いずみは美冬とテニスコートまで付き添ってから、『邪魔になると悪いから』と、その場を離れた。  
しばらく校庭の辺りをふらふらしていたが、部活は無いしさあ帰ろうか……と、新校舎に向かい歩いていたときのこと。  
 
随分と上気した感じの幸宏に呼び止められたと思ったらいきなりである。  
突然押し付けるように唇を重ねられ、あまりの出来事に、いずみはしばらく何が起きたのか気づかなかった。  
幸宏の唇が開き、ねっとりと口内に侵入してきた舌が蠢いて、やっと状況が飲み込めたのである。  
 
(………キスだ………っ!?)  
 
抱きしめられてしまい、背中に回された手を振り解こうともがくいずみだったが、口内を弄ばれるうちに、  
振り上げた拳は震えながら下がってしまい、熱心に吸い続ける幸宏の肩を抱きしめてしまった。  
 
(こんなこと……美冬が………)  
 
理性は抵抗を叫んでいたが、幸宏のさらさらとした舌になぞられると背筋を竦むような快楽の波が駆け上がってくる。  
いつしかいずみも幸宏に合わせるように舌を絡ませ、幸宏から押し付けるように唇を重ねられたはずのキスは、互いを貪るような長いくちづけに変わっていた。  
やがて軽い水音を奏でながらゆっくりと唇が離れると、互いの唇を粘液で創られた細い橋が結んだが、すぐに消えてしまう。  
思わずポーっとなってしまい、名残を惜しむように今度はいずみの方から幸宏の唇を求めて近づいたが、幸宏はいずみの腕に手を当ててそれを遮った。  
求める瞳で幸宏に迫ったいずみは、拒まれた事で我に返り羞恥に頬を染める。  
まさか男を相手に、それも部活の後輩で、生徒会長で、親友の想い人である神庭幸宏を相手に、キスをねだるような真似をしてしまうなんて、自分で自分が信じられない。  
羞恥に耳まで真っ赤にしながら、いずみは幸宏から逃れようとしたが……出来なかった。  
体が石にでもなったように動いてくれない。  
 
(わ、わわわ、わたしなんてことを……テニスコートのすぐ傍で……こんなところ…美冬に見られたら………)  
 
頬が熱い。  
校庭から新校舎へ向かうテニスコートの脇、コート半分を囲むように植えられた生垣と背の高い植木のおかげで、  
校庭からもコートからも死角になった一角ではあるが、それは見かけだけのこと。  
注意深く見られると、どちらからも見つかってしまう……ここはそんな場所なのだ。  
今日はテニス部も休みの日だが、すぐ傍のテニスコートからは話し声が聞こえていた。  
美冬の声だ。そこに美冬がいることをいずみは知っている。  
今すぐここを離れないといけない………わかっているはずなのに、抱きしめられたまま、なぜかすぐ目の前の幸宏から視線をそらすことも出来なくなっていた。  
 
「いずみ先輩」  
「な、なに!?」  
 
まるで待ち構えていたかのように、返事を返してしまった。  
瞳を潤ませた幸宏が呟いた。  
 
「いずみ先輩って、キスの時も目を閉じないんですね……先輩に見つめられてると思うと、僕ドキドキしました」  
「!!!」  
 
再び幸宏の瞳が迫ってきたと思ったら、なんの用意も出来ていないのに、再び唇が重なっていた。  
言い返すことも、拒むことも出来ず、また、キスを受け入れてしまった。  
あまりの出来事に、わなわなと足の力が抜けてしまったが、幸宏が支えてくれた。  
意外にたくましい腕に抱かれているうちに、頭の中が幸宏とキスと美冬でいっぱいになってしまっている。  
呆けたように唇を重ねていると、いつの間にかコート脇の生垣の中に座らせられていた………………かと思うと、  
そのまま、ゆっくりと今度は押し倒されてしまった。  
 
(………!!!!!)  
 
生垣の中から視線を廻らせると、コートの中に美冬の背中が見える。  
 
(な、なんてことしているの!?  
 神庭君を好きなのは美冬なのに、これじゃあ、まるで美冬を裏切ったみたいじゃない!)  
 
我に返ったいずみは慌てて幸宏から離れようとしたが、仰向けのまま両手をしっかりと掴まれていて逃げ出すことも出来ない。  
それなのに、幸宏の方はいずみの動揺にも気づかずにも、ぞもぞと胸元のタイを解きはじめている。  
 
「だ、駄目よ神庭君。こんなところで何するつもりなの!?」  
「三枝先輩から教わったんです。声を出さなければ、ここが一番見つからないって………」  
 
(それは、女テニを覗くときの話でしょ!?)  
 
いずみが心の中で突っ込みを入れる間にも、幸宏の指はすばやく動いて、いつの間にかブラウスのボタンを4つも外されていた。  
おかげで、いずみのブラはすっかり覗けるようになっている。  
 
(神庭君ってこんなに積極的だったの!?)  
 
いずみが何も出来ずにいると、幸宏はブラウスの前をはだけさせ、ブラの上から撫で上げる様にいずみの乳肉を揉み始めた。  
ふにふにと感触を確かめるように動いていた手のひらが、ブラの上から先端を見つけだすと、今度はそれを摘むように動き始める。  
「……んんっ…ぁ」  
思わず鼻先から艶っぽい声が出てしまい、いずみは慌てて口を閉じた。  
それをどう受け止めたのか、幸宏はブラの中央を掴むと持ち上げるように上へずらしてしまったのだ。  
ポロリと、細身のわりに豊かな胸がブラからこぼれ落ちる。  
 
「………!?」  
いずみは思わず悲鳴をあげそうになったがなんとか堪えた。大声を出せば確実に見つかってしまうし、そうなれば美冬にも知られてしまう。  
こんなところを美冬に見られでもしたら、愛しい美冬に嫌われてしまう。きっと二度と口もきいてくれなくなる。―――というか、殺されかねない。  
それくらい、幸宏のことになると美冬は嫉妬深いのだ。  
そんないずみの焦りも知らずに、幸宏はいずみの生乳を弄んでいた。  
幸宏の手は指が食い込むほど揉んでいたかと思うと、タプタプと揺れる感触を確かめるようにすくい上げてみたり、  
そんな指先が、胸の先のツンと上を向いて尖った乳首に触れたと思ったら、今度は指の間で摘み転がすように揉みはじめる。  
「ああっ、んっ……」  
堪えきれず、いずみから甘い嬌声が零れ始める。  
いつもの一人遊びとは違う新鮮な快楽に肉体が素直に反応してしまい、自分でもはしたないくらいツンと尖っているのがわかった。  
(や……気持ちいい………)  
ふにふにと乳首を摘まれる切ない感覚が胸全体に広がり、じんわりと股間までもが熱くなりはじめていた。  
感じている証拠を弄ばれる羞恥と、胸の先に端を発する快楽におもわず身をよじる。  
視界の端に美冬の後姿を捉えながら、声が出てしまうのを必死に堪える。  
『親友の好きな人といけないことをしている』そんな背徳感も、いずみの快楽を一層引き立ているのかもしれない。  
何度も繰り返した一人遊びのせいで、胸の性感帯をおぼろげにだが自覚しているいずみだったが、  
幸宏は、まるでそのことを知っているかのように、的確に急所をせめてくる。  
いずみが快楽に気を緩ませていると、幸宏の手がスカートの奥へと伸びてきた。  
これにはさすがにいずみも素に戻り、必死に抵抗をしようとしたのだが、幸宏に乳房を吸われた途端、ふにゃふにゃと力が抜けてしまった。  
押さえようとした手の力が抜けてしまうと、内腿をなぞるように幸宏の指先が忍び寄ってきて、自分でもわかるくらいに濡れたその場所を触られてしまった。  
今日は階段部も休みの予定だったので、スコートを穿いていないのだ。  
下着の上からなのに、くちゅり……と淫らな水音が響いてしまい、それがいずみの羞恥心を一層掻き立てた。  
 
(だ、駄目。今日は絶対駄目なのに!?)  
 
耳まで真っ赤になったまま、泣きそうな顔で抵抗しようともがいたが、唇で胸を弄ばれるとますます燻されるような快楽が広がって力が入らなくなる。  
いずみが抵抗をする間にも幸宏の手はスカートの中を探っていて、始めは下着の上から秘唇を確かめるように指を上下に動かしているだけだったのに、  
次第に大胆に、指先は開いたり、閉じたりと動いて、わざと食い込ませるように下着を引っ張ったり、お豆にクニクニとイタズラをするような動きが混ざってくる。  
そんなことを、胸を吸われながらされたものだから、下のお口からは、ますますいやらしいおつゆが溢れ、  
幸宏の指が動くたびに、くちゅり、と淫唇の擦れる恥ずかしいを水音を奏でてしまう。  
恥ずかしくて死んでしまいそうな気がする。それなのに、心臓が飛び出してしまいそうなほど快楽に胸が高鳴っていた。  
「いずみ先輩のこと、もっと知りたいです」  
言いながら幸宏はショーツの中に指を滑らせると、器用に大事な部分を覆う布をずらしてしまった。  
熱く火照った部分に冷たい空気が直接触れ、いずみは思わずゾクッと身を震わせる。  
 
制服で階段レースをしていると、時折下着がずれてしまい、スコートの中で食い込んでしまうことがある。  
走ったり、階段を駆け下りたりする度に、大事なところが擦れて大変なことになっているのだが、いずみはわざとずれやすい下着でレースに臨むことが多かった。  
スカートが翻るたびに、もしもスコートまで食い込んでいたら……と想像するのだ。それがレースの高揚感に快楽のスパイスを加えてくれる。  
学校の階段には、計測のためにいくつもの隠しカメラが設置されているので、走るだけでもスカートは舞い上がり、下着姿がはっきり映ってしまう、  
ましてや、いずみのように飛び降りなどすれば、その度にスカートはちらりでは済まないほど、派手に捲れるのである。  
天馬グループのご令嬢が、ほとんど性器が丸出しに見えるくらい下着を食い込ませた格好で学校を駆け回り、  
しかも、それを見せ付けるようにスカートを翻し、階段を駆け下りるては悦に浸る……そんないずみを見て、学友達はどんな噂をするだろう?  
黒翼の天使とはよく言ったものだ、黒い翼の堕天使は階段を駆け下りながら、露出の悦楽に堕ちているのだ。  
 
それはいずみの秘密の妄想の一つだったが、実際に秘密の部分を晒されてしまうと、想像を遥かに超えた露出の羞恥に襲われ、崩れ堕ちてしまいそうなほど体が震えてしまう。  
けれども、いずみにはそれが癖になりそうな………どこか背徳的な快感に思えた。  
 
膝を擦りあわせるように、きつく足を閉じているつもりだったが、細身の体のせいで閉じた足の隙間から剥き出しにされた花弁が覗けてしまう。  
そのため、赤ん坊のようにツルツルの恥丘から肉付きの薄いお尻の谷間にまで、卑猥な女蜜が流れ出ているところがすっかりとばれてしまった。  
幸宏は恥丘から濡れた股間の谷間へ向かい指を滑らせると、遠慮なくいずみの花園へ指を押し入れた。  
すっかり充血して薔薇のように色付く陰唇は簡単に捲れてしまい、無遠慮な訪問者を迎え入れてしまう。  
いずみはこれ以上奥へは入れさせまいと、足を閉じるのだが、それが忍び込んできた指先を逃がすまいと、締め付けているような形になってしまい、  
指が動くたびに、かえってはっきりとその存在を感じてしまうのだった。  
蠢くたびに、自分で触れる時とは違う未知の快楽が押し寄せ、恥じらいと快楽が入り混じる、奇妙な悦楽がいずみのなかに溢れてくる。  
昂ぶる快楽の波に、思わず口元が緩みはじめた頃、突然、イタズラな指先が止まり、驚いたような幸宏の顔がいずみを見つめてきた。  
破裂寸前と思われるほど高鳴っていた鼓動が、ますます速度を上げていく。  
 
「いずみ先輩……」  
「………」  
 
『告白』 ……根拠もなしに、そんな予感がいずみの胸を過ぎる。  
まさか、神庭君が好きなのはわたしだったの!?  
そんな……神庭君は男の人だし……それじゃ美冬だって………  
いずみの頭は、妄想ですっかり混乱していた。それなのに幸宏はとんでもないことを言い出した。  
 
「………どうして生えてないんですか?」  
「(だ、だから今日は駄目なのに!!   
 どうしてこんなタイミングで聞くの!?)!!!」  
 
その理由は、先日ゆうこと温水プールに行った際、念入りに無駄毛を処理をしすぎて以来、  
何故だか癖になってしまったからなのだが、そんなこと言えるわけが無かった。  
幸宏のデリカシーの無い言葉に、自分でもどうして? ……と思うくらい怒りが込み上げてきたのだが、  
またしても不意打ちの一言が放たれた。  
 
「いずみ先輩、なんだか意外で可愛いです」  
 
これ以上無いくらい高鳴っていたはずの胸が、幸宏に「可愛い」と言われた途端に加速度を増した。  
(………可愛い? わたしのこと…神庭君が可愛いって……っ!?)  
 
いずみのことを『可愛い』なんて褒めるのは家族ぐらいのもので、同世代の、しかも後輩にそんなことを言われるのは初めてのことだった。  
なんだか恥ずかし気に微笑む幸宏の顔に釘付けになってしまう。  
どう考えても、恥かしい目に遭わされているのはいずみの方で、はじめてのキスを奪われ、親友の傍で押し倒され、校庭で犯されかけているのだ。  
もう、これ以上無いくらい恥ずかしい思いをさせられているのに、どうしてだか、幸宏に褒められた(?)今の一言が、一番恥ずかしかしく思えてしまう。  
とにかく顔が熱いのだが、羞恥に頬を染めているのか、褒められて赤くなっているのか、いずみ自身にもわからなくなっていた。  
言い返してやりたいのに、美冬のように、ムッ……と見つめるだけで何も言えなくなってしまう。  
「いずみ先輩……」  
「な、なに!?」  
「いいですよね? 僕、もう我慢できそうにないです。」  
一瞬、何のことだがわからずに戸惑っていると、幸宏はすばやく動いて、いずみの下着を脱がしてしまった。  
「………っ!?」  
止める間も無く、ねと……、っと濡れた下着が引き剥がされていく。  
クロッチの部分をずらされ、『隠す』という重要な役割を果たしていなかったショーツだが、いざ脱がされてしまうと、裸の不安が否応なしに襲い掛かってくる。  
幸宏はいずみの足から下着を引き抜いてしまうと、お漏らしのようにべとべとに濡れた下着をいずみにいずみに返した。  
反射的に受け取った瞬間、じわりと蜜が溢れるほど濡れてしまった薄布の感触に、ますます頬が熱くなる。  
恥ずかしさのあまり、投げ捨ててしまいたくなる衝動に駆られたが、ノーパンのままでまさか投げ捨てるわけにもいかない。  
いずみは濡れやすい方だと自覚していたつもりだったが、それでも信じられないくらいの濡れ方だった。  
いずみが戸惑ううちに、幸宏が足の間に割り込んできて、足首の辺りを掴まれたと思ったら抵抗する間も無いままV字に開かれてしまった。  
(……っ!!!)  
開脚前転のような格好のまま、お尻ごと腰を持ち上げられてしまい、ノーパンどころではないくらい、恥ずかしい事になっていた。  
その上、ほっそりとした太股の付け根に幸宏の顔が近づいてきて、熱い吐息が届くほどの距離で見られている。  
下から幸宏を見上げると、同時にいやらしく口を開いた姫裂からトロリとおつゆがこぼれる場面を目撃してしまい、思わず視線をそらす。  
生垣の中、外から見えないとはいえ、学校のそれも校庭の一角で、おっぱいも無毛の恥丘も丸見えの格好にさせられ、  
その上こんな間近で、秘密の場所を見られているというのに、  
そんなことに感じてしまっている自分が情けなくて、この場から逃げ出してしまいたかった。  
それでも、こんな格好では飛び出して逃げることも、助けを呼ぶわけにもいかない。  
羞恥で頭の中も真っ白になってしまったが、同時にこれから行われるであろう快楽への期待に、股間からはますます切ない快楽が溶け出している。  
スカートが捲りあげられ、前はおへそから、後ろはお尻の上の窪みまですっかり丸見えの状態なのに……  
(神庭君に見られてる……)  
幸宏の吐息が近づいているのがわかった。  
触れたことはあっても、あんな近くで観察したことは自分自身でさえ無い。  
恥ずかしさで体が竦んでしまうほどなのに、それと同時に、命名しがたい切なさがいずみの胸を締め付けていた。  
いずみは思わずこぼれそうになる甘い吐息を堪えながら、今更ながらに身構える。  
これ以上なにかされたら、自分がどうにかなってしまいそうな気がした。  
それは、その先にある悦楽への期待と不安なのだが、あまりに連続する羞恥の快楽に、いずみ自身、それを認められずにいるのだ。  
もしも、このまま幸宏に触られたら……、と幸宏の舌攻めに身を捩る自分を容易に想像してしまい、いずみは妄想をかき消すようにぶんぶんと頭を振った。  
(そ、そそそんなこと!! だ、だめ、神庭君! それ、絶対に駄目なんだから!!)  
けれども、幸宏の唇はさらに近づいてきて容赦なくいずみを攻め立てた。  
 
「…っひぅ!?」  
予感以上の快楽が背筋を駆け上ていった。  
幸宏の唇が触れたと思ったら、遠慮がちな舌先が動いて、形を探るように撫で上げられたのだ。  
(あ、だめ、神庭君……気持ちいいの……だめ…)  
赤ん坊のようにツルリとした恥丘が艶かしい朱に染まる。  
自分でするときも、恥ずかしくてあまり触れられない場所に、幸宏の舌が近づいてくる。  
しばらく、その近くて違う場所をうろうろする舌にもどかしさすら感じていたいずみだったが、  
いざ、唇で勃起したクリトリスをつままれると、思わず体が跳ねた。  
期待していた快楽を得られた喜びに、いずみの肉体が素直に反応してしまう。  
弱点に気づいた幸宏の唇は、小鳥のついばみのように、小刻みなキスを繰り返す。  
(だ……ぁ…だめ、だめぇ……らめっ! それぇ反則!!)  
すぐ横には、何も知らない美冬がいるのに……嵐のような快楽の前に、理性が吹き飛んでしまいそうになる。  
幸宏の手でイかされてしまう。  
はっきりと理由を言葉にすることは出来ないが、それが何故だが絶対的に美冬に対する裏切りのように思えた。  
第一、幸宏を好きなのは美冬で、いずみがこんなふうに触れて欲しいと望んでいる相手は他ならぬ美冬なのだ。  
それなのに、肉欲に茹でった肉体は、幸宏に弄られるたびに、心に反して鮮烈な快楽を感じてしまう。  
 
(だ、だめ……これじゃ……本当に美冬を裏切っちゃう……)  
 
幸宏は足を押さえていた手を離したが、快楽に濁ったいずみはそれに気づかなかった。  
それどころか、命じられたわけでもないのに自分から股を開いていた。  
幸宏の右手がいずみの股間へ伸びて、唇での奉仕に指先でのイタズラが混ざり始める。  
はしたなく濡れた入り口を割り開かれ、形を探るように動いていた指先を秘唇に差し込まれると、  
内と外、両方からの容赦ない快楽が雷のように押し寄せ、いずみは何も考えられず、だらしなく口元を緩ませてしまう。  
 
生涯ではじめて、一人遊び以外の絶頂を予感したいずみだったが、  
いよいよ上り詰めようとしていたところで、幸宏の手は止まってしまった。  
刺激を止められた不満で幸宏に顔を向けると、いずみに向けて微笑む幸宏と目が合ってしまった。  
呼吸を乱したまま、互いに見詰め合ってしまう。  
 
(……って、これじゃあ、相思相愛みたい)  
 
無意識にすねる様な目をしてしまったのかもしれない。  
……幸宏はそれをOKのサインと勘違いしていた。  
 
「いいですよね……」  
 
呟くと、幸宏はズボンを滑らせ、既に硬く張り詰めた欲棒を抜き出した。  
位置を合わせると、迷わずいずみの股間にあてがう。  
言葉の意味がわかると、いずみの表情が突然現実に引き戻され、青ざめていく。  
 
「…え!? ちょ、ちょっと待って!! わ、わたしはじめて………っ!!」  
「行きますよ……」  
 
再び、幸宏が呟いたと思ったら、一気に貫かれた。  
 
いずみはたまらず細い顎を上に向け、抱き寄せられた体を精一杯反り返らせた。  
股裂きどころの痛みではない。十分に濡れていたとはいえ、正真正銘はじめての経験なのだ。  
自分で指を挿し入れて耽ったことも無いわけではないが、乙女の入り口はそれでも幸宏を迎え入れるには狭すぎた。  
現にまだ幸宏の肉棒は入りきったわけではなく、亀頭の先が粘膜を突き破ろうと突き立てられただけなのだ。  
いずみは歯を食いしばりながら、首を横に振った。  
幸宏はいずみに覆いかぶさるようにのしかかると、狭すぎる孔に欲棒を押し付け、ぐいぐいと突き進もうとしている。  
肉棒に押し出された秘唇がめくれ、真っ赤に充血したひだがあらわになった。  
あれだけ潤滑油を溢れさせていたくせに、令嬢の処女膣はなかなか幸宏を受け入れようとはしない。  
それでも肉が裂けるのを拒絶する反応から次第に孔は口を開きはじめていた。  
ゆっくりと、亀頭の王冠部が狭孔の中へこじ入れられる。  
「………っ!!!」  
いずみはすがるものを求めて幸宏に抱きついた。無我夢中で抱き寄せ、制服に噛み付く。  
本当に体が裂けてしまったのではないかと錯覚するほどの痛みがいずみを貫いていて、こうでもしないと悲鳴が漏れてしまいそうだ。  
それなのに、幸宏は勘違いをしたようで、熱心に幸宏を抱きしめるいずみのお尻の辺りを掴むと、  
まだ入り口に届いたばかりの肉棒が抜け落ちない程度に腰を動かし、力づくでめり込ませた。  
破瓜の痛みも冷め止まぬうちに、それを広げるような幸宏の動きが重なってしまい、いずみは耐える以外の何も出来なくなっていた。  
華奢な全身を硬直させて、時々ピクッと身悶えたような動きをみせる。  
やがて、限界まで結合を遂げる頃には、いずみは声も出せず、僅かに肩を痙攣させるくらいにしか反応できないほどに消耗していた。  
乙女であった赤い証が、股間から痛々しく流れ落ちている。  
 
(こんなのが気持ちいいなんて、絶対に嘘だ……やっぱり…わたし美冬のこと……)  
 
女同士なら……美冬となら、こんな痛みも無しに快楽だけを紡ぎ合えるのに………  
自ら望んだわけでもないのに、結果として裏切ってしまった親友への想いが、いずみの心を過ぎった。  
苦痛で歪んだいずみの頬に、ぼろぼろと涙が零れ落ちていく。  
それが純潔を散らされた屈辱の涙なのか、親友を裏切った後悔の涙なのか、いずみ自身にもわからない。  
それなのに、そんないずみの苦悩にもまるで気づきもせず、幸宏は限界まで密着させた股間を更に突き立てるような動きをはじめていた。  
 
(………まだ終わらないの……?)  
 
先ほどとは一転、脅えの混じる表情を苦痛にゆがめ、いずみは尚も涙と鼻水でぼろぼろになった制服にすがり付いた。  
こうなった以上、せめて美冬には絶対に知られるわけにはいかない。  
いずみは幸宏の行為が終わるまで、ひたすらこの苦痛に耐えるつもりでいた。  
「い、いずみ先輩、動きますよ」  
こちらを見もせずに幸宏が呟いた。  
慣れていないためか、幸宏の動きはゆっくりとしていて、まるで深奥を探るようにぎこちないものだったが、  
おかげで張り出した亀頭の肉エラが、狭い処女孔をえぐっているのをはっきりと感じてしまう。  
そうして、制服の胸に顔を埋めて耐えていたはずのいずみだったが、動きを繰り返されるうちに、  
苦痛としか思えない行為の中に奇妙な感覚が混じるようになっていた。  
痛みと同時に、小波のように僅かな快楽が混じり始めているのだ。  
 
股間から発する苦痛の中に、未知の快楽が広がっていく。  
気づいてしまうと、それがまるでとろ火で燻されるよな、じりじりとした疼きに変わるまで、そう時間はかからなかった。  
痛いはずのなのに、幸宏の肉棒に狭膣を抉られると、どうしようもなく鼻にかかった甘声が漏れてしまいそうになるのだ。  
 
(ど、どうして? わたし……はじめてなのに………)  
 
自身の変化に戸惑っているのは、当のいずみ本人だった。  
知識では知っていた初めての痛み……そして、体験してしまった想像以上の苦痛。  
破瓜の痛みも、汚された怒りも消えたわけではないが、絶頂の手前まで追い上げられた肉体は、再び快楽に高ぶりはじめていた。  
健康な肉体ゆえか、頻繁な一人遊びの経験からか……肉体は上手に快楽を拾い上げ、いずみの意思に反して歓喜の声を漏らしてしまう。  
「あっあぁ……!」  
今だって、一突きごとに激痛は奔り続けていたが、同時に鋭い痛みにあわせ、背筋を貫くような官能の痺れが発せられているのだ。  
つま先をキュッと締め、襲い掛かる快楽の波に抗っているはずなのに、肝心なところが熱い蜜を垂らしながら肉棒に絡み付いてしまう。  
(え、え? え!? だめ、……だめなのに……どうしてっ!)  
幸宏は、ゆっくりと時間をかけて最奥まで突き入れ、またゆっくりと入り口近くまで、今度は逆の動きで、肉壁をえぐりながら引き抜く動きを繰り返した。  
それに反応して、とうとういずみの腰がピクッと上下に跳ねだしてしまう。  
心で感じる罪悪感とは反対に、肉体は自ら腰を捻って性感を求めはじめているのだ。  
腰を振りはじめたいずみに気づいて、幸宏は微笑みながら囁いてきた。  
「いずみ先輩って、案外えっちなんですね、それとも、外でするのが気持ちいいんですか?」  
「ち、ちが〜ぅぅ〜〜……っ よくなんか………んっ!」  
なにを言ったところで、鼻にかかった甘声では言い訳にしか聞こえない。  
拒んでいたつもりだったのに、いまや、いずみが発情していることは、誰の目にも明らかだった。  
いずみの反応に合わせるように、幸宏の動きが徐々に速度を上げていく。  
閉じようとする狭孔の肉壁が、絡みつくように幸宏を締め上げていたが、いずみから溢れ出す潤滑油が挿入の手助けをしていた。  
娼婦の動きを覚えつつある令嬢の腰は、次第に持ち上がっていき、自分を犯した男を相手に、自ら腰を密着させてしまう。  
しがみついていたため、幸宏に押し付けるような格好の胸が制服に擦られ、はしたなく上を向いて尖った乳首に痺れるような快感が広がった。  
今ではいずみの肉体は、幸宏が最奥を突付くのに合わせて、その手助けをするにの夢中になっていた。  
肉壁は熱く絞まりながら肉棒に吸い付き、絶頂を予感した狭膣では小さな痙攣が始まっていた。  
いずみは崩れ落ちそうになる体を支えようと、必死になって幸宏のにしがみつく。  
幸宏が奥を突く度に、背筋を甘い刺激が駆け上がるのもはっきりと自覚していた。  
令嬢の性感はもうどうしようもない高みにまで突き上げられてしまい、肌という肌にはうっすらと汗が滲み、艶の増した女肌をいやらしく輝かせている。  
一人遊びの経験から、自分の体がいよいよ限界点を迎えようとしているのがいずみにはわかったが、いずみは少しでもその瞬間を先延ばしにしようと幸宏の背中に爪を立てて堪えようとした。  
ところが、それがかえって、互いが密着する手助けをしてしまい、突かれる度に触れ合う肌に心地よさすら感じてしまう。  
幸宏は結合部分に手を伸ばすと、恥ずかしいくらいに尖った肉芽を摘むようにいじりはじめた。  
それが決め手となった。  
 
「……ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
突然それまで以上の刺激を受けて、積み重ねられた快楽がついに臨界を越えた。  
あまりにも連続した快感に、意識が漂白されそうになった。まぶたの裏に光が瞬き視界が霞んでいる。  
圧倒的な快感に下腹部が燃え上がり、官能の業火は全身に延焼していく。  
途端に現実感が薄れ、心地よい浮遊感に包まれたが、高く舞い上がっているのか、深く堕ちているのか、いずみにはわからなかった。  
 
同時に、いずみの絶頂は幸宏にも全くの不意打ちにだった。  
いずみの膣壁がきゅうっ…と収縮しながら痙攣しだし、急に溶けたように熱を帯びながら、幸宏に絡み付いてきたのだ。  
いずみが絶頂に達しようとするそれは予兆だったのだが、幸宏はそれに気づかない。それどころか、  
「いずみ先輩! すごい! 僕もうイきそうですッ!!」  
限界に耐えていたのは幸宏の方も同じだった。  
始めはいずみの狭孔もきついだけで、溢れる愛液のおかげでなんとか前後運動になってきた程度だった。  
ただでさえ動く度に亀頭が強く擦られ、正直いつ弾けてもおかしくない状態だったのだ。  
幸宏にとってもこれがはじめての挿入。それも、生での初体験なのだ。はじめから加減も限界もわからない本番勝負だった。  
いつ発射しても不思議は無いほどの快楽の中を欲望に導かれるままに、  
だがギリギリのところでがむしゃらにその『先』を目指して腰を動かしていたのである。  
だがそれも限界である。  
 
「……いずみ先輩ッ!! 」  
 
全身の毛穴が開き、ねっとりとした汗が噴出し、肌という肌は薄っすらと紅色に染まっていく。  
ビクンッといずみの体が反り返り、のけぞって開かれた唇からはしたなく唾液が垂れた。  
かすかな空気の揺れにさえ、官能をかきたてられるほど酷く敏感になっている。  
くわえ込んだままの肉棒からドクッと熱いものが注ぎ込まれたが、そんな感覚すらも肉体は快楽と感じていた。  
そのまま、陶然と快楽に身をゆだねようとしたいずみだったが、  
すぐ傍に聞こえる親友の声に、意識が否応なしに現実に引き戻された。  
 
反射的に視線を廻らせると、フェンスのすぐ向こう、スコートさえ覗けてしまうぐらいの場所に美冬の後姿があった。  
夢中になっていたため、美冬が近づいていたことに全く気付かなかったのだ。  
美冬がここにいたことは、はじめからわかっていたのに。  
それだけではない。生垣に遮られてはっきりとは見えないが、ここには美冬の他に、もう一人誰かがいるはずなのだ。  
美冬がフェンス脇に居る以上、その誰かはこちらの方を向いているに違いない。  
気づかれてしまえば、どんな言い訳も出来ないような格好で、二人とも見つかってしまう。  
そう思うと、息をするだけでも見つかってしまいそうな気がして、いずみは凍りつかせた。  
後悔がいずみの胸に広がる。  
はじまりはともかく、途中からは自覚しながら自ら求めてしまったのだ。  
肉悦に堕ちた自分が情けなくて美冬をまともに見ることが出来ない。  
そんないずみに追い討ちをかけるかのように美冬の声が呟いた。  
 
「ごめんなさい……好きな人がいるの」  
 
そう言いながら、見えない誰かに向かって、美冬は小さく頭を下げる。  
その姿に、親友を裏切ってしまった痛みが、再びいずみの胸に込み上げてきた。  
 
その日いずみは美冬に相談を持ちかけられていたのだ。  
『告白の返事をするのに、テニスコートまで付き合ってほしい』と。  
美冬への想いが綴られたラブレターにその場所が指定されていたのだ。  
美冬の返事ははじめから決まっていて、二人で歩く間にも『幸宏を裏切れない』とか、  
『幸宏にならいいのに……』なんて言葉を聞かされ続け、いずみはテニスコートまで来たところで、  
さすがに相手に悪いと思い、その場を離れたのだ。  
自分の振られる姿を見られたい人などいないと思ったから。  
 
幸宏が肉棒を引き抜いた。  
心地よく押し付けられていた幸宏の重さが消えてしまい、  
美冬の気持ちはわかっているのに、反射的に幸宏にしがみついた。  
美冬を裏切ってしまった。そのせいなのか、美冬が遠く消えてしまうような。  
自分を置いて消えてしまいそうな気がした。  
その上幸宏が離れてしまったら、そのまま永遠に一人きりになって、  
今度は自分自身すら消えてしまいそうな気がした。  
 
いずみは幸宏にしがみついたまま動けなくなっていた。  
美冬が行ってしまっても、いずみは幸宏にしがみついた。  
 
いつかこの手を離さなければならない。  
 
それが解っているのに、縋るように手を離すことが出来なかった。  
 
 
 
おしまい  
 

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