「……なにかしら、これ?」
生徒会の仕事を終え、御神楽あやめは帰路につこうとしていた。しかし彼女は、下駄箱の中に収められた一通の手紙によってその意思を止められる。
「……もしかして、コレが昭和時代に大流行したという下駄箱ラブレター?」
自分で言って恥ずかしくなる。というかこんな旧石器時代な手紙の渡し方をするなんて。そんな事を考えながらも彼女の心は少し浮ついていた。
いくら大人びているといっても、年頃の女の子である。ラブレターを貰って浮つかないはずがない。
ましてや、普段取り巻きが厳重に監視しているため、彼女にアタックしてくる男は全くと言っていいほどいなかった。まぁ、彼以外にOKを出すことはまずないのだけれど。
それでもドキドキするのは、きっと自分の本心なのだろう。
彼女は周りの様子を少し伺い、誰もいないことを確認した後、手紙を開けた。
『本日19時、放送室にて待つ。』
書かれていたのは、それだけ。異常なほど簡素な手紙。ただその紙になぜかオイル染みがついていたことが、少し引っかかったのだが、そんなことは全く気にせず彼女は時計を見る。
そして、今は18時50分だから、少し急がないとだめかしら。そんな事を考えながら、彼女は放送室へ向かった。
ちょうど7時を回ったころ、御神楽は放送室の前に立っていた。軽く深呼吸をして、平常心を装う。ゆっくりと、扉を開けた。
――ガチャッ……バタン。
中に入る。しかし、そこに待っていた人物を見て、彼女は今すぐにでも逃げたしたくなった。
あのオイル染みを見た時気付くべきだった。彼女は後悔した。浮ついていた所為であのオイル染みというヒントに気付けなかった自分に対し怒りすらわいてくる。
「いよぉぉぉぉし! よく来てくれた御神楽嬢!」
そう、そこで待っていたのは――筋肉研究部部長、合田だった。
『ミカグラとモストマスキュラー』
合田は苦虫を噛み潰したような御神楽の表情にかまうことなく続ける。
「御神楽嬢よ、あの生徒会長選出選の時のあの攻め言葉! そして筋肉への容赦ない嘲笑と暴言!
俺は気付いた、待っていた! 待ちわびていた! あなたこそ、あなたこそ我が女王だぁぁぁぁっ!!」
「なっ! 何なのですか?! 突然!」
突然の女王宣言に頭が混乱する。しかし、そんな御神楽に構うことなく、合田は服を脱ぎ出した。
「なに!? いやぁぁっ! 変態っ! 突然脱ぎ出して!」
「いいぞぉぉっ! その罵倒! 筋肉がバンバン反応するぞ! ダブルバイセップス!どうだぁぁ! この俺の筋肉はっ!」
そう言い放った彼の上腕二頭筋が激しく隆起し、広がった広背筋により見事な逆三角形が形成される。
「き……っ! 気持ち悪いわよ! 暑苦しいわよっ! この変態っ!」
「そうだそれだぁぁ! その罵倒だぁぁぁっ! アブドミナルアンドサァァァイ!」
手を頭の後ろに回し、右足を前に出す。腹筋がギチリと音を立てて6つのブロックに分かれ、今にも爆発しそうなソレを囲うかの様に斜腹筋が抑えている。
「いやぁぁぁっ! なによソレ、何で先が濡れてるのよ変態っ!!」
しかし、筋肉より御神楽の目についたのは、ビキニパンツを今にも突き破りそうなほど怒張した彼の逸物だった。その先は、ビキニパンツの色が変わるほどに濡れている。
「ちっがぁぁぁぁう! コレは筋肉ではなぁぁぁい! だが見たいなら見るがいい! コレが筋肉研究部最大といわれた、俺のマグナムだぁぁぁっ!!」
そう言った合田は、ズルリとビキニパンツを脱ぎ捨てる。
先端から先走り汁がコレでもかというほどに垂れ落ちる彼の逸物は、言うだけはあり異常な大きさだった。
「…………(パクパク)」
あまりの迫力、そしてグロテスクな逸物を見て、腰を抜かしたまま何とかあとずさる御神楽。しかし筋肉男はソレが非常に不満なようだった。
「ちっがぁぁぁぅ! そうではないだろう我が女王よおっ!」
そう言うと、合田は御神楽を軽々と持ち上げ、椅子に座らせる。
そしておもむろに、御神楽の靴を脱がせ始めた。
「何をするのよいきなり!」
必死で抵抗する御神楽だが、鍛え抜かれた筋肉の前ではその抵抗すら児戯に等しかった。
あっという間に靴を脱がせられる。すると合田は、脱がせた靴を突然かぎ始めた。
「すぅぅぅーっ……、はぁぁぁぁ、ふおぉぉぉっ!いいぞぉぉぉっ!この匂いだぁぁぁっ!筋肉が! 筋肉が歓喜の雄たけびをあげているぅぅぅっ!」
ビクンビクンと、まるで生き物のようにゆれる大胸筋、一度においを嗅ぐごとに彼の筋肉と逸物はバンプアップしていく。
「いやぁぁっ! どうして嗅ぐのよ! 止めなさい変態っ!」
とっさに御神楽は、合田の顔を踏みつけた。
「ぐっ……いいぞぉ! その調子だ! もっと踏め! 但し、こっちをだぁぁぁぁぁっ!!」
合田は自分の顔を踏みつけている御神楽の足を手に取ると、自分のそそり立つ剛直にぐいぐいと押し当てる。
「いや! やめなさい!! 汚らわしい!」
「ふおぉぉ!! 御神楽嬢のお御足がぁぁぁあ!!」
両手で御神楽の足を持ち、ぐいぐいとそれを押し当てながらも、自ら腰を動かし始める合田。
御神楽の足にはその剛直の大きさと熱さがダイレクトに伝わってくる。
(い、いや。 おっきいし……すごく熱い……ッ!!)
「やめなさい……っ!! 私はソッチの趣味はないのよ……ッッ!! この変態! で、出直してきなさい!」
言葉で必死に抵抗する御神楽、しかし合田は口の端をニヤリと歪め、そして言い放った。
「本当にそうかぁぁぁ!? では、ではさっきからどうして自ら俺のマグナムを踏みつけているんだぁぁぁぁ!?
待っていたんだろうこのシチュエーションを! 待ちわびていたんだろう!! ふぉぉぉぉっっ!!」
その言葉を聴き、御神楽は愕然とする。
確かに合田の手はすでに御神楽の足から離れている。
しかし、御神楽は足を自らの意思では動かしていない。まるで何かに操られているかのように、何か違う意思が働いているかのように動いていたのだ。
「いや! どうして!? 私は動かしてなんて……ッ!!」
「ふおぉぉぉ! いいぞぉっ!! その足の指使い!! 俺の先端を刺激するぞぉぉぉぉっっ!!
思わず! 本当に思わず広背筋がコブラのようにぃぃぃっ!!」
合田は両の手を頭の後ろに回し、見せ付けるように広背筋を大きく広げる。
そのポーズはまるで、コブラが威嚇をしているかのように美しく広がっている。
「いやぁぁぁぁぁぁ!! どうしてそうイチイチ突っ込むのも面倒になるくらいポージングするのよ変態いぃぃぃぃぃぃ!!」
必死に抵抗しようと叫ぶが、その叫びすら今の合田にはカンフル剤となって脳内に響き渡る。
「いいぞぉぉぉっ!! その筋肉に全く理解を示さぬ罵りィぃぃ!!
あまつ! 俺のマグナムを容赦なく踏みつけるそのお御足ぃィィィ!!」
(どうしてよ! どうしてカラダが言うことを聞かないの!? ……ッッ! ソックスに何かヌルヌルしたのが染込んで……ッ! いやっ! 気持ち悪い!)
しかし、御神楽がどれほど心でその行為を拒否しようとも、なぜかその足は止まろうとはしなかった。
そうしていくうちに、合田のテンションは天井無しに上がっていく。
「いいぞぉぉぉ!! あやめさまぁぁぁぁっ! この変態筋肉団子めにもっと! もっと折檻をぉぉぉぉ!!」
(あぁぁぁ、さっきより大きくなってる。 しかもビクビク言ってる……っ! 出しちゃうんだ……。 いや! 私の足、もう動かないで!
彼以外のもので汚されなくなんて……汚されたくなんてない……!!)
次第に合田の剛直が、先ほどよりも大きくなっていく。 まるで何かを発射する準備をしているかのように。
「ふぉぉぉっ! 出る!出るぞぉぉ! 待っていたんだろう! 待ちわびていたんだろうこの時を! 罵ってくれ! どうか罵ってくれあやめさまぁぁぁぁ!!」
「いや……いやぁぁぁぁっ!!」
「……ッッッっあ゛っ!」
ガバッと跳ね起きる。辺りを見渡すと、そこはどうやら自分の部屋のようだった。
「ゼェッ……ハァッ……ハァッ…………ハァーッ……」
荒れる呼吸を何とか正し、夢であったと確信した御神楽は、良かった……夢で良かった……。と何度も心の中で繰り返した。
それと同時に彼女はあるひとつの決心をする。
「……謝ろう」
そう、筋肉を馬鹿にしたことを、嘲笑した事を、筋肉研究部を笑いものにした事を。
彼について行ってもらおう。そうすればきっと大丈夫、何かあってもきっと守ってくれる……と思う。
だから明日、謝りに行こう……と。
おわり。