「これ、どうかな?」  
 
美冬姉さんと、僕だけの。二人だけの空間で、彼女は今年着るはずだった水着姿でそう問いかける。  
 
「うん。とても似合うよ。美冬姉さん。」  
 
僕がそうこたえると、彼女は少しだけ、うれしそうな顔をした。  
 
「ありがとう。でも、どうしてさっきから私の胸ばかりみているの? ……変態。」  
 
「いや、どうしてその水着、胸にフリルが付いてるのかなって。 いや、かわいいよ! とっても!」  
「…………。」  
 
あれ、どうしていきなり押し黙るんですか美冬姉さん? なんか俯いてプルプルしてるし。  
……あ。  
そういえば、と思い出す。美冬姉さん。ずいぶん胸にコンプレックスを感じているって、いずみ先輩が言ってたっけ……。  
 
「い……いや、僕は、美冬姉さんぐらいが好きだよ! 小さくても形がすごくいいし!」  
 
必死でフォローしようと思ったが、キッ!とにらまれてしまった。  
その後、少しだけ考えるそぶりを見せて、ゆっくりと美冬は口を開く。  
 
「違うわ……だたちょっと、姉さん達よりスレンダーなだけ……。」  
 
「いや、美冬姉さん。スレンダーって使いどころ、ちょっとまちがって……」  
 
「間違ってない。スレンダーなだけ……だもん。」  
 
使いどころについてのつっこみを入れたとたん、美冬は頬をプクリと膨らませながら  
そっぽを向いてしまった。  
その行為が、とてもかわいらしくて、とても愛しくて……幸宏は美冬の肩を抱くと、耳元でささやいた。  
 
「美冬姉さん。大丈夫だよ。 これから毎日、僕が大きくなるように、協力するから。」  
 
ニコリと微笑みかける。  
美冬はとたんに顔を真っ赤にしながら、俯いてしまった。  
そんな美冬の頬に軽くキスをし、「僕じゃ、だめかな?」と問いかける幸宏。  
問いかけに応えるように、美冬は首をフルフルと横に振りながら、彼の服の裾をつかむ。  
そして、俯いたまま彼女は「よろしく……」とだけ呟いた。  
 
 

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