「オノケンコーチー!」  
篠村がこちらへ向かって来た。菊池の手を引きながら。  
「どうした?」  
「なんや、ダッコ熱あるみたいなんよ。艇庫に布団あるやろ?寝かせといたってほしいんよ」  
平気や、と言う菊池の顔を見ると、確かに赤い。目も潤んでいる。おでこに手をあててみる。  
「うーん、こりゃ熱あるな。帰らんでええのか」  
「心配やし、私ら送っていくけん。練習終わるまで寝かしといたってください」  
「わかった。それじゃ篠村は練習戻りぃ」  
肩を押して艇庫へと連れて行く。少し足下がふらついているようだ。  
「菊池ぃ、大丈夫か」  
とりあえずイスに座らす。  
「多分・・・」  
「解熱剤、俺のやけど、飲むか?よう効くぞ」  
「お願いします・・・」  
熱を出している女は、どうしてこんなに色っぽくみえるのだろう。疑問に思う。  
鞄を取りに行く。開けると、解熱剤の箱の隣に違った箱。  
そういえば・・・  
最近ひとみのやつがそっけないもんで買ったんやったな。  
―媚薬―と、世間では言われるもの。効果のほどは知らない。  
・・・試してみるか  
それを鞄から抜き出すと、冷蔵庫へと向かった。  
中から水を出そうとすると、奥のほうに隠すように置いてある酒の缶に気がついた。  
誰が飲みよるんや。高校生が。  
後で持ち込んだやつを見つけてとっちめてやろうと思ったが、考えが変わった。  
アルコール入ったほうが回りは早いよな・・・  
コップにその酒を注ぎ、薬を使用量の3倍くらい入れてやった。これくらいすれば間違いなく効くだろう。  
「ほら、少し変わった味がするかもしれんけど」  
一瞬顔をしかめたのが見えた。しかし、全部飲み干した。  
「布団敷いてくるけん、ちょっと待っときぃな」  
奥へと行き、布団を引っ張り出す。  
敷き終わり戻ろうとしたが、ドアを開ける一歩手前で立ち止まった。  
効くもんやなぁ・・・  
右手で自らの胸をつかもうとして、左手でそれを阻止しようとして。必死に自分の欲の衝動と戦っているようだった。  
ドアを開けると、菊池はぱっと手を下げた。  
「布団敷いたけん、寝ときぃ。後で冷えピタかなんかもってきてやるわ」  
ゆっくり立とうとしている。だいぶキツそうだ。  
熱のせいなのか、飲ませた薬のせいなのか、涙目になり、頬も赤い。  
病人にはマズかったかと思いながら、ひょいと抱き上げた。  
「きゃっ・・・コーチ?」  
「ん?菊池は軽いなぁ。ちゃんと食べとんのか」  
恥ずかしそうにうつむきながらも、その手は俺の服を掴んでいる。  
そのまま布団まで運んで、降ろしてやった。  
その目が、行くなと言っている気がした。  
菊池は掴んでいる手を離そうとしなかった。  
「なぁ、手離してくれんか?」  
「あっ・・・すいません」  
とりあえずそのまま寝かせて、艇庫を後にした。  
 
男子部と女子部それぞれに練習の指示を出す。いつもより少し多めに。  
ボートが沖へ出て行くのを見届けると、再び艇庫へと戻った。  
部屋のドアを開ける。布団の中でもぞもぞしていた菊池が、目を見開いてこちらを見た。  
「寝とらなかんやろがぁ」  
看病を装いながら、近付く。焦ったように、再びもぞもぞ動き出した。  
「なんか隠しとんのか?」  
思いっきり、掛け布団をめくってやった。  
やっぱりあれは本当に媚薬やったんや・・・  
膝の辺りまで下げられたズボン、黒い下着、やけに乱れているシャツ。  
菊池の顔が、みるみるうちに真っ赤になっていく。  
ズボンを上にあげようとする手を押さえ付けてやった。  
「菊池は何しとったんや?」  
耳元でささやいてやる。  
「一人でえっちしてたんか」  
大きな目が、更に見開いた。  
「ちがっ・・・」  
首を横にぶんぶん振っている。  
「それじゃ菊池は、何をしとったんや?」  
太ももに手を這わす。菊池の体が、びくっとなる。その顔に嬉しそうな表情が浮かんだ気がした。  
手が下着に到達する。湿っている。水のようなさらっとした湿りではない、ねばついた湿り。  
「おかしいなぁ。なんでこんなに湿っとるんやろか」  
菊池は生暖かい息を吐き出した。  
「えっちな子やなぁ、菊池は。学校でしてしまいよって」  
息遣いは荒く、目は潤んでいる。しかもこの辺りではめずらしく、垢抜けた容姿。これで興奮しない男がいるだろうか。  
「なんでシャツもこんなにぐちゃぐちゃになっとんのや」  
シャツを捲り上げてやる。おそろいの黒いブラが、上にずり上げられている。  
目に涙をいっぱい溜める菊池が、可愛いと思った。  
「や・・・」  
「やっぱり一人でえっちしてたんじゃないか。本当にえっちな子やな」  
耳元でささやき、ぺろっと舐めてやった。  
 
「あっ・・」  
「なんやお前、感じとるんか?」  
腰に手を回す。  
「感じてなんかっっ・・」  
「乳首たっとるぞ」  
「言わんといて・・・」  
「もっとしたいんか」  
「そんなわけないっ・・・」  
首に手を這わす。また体がびくっと跳ねる。  
「したいよなぁ。菊池は学校で一人でえっちしてしまうような子やもんなぁ」  
首をぶんぶん振っている。  
そのふっくらとした胸を、手で包み込む。ふにっとしていて、とても柔らかい。  
菊池の顔は・・・感じている。女の顔をしている。  
「ほら、なんで拒否しないんや?したくないんやろ??」  
決して手で払いのけることもない。  
「ここもさっきより濡れてるみたいやしなぁ」  
再び下着に触れる。湿りが、すごい。  
「触って欲しいなら、触ってやるぞ?」  
手を離すと、名残惜しそうな顔をした。ほら、やっぱりして欲しいんじゃないか。  
「・・・してください」  
恥ずかしそうに、小さな声で菊池はそう言った。  
その言葉を合図に、胸にむしゃぶりついた。  
「ぁあっ」  
なんていい声なんだろう。こういうことをする時の女の声は、好きだ。  
乳首を舌で転がしてやると、特によく声を出した。  
手を下着に触れさす。こんなに濡れているのに触れるのは初めてだ。  
割れ目に指を沿わす度、体がびくびく動く。  
下着の中に手を滑り込ませると、その湿り気の発生源へと指を突っ込んだ。  
「ゃっ・・んっ」  
いともたやすく指を飲み込んだ。とても滑らかに動かすことができる。  
「菊池、お前濡れすぎや。本当にえっちな子やな」  
恥ずかしさに、性欲が勝っているようで、どんどんぬめってくる。  
指を増やしてやると、更に声を上げた。  
 
しばらく指でぐちゅぐちゅやっていた。  
その間、菊池の顔を見ていた。  
女の顔。いつものボートをしている少女とは異なった別の顔。  
その顔に浮かぶ快楽の表情。薬を飲ませたら、ひとみもこんな顔をしてくれるだろうかと考えた。  
指で遊んでいるのも飽きてきたので、指を引き抜いた。  
物足りなさそうに、菊池が俺の顔を見てきた。  
指には絡まりつく透明な体液。  
それを菊池の目の前で見せてやった。  
「こんなになっとんのやぞ、菊池ぃ。本当にえっちな子や。いつもこんなことされたいて頭の中で思っとるんか」  
てらてらと光る指。水というより、生卵の白身のようだ。  
菊池は答えなかった。ただ息を荒くして俺を見ていた。  
「それじゃ俺はあいつらの練習見てくるけん」  
そう言って立ち上がろうとした。  
菊池が、俺の腕を掴んできた。  
「なんや?菊池」  
わかっている。何を望んでいるかくらい。  
「俺、行かなかんのやけどな」  
目で訴えてくる。だけど、シテヤラナイ。  
「ちゃんと言葉で言わんとわからん」  
菊池の目に涙が浮かぶ。  
「・・・して」  
恥ずかしそうに、そう言った。  
「してって何をだ?」  
言うまで、シテヤラナイ。  
「・・・いれて」  
掴んでいた手にギュッと力を入れて、そう言った。  
「何を?」  
目を見開いた。目に溜めていた涙が、零れ落ちた。  
躊躇いながら、手を伸ばして俺のを触ってきた。  
「これ・・・を私にいれて」  
微かに震える手。  
「お前は本当に可愛いやっちゃのう」  
そう言うと、俺は菊池の上に覆いかぶさった。  
 
軽いキスをしてやる。唇を離した瞬間、菊池が首に腕を絡ませキスしてきた。  
舌が入ってくる。意外にも、あまり上手でなかった。  
理性はもう余り残ってないのかもしれない。本能なのかもしれない。  
とにかく、菊池は必死に求めてきた。  
片手でその胸を掴みながら、舌を絡ませ返す。  
唾液が、菊池の中へたくさん入っていくのがわかった。  
口を離すと、下着を脱がしてやった。  
脱がすとき、軽く腰を浮かしてくれた。  
したくてたまらないのが伝わってくる。  
指をいれると、先ほどと変わらずぬるぬるしていた。  
・・・もういけるか  
準備ができているのを確認すると、ズボンのポケットに入っていた財布を取り出し、中からゴムを抜き出し、そのまま脱いだ。  
「なぁ、菊池は何が欲しいんやったっけ」  
ここまできて、まだ質問する。  
恥ずかしそうに答える菊池が、見たかった。  
「これ・・・」  
そっと触れてくる手はやはり微かに震えていた。  
「お願いするには、それなりの態度があるやろがぁ?」  
菊池が俺の顔を見上げてきた。  
「どういうことかわかるよな?菊池はえっちな子やもんなぁ」  
意図することを理解したのか、ゆっくりと起き上がると、恐る恐る俺のを口にした。  
キスはあまり上手でないくせにこっちはとても上手だった。  
「なんっで・・・お前こんなに上手いん・・・」  
予想以上だった。普段からこういうことが上手そうな顔だと思っていたけれど、それ以上だった。  
菊池は上目遣いに俺の顔を見ると、口を離した。  
「前付き合ってた人に・・・こればっかさせられたから」  
少し哀しそうだった。  
「これしないと、してもらえなかったから・・・」  
そう言うと、菊池は再び俺のを口に含んだ。  
決して歯を立てぬように、吸い付いてくる。両手で、包み込んでくる。  
大事なもののように扱ってくれる。  
ひとみもこれくらい上手ければなぁ・・・  
菊池の頭を掴むと、グッと奥へ押し込んだ。  
顔が苦しさに歪み、再び涙が溢れてきている。  
「・・うぇ・・・ぅっ」  
えずく声。溢れていた涙がぽろぽろ零れていく。  
こんな顔を、今まで何人のやつに見せてきたのだろう。  
それでも、舌を使って舐めてくれる。  
気持ちよくさせてやりたくなった。  
 
口から自分のを抜くと、菊池を押し倒した。  
背中を向け、ゴムをつける。  
この無言の間がなければいいのに・・・  
つけ終わると振り向いて、指をいれた。  
位置を確認し、自分のをあてがう。  
グッと力を入れると、にゅるっと中に入っていった。  
「あぁぁああっ!」  
喘ぐと言うより、叫ぶといった感じの声。  
一番深いところへ到達するまで、菊池は叫び続けた。  
きつい。締め付けてくる。  
一呼吸置くと、腰を動かし始めた。  
まだ、叫んでいる。喘いでない。  
だけど時たま気持ちよさそうな顔を見せるので、いいかと思った。  
 
しばらくそうして突いていたら、菊池に変化が見られてきた。  
叫び声が、喘ぎ声になってきた。  
奥へと突くと、大きくなる声。どうしたらもっと声が聞けるのだろう。もっと喘がせられるのだろう。  
少し考えて、抜くと、菊池をうつ伏せにさせた。  
「ほら、ケツ出しぃ」  
言われたとおりに四つんばいになる。こんなに従順な菊池は初めてだ。  
いつも強気な菊池らしくない。  
だけど、こんなのもたまにはいいかと思った。  
自分のを、穴の辺りにあてがう。  
だけど、イレナイ。  
ぬるぬるしたその辺りで、にゅるにゅる滑らせてみた。  
やけに反応する菊池が、可愛かった。  
小さい喘ぎで、体がぴくっと震えて。  
ひとみは、こんなことをすると決まってヤらんのなら始めからすんな!って怒ってくる。  
こんなふうに可愛らしくしてくれればいいのだけれど。  
「・・・オノケンコーチぃ」  
「なんや?」  
「いれて・・・」  
菊池は自分からそう言った。  
「そんなにしたいんか」  
「恥ずかしいこと何度も言わせんといてや・・・」  
やっぱりまだ恥ずかしいらしい。微かに震えている。  
「そんでももう一回聞きたい。もう一回言ってくれへん?」  
「・・・いれて」  
にゅるにゅる遊んでいた自分んもそれを、菊池の中に入れた。  
「やっあ・・・あんっ・・・」  
四つんばいが崩れて、お尻だけを突き出す格好となった。  
さっきよりも、声が高い気がする。感度も良い。  
また、何度も奥まで突いた。  
何度も、何度も。  
菊池が途中で何回かイッたような気がしたけど、気にせず突き続けた。  
菊池は悦んでくれた。嬉しそうな声を聞かせ続けてくれた。  
汗が菊池の背中へと滴り落ちるようになった頃、俺もイッた。  
 
全部出し切るまで、菊池の中にいた。  
熱くて。なんとも言えない感覚だった。  
菊池は肩で息をしながら、布団に横たわっていた。  
引き抜いて、ゴムを捨て、服を着る。  
「着んのか?」  
返事は、ない。  
「菊池?」  
反転させると、寝顔が見えた。  
寝とる・・・  
スースー寝息を立てながら、寝ていた。  
びっしょりと汗をかいているので、このまま着せたら余計に熱が出そうだ。  
とりあえず布団をかぶせると、スポーツタオルを手にし、水で濡らしに外に出た。  
蛇口を捻り、水を出す。  
手にかかる水が、気持ちいい。  
軽く絞ると、また部屋に戻った。  
それで体を拭いてやる。冷たくて気持ちいいのか、時々笑った。  
ぐちょぐちょになっていたそこも拭いてやった。そのままにしておいたら、後で気持ち悪く感じそうだと思ったから。  
一通り拭き終わると、服を着せてやった。ブラのホックはいつもどこにしているかわからないから、とりあえず一番小さいところ。  
着せ終わると、布団の代わりに薄手のブランケットをかけてやった。  
そや、冷えピタ・・・  
冷蔵庫に行き、冷えピタを取ってくる。  
それをおでこに貼ってやった。これで熱は下がるだろう。  
というより、あれだけの運動をして、汗をかいたのだ。熱なんてすぐ下がる。  
頭をなで、そろそろ沖から戻ってくるだろう部員達に次の指示を出すため、外へと出た。  
 
「あー、今日も漕いだ漕いだぁ!」  
そう言う篠村たちと一緒に、艇庫へと戻ってきた。  
「なぁコーチ、ダッコ大丈夫なん?」  
ボートが終わったらすぐにと友達のこと。篠村らしい。  
「あぁ。まだ熱あると思うけど」  
「ダッコがおらんとボートの調整が上手くいかんくてなぁ。やっぱダッコがおらなかんね」  
真っ先に菊池のいる部屋へと向かっていく。  
「ダッコー!だいじょぶー?」  
ドアを開ける。彼女達に続いて、部屋へと入った。  
「なんや、寝とるんか」  
「ダッコー、起きぃー。帰るよー」  
騒がしい彼女達の声に、菊池は目を覚ました。  
「んっ・・・あぁ、おはようさん」  
「あっ、熱大丈夫?」  
「うん、大丈夫・・・っと」  
そう言って立ち上がろうとしたけれど、崩れた。  
「ダッコ、立てんの?」  
中崎が心配そうに覗き込む。  
「ん、なんや知らんけど、あれ?」  
そう言って再び立ち上がろうとする。今度は矢野に掴まりながらではあるが、立てた。  
「大丈夫?」  
「うん、全然治った思うたんけど・・・」  
そう言って菊池は顔を上げた。俺と目が合った。  
ニヤっと笑ってやると、菊池の顔が赤くなっていった。  
「ちょっと、ダッコ、やっぱりまだ熱あるんとちゃう?」  
先ほどのことが頭の中を回っているのだろうか。菊池は答えない。  
「・・・ううんっ大丈夫や。ちょっと寝ぼけとるだけ」  
「ならいいんやけど・・・はよ着替えに行こ?」  
布団を片付けようとする中浦に、俺がやるからみんなと行きと言った。  
全員が部屋から出て行ったあと、布団を片付けた。  
情事の後片付け。そう思いながら。  
先ほどゴミ箱に捨てたゴムを拾い上げると、窓から艇庫の裏手へと投げ捨てた。  
ここでこれが見つかったらいかんしな・・・  
今日菊池に飲ませたのは、本当に媚薬だった。  
あんなに、欲情してくれた。  
予想以上の効果だった。  
いつひとみに使うたろか・・・  
口元に笑みが浮かんだ。  
 

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