《起きて》  
頭の中で春菜の声がする、そんなはずはない。春菜は死んだはずだ  
《起きて、お兄ちゃん》  
まだ声がする、やがて目覚まし時計が宙を飛び、僕の頭に直撃した  
「あつつ・・・お前もうちょっとやさしい起こし方は出来ないのか?」  
《できない》  
「はぁ・・・・」  
即答する春菜にため息をつきながら僕は食堂へ向かう  
思えば六年前に交通事故で死んでそのままなら僕はこんな苦労はなかった  
惜しまれる内が花というやつだ  
なのにこいつは文字通り往生際悪く僕に取り付いている  
おかげで僕はこの非常識を詰め込んだEMP学園から出れないでいる  
まったく・・・  
「おはよー兄さん、春菜」  
「ああ・・おはよ」  
「ところで兄さん、宮野さんが探してたよ、ほら、あそこで茉衣子ちゃんと話してる」  
「あれは話してるというより一方的に捲くし立ててるように見えるんだが・・  
 で、何の用なんだ?」  
「ん〜よくわかんない、なんか若菜君!!君もそろそろ兄離れする時期なんじゃないかね!  
 とかいってたけど・・・あの人勘違いしてるよ、兄離れできないのは若菜のほうだもんね」  
若菜が心外そうに口を尖らせている。何だろう、こんなことが前にもあった  
「今日春菜機嫌いいよねえ・・・あ、そっか、今日から兄さんと二人だもんね  
 兄さん春菜と二人っきりで嬉しい?」  
別に嬉しくもないが・・・  
横に居るおさげの女の子がおっかなびっくり椀を差し出す  
これは・・・なんだろう?  
 
「春菜ー、そんな一々嫌がらせしなくても誰も兄さんを取ったりしないよぉー  
 しいて言えば真琴さんかなぁ・・・」  
その名前を出した時、春菜はキッと目を細め若菜を睨んだ  
「ひぃ」  
隣の子の体が強張る  
「あーうそうそ、冗談だから本気にしないでよぉ」  
子供のように喧嘩する二人は微笑ましいが後ろが詰まってきたので  
そろそろ退散することにする。  
そして最後に春菜は《わかなのばか》と思念を放射して再び僕の背後にまわった。  
 
ああ、そうだ、僕はこの出来事を知ってる。しかし微妙に違っている  
春菜は真琴のことを知っていただろうか?いや、知らないはずだ  
真琴と春菜が知り合うのは確か・・・・  
「寮長殿!!ここが空いてるぞ!座りたまえ!!」  
せっかく考えがまとまってきたところで宮野の馬鹿声によってかき消された  
「言われなくてもそうするさ」  
宮野はバターと醤油をご飯にかけ、かき混ぜると美味そうに食べ始めた。  
どうやらこの宮野はある程度まともな舌を持ってるらしい。  
「春菜くん!君はいつ見ても可愛いな!!君の姿で私はご飯3膳はいけるぞ!!」  
この次に宮野はあの話を切り出す  
「結論から言おう!私は君に謝罪せねばなるまい!!」  
あのときと同じく宮野はとても謝ってるとはいえない態度で言った  
「生徒会に呼ばれたんだろ?今すぐいくよ」  
「なに!?寮長殿!君にはEMP能力は無いと聞いていたが・・・  
 予知能力というのはまだ聞いたことがなかったぞ!」  
EMP能力?そうか、そうなのかもしれない。すると春菜はこの先・・・  
「宮野!ちょっと悪い!片付けといてくれ!」  
僕は急いで席を立つと、若菜の元へ駆け寄った  
「若菜、大事な話がある、後で来てくれ」そう告げて食堂を去った  
 
間違いない、僕はこの後に起こることを知っている。このままここに居ると春菜はまた死んでしまう  
妹が三度も死ぬなんてもう笑い話だ、そんなのは御免だ  
「兄さん、話ってなに?」  
「若菜、今すぐここを出るんだ。家に帰るぞ」  
若菜はきょとんとした顔をしている、  
「ここに居ると春菜が死ぬんだ、もうそんなのは御免なんだ、だから・・・」  
若菜の顔が歪んで見える、知らずに泣いていたらしい  
「ちょ、ちょっと兄さんどうしたの!?ねえ、ほんとになにがあったの」  
駄目だ、言葉が出てこない、視界が歪む、若菜の顔がぼやけてきた。  
意識が遠くなる、どうしてだ、今なら、未来を変えられるかもしれないのに・・・  
 
 
目覚めは最悪だった  
下で宮野が勝手に人のカップメンを食ってるせいもあるがそれ以上に変な夢をみたせいだ。  
いや、夢だっただろうか?それにしては意識がはっきりしていた。しすぎていた  
「ふむ、それは興味深いな、寮長殿はおそらく別の世界へ行ってきたのだろう」  
「別の世界だって?」  
「中嶋数花を覚えているか?君が見たのはこの世界のことではない  
 別世界の寮長と意識をシンクロさせ、また戻ってきたのだよ。案ずることではない  
 しかし興味深い、我々から漏れたEMP能力が作用して影響を齎したのであろうか?  
 ぜひとも私も体験してみたいものだな!」  
「馬鹿いえ、僕はもう御免だ」  
だけど、一瞬でも春菜に会えた感覚は覚えている  
これはただの夢かもしれない、あるいは真琴辺りの嫌がらせかもしれない  
だが宮野の言うとおりだとしたら・・・  
僕の春菜は死んだ、だが他の世界では生きている、そんな希望が持てた気がする  
佳由季は一つ背伸びをすると、制服に着替え部屋を後にした  
 

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