「どうしてこんなところにいるのっ! 部活は!?」
長い黒髪をポニーテールで束ねた美女は、掲げたホワイトボードをくるりと反転させた。
『性徒会長、放課後の情事!?』
「ミーティング中」
言ってることと書いてることが、見事なまでにちぐはぐだ。
今はジャージ姿なので、知らない一年生が見ると体育教師と間違えそうだが、
これでもれっきとした数学教師である。
サイズが合っていないのか、すらりと伸びた足の脛の辺りでズボンを捲って止めて、
しっかりと前を閉めた上着の胸元には、豊かなふくらみの形が綺麗に現れていた。
高校生の僕よりも頭一つ分ぐらい背の高い美女は、階段部の顧問にして神庭家四姉妹の次女、神庭小夏である。
「幸宏が遅いから迎えに来た」
普段なら全然感情の読めない無表情なのに、今日は何だが雰囲気が違った。
醒めたような涼し気な目付きなのに、
いつもは白い頬が、薄っすらと紅く染まっているような気がする………
僕はその意味に気づいて、慌てて逃げようとした。けれども、
小夏姉さんの方が素早く動いて、羽交い絞めにされてしまった。
「幸宏。どこへ行くの?」
「ぶ、部活だよ! 小夏姉さん離してよっ!!」
「こなっちゃん先生………」
「呼び方なんてどうでもいいじゃない!」
「こなっちゃん先生……」
小夏姉さんは耳元に息をふきかけるようにして呟く。
そんなくすぐったさと、背中で潰れる柔らかい感触にうろたえながら、僕はもがいた。
「どうして逃げるの?」
事もあろうか僕の首筋に唇を押し付けながら、小夏姉さんが囁いた。
だ、だって、今の小夏姉さんは………
いつも無表情で、正直何を考えているかわからない小夏姉さんだけど、
僕にも表情が読める時がある。
それは、小夏姉さんが頬を染めて僕にしがみつく時、つまり今のような状態の時だ。
こんな風に頬を染めて、後から胸を押し付けてくるのは、小夏姉さんは発情している時なのだ。
「は、離してっ!!」
押し付けられた胸が、背中で押しつぶされる感覚に慌てているうちに、
見た目からは想像も出来ないような強い力で押さえられ、
僕は手近な部屋に引きずり込まれていた。
ここは生徒会の倉庫みたいな部屋で、生徒会歴代の備品や、校内で発表した賞状、
誰かが持ち込んで、そのまま忘れ去られた様なガラクタで溢れている。
抵抗もむなしく、僕は恐らく前任の遊佐先輩が持ち込んだ思われる、
二人掛けのソファーの上に押し倒されていた。
「うふふふふ………」
無表情なまま頬を染めて、口元で笑う小夏姉さん。
「な、なんで!? 急にどうしたのっ?」
小夏姉さんは返事の変わりに、ソファーの背もたれを倒した。
そのまま仰向けに倒れた僕の上に、小夏姉さんは容赦なく跨ってくる。
「止めて、本当に止めてよ小夏姉さん!!」
「学校では『こなっちゃん先生』でしょ………」
「先生なら生徒を押し倒さないでよっ!」
小夏姉さんは普段から『こなっちゃん先生』というあだ名にこだわっているけど、
学校でこんな時にまでこだわるのは、何か間違ってるような気がしてならない。
小夏姉さんは僕に跨ったまま、静かにジャージの前を開いた。
開いたそばから小夏姉さんの白い肌が覗いて、胸の辺りで勢いよくはじける。
ジャージに隠されていた谷間が揺れるように開いて、豊かなふくらみが目の前でぷるんと弾けた。
………なんでジャージの下が裸なの?
廊下でもみ合っていたときから、ノーブラなのは薄々感じていたけど、
まさか、Tシャツも着てないなんて………
僕が呆気にとられていると、小夏姉さんは僕の両手を掴んで、自分の胸に押し当てた。
手のひらに押し付けられた柔らかい感触に、うろたえてしまい、
思わず握り締めるように掴んでしまう。
「……っん……」
小夏姉さんは、やけに艶のある声を漏らすと、目を細めて僕の腕を胸元で動かし始める。
僕は促されるまま、小夏姉さんの胸を揉みしだいてしまった。
埋もれてしまうほど柔らかいので、まるで僕の手の方が胸に収まってみたいだ。
指の間からこぼれ、ピンッと、上を向いて尖った乳首がやけにいやらしい。
小夏姉さんは僕に胸を揉ませながら、腰を揺らし始めた。
お互いジャージ姿なので、小夏姉さんのお尻で扱かれると、
僕の意思に反して、むずむずとした快感が股間に競りあがってくる。
ついさっき出したばかりなのに、小夏姉さんに刺激され、早くも僕は勃ちかけていた。
「こ、小夏姉さん。止めてよ、やっぱりよくないよ。こんなの」
「………」
無表情なまま、僕を睨み付ける小夏姉さん。
「……先生、止めて」
小夏姉さんは微笑むように口元をニィっと歪ませ、僕のズボンに手をかけた。
それに気づいた時には既に遅く、僕はブリーフごとズボンを剥ぎ取られていた。
「……身体は正直ね」
小夏姉さんは、紅い頬のままボソリと呟く。
恥ずかしいくらいに勃ているのを見られてしまい、僕は思わず視線を背けた。
朝から何度も出しているから、流石にこれ以上無理だと思っていたのに………
小夏姉さんは丁寧にゴムをかぶせると、僕に跨ったまま自分のズボンを脱ぎ始めた。
見てはダメだと思っているのに、若草よりも淡い色の下着に視線が引き寄せられてしまう。
清楚なデザインの下着の底が、濃い色に濡れていた。
ゆっくりと下着を下ろす時、まるで糸を引くように、引き剥がされるところまで見てしまった。
小夏姉さんは再び僕の腕を捕って胸を揉ませながら、自分で腰を浮かせて位置を合わせる。
「……くっ……」
まるで飲み込まれるように、先端が小夏姉さんの熱い秘唇に押し付けられた。
と、思った次の瞬間、小夏姉さんは一気に根元まで腰を沈めて僕を咥えこんだ。
「……んぁっ……」
荒い吐息をが小夏姉さんの唇から漏れる。
入ってしまうと僕にもわかるくらい、小夏姉さんの表情が変わった。
僕の上に跨って、密着するほど繋がった小夏姉さんは、
まるで奥を掻きまわすように腰を動かす。
小夏姉さんは、すんなり僕を挿入できるくせに抜群に締りがいいのだ。
締め付けがいいのにキツ過ぎず、まるで自分から咥え込むように淫肉が蠢いて、僕を貪ろうとする。
当分無理だと思っていたのに、小夏姉さんの中に挿入した途端、
ビクビクと硬く勃っていくのが自分でもわかった。
「動いて」
小夏姉さんの、それは命令だった。
こうなると、小夏姉さんは自分がイクまで許してくれない。
僕は小夏姉さんの柔らかいお尻に手をまわすと、懸命に突き上げた。
「……ぁっ……」
長い睫毛を伏せて、薄く開いた唇の間から、甘声がこぼれる。
小夏姉さんが発情している証拠に、僕が突くとその度にいやらしい水音が響き渡る。
学校で僕を襲うくらいだから、よっぽど発情してたんだろうけど……
挿れる前から糸を垂らすくらい濡れていたので、スムーズに動くことが出来るけど、
絡むように熱く締め付けられ、僕は早くも限界を迎えようとしていた。
このままじゃまずい。僕の方が先に終わってしまい、下手すると何時間も、
小夏姉さんに付き合わされてしまう。
「ぁんっ……?」
仕切りなおすために引き抜くと、小夏姉さんは無言腰を動かして、強引に挿入しようとした。
僕はなんとか押しとどめて、逆に小夏姉さんを押し倒す。
「あっ……」
騎上位から正常位の位置に逆転すると、僕は股間に押し付けたままの位置に腰を密着させて、
小夏姉さんに覆いかぶさった。
小夏姉さんは再挿入を試みて腰を揺らすが、ここまで密着した位置だと流石に簡単には挿らない。
僕は小夏姉さんを組敷いたまま、顔を埋めるような位置にある胸に手を伸ばした。
「……んっ……あっ……」
僕は両手で左右の胸を揉みながら、谷間に舌を這わせる。
人差し指と親指の腹で揉み潰すように乳首を扱くと、小夏姉さんは切ない吐息を漏らしながら身を捩る。
唇で首筋になぞるようにやさしく吸いながら、両手は搾り出すような動きで胸の先を集中的に責めた。
「ぁ……んっ……んっ…ぁんっ……」
上半身では逃げるように身を捩っているのに、下半身は腰を振って挿入をねだってくる。
お預けを食らった秘唇がすっかり捲れて、僕を咥えようと涎を垂らして絡み付いていた。
僕は挿入しないようにわざと腰を浮かしたり、
ぽっちと勃起しているお豆を潰すように押し付けたりしながら小夏姉さんを焦らし続けた。
「…はぁっ……ゆ…んっ! 幸宏……挿れて……」
とうとう、小夏姉さんから、懇願するような台詞がこぼれ始める。
普段の小夏姉さんからは信じられないような甘い声で囁かれ、
僕も挿入可能な位置へ腰を移動させる。
「……行くよ」
僕はいやらしくくねらせるお尻を押さえて、
「……あっ!!」
小夏姉さんの入り口に位置を合わせると、
「……ああっあ……」
ゆっくり、ゆっくり、ナメクジのような歩みで挿入した。
「あああああああ……!!!!」
ビクビクっと小夏姉さんの身体が震える。
待ちかねていた挿入の感触に、軽くイってしまったらしい。
僕は小夏姉さんの感触を味わうようにゆっくりと中程まで挿入し、
今度は同じ動きでゆっくりと戻した。
そして抜ける寸前で停止し、またゆっくり挿入する。
「ふわぁあ…あ……ああ…あっ……も、……あぅ……」
スピードや激しさは無いけど、小夏姉さんは恍惚の表情で悶えている。
普段から全力の小夏姉さんには、こののんびりとした、しかし濃厚な交わりも似合っている気がする。
この分だと、小夏姉さんが絶頂に達するのも時間の問題だ。
けれども、それは僕も同じことだった。
張り出した先の肉エラが、熱い肉壁に擦られ、
じっとりと毛先でくすぐられるような快感が休み無く押し寄せてくる。
僕は慌てて頭の中で羊を数え始めた。
架空の羊達がプルプル震える小夏姉さんの胸を飛び越えては消えていく。
羊には眠気を誘う以外の効果もあるらしい。けれど、それも72匹までが限界だった。
「……くっ!!」
僕は限界を迎える瞬間、小夏姉さんの最奥を突き立てて、ぶちまけてしまった。
それと、同時に。
「はあああああぁぁぁ…………!!!」
体が反り返るように跳ねて、小夏姉さんも絶頂に達していた。
・・・
小夏姉さんは終わった後、萎んだ僕を口で綺麗にしてくれた。
あまりに丁寧なので、もしかすると、尿道に燻る残滓まで搾り取ろうとしているのかと、
疑いたくなるくらいだった。
「学校でなんて、急にどうしたの? 小夏姉さん」
「幸宏が積極的だったから………」
「………小夏姉さん、いつから見てたの?」
無言で見上げてくる小夏姉さん。
表情は相変わらず何を考えてるのか、まるで解らないけど、
この反応から察すると、よっぽどじっくり見られていたに違いない。
………学校でするは、しばらく止めたほうがいいかな?
「幸宏はちゃんと、好きでしてるの?」
「……え?」
予想外の言葉に、思わず聞き返してしまった。
小夏姉さんは無表情のまま言葉を続ける。
「私と千秋はいい。手近な玩具で遊んでいるだけだから。
でも、全員が遊びとは限らないのよ」
「………」
・・・
「今日は3−6でミーティングだから」
それだけ言い残し、小夏姉さんはジャージの上を正して先に部屋から出て行った。
ミーティングなら制服に着替えようかとも思ったけど、
結局ジャージのまま旧部室アパートを後にした。
小夏姉さんの言葉が頭の奥に残っていたけど、部活に集中するため考えるのを止めた。
いくら無茶な九重先輩でも、ミーティングなら何もしてこないだろうと思ったからだ。
考えるのは帰ってからだ。今日はこれ以上何も起きない。……起きないはずだ。
………そのはずだった。