あいつだけは許さん。  
いっつも私の悦ねぇを取ってくけん。  
悦ねぇは私のもんや。男なんかに悦ねぇを任せておけるか!  
そう思いながら学校着いたら、やっぱり悦ねぇはあいつといよった。  
関野ブー。悦ねぇの幼馴染みやと。  
だからって、私の悦ねぇにちょっかいかけんといて!このブー!  
「悦ねぇー!」  
悦ねぇのとこへ走る。愛しい愛しい悦ねぇを、ブーの魔の手から守るために。  
なんや、私正義のヒーローみたいやな。  
「ダッコー・・ってうあっ!」  
抱き付いてほっぺにちゅーしてやったわ。ブーの目の前で。あんたにはこんなことでき  
 
ん  
やろ。  
「悦ねぇおはよっっ」  
「・・・びっくりしたぁ」  
少し顔を赤くして照れる悦ねぇ、たまらんわ。可愛すぎる。  
隣りにいたブーの顔、傑作や。ずっとその顔でおればええ。すごく素敵な三枚目よ、今の  
あんた。  
「だって私、悦ねぇのこと大好きやもん」  
最上級の笑顔を悦ねぇに。私にこんな顔をさせるの、悦ねぇだけよ。  
「なんや、照れるなぁ。私もダッコのこと好きよ」  
悦ねぇの笑顔、最高や。私これさえあれば生きていけるわ。  
ちらっとブーの顔見たら、まだ素敵な三枚目の顔しとったわ。そうそう、あんたはそんな  
顔しとくんがええ。  
「なぁ悦ねぇ、私お昼ご飯ないんよ。購買行くけん、ついてきてくれん?」  
「ん?ええよー。それじゃまたな、ブー」  
やった、引き離し成功。ブーのやつ、口ぽかーん開いたまんまや。さすがブー。  
「バイバイ、関野くん」  
悦ねぇが見とらんのを確認して、ブーに思いっきし舌出したった。悦ねぇは私のもん  
よーって。  
そうよ、悦ねぇは私のもん。悦ねぇのこと一番わかってやれるのは私や。  
絶対あんたになんか渡したらん!!  
 
ちっきしょー、菊池のやつ。俺の目の前で、篠村のほっぺに・・・キスしよった。  
女だからって大目に見とったけど、もう我慢ならん!  
小さい頃から篠村のそばにいたんやぞ俺は。一緒に風呂だって入った仲なんじゃ。  
・・・幼稚園のときやけど。  
それを高校に入ってあいつが湧いて出よって。  
俺が篠村とおると邪魔しにきて。  
今日なんてほっぺにキスやぞ!キス!  
俺だってしたいわ!!  
どうにかならんもんかって考えとったら、一限目終わっとったわ。  
次は体育。篠村のとこのクラスと合同や。  
体育館行ったら、篠村がバレーボールの準備しとった。そういえばあいつ体育委員やったな。  
うちのクラスの女子・・・菊池はまだきとらんみたいや。  
「篠村ー!何探しとるん?」  
動き回る篠村、動物みたいで可愛え・・・  
「あ?ブーか。あれ探しとるんよ。あの、ネット張るときにくるくるするやつ。見つからんのよ」  
「それなら、あの棚の上やないか?」  
取ってやろうとしたけど、先に篠村が手伸ばしたわ。  
届かへんのか、必死になっとる。やばい、後ろから抱きしめたい。  
「うわっっ」  
篠村が、つるっと滑った。  
反射的に抱きとめた。  
柔らけぇ・・・  
俺の腕の中に篠村がおる。夢かこれは。  
直視するのが恥ずかしゅうて横見たら、菊池がおったわ。  
なんや、すごい顔して睨んどる。うらやましいんか。  
軽く、舌出してやったわ。もっとキツイ顔しよった。  
「大丈夫か、篠村」  
「う・・・ん。ありがとブー」  
「お前ホント運動神経鈍いなぁ」  
「うっさい」  
篠村が取ろうとしてたもんを取ってやる。こういうこと、菊池にはできんよなぁ。あいつ篠村より背小さいもん。  
「ほらよ」  
「あ・・・ありがと」  
菊池のほうちらっと見ると、やっぱり険しい顔や。お前にこんなことできんやろ。篠村を支えてやることなんてできんやろ。くやしそうやな。  
「これから高いとこのもん取るとき、俺に言い。取ってやるけん」  
これで今朝のことはチャラにしたるわ。  
でも篠村は絶対に渡さんからな。俺のもんや。  
俺がずっと守ってくんじゃ。ずっとずっと、守ってくんじゃ!  
 

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