放課後の神庭家。
その2階にある自室のベッドに腰掛ながら美冬は悩んでいた。
(どうしてこんなことになったんだろう………)
そんな美冬の困惑を他所に、密着するようにして同じくベッドに座るいずみは、楽しそうに美冬の腰に腕を回して微笑んだ。
「美冬から言い出したことじゃない」
「……でも」
「神庭君も大きい方が好みよ。だって、部活中も時々私の胸に見とれてるもの」
「………嘘」
「本当よ、レースの後で目が合うと真っ赤になって視線を逸らすの。汗で下着が透けてるみたい」
「そんなの、誰だって見る……」
「でも、部長には見向きもしないのよ?」
「………」
「美冬だって、だから私に相談したんでしょ『全然大きくならない』って」
「……そうだけど………」
「だから…協力してあげるの……」
脇からいずみの指が伸びてブラウス越しの胸を撫で上げる。
「……ッ!?」
いずみの手のひらが薄いふくらみを持ち上げるように包み込むと、ゆっくりと円を描く様に動きはじめた。
その動きにあわせてカップがずれてしまい、もどかしく胸の先が潰されるたびに、甘い刺激がじわじわと広がり始める。
美冬は思わず真っ赤になって首をすぼめたが、いずみは逃すまいとばかり、背中ごと包み込むように抱き付いてきた。
(………外すわね)
小声で、わざと耳に吹きかけるようにしていずみが呟く。
美冬が抵抗する間もなくカップは上にずらされてしまい、吸い付くように蠢く指との間には、薄いブラウスだけしか残っていない。
それだけでも死にたくなるくらい恥ずかしいのに、いずみは中指から親指までを起用に蠢かせ、はしたなく上を向いて尖った胸の先を執拗に弄りはじめる。
摘んだり、弾いたり、潰したり、転がしたり、捻ったり……時には指の間に挟んだまま引っ張って、器用に愛撫を繰り返す。
『胸を大きくするには、直接刺激するのが一番なの』
いずみの言葉が頭の中でこだまする。
噂には聞いたことがあったが、果たして本当に効果があるのだろうか?
週に数回、かれこれ二ヶ月近くいずみのマッサージを受けているが、あまりサイズに変化がないような気もする。
服の上からという約束で始めたはずだったのに、今では当たり前のようにカップをずらされるし、
隙あらばいずみはブラウスのボタンも外そうとするのだ。
触れられる度に大きくなるというより、ただ未知の刺激に気づかされ、敏感になっているだけのような気がする。
美冬は唇をきつく結んで、こぼれそうになる声を押し殺した。
このままではいずみのペースに巻き込まれ、また、恥ずかしい声を上げてしまう。
今日は幸宏も家に帰ってきていているのだ。
もしも、幸宏に聞かれてしまったら………想像するだけで耳まで熱くなるほど羞恥が込み上げてくる。
「や、やめて……これ以上は………」
美冬の未成熟な胸が、執拗な愛撫に蕩けていく。痛いぐらいに尖った乳首が焼けているかのように熱い。
いやらしい反応を示す身体が恥ずかしくてたまらないが、声は出せない。
薄壁一枚を隔てたとなりの部屋には幸宏がいるのだ。幸宏に気づかれたらおしまいだ。
(どうして? 今の美冬……とっても可愛いわよ。
それに…いずれは神庭君にも聞かせてあげるんでしょ?)
「ゆ、幸宏に………」
思わず幸宏の指先を想像してしまい、美冬の頬はますます羞恥に染まる。
いずみのマッサージでもこんなに感じてしまっているのに、同じ事を幸宏にされたらどうなってしまうんだろう………。
そんなことされたら、幸せすぎて、ショック死してしまうかもしれない。
「ん……あぁ…幸宏に………」
美冬は緩みかけた口元を慌てて両手で押さえた。そうでもしないと、甘声があふれそうになる。
(……気持ちいいでしょ? 大きくなる秘訣は、感じることなの……)
いずみの手が薄い胸肌を寄せ集め、先端を搾るような動きに変わる。
想像してしまったせいか、せつなさが下半身に伝播していた。この分ではまた下着をシミにしてしまう。
そんな心配をしながらも、美冬は無意識のうちに、もじもじと太股同士を擦り合わせるようにして膝を動かしていた。
美冬自身は気づいていなかったが、その動きによって姫唇の合わせ目がわずかにずれ、その摩擦でかすかな快楽が発生するのだ。
わずかばかりの快楽は逆に美冬の中で燻り続け、太股を擦り合わせる動きは知らず知らずのうちに大きくなっていき、まるで誘うような動きで腰をくねらせてしまう。
いずみはそんな美冬の様子を楽しげに微笑みながら、頃合とばかりに美冬を押し倒した。
美冬の肩を押さえつけるようにいずみは上に覆いかぶさり、やはり耳元にささやいく。
(それじゃあ、いつもの姿勢になって……)
「………っっ」
美冬はさんざん躊躇って、ベットに仰向けのまま、気をつけの姿勢のように両手を身体の横に合わせた。
ただでさえ、恥ずかしいのに『姿勢が大事だから』と言って、いずみは胸を隠すのを許してくれない。
おかげで、服の上からでも胸の先がブラウスを突き上げるように尖っていのがはっきりわかってしまい、無防備に裸で晒されているような気分になってしまう。
あまりの恥ずかしさで美冬はいずみから顔を逸らそうとするのだが、いずみはわざわざそんな顔を覗きこんでくるのだ。
それも『美冬の感じてる顔、とっても可愛いわ』とか『神庭君のつもりでわたしを見て』なんて囁くから、
美冬は子供がいやいやをするように顔を横に振ることしか出来ない。
この姿勢にされた後は、いずみがまるでキスするように顔を近づけたまま胸を弄ぶ流れになるのだが、今日は様子が違った。
いずみはポケットを探ると、ハンドクリームのような入れ物を取り出し、
「今日はマッサージ用のクリームを持ってきたの」
と、微笑むと美冬のブラウスのボタンを外しにかかる。
「ま、待って!!」
美冬は小さな胸を抱くように両手を前で抑えた。
「脱がすのは反則……」
涙目になりながらムッと真っ赤な頬を膨らませる。
そんな美冬を見ながら、いずみはすこし困ったような笑顔で呟いた。
「でも、このクリームは色素の沈殿を抑えるクリームなのよ」
「………?」
意味がわからずに首をかしげた美冬の耳元に、内緒話のような小声でいずみが囁いた。
(乳首の色が濃くならないように抑えるの)
「……なっなんで!?」
思わずベットから跳ね起きてしまった。
「だって、美冬ったら、こんなに尖ってるんだもの。これじゃあ自然に色素が濃くなっちゃうわ」
「それは……」困る。美冬だって幸宏には綺麗だと思われたい。
「それとも、遊んでるみたいな黒い乳首を神庭君に見られたいの?」
美冬は反射的にふるふると顔を横に振った。
想像しただけで泣きそうになる。そんなことで幸宏をがっかりさせたくなんてない。
「どうするの? 流石にこれは服の上からじゃ無理だけど……」
「………」
散々迷ったが、美冬は覚悟を決めると、自らブラウスのボタンに手をかけた。全てを外したところで、また少しだけ迷ったが、思い切ってブラウスの前をはだける。
すると、桃を三分の一ほど縦切りにしたくらいの、薄いふくらみが露になり、胸肌が少し冷たい空気に触れる感触に今更ながら羞恥に頬が熱くなってしまう。
それでもブラウスを脱いで、上にずらしただけのブラを外すと、今度こそ隠すものが何も無い乙女の柔肌が晒され、
薄っすらと熱を帯びた肌の頂点に濃い桃色の乳首がピンッと上を向いて尖っているところまで丸見えになってしまった。
美冬の乳首は輪郭を入れると五百円玉ほどの大きさで、美冬にはそれが他の女子と比べても大きすぎるような気がしてならない。
普通なのかも知れないが、胸が小さいせいでそこばかりが目立ってしまうのだ。
それは見冬のコンプレックスの一つだっから、自分の部屋で女の子同士なのに、恥ずかしい秘密を見られていると思うと死ぬほど恥ずかしかった。
たとえいずみでも……いや、あれだけ立派なものを持ついずみが相手だからこそ、本当は絶対に見られたくなかったのに、いずみは食い入るように見つめてくる。
「………やっぱり、恥ずかしい」
それがまるで異性から向けられる、いやらしい視線のような気がして、美冬は両手で胸を隠したが、手首をつかまれ、無理やりバンザイをさせられたような格好で押し倒されてしまった。
両手の自由を奪われ、隠すことも出来ないまま、恥ずかしい場所をまじまじと見られてしまう。
乱暴に扱われ、これからなにをされるのかと、すこし脅え気味に俯いていた美冬の耳に意外な言葉が聞こえてきた。
「綺麗………」
と、いずみは溜息をつくように呟いたのだ。
「……えっ?」
その言葉が信じられず、見冬は思わずいずみを見上げていた。
「うらやましい……色も可愛いピンク色だし、これならクリームなんていらなかったかもね」
「………嘘」
「本当よ、こんな綺麗な色の乳首なんて、はじめて見た」
「……ほ、ほんと?」
「でも、コレはちょっと感じすぎかも……」
いずみはイタズラっぽく微笑むと、容赦なく乳首を摘み上げる。
「……んぁっ…」
触れられると、自分でも信じられないくらい、いやらしい声がこぼれる。
直接触れられるのはこれが初めてだったが、ブラウス越しとは比べ物にならないくらい、鮮烈な快感が背筋を貫いていく。
「……だ…だめ!」
既に感じてしまっているのに、これ以上いずみに触れられたら、きっといやらしい声を出してしまう。
「……そうね、今は美冬の綺麗な乳首にコレを塗るのが目的だものね」
いずみは愉しそうに微笑むと、小さな容器の蓋を開けた。
それは意外にも真っ赤な色のクリームで、まるで口紅のように艶かしい光沢で輝いて見えた。
「………はじめるわね」
美冬の返事も待たず、いずみはそれを人差し指で撫でるように掬い取ると、ゆっくりと美冬の乳首に塗り始めた。
「……ッ!!!」
覚悟はしていたものの想像を遥かに超える快感に思わず身を捩る。
いずみは指先で優しく叩くようにクリームを塗しているようで、それがまるで小鳥のついばみのようなタッチで触れるたびに、
美冬の乳首を楽器にして、くちゅっ…ねちょっ……と淫らな音色を奏でた。
その音が、いやらしいお汁に濡れた股間を弄っている音のように聞こえてしまい、
そのうち、本当に一人遊びの音のように思えてきた。
その間にも、赤い糸を引いて艶やかな粘液が乳首を彩り始める。
美冬はともすれば、だらしなく開いてしまいそうな口を閉じるため、きつく唇を噛み、
ベットの端で折り曲げた膝の先でつま先をキュッと閉じて抗おうとしているのだが、
いずみから見れば、美冬が発情していることは明らかだった。
色素の沈殿を抑えるという性質からか、どうしても、いずみの指先は乳首に集中していて、
胸の先から発せられる快感は、乙女では抗いきれないほどの高みに美冬を追い詰めていた。
せわしなく蠢くいずみの指先が容赦なく美冬を責めたて、その度に背筋を甘い刺激が駆け上がる。
美冬には数えるほどしか一人遊びの経験が無かったが、それでも、
自分の体がいよいよ限界点を迎えようとしているのがわかってしまった。
これ以上刺激されると、自分が自分でなくなりそうなそんな恐怖に駆られながら、
固く目を閉じて、少しでもその瞬間を先延ばしにしようと堪えていたのだが、
「……ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!……………………?」
いよいよ上り詰めようというところで、いずみの動きが止まってしまう。
すでに肌という肌にはうっすらと汗が滲み、艶の増した美冬の桃肌をいやらしく輝かせている。
その頂点には真っ赤に塗りたくられた乳首が、期待で待ちきれないとでもいうように、はちきれんばかりに剃り立っていた。
あと一突。ほんのわずかな刺激でたどり着けるはずなのに、寸前で止められてしまった。
「………んっ……?」
潤んだままの瞳でいずみを見上げた時にどうしようもなく鼻にかかった甘声が漏れてしまった。
求める瞳を見つめ返しながら、いずみは小悪魔的な笑みを浮かべる。
「……このままイきたい?」
その言葉に美冬は真っ赤になって黙ってしまった。
欲求不満の肉体は不満に吐息を乱し、下着をくちゅくちゅに濡らしてしまうほど求めている。
それがわかっているくせに、いずみは聞いてみた。美冬の口からその言葉が聞きたかったから。
「美冬が「イかせて」ってお願いするなら、最後までしてあげる」
「……いや」
「……どうして?」
「だって…幸宏に……」聞こえちゃうから……と、いうわけでは無いことが、なんとなくわかった。
「幸宏に悪いし……裏切るみたいだから……」
「………………」
いずみはゆっくりと美冬に背を向けると、ティッシュで指先をぬぐいながら、
「……わかった」と呟いた。
「………」
美冬は羞恥に頬を染めたまま、慌てていずみから顔を背ける。
拒んでいたはずなのに、一瞬でも、ねだるような視線を投げてしまった自分が恥ずかしい。
火照った身体はいっそ、自分で濡れた姫唇に指を差し込んで、めちゃくちゃにしてしまいほど昂ぶっているのだが、
まさかいずみに求めるなんてこと、出来るはずが無い。
いずみは溜息混じりに、
「いっそ、続きは神庭君におねがいしてみたら?」
「……ッ!!!!!!」
などと、危険なことを呟いた。
「まったく、こんなに応援してるのに……ほんとに美冬は臆病なんだから」
「……これのどこが応援なの?」
「甘えやすくしてあげてるじゃない」
「………バカ……」
「そうだ! もし神庭君にふられたら、わたしが美冬をもらってあげる」
「いい」
「そうしたら毎日マッサージね」
「………」
「美冬のおっぱい、どこまで大きくなっちゃうかしら……」
「……ッ!!!」
思わず枕を掴んで振り上げた美冬の手がいずみに捕まってしまった。
ふたたびベッドに押し倒されてしまう。
「そうそう、忘れてた」
いずみは美冬を元の姿勢に寝かしながら続けた。
「しばらくこのまま動いちゃ駄目よ。薬が効くまで横になっててね」
「しばらく……?」
「そうね……最低30分は触っちゃ駄目!」
そう言うと、いずみは美冬の両手をふとももに挟み込んで腰の上に跨ってしまう。
「……っ!?」
重いわけでもないのに、がっちりと挟まれてしまい、もがいてみても腕を外すことが出来ない。
最悪だ。もし幸宏が突然ドアを開けても、腕を押さえられていては隠すことも出来ないし、
しかもこんなイく寸前のえっちな顔を見られたら………
慌てる美冬を見下ろしながら、いずみは愉しくてたまらないとでもいうように、いつものように微笑む。
まるでとわきわきとでも聞こえてきそうな動きで、指先を妖しく蠢かせながら。
「……その間、マッサージの続きをしてあげる……」
それからたっぷり一時間ほど。
いずみはクリームに触れないギリギリのタッチでマッサージを繰り返し、美冬を絶頂寸前のままにして嬉々として帰ってしまった。
帰り際「神庭君がだめなら、いつでもわたしが可愛がってあげる」なんて言うものだから、
ただでさえ恥ずかしくてたまらない幸宏の視線が、その日は一段と恥ずかしくて、今日も美冬は何も言えずに、プイッと、視線をそらすのだった。
おしまい。