もうすぐ、彼の誕生日だった。  
 ついこの間新しい服を買ってしまった私は、お金なんてない。  
 買わなければよかった。……そう思っていても、お札は戻ってこないのだけど。  
 
 そうだ、バイトでもすればいいじゃないか。年齢詐称もしていない立派な高校生なのだから。  
 働こう。  
 
 
 
学校の階段 麗華  
 
 
 
 天栗浜高校の近くには、ロウリスク・ロウリターンな仕事しかなかった。今の私に必要なのは高い給料なのだ。例え仕事がきつくてもそれは優先事項から外れている。  
 そうだ、バイトしよう! なんていうノリで働けるものではないらしい。探す時点で私は迷っているのだから。  
 一つ溜息を落とすと、  
 
「神庭ちゃん、何落ち込んでんのーっ」  
 
 求人誌の向こうの背景となっていた黒板が、女子の制服の腰部分に遮られる。  
 クラスメイトの女子。内竹という名前だったと思う。大した付き合いでもなかったので、彼女に関する記憶の断層は薄い。最近は内竹のグループで何かあって、それぞれが散り散りになったなんていう話を瀬野がしていた。それで、私に擦り寄ってくるというわけか。  
 
 何も言わずに立てていた求人誌を机に貼り付ける。丁度内竹にも見える状態になって、内竹が「バイト?」と、ケーキ屋の職員募集広告から私へと目を向けた。こくりと頷く。  
 
「見つからないのかー……早目にお金欲しい感じだったらちょっとツテがあるけっど」  
 
 内竹の言葉に興味を持ち、彼女の黒い瞳に焦点を合わせる。特に付き合いが長いわけでもないのに、内竹はその意味をうまく汲み取ってくれた。話しやすくて、こちらとしては助かる。  
 内竹の大きめの口が開きかけたが、目も大きく……というか、丸くなる。何かを思い出したような仕草。  
 
「なに?」  
 
 私は小夏姉さんじゃないから、一応言葉は喋る。姉さんもたまには喋るけど。  
 すると、内竹の黄色かった笑顔が苦くなった。百面相なところが希春姉さんを思い出させて、昨日の幸宏と希春姉さんのやり取りまで脳裏から剥がす。  
 
 幸宏が階段部で先輩を初めて抜いた、と昨晩言っていた。おかげで夕御飯が豪勢で、危うく飲み会に入れられるところだった。  
 相手も調子が悪かったみたいだし、と幸宏が慌てて弁解してたけど、勝ったことは勝ったんでしょ。なんで誇らないのか、と思った。  
 あくまで思っただけ。幸宏に干渉するのは怖くてできない。もう少し、近くなりたいけれど。自分が臆病すぎて逆に笑える。  
 そんな風に、微笑ましさとは違う点で少し笑った。  
 内竹に妙な目で見られる。  
 
「神庭ちゃん何笑ってんのさ……思い出し笑い? まあそんなことはよくてさ。ちょっと言いにくいんだよね」  
 
 内竹が細長い人差し指をくいくいと曲げる。耳を貸せ、ということだろうか。素直に耳を近づけると、内竹の熱い息がくすぐったかった。  
 
「かん……てさ、……?」  
 
 荒い息と周りの雑音によって、聞き取れなかった。前半は神庭ちゃんってさ、と言いたかったのだろうか。だが、後半の言葉が全くわからない。  
 耳から顔を離した内竹に聞こえなかったことを言葉で伝える。  
 
「……聞こえなかったんだけど、もう一回」  
 
 右手で1を作ると、内竹は快くそれに応じてもう一度私の耳に唇を近づけて、呟いた。  
 
「神庭ちゃんってさ、処女……かな?」  
 
 あー、風俗店のお誘いですか。  
 処女だよ。誰にも入れられたことないの。  
 初めては好きな人とがいい、なんて淡い幻想抱いてるの。  
 私は、横に振った。いつもの私のように、大きなそぶりで横に振った。  
 
 
「神庭美冬です」  
   
 お店で一番偉い男性に頭を下げると、適当な愛想笑いのお返しを頂戴した。  
 所謂『えすえむくらぶ』。内竹が紹介したのはそんなところだった。服は一番上等な服を着てきたが、それについてのコメントは特になし。すぐに着替えさせられ、経験があるかどうか問われる。  
 
「あります、大丈夫です」  
 
 こちらも虚偽の笑顔を向けて答えた。男性にそんなことを訊かれたのは初めてだ。恥。  
 なのに、彼は何度も何度も本当か問いかけてくる。  
 
「嘘じゃないね? 初めては痛いよ?」  
 
 顔に貼り付けたフェイクが破れてしまった。  
 今までの人生で一番痛かったらどうしますか神庭美冬。  
 たった一回のことで色んなものを失って、その上すごく痛かったらどうしますか神庭美冬。  
 臆病者め臆病者め臆病者め臆病者め臆病者め臆病者め嘘をつけ嘘をつけ嘘を  
 
「――ごめんなさい、処女です」  
 
 臆病者は嘘をついた。  
 男は呆れた顔で私をロッカールームへ入らせる。解雇されるのだろうか。  
 あーあ。新しい仕事見つけないとな。私が臆病なせいで。幸宏に。プレゼントが、買えない。  
 扉が閉まる音ではっとしたけど、部屋には私しかいなかった。店長は、ロッカーの外に。  
 
 ノブに手をかけたけど、その瞬間に施錠の音がした。がちゃり、という音が非情に耳の中で踊った。  
 なんで。解雇してもらえた方がよかった。なんで。なんで、  
 
「…………」  
 
 そして、ロッカールームの汗臭さに眉を顰める。女性ロッカールームって、こんなに臭うもの? 運動部の部室ですらこんなに臭くない。……っていうか。汗の臭い、じゃない気がする。  
 ロッカーに触れてみると、冷たさが気持ちよかった。触れる際に近づいて、書いてある名前を読む。  
 ……どう見ても、女性の名前じゃあなかった。男性用のロッカーだったらしい。  
 では、何故こんなところにいれたのだろう?  
 
「あの、店長? 鍵かかってますよね」  
 
「かけたよ」  
 
 私は、冷静に。冷静を装って。  
 店長は、淡々と。さも当たり前のことのように。  
 
「出してもらえませんか」  
 
 返事はわかっている。私としては、どうしたら出れますかという意味合いだった。  
 男性用ロッカーは少ない。そりゃあ女性が働くところだもの、当たり前だ。清掃とレジ打ちくらいしか雇わないのだろう。だけど、その狭い空間に通じるドアは2つあった。私が通ったところと、もう一つ。どこにつながってるかはわからないけど。あそこから出られる?  
 駆け寄ってノブを回したけど、開かない。……やっぱり、簡単に出入りできるようにはなっていないらしい。  
 2つめの扉に寄ったから、店長の声が遠かった。けど、彼の意地の悪い声を聞き取ることができる自分の耳。  
 
「うちはさ、攻めることができる娘と攻められるのが得意な娘が必要なんだよ。そういうシステムなんだけどさ。それを見極める試験みたいなものもあってさ、それを今美冬ちゃんは実行中なわけなんだけど」  
 
「じゃあ結構です! ここでは働けませんっ」  
 
 ついに声を荒げた。  
 なんだろう、この人は。狂っている。  
 私を出して。怖い。怖い。怖い。  
 
「でも申し込んじゃったでしょ? その時点でこうなることは決まってたんだから」  
 
 店長の口元が歪むのが簡単に想像できる。  
 怖いよ。怖いよ。  
 
「そのうち男の子が誰か来ると思うよ。そいつを犯しちゃうか、犯されるような格好で待っててね? 男の子には言ってあるから対応してくれるよ」  
 
 犯しちゃう? 犯される?  
 ふざけるな。  
 助けてよ、お姉ちゃん。  
 助けてよ、いずみ。  
 助けてよ、瀬野さん。  
 助けてよ、三枝くん。  
 助けてよ、  
 
「ゆき……ひろっ」  
 
 声が嗚咽に変わるのを必死で抑える。  
 聞こえてしまったのか? それならそれでいいや。こんな男がどうなろうと、私は知ったことじゃない。  
 
「あれ、ユキヒロさんって彼氏くん? 美冬ちゃん可愛いもんねぇ。彼氏の1人や2人」  
 
「違います!」  
 
 思わず大声で反論してしまう。その声は、狭くて臭いロッカールームに響いた。  
 扉を挟んでいても、彼の耳を痛めただろう。私だって痛い。  
 
「まあいいや、こっちはこっちで色々大変だから失礼するよ。頑張ってね」  
 
 彼の声が冷たくなった、なんてことはない。表情を作ってばかりいそうな人だった。  
 いつだって優しい声。優しい顔。そんな風に、冷たい態度をとってくれる人だろう。幸宏とは大違いだ。  
 
 さて……と。  
 犯しちゃう、なんていっても私は初めてだもん。犯し方などわかるわけがない。  
 犯されるって、それも怖いけれど。  
 無理なコトと怖いコト、選ぶならば怖いコト。  
 なに? 犯されるような格好って。男が欲情すればいいんですか。もういやだよ。もういやだよ。  
 
 美冬、落ち着いてクラスの男子が見ていた雑誌の表紙を思い出せ。  
 青少年向けの。年齢制限のかかった。  
 ……本当に、不潔だわ。此処が。店長が。男子が。私が。  
 
 
 思い出すことはできなかったけど、さすが男のロッカールーム。丁度それ系統の本があったから、格好を真似する。  
 半そでの白い上着を脱ぎ散らかす。乱れている方が色気がある、らしい。黒いタンクトップは胸の上まで引きずりあげた。桃色の小さな乳首が空気に触れて、すごく恥ずかしかった。同学年と比べても圧倒的に小さな胸があらわになって、顔が朱色に染まっていくのを感じた。  
 雑誌に映った女性は、スカートを履いたまま、下着を咥えて足をMの字に開いていた。……これを、知らない人に見せるの?  
 でも、犯されるような格好がわからないんだもの。私は、股のところが少し黄色くなった白いショーツの端を口に咥えて、足を開いて待っていた。  
 
 
 しばらくしても、誰も来ない。足が疲れたから休めた。足をふとももの外側に置いていると、性器が冷たい床に当たって変な気分になる。  
 誰もいないのを確認してから自分の性器を見つめてみる。それを覆う肉を開いてみると、穴。穴の上に小さな突起。  
 女性の性器にあるというクリトリス、というものがどこにあるのか私は知らなかった。突起を囲う皮を少しあげると、全身がびくりと動いた。一瞬の途轍もない快楽は、驚きによってかき消される。  
 何、これ? ……不潔。  
 もう一度すると、快楽を感じ取ることができた。  
 
「ん……ふっ」  
 
 何度かやって、ここが後々どうなるかを思い出す。  
 ここに入れるんでしょ? 見てられない……よ。  
 私は、ツインテールを縛るリボンを一つ外した。ゴムでも結んであるから、崩れないけれど。そしてリボンを目にあてがって、後ろで縛る。  
 何も見えない。彼も見えない。幸宏も見えない。大丈夫、よ。  
 足を再び開いた。  
 
 いつの間にか、寝てしまっていたらしい。乳首が摘まれたのに気がついて目が覚めた。目が覚めても、視界は暗闇だけど。  
 
「起きた?」  
 
 知らない低い声。  
 こくりと頷いた。  
 
「えーと、神庭美冬、さんかな」  
 
 再び頷く。その人の指は、私の胸を愛撫しはじめた。  
 反応がないことにつまらなくなったのか、いきなり性器に触れられる。  
 ぴちゃぴちゃ、聞こえる。股間がむず痒かった。  
 
「……んっ」  
 
 そこに触れられるだけで、さっきみたいな変な感情。気持ちいいけど、怖いし、痛いし、気持ちいい。  
 彼は何も言わない。私の入り口は、彼の指を迎えてしまった。  
 そして、私は喘いだ。  
 そして、私は感じた。  
 そして、私は処女という肩書きの一つを捨てた。  
 つまり、私は幸宏以外の人の指で喘いだ。  
 つまり、私は幸宏以外の人の指で感じた。  
 つまり、私は処女という肩書きの一つを捨てた。  
 幸宏以外の人の、指で。  
 あかいものがながれてた。  
 
 
 
 
 
 
 男の人が、電話していた。相手のことを店長と呼んでいた。終わったと言っていた。  
 私は、ロッカールームの壁に寄りかかったまま性器から液状の何かを排出し続ける。無意識に、不本意に。  
 暗闇を奪われたくない。あんな人間の顔、見るものか。けれどこれで採用されてしまえば、私は彼の声を聞いて誰に入れられたのかわかってしまう。  
 脳の記憶部分を削ったら、この人の声を消せるのかしら? それとも、別の人の声に埋めてしまえばいいのかしら?  
 でもここにはあの男しかいない。元凶である内竹さえも。彼女が、とても憎らしくなった。殺意に変わりそうなのを、必死で抑える。殺人犯を姉妹にもったら、姉さん達が困ってしまう。幸宏が困ってしまう。  
 お姉ちゃん、お腹空いた。  
 いずみ、今日はうちでいいよ。  
 瀬野さん、お疲れ様。  
 三枝くん、幸宏今日休みだから。  
 
 沢山の人に話しかけてみるけど、誰も返事をくれない。  
 瀬野さんや三枝くんに至っては、本来なら言わないようなことにまでなってしまう。それまでに他の人に好意を表せない自分が悔しかった。  
   
 幸宏  
 
 そう呼んだら、彼が来てくれる気がした。  
 そしたら、そしたら。  
 
 
 
 誰かが私の肩に触れた。  
 
「ゆき」  
 
「ほら、鍵開けたよ。目隠しとって店長のところ行ってきたほうがいいぜ」  
 
 もう、あなたの声なんて聞きたくないよ?  
 
 
「あー、お疲れお疲れ。大分反省もできたかな?」  
 
 あなたも大嫌いよ。  
 反省なんてするわけがない。だけど、頭を下げて謝罪を述べた。  
 
「今のところ受けになりそうだけどー……ロリで攻めっていうのも需要あるかもね。結構きついかもしれないけどそっちの方が給料あるよ。うちに来るのは大体マゾヒスト親父……」  
 
 幸宏が脳内にいた。  
 もうすぐ彼の誕生日だった。  
 
「……後者を希望したい、です」  
 
 店長は若干驚いたけど、普通に承諾してくれた。  
 私は、その日から『足コキがうまい』らしい『麗華』になった。そもそも、入れられたこともないのに捏造された煽り文を忠実に守って、麗華は働いていた。  
 
 
「開けるな豚めが。今お前の主人は着替えている最中だ」  
 
『麗華』は着替えているようにしか見えないポーズで止まっていた。『豚』が入ってくるのを待っている。  
 
「しつ、失礼します女王様」  
 
 気持ち悪いな 脂をつけていないで己の醜さを改善したらどうだ? お前のような奴は犬畜生と呼ぶのも気がひけるな、豚。  
 とりあえず彼に対する個人用の罵りは3つ思いついた。適当にアレンジしながら脂だらけの尻でも踏めばいいだろう。あとは誰にでもつかえる台詞を連発してやればいい。この豚は初めてだったっけ?  
 
「……何をしている?」  
 
 私はもう私じゃなかった。饒舌にならないと儲からないし、それは仕方ないかな。  
 豚さんはご丁寧にも土下座してくれた。私は、上半身を裸に、下は黒い下着を一枚という格好で豚に近寄って頭を踏みつける。  
 
「ごめんなさい女王様! この豚めが欲情して入ってしまったのですっ! お仕置きくださいませ女王様!」  
 
 言葉の終始に荒い息が入っていた。本当に気持ち悪い。  
 足を退けると、豚の頭が上がる。メガネが曇っていて、本当に豚のようだった。  
 豚は『麗華』の格好を見てから、自分の下半身を押さえた。  
 
「どうした、豚? 私の格好にも『欲情し』たのか?」  
 
 挑発するように口元を歪めるのにも慣れた。  
 こんなのは私じゃないとわかっている。こんなのは麗華であって、私ではないもん。でも麗華は、私にお金をくれる。だから、私はそれで幸宏に誕生日プレゼントを買う。  
 それだけのことじゃないの。  
 
「豚、そこに横になれ」  
 
 足で床を指す。私はベッドに座って、涼しげな顔で見下した。  
 麗華お決まりの足コキをするとわかったのか、さらにはあはあ言い出す。  
 犬のようにお腹を見せて、豚は寝転がった。そして、ぱんぱんになったズボンのチャックを忙しくおろし、早くも大きくなっているそれを出した。  
 
「よろしくお願いします、女王様ぁ!」  
 
「……何をだ? 私はまだ『お仕置き』をすませていないぞ」  
 
 冷ややかな目で豚の陰茎を見た。そして、土足のまま腹に足を乗せる。体重はかけない。  
 豚が少し悲鳴をあげたが、それもすぐにやんで鼻息に変わった。  
 そのまますすす、と動かしていって豚から生えた直立したものへと向かう。膨らんだ二つの玉を爪先で愛撫し、その側に少し体重をかけた。  
 
「はうあっ」  
 
「喚くな豚め。本当に気持ち悪いな」  
 
 一発目使い。  
 そういえば、気持ち悪いも皆共用じゃないか。まだ慣れていないなあ。  
 豚の両手が私の胸に伸びようとするけど、右手で制した。  
 そのまま精巣のまわりを適当に苛める。本体はまだやってはいけない、焦らすのだ。  
 しばらくしたら自慢の足コキをやってやる。別にうまくはないと思うけど、肩書きさえついていればそんな気がするものだ。  
 豚は、一回射精した。  
 
「お仕置きは終わりだ。今度は芸の練習だぞ」  
 
 私らしくない口調で言いながら、ベッドにあがるよう促す。  
 豚は下半身を裸にしたままやってきた。のしのし、という音が聞こえてきそうだ。  
 豚が今度はベッドに同じように寝て、私は騎乗位になる形で腹の上に座った。  
 
「いいか、豚。いいというまで私のなかで出すな」  
 
「はいいっ」  
 
 ピルは飲んでいるから、平気だ。コンドームをつけないのがここの売りなのだから、それを台無しにはしない。  
 ゆっくりと入れるふりをして、亀頭さえ当たったら一気に入れた。叫びそうなくらいの苦しみと快感があったけど、女王として黙った。  
 豚は鳴いている。豚のような鳴き声にしか聞こえなくなってきた。  
 
「あああっ! 女王様のなかに入ってますっ!」  
 
「何を言っている? 豚は日本語を喋れないぞ」  
 
 そういうと、ドM豚はブヒブヒと鳴き始めた。  
 私は早く済ませたいので、激しく腰を揺らす。そして腹の肉をつまみながら二発目を発射。  
 
「脂をつけていないで己の醜さを改善したらどうだ?」  
 
「ブヒィィィッ」  
 
 うわ、気持ち悪……。  
 だが、それに引かないのがここの女性であるべきなのだろうから再び我慢。  
 
「あっ……んあうっ! わた、しもそろそろ……限界だ。……出すことを許可するぞ、ぶ、たぁぁっ」  
 
 喘ぐふり。本当は気持ちよくなんてない。  
 出すことを、の時点で豚は射精した。ピルは飲んでいる。  
 
 
 
 
 豚に陰部を舐めさせて、そのあとベッドの上で一人オナニーをした。  
 ゆきひろ。ゆきひろ。ゆきひろ。ゆきひろっ!  
 今の淫乱な麗華は、幸宏のことを考えるだけで濡れてしまうのよ。ああ、ああっ!  
 私は、いつの間にか麗華と一体化していた。  
 麗華は、そのうち幸宏が欲しくなる。  
 
「幸宏……っ」  
 
 私は、笑えた?  
 
 
 
 それから。  
 お店を辞めてきた。10万くらい溜まったけど、2万円でボンテージをもらってきた。着慣れた服。忌まわしい服。  
 だから、それで幸宏の誕生日を祝うことにした。最初で最後。  
 ねえ、しつこいけど。  
 私は笑えたの?  
 

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