「なぁ、ダッコは中学のとき恋してたんやろぉ?恋ってどんなん?」
イモッチが聞く。
修学旅行の夜、5人は同じ部屋だった。
夜といえば恋の話。そうイモッチが言い始めたのだった。
午前1時、そろそろテンションがおかしくなり始める頃である。
「そんなんヒメに聞けやぁ。なぁ、ヒメー」
笑顔をヒメに向けるダッコ。ヒメは聞かんといて!と、抱いていた枕に顔を埋める。
「ダッコくらいしか聞く人おらん。なぁ、どんなんや?」
「あ、あたしも聞きたい!どんな感じなんや、ダッコ?」
悦ねぇも話に加わる。ちゃっかりりぃも聞いているようだ。
「どんなん言われてもなぁー・・・ふわふわと生っぽさって感じやろか」
ふわふわと生っぽさ。
悦ねぇとイモッチは抽象的なことを言われ、理解しきれていない。
「ふわふわって、なん?」
「ふわふわはなぁー、好きな人とおるとな、気持ちがふわふわしてくるんよ。お酒飲んだときの気分に似とるなぁ」
真剣に聞き入る悦ねぇとイモッチ。真剣ではないにしろ、一応聞いている状態のヒメとりぃ。
「お酒飲んだことないにようわからんわ」
そう言われ他のたとえを探すダッコ。と、横槍を刺すようにイモッチがもう一つの言葉の意味を聞いてきた。
「そんなら生っぽさってなん?」
「んー、こんなことあんたらに言うてええんやろか」
「聞きたいー!」
とても乗り気な悦ねぇ。まあえぇかと、ダッコは話し始めた。
「恋ってな、普通は男と女がするもんやろ?」
「そうや」
「男と女ってな、友達同士とは違うんよ。理性よりも本能のが強うなる時だってあるんよ」
ヒメとりぃも真剣に聞き耳をたてだした。
「キスしたり、それ以上のことしたり、本能なんよ。動物なんよ。そうなったときはなんていうか・・・生っぽいんや」
いまいち理解しきれていない様子の悦ねぇとイモッチ。
逆にヒメは心当たりがある様子で赤くなり、りぃは耳年増らしく平然としている。
「そういうのは、ふわふわしてるのと違うの?」
悦ねぇが聞く。
「違うなぁ。私も昔はふわふわだと思ってたんや。好きな人にキスされたり、抱かれたり、ふわふわしたもんなんやろかて思うてた。けどな、全然ふわふわしてへんかった。生々しいわ」
フーっとため息をつくダッコ。
「・・・ってダッコ、キス以上のことしたことあるん!?」
急に前に乗り出すヒメ。ヒメの言葉に、他の3人も食いつく。
4人分の視線に、ダッコは少したじろいだ。
「え・・・いや・・・まあ一応・・・」
思わず正直に答えてしまう。
「きゃー!!!」
「どんなん?なぁ、どんなんやった?」
興奮しだす2人。ヒメは赤くなり、りぃの頬もほんのり赤い。
間違えたかなぁと、ダッコは思った。
「だから生っぽかったってゆうてるやろ!」
「それじゃわからん!」
妙にエキサイトしてくる。これだから夜中は怖い。
「あー、もう、どう説明すればいいん・・・」
頭を下げて考え込む。ギャーギャー悦ねぇとイモッチは騒いでいる。
「あっ・・・そうや」
ダッコはすっと頭をあげると、突然隣に座っていたりぃを押し倒した。
急のことに静まり返る。
押し倒されたりぃは、口を開けている。まだ現状が理解できていないようだ。
ダッコはりぃの首筋にくちづけた。
りぃの体がびくっとなる。
「なにすんの!・・・っあ・・」
ダッコの手が、りぃの胸に覆いかぶさる。そのまま円を描くように、撫で始めた。
他の3人は微動だにせず2人を見ている。
首筋にくちづけたまま、りぃの足を開いていく。
そして下から上へと、太ももを撫でていき・・・
ぴたっと止めると、ダッコは上体を起こした。
「な?生々しいやろ?」
何事もなかったかのように話すダッコ。かえす言葉が出てこない。
「・・・っダッコ!!!なんにすんの!」
りぃがも起き上がるとダッコに向かい怒鳴りつけた。
「何って、言うより見せたほうが早いな思ったんよ」
「だからってこんなことしなくてもええんちゃう!?」
顔を真っ赤にして怒るりぃ。
「なんや、生々しかったなぁ」
「そうやなぁ。確かに生々しかったわ」
悦ねぇとイモッチが互いに話す。
「ほら、ようわかった言うてるやん」
「そういう問題じゃなくて!」
必死のりぃ。そんなりぃを見て。思わず笑いが出てきた。
「っもしかしてりぃ、感じちゃった?」
小悪魔のような笑みを浮かべながらりぃの顔を覗き込む。
りぃは口をパクパクさせた。
「っそんなわけないやろが!何言うてるの!!!」
ダッコは大声を出さぬようこらえながら笑っている。
「あ・・・」
顔を真っ赤にしてうつむいていたヒメが、驚いたような顔をした。
「どうしたヒメ?」
ヒメを指をまっすぐりぃに向けてさした。
「あっ・・・」
悦ねぇとイモッチも驚いたような顔をしている。
「どうしたんよ3人とも・・・あ」
あちゃーといった顔をするダッコ。
「なんよ、なんなんよ!」
「んとね、りぃ・・・鏡見てきてみ」
恐る恐るヒメが言う。りぃは素早く立ち上がると洗面所へと走った。
「あぁー!!!」
りぃは元の場所へと戻ってきた。先ほどより怒っている様子である。
「ダッコ、なにしてくれるん!!!」
りぃの首元には、赤いしるし。しかもけっこう大きな。そして、紫がかった。
「ごめんなぁ、りぃ。勢い余ってしもた」
「ごめんで済まん!どうすんのこれ!」
そのしるしは明日までには到底消えそうにない。
「あ、そろそろ見回り来る頃やで。寝よかぁ」
そう言うとダッコは布団の中にもぐりこんだ。
他の3人も次々ともぐりこむ。
「おやすみー」
「おやすみなぁー」
あっという間に、布団を被っていないのはりぃだけになった。
「もー、いややー」
次の日、首に絆創膏を貼った不機嫌なりぃがいましたとさ。