姿を見て己を抑えられる筈もない。  
視線は自然と胸元や足元に行ってしまう。  
──こいつ、誘っとるんか?夜中にこんな格好で俺んとこ来て………  
 
「あ、あの?ブー…話、聞いてるん?」  
「あ、あぁ…す、すまん…ほら、はよ、入りぃ………」  
鈍感とはいかに残酷なものなのだろうか…  
事もあろうに悦子は上目遣いに  
浩之の顔を覗き込み  
心配そうな顔をしている。  
──ば、馬鹿、人の気も知らんと…そんな可愛ええ顔すんなや…  
もやもやを吹っ切るかのように浩之は悦子の手を握ると  
中に引き入れた。  
初めて握った愛しい女の手  
普段の浩之だったら  
悦子の手を握っただけで  
舞い上がってしまいパニックになってしまうだろう。  
「どうしたんや…こんな時間に………」  
乱れた心を見透かされない様に  
浩之はゆっくりと落ち着いて悦子に語りかける。  
だが、悦子は答えようとしない。  
黙って下を向いている。  
そう、あの時みたいに…  
黙って下を向いているのだ。  
「悦子、黙っとったら分からん………うわぁ!!!」  
浩之が悦子の顔を覗き込もうとした時だった。  
パァンと乾いた音が響いた。  
クラッカーだ。  
「ブー…メリークリスマス!!!!!」  
悦子はけたけたと楽しそうに笑っている。  
浩之は顔に掛かった紙テープやら小さい布製の国旗やらを  
振り払いながら言った。  
「な、お前…いきなり何するんや!!!びっくりするやろが…ったく…ほんとに…」  
口ではそう言いながらも浩之の心は嬉しさで満たされていた。  
愛しくてたまらない女が目の前にいる。  
それだけで十分だった。  
「それに…クリスマスは今日やないぞ?どうしたんや?いきなり…なんか、理由でもあるんか?」  
浩之は目の前にいる悦子に優しく問いかける。  
こんな遅い時間に自分を訪ねて来たのには  
何か理由があるに違いない。  
そう思っていた。  
そんな浩之の様子に悦子は深く溜息を吐く。  
「ブー…もう、二十四日なんやけど…時計見てみ?」  
浩之は悦子の言う通り時計の方に目をやる。  
浩之は「あっ…」と小さい声を漏らした。  
「た、確かに二十四日やな………」  
浩之はバツが悪そうに背を向ける。  
向けたまでは良かった。  
何を思ったのは悦子が後ろから抱きついてきたのだ。  
 
「わっ、こ、こら!!え、悦子…な、何をして………」  
背中に当たる柔らかい物体は  
悦子が女である証でもある。  
女なのだから付いているのは当たり前なのだが  
いかんせん、今の浩之には刺激が強すぎた。  
無意識に血液がある部分に集中してしまう。  
「黙ってとって!!!」  
「な、なんや、いきなり………」  
「ええから、黙っとって!!一回しか言わないけんね!!」  
「わ、分かった、黙っとる…」  
悦子の気迫に負けたのだろう。  
浩之は訳が分からないが  
思わず素直に返事を返してしまった。  
──なんや、いきなり…大きな声だしおってからに………  
でも…いつもの、あいつで良かった…  
浩之は心の中で笑った。  
「私、ブーの事が好きや…大好きや…い、今まで恥かしくて言えんかったけど…  
世界で一番ブーが好きよ…そ、その、返事…遅くなってごめん…でも…ちょっ…ブー?!」  
浩之はたまらず悦子を床に押し倒してしまう。  
悦子は必死に浩之を押し返そうとするものの  
男の力にかなう訳もない。  
「ちょっ…ブー…何するんよ!!エロブー!!そこから降りろ………んっ…?!」  
抗議の声をあげる悦子をよそに浩之は淡々と作業を続けていく。  
首筋を愛しそうに舐めあげ  
強く吸って自分のモノである証を残していく。  
くすぐったい様な、痛い様な微妙な刺激に悦子は身を軽くよじった。  
「ちょっ、ブー、何す…あっ…んっ─はぁっ─そこ…ダメや…んっ!!!」  
唇は首筋から鎖骨、鎖骨から胸へと移動していく。  
舌が体を這いずりまわる度に悦子は自分の意思とは関係なく  
あられもない声をあげてしまう。  
その声を聞いてたまらんとばかりに、浩之は悦子の胸元に手を掛けると  
それを一気に引きずり下ろした。  
純白のブラジャーが男の情欲を駆り立てる。  
浩之はそれを外すと、ベッドの脇に放り投げ  
桃色の果実にむしゃぶりついた。  
 
「あっ…ブー…ダメや…あっ─んっ、やぁっ…あっ─あぁ…」  
果実の回りを丹念にねぶる。  
時折、果実を優しく噛んだり舐めたりしながら  
浩之は愛撫を続けていく。  
どうやら、乳首が性感帯らしい。  
果実を舐めあげる度にたまらないとばかりに  
のけぞり天を仰ぐ。  
浩之は愛しげに己の唇を悦子に重ね合わせる。  
悦子に抵抗の色は見えない。  
そればかりか、浩之の首に腕を回し  
恍惚の表情を浮かべている。  
二人は夢中になって唇を重ね合わせていく。  
松山にいた頃の二人を知る人間から見たら  
信じられない光景だろう。  
──夢みたいやな…悦子が俺の腕の中におるなんて………  
悦子の腰が悩ましげに動くのを浩之は見逃さなかった。  
唇を離し悦子をベッドに寄りかからせると  
スカートの中に顔を突っ込んだ。  
「あっ…ブー…そこダメや!!あっ─ちょっ…破かんといて…んっ!!あっ、あぁ!!!」  
ビリビリと布を裂くような音がした。  
脱がすのがもどかしかったのだろう。  
浩之はショーツを裂くと、蜜で溢れていた秘口に舌を寄せる。  
「あぁ!!やっ、そこ…ダメ…んっ─ブー、やぁっ─汚いけん…やめ…やぁっ!!!」  
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めあげる。  
舌が動き回ると秘口からはねっとりとした液体が溢れ出し  
内腿がわなわなと震えだす。  
──お前が汚い訳ないやろ………こないに濡らしといてよう言うわ。  
「あっ─やぁっ─やぁぁ!!ブー、いやや!!そ、そこぉ…いやぁ!!!」  
浩之は秘肉を指で広げると、ぴょこんと突き出ている肉芽を指の腹でこねた。  
悦子の反応に気を良くしたのだろう。  
浩之は肉芽を指でなじる。  
ぐっと強く押してみたり  
摘んで軽く上に引っ張ったりと  
思いつく限りの愛撫を悦子に施している。  
舌は相変わらず秘肉を丹念に舐めあげている。  
「あっ─ブー、やぁっ…もう、あぁぁ!!!!!」  
浩之の舌が悦子の中に入り、べろりと舐めまわした。  
舌は生き物の様に悦子の中を這いずりまわり  
悦子を狂わせていく。  
「あぁ…ブー、やぁっ─はぁん!!!もう、ダメぇ!!!!!!」  
浩之は快楽から逃げようとする悦子の  
内腿を押さえつけた。  
秘口から舌を引き抜くと  
肉芽を強く吸い上げた。  
 
「ああっ!!あっ…ブー…あぁっ…あぁぁぁぁ!!!!!!!」  
全身を激しく痙攣させながらかすれた声で  
浩之の名前を口にし、頂きにのぼりつめていった。  
はぁっ、はぁっと肩で息をする悦子のおでこにそっと唇を寄せる。  
「悦子、えぇか?」  
浩之の問いに悦子は力なく頷く。  
浩之は悦子を抱き寄せるとベッドに運び  
優しく寝かせた。  
怖いのだろうか…悦子の体は小刻みに震えている。  
──怖いんやな…  
唇がわなわなと震えている。  
何か言っている様だ。  
そっと耳を近づける。  
「悦子、どうした?怖いんか?」  
「ブー…私、ブーを待たしたけん…やから…ブーの………」  
好きにしてええよ…悦子は浩之の耳元でそう囁くと  
恥かしそうに下を向いた。  
──あぁ、もう…ほんと、可愛いやっちゃのう。お前は………  
浩之は下を向いた悦子の顔を手で包みこむと  
おでこにキスを落とした。  
「痛かったら言うんやぞ…」  
服を脱ぎ捨て、ゆっくりと悦子に圧し掛かっていく。  
秘口にそっと自身をあてがう。  
「悦子…ずっと、大事にするからな………」  
「あっ…い、いたぁ…いたぃ……あぁっ、ブー!!」  
痛みに負けまいと悦子は歯を食いしばる。  
秘口からは悦子が純潔だった証がぽたぽたと流れ落ちていく。  
男を受け入れた事のない秘壁は浩之が入ってくるのを  
拒むかのように浩之を締め上げる。  
 
「歯食いしばるな…傷つくやろ?俺の背中に爪立てろや」  
「はぁっ─やって…そんな事したら…ブーが…あっ、あぁ!!!!!!」  
ずぶりと根元まで自身が入る。  
浩之の背中に桜色の爪が食い込む。  
──人の心配しとる場合か…まったく、ほんとに可愛い奴や。  
「くっ…悦子、大丈夫か?」  
悦子の睫が小刻みに震えている。  
根元まで入ったとは言え痛いのだろう。  
「んっ─はぁっ─はぁっ─大丈夫、動いてええよ…」  
浩之はゆっくりと腰を動かす。  
根元まで入ったとはいえ  
中はひどく狭く固い。  
「あっ─はぁっ─ブー、あぁ、なんか、変や…んっ!!!」  
先程までの声とは違い、明らかに艶を帯びている。悦子の鳴き声。  
──もう、そろそろ動いても大丈夫やろう。  
「あっ、あぁ…ブー、ブー!!好きや、大好きや…んっ─はぁっ─んっ!!」  
自分から腰を律動させて快感を貪る悦子に苦痛の色は見えない。  
浩之は腰を支えて突き上げる。  
浩之の求めに悦子は天を仰いで応える。  
「俺もお前が好きや…大好きや…ずっと、これからもお前だけを見とるから…」  
「ブー…ブー好きよ。大好きや………」  
二人はお互いに見つめあい、微笑み合うとそっと唇を重ねた。  
今までのすれ違いを埋める様に  
離れていた寂しさを埋める様に  
強く腰を突き上げる、悦子もそれに応えようと必死に浩之にしがみつく。  
「くっ…すまん、悦子…俺、もう………」  
「あっ─んっ!!ブー、一緒に…あぁっ─やぁぁぁぁ!!!!!」  
二人はお互いの名前を呼び合うと一気に高みに上りつめていった。  
浩之が秘口から自身を引き抜くとごぽぉという音と共に  
白濁した液体が流れてきた。  
かすかではあるが、赤みがかったそれを見て  
悦子は恥かしそうにうつむく。  
浩之は悦子を抱き寄せて体を拭いてやると  
隣に横たわった。  
恥かしがって横を向いて顔を合わせない悦子を  
後ろから抱き寄せる。  
「なっ…ブー…やめっ…くすぐったいけん!!!」  
指で字を描いていく。  
描き終わると耳元でそっと、囁いた。  
「おやすみ、悦子………」  
「なっ、ちょっ…ブー!!!」  
悦子の抗議も虚しく浩之はすーすーと気持ち良さそうに寝息を立てている。  
「………私もブーだけをずっと、見とるけん………おやすみ…ブー…」  
自分を抱きしめている腕に軽くキスをすると悦子も眠りについた。  
浩之はサンタクロースから貰った悦子というプレゼントを  
いつまでも大事にしたのは言うまでもなかった。  
 
 

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