食卓に置かれた冊子が目に入り、幸宏は風呂場へ向けていた足を止めた。  
下着姿のゴージャスな女性がばばん! と表紙を飾っているその冊子のタイトルには  
『pj』とある。ランジェリーメーカー"ピーチ・ジョン"のカタログだった。  
 
「……また、誰か置きっぱなしにして……」  
 
女性4人が暮らすこの神庭家では、こういうことが珍しくない。  
通販のカタログが出しっぱなしになっているのはしょっちゅうだし、誰かのストッキングが  
ソファにひっかけてあったりもする。以前、脱ぎ捨てられたブラジャーが放置されていた時など、  
幸宏はそれを前にしてしばらく動けなかった(すぐに回収され、誰のものであったのかは不明)。  
 
「まったく、読んだら片付けておいてほしいよなあ……」  
 
などと一人ごちつつ、幸宏は周囲をきょろきょろと見渡し、誰もいないことを確認すると、  
つつつと食卓に近寄って、神妙な表情でその冊子の表紙をぺらりとめくった。  
幸宏とて健全な高校一年生の男子。興味がないわけがない。  
 
派手な下着に身を包んだモデルの日本人離れした肢体が目に飛び込んできた。  
「うわー…」と、幸宏は小さく歓声を上げつつ、ぺらぺらとページをめくってゆく。  
セクシーかつゴージャスな下着の数々と、健康的なモデルたちを見れば見るほど、  
目が離せなくなってゆく。引っ込みつかなくなっちゃったなー…などと考えていると、  
 
「へー…幸宏はこういうのが好きなのか?」「うわあぁあっ!?」  
 
横から突然声をかけられて、幸宏はダンシングステップもかくやという反射で飛びすさった。  
ひっひっひ、とニヤけた笑みを浮かべているのは、神庭家の三女・千秋だ。  
 
「ちちちち千秋姉さん! いつからいたの!?」  
「や、『pj』置き忘れたーと思って取りに来たら、幸宏が真剣に見始めるからさ」  
 
つまり最初から居たということか。なんという罠。  
こういうことがあるから、幸宏はエロ本一つ部屋に置いておくことができないのだった。  
紅潮した顔を強張らせたまま、どうすれば良いのかわからずにいると、千秋がカタログを持ち上げて  
指で一人のモデルを指さし、ニンマリとした顔を幸宏に向けてきた。それは、絶好のおもちゃを  
見つけた時の千秋の表情だった。  
 
「この紫のやつ。今、着けてるぜ?」  
 
などと言いつつ、千秋はタンクトップの肩をずらしてみせた。そこにある紫色のストラップは、  
間違いなくカタログの中のモデルが着ているのと同じものだ。幸宏は絶句する。  
 
「へへへ……見たいか? 見せてやろうか〜?」  
 
ほーれほれとオヤジのようなかけ声とともに、千秋はタンクトップの裾をぴらぴらとめくる。  
引き締まったウェストと、可愛いへそが見え隠れして、幸宏は真っ赤になりながら目をそらした。  
 
「遠慮しなくていいんだぜ〜? おねーさんサービスしちゃうよ〜?」  
 
にやつきながら近寄ってくる千秋に気圧され、後じさる幸宏。その脳裏に、反撃の手段が閃いた。  
しかしこれを実行していいものなのか。したら余計痛い目に遭うのではないか。何手か先を読むべく  
頭の中でシミュレーションしようとしたが、ふと鼻孔をくすぐった甘い香りに思考が停止する。  
 
「見せてよ」  
 
反撃の狼煙は、異図することなく口をついて出た。ぴたり、と千秋がその動きを止める。  
 
「……え」  
 
今度は、千秋が顔を強張らせる番だった。  
 
「お、おう、いいぜ? 見せちゃうぞ?」  
「う、うん。見せてよ」  
 
居間で対峙する二人は、互いに引っ込みが付かない状況に追い込まれていた。  
互いに顔を真っ赤にして、じりじりと間合いを取っている。  
家族が一人でも通りがかってくれれば、何をやっているのかと間違いなくツッコミが入り、  
膠着状態から脱することができるのだろう。だが、こういう時に限って誰も通りがかってくれない。  
 
「よ、よく見ろよ。おおお、おねーさまが大サービスしちゃうんだからな?」  
「は、ははは、早く見せてよ。……それとも怖いの?」  
 
幸宏の挑発に、ばっ…ばかにすんな! と千秋が応じる。う〜〜と意味もなく唸っていたが、  
ようやく観念したのか、タンクトップの裾に両手を添えた。  
 
そして、ばっ! とタンクトップの裾を持ち上げて、すぐ元に戻した。その間、およそ0.3秒。  
 
「はい見せたっ!」  
 
どうだ、と勝ち誇った表情で千秋が宣言する。顔を真っ赤にしたままで。  
子供かと幸宏は呆れる。確かに黒いフリルのついた紫色の下着が一瞬見えたが……。  
 
「どうした幸宏? 興奮しちゃったか? 一晩中眠れなくなっても知らないぜ?」  
「こ、興奮なんてするわけないじゃない……よく見えなかったし……」  
「なんだとう!? このナイスバディが見えなかったっつーのかよ!」  
 
勢いがついたのか、千秋が再びタンクトップの裾に手をかけて持ち上げようとした。  
もういいよ、千秋姉さんと幸宏のほうから折れるべく声をかけようとした、その時、  
 
「千秋ー? 洗濯物持って行ってー……あら?」  
 
とんとんと階段を下りる音がして、希春が姿を現した。階段の手すりから居間をのぞき込むが、  
そこには誰もいない。ソファの下に『pj』のカタログが一冊、落ちていただけだった。  
 
「おかしいわねえ、確かに千秋の声がしたんだけど……」  
 
不思議そうに独りごちる希春がとんとんと再び階段を上って部屋に入った足音を確認し、  
幸宏と千秋は暗闇の中で、同時にはーっとため息をついた。解説のため、少々時間を巻き戻そう。  
 
階段を一段降りた音から、幸宏はその人物が希春だと確信した。恐怖はすぐ千秋にも伝播する。  
逃げ場所を探して周囲を見渡し、階段の下の納戸を発見した千秋が、幸宏の手を引っ張って  
納戸の扉を開いてその中に幸宏をたたき込み、自分もその後を追って中に入った。  
ここまででわずか2.8秒。卓越した反射神経を持つ二人だからこそ為し得た技だった。  
 
(……痛いよ、千秋姉さん)  
(あの状況じゃしょうがないだろ! 希春姉に見つかったら大騒ぎだぜ……?)  
 
背中にあたる掃除機に手をかけて、幸宏は身を起こそうとする。だんだん目が慣れてきて、自分に  
覆い被さるように両手を納戸の天井にかけて立っている千秋を確認できた。そして、暗闇の中で  
幸宏の表情と身体が硬直する。  
 
(ーーーーーーーーーー!?)  
 
首を巡らせて扉の外を警戒している千秋に、無言の叫びを上げる幸宏。  
千秋のタンクトップがまくれあがり、紫色のブラジャーに包まれた双丘が、幸宏の眼前にあった。  
 
ごくり、と幸宏は唾を飲み込んだ。希春ほど大きくはない、しかしタンクトップの裾をひっかけて  
落とさない程度には小さくもない乳房が、幸宏の眼前にある。しかもpjの下着の「寄せて上げる」効果を  
得たその柔らかいものは、事もあろうに谷間を形作っていたのだ。その破壊力に鼻血が出そうになる。  
 
(ち、千秋姉さん、ちょっと……!)  
(しっ……黙れ!)  
 
いつものように首に腕を回され、幸宏の頭はがっしと千秋の胸に抱えられる形になった。  
千秋の双丘の谷間に鼻先をつっこまされ、幸宏は目を白黒させる。その耳に千秋のささやきが届いた。  
 
(外に小夏姉がいる……!)  
(え、だって足音なんて聞こえなかった……)  
(バカ! だから小夏姉なんだよ……!)  
 
言われてみれば、確かに戸の外に人の気配がした。こちらを伺うような、殺気にも似た緊張感が満ちる。  
どん! と床を叩いた固い音から察するに、木刀を持っていることは間違いない。もしかしたら泥棒か何かと  
勘違いしているのではなかろうか? 出て行かなければ納戸の扉ごと木刀で貫かれるかも知れない。しかし  
この状況で出て行って、何をどう言い訳すれば良いというのだ!?  
 
かちりと音がして、小夏の手が納戸の扉にかけられたのがわかった。  
ひぃ…と声にならない悲鳴を上げながら、幸宏を抱く腕に力を込める千秋。その拍子に、必死に横を向こうとする  
幸宏の鼻がブラジャーの上の縁にかかる。あの千秋姉さん、それ以上はまずいです。非常にまずいです。  
 
ぐぐ……っと小夏の発する殺気が膨らむ。このままでは殺られる…! 千秋は自分の体制にも気づかず死を覚悟し、  
幸宏は今にもその先端が覗いてしまいそうな千秋の柔らかな乳房から目が離せずに、声なき悲鳴を上げている。  
と、その時、  
 
「小夏姉さん?」  
 
思わず二人同時に「ヒッ…!」と声が漏れてしまう。しかしそれは階段の上からもたらされた救いの手だった。  
美冬だ! 殺気によってぱんぱんに満ちていた緊張の飽和が、音をたてて抜けていくのがわかる。  
小夏からの返事はないが、おそらくまたホワイトボードを提示しているのだろう。  
 
「うん。数学で分からないところがあるの。今いい?」  
 
美冬の声が聞こえ、その後に沈黙。階上でとんとん、バタンと音がしたところを見ると、肯定の返事を得たらしい。  
千秋は固唾を呑んで、小夏が納戸の前から歩み去ってくれることを祈っているようだった。幸宏の首を抱える  
腕が、ますます強張っている。そして、ブラジャーの上縁を押し上げ続ける幸宏の鼻先が"何か"に触れてーーー  
 
「……ごゆっくり」  
 
小夏の声とともに、びくんッーーー! と千秋は一瞬、仰け反るように身体を硬直させた。  
次いで聞こえてくる、とすとすと階段を上る音。どうやら小夏は立ち去ってくれたようだったが、  
納戸の中はそれどころではなくなっていた。  
 
(な……に……やって……幸宏っ……!)  
 
正直、限界だった。双丘を覆うブラジャーの覆いの片方を鼻先でずり下げてしまい、現れた可愛らしい膨らみに、  
幸宏は唇で触れていた。意を決して両腕で千秋の腰をかき抱き、舌を延ばして、ぺろりと突起を舐める。  
 
(んはッ……!?)  
 
がくんと、千秋の腰が震えて落ちそうになるのを、幸宏が支える。ぺろぺろと乳首を舐めるたびに、千秋は身体を震わせた。  
千秋の手が幸宏の肩を押さえて、その身体を引きはがそうとするが、狭い納戸の中では思うように動けない。  
 
(やめ……あッ! ちょ…っと…! んッ! ゆきひろっ……!)  
 
ちゅうちゅうと乳首を吸い上げる幸宏。がくがくと身体を震わせながら千秋はそれを必死に制止しようとするものの、  
その吐息に甘いものが混じりはじめる。手を伸ばし、もう片方の膨らみに幸宏の手が触れた。手のひらにちょうど収まる  
サイズの乳房にそっと触れた。柔らかくも弾力のある感触が、幸宏の指先に、手のひらに伝わってくる。  
 
納戸の中には、熱い吐息だけが満ちていた。幸宏の片手が千秋の手首をつかんでその動きを封じ、もう片方の手は  
千秋の乳房を優しく揉みしだいている。唇は千秋の乳首に寄せられたまま、それを吸い上げていた。千秋の自由なほうの手は  
幸宏の肩に置かれているが、今は押し返す力すら感じない。  
 
(だめ……だめ……だめ……ゆきひろ……やめて……!)  
 
掠るような震える声が、千秋の唇から漏れて幸宏の耳朶をくすぐった。それがより一層、幸宏の興奮に火をつける。  
 
(だ……めッ……! いっ……ちゃ……ぁッ……!)  
 
こりっ、と、幸宏の歯が千秋の乳首を優しく甘噛みした。ぎゅっと瞳をつぶって快感の波に耐えていた千秋も、  
それが限界だった。ひッ……!? と小さく悲鳴を上げると、身体が大きくびくん、びくんと震える。何度目かの  
痙攣の後、ぐったりとその身体から力が抜けた。はっ…! はっ…! と短い呼吸を繰り返しながら、幸宏に  
身体を預けてくる。  
 
(ば……か……やろう……! なに……やってんだよっ……!)  
 
息も絶え絶えに、千秋の胸の位置にある幸宏の顔に、千秋の手が触れる。ひっぱたかれるかと思ったが、その手は力なく  
頬を撫でただけだった。うつむいた千秋の表情を見て、幸宏は狭い納戸の最中で幸宏は身体をよじって膝立ちの体制になる。  
 
幸宏の顔の正面に、千秋の顔があった。  
千秋はじっと幸宏を見つめたまま、泣きそうな顔でゆっくりと首を横に振った。その頬に手を添えて首を制止させ、  
ゆっくりと千秋の顔に幸宏の顔が接近する。瞳を閉じて、互いの唇が触れた。千秋の唇は逃げなかった。  
 
やさしく触れるだけのキスの後、唇を放した時、千秋の眉と目尻が吊り上がっているのを幸宏は見た。明らかな怒りの表情。  
さすがにやりすぎちゃったかな……と幸宏が後悔しはじめていると、千秋の唇が開かれた。  
 
(お前……従姉弟なんだぞ? ていうか、あたしなんだぞ? 何してんのか、わかってんのかよ……!)  
(……うん)  
 
もう一度、幸宏の唇が千秋に触れた。今度は、互いの舌が絡み合う、濃厚なキスだった。千秋も嫌がることなく、  
積極的に唇を求めてきた。互いの顔が離れ、涎の糸がわずかに差し込む光を反射して光る。  
 
(ああ……もうッ……こんな……お前……!)  
 
てきぱきと着衣の乱れを直すと、怒りの表情を浮かべたまま千秋は納戸の外に出て行こうとした。  
ああ……これで終わりなのかな。などと考えていると、強引に腕をひっぱられた。数歩の後にたたき込まれたのは、  
一階にある千秋の部屋だった。飾り気はないが、いい匂いがして、数々の写真で彩られている千秋の部屋。  
 
「幸宏、ここに座れ」  
 
ベッドに腰掛けて足を組んだ千秋が、自分の横の場所をぽんぽんと叩く。自らの行動を顧みて、半ば怯えながら  
幸宏は千秋の隣に腰掛けた。腕と足を組み、苛立たしげな表情でしきりに身体を揺すっていた千秋は、唐突に  
目を見開くと、幸宏の部屋着の胸ぐらを掴んで問うた。  
 
「幸宏……これからお前に質問する。まじめに答えろよ、いいな?」  
 
何を言われるのかと恐れつつも千秋の顔をじっと見ていると、その頬がみるみるうちに紅潮してゆくのがわかった。  
じっと幸宏を見つめていた視線も、次第に妙に泳ぎ始め、一点に定まらない。そして、ようやく千秋が口を開いた。  
・・・  
「お前、あたしとしたいのか?」  
「……うん」  
 
くしゃくしゃっと、千秋が頭をかきむしって、床を見つめた。  
 
「希春姉とか、美冬じゃないのかよ! ……なんで、あたしなんだよ……!」  
「えっと……なんで美冬姉さんが出てくるのかわからないし、勢いにまかせてあんなことしちゃったけど……僕は、千秋姉さんがいい」  
 
怒りを浮かべたまま、千秋が泣きそうな顔をしていた。  
 
「……幸宏、お前……」  
 身をよじってこちらを向いた千秋が、不敵な笑みを浮かべた。  
「初めてなんだろ? こ、後悔すんなよ……」  
「し、しないよ」  
 幸宏の答えを聞かないうちに、千秋はタンクトップをまくって脱ぎ捨てた。  
 先ほどまで居た暗い納戸ではよく見えなかった、紫色のつやつやしたブラジャーが  
小ぶりの乳房を包んでいるのを目の当たりにし、幸宏は息を呑む。  
 そのまま千秋は、片腕でブラジャーの前を押さえてながら、もう片方の手を背中に  
回して器用にホックを外した。ストラップが張りを失って肩に落ちる。  
「ち、小さくて恥ずかしいから、あんまり見るなよ……」  
 震える腕がゆっくりと下に降りる。ぷっくりと膨らんだ桜色のつぼみがそこにあった。  
 お椀型の可愛らしい乳房は、千秋の身体の震えを伝えて幸宏を誘うかのようだった。  
「ち……千秋姉さん……」  
「…………」  
 恥ずかしげに目を伏せる千秋。どうして良いのか分からず幸宏がおろおろしていると、  
唐突にすぱーん! と頭を横からはたかれた。  
「な……なにするんだよっ!」  
「お前、な、なんかしろよ! 恥ずかしいじゃねえか! さ、さっきは……」  
 かああっ……と、千秋の顔が赤くなる。  
「さっきは……い、いきなりしたくせに……」  
 納戸での中の行為を思い出して、幸宏の顔も赤くなる。しばし二人ともうつむいたまま  
向き合う形になったが、ようやく幸宏が千秋の顎にそっと触れ、顔を持ち上げる。  
「千秋……姉さん……」  
「ゆ……きひろ……」  
 んっ……。短い喉の音とともに、二人の唇が重なる。閉じた口を割って先に舌を滑り  
こませてきたのは千秋だった。その舌を吸い上げると、んんっ……と甘い呻きが漏れる。  
 唇が離れてすぐ、幸宏は千秋の細い首筋に吸い付いた。ぎゅっと眉根を寄せて瞳を閉じ、  
幸宏の頭を抱え込むようにして千秋がそれを受け入れる。幸宏の唇は首筋から鎖骨に、  
胸元へとキスを繰り返しながら移動してゆき、そして千秋の乳房にたどりつく。  
 動きを止め、じっとそこを見つめだした幸宏を、千秋は不審げに見やった。  
「千秋姉さん……乳首……立ってる……」  
「ばっ……! お、お前が……あ、あんなことするからだろっ……!」  
 千秋姉さん、かわいい。幸宏はくすっと笑って、千秋の乳房に吸い付いた。  
「んんう……ッ……!」  
 甘い声が上がる。ぺろぺろと可愛らしい乳首を舐め上げ、乳輪ごと頬張るように  
吸い上げると、びくびくッと千秋が身体を震わせた。素直に反応が返ってくるのが  
幸宏には嬉しかった。  
 乳首を苛めるのを止めないまま、千秋の腰の裏に腕を回して、ゆっくりと身体を  
ベッドに横たえさせる。ちらりと一瞬見た千秋の瞳はすでに夢見心地だった。  
 ようし……などと決意しつつ、先ほど脱ぎ捨てられたタンクトップとおそろいの  
ショートパンツの裾に手をかけて、それをずりおろす。顔を上げて千秋のショーツを  
眺め、幸宏は硬直してしまった。  
「ちあきねえさん……ひ……ひも……」  
「な、なんだよ……」  
 千秋がはいていたのは、左右で結び目を作る形の、紫色の紐ショーツだった。  
そういえば先ほどまで見ていたカタログで、モデルがはいていたのと同じだ。  
 幸宏の頭にカーッと血が昇る。普段活発な印象の強い千秋と、目の前にある  
色っぽいショーツとのギャップに、頭がくらくらする。  
「け、見城がさ……」  
「見城先輩?」  
 唐突に出てきた意外な名前に、幸宏はきょとんとする。  
「あのメガネ……三枝とかいったっけ? あいつを落とすための勝負下着が  
 欲しいとかゆってさ。あたしはどーでもよかったんだけど、いつのまにか  
 一緒に買いましょうよとか言われて、なんか強引に……」  
 そうだったのか。炎の女神様ってば意外と大胆なんだな……。  
 いや、ちょっと待てと幸宏は我に返る。千秋姉さんがこの紐ショーツを  
はいているということは、ひょっとして見城先輩も……。あの見城先輩が、  
こんな大胆な下着を、しかも勝負下着として……っ!?  
 はっと気がつくと、明らかな怒りに染まった千秋の表情が眼前にあった。  
 千秋の唇の端が引きつり、そして固く握られた拳が振り上げられる。  
 
「ちょ、たんま! 千秋姉さん!」  
「うるさーい!!」  
 ごすっ。千秋の拳が幸宏の脳天に突き刺さった。そのあまりもの衝撃に、  
幸宏は声もなく頭をおさえてうずくまってしまう。  
「お前、想像しただろっ! 見城がこれつけてるのっ!」  
「そ、そんなこと……」  
 あるけど。でも、それは千秋姉さんが見城先輩の名前を出したりするから……。  
「さいってーだな! もう知らんっ! 寝るっ!」  
 そう吐き捨てると、がばっとタオルケットをかぶって壁を向いてしまった。  
 あうあうと幸宏が情けない声をかけるが、ふんッ! という色気のない返事が  
返ってきただけだった。するとその時、トントン、と戸を叩く音がする。  
「千秋、いるの? 洗濯物持ってきたわよ……あら?」  
 がらりと戸を引いて現れたのは希春だった。その瞳に、ベッドの上でタオルケット  
をかぶって丸くなって眠る千秋の姿が映る。その胸がもの凄い勢いで上下している  
ことには、幸い気づいていないようだ。  
(入ってくるな! それ以上近寄るなー!!)  
 千秋の心の声が幸宏には聞こえてくるようだ。今幸宏がいるのは、千秋のタオルケットの  
中だった。千秋の腰のあたりにしがみつくようにして身を潜め、嵐が過ぎ去るのを待つ。  
 横から見ても気づかないかも知れないが、近くに寄ると、明らかに不自然な盛り上がりを  
見て取ることができてしまうだろう。  
「寝ちゃったのね。電気着けっぱなしで……もー、また脱ぎ散らかして……」  
((!!!!))  
 部屋に脱ぎ捨てられた千秋のタンクトップに気づき、希春が部屋の中に入ってきた。  
もはやどうしようもない。絶体絶命のピンチだったが、幸宏はぎゅっと結んだまなじりを  
ゆっくりと見開くうちに、目の前にあるものに気づいた。  
 それは千秋のお尻だった。紫色の紐ショーツの大胆なカットが、切れ込むように  
股の間へと絞り込まれている。そして幸宏は見た。千秋の股の最奥部の大事な部分を  
覆う布の紫色が、一層濃くなっているのを。  
(これって……)  
 自然と幸宏の息遣いが荒くなった。その吐息が敏感な部分に吹きかけられ、ぴくんと  
千秋の身体が動く。幸いなことに、希春はタンクトップを拾い上げただけで、何事もなく  
部屋の出口に向かったようだった。ぱちり、と希春が部屋の電気を落とす。  
「じゃ、おやすみなさい」  
 戸がすっと閉じ、とんとんという希春の足音が次第に遠ざかっていく間、二人は微動だに  
しなかった。注意深く、耳だけで足音の行き先を探る。やがてぱかりと千秋の片眼が開いた。  
一瞬、ほっとしたような表情を浮かべた後に、すぐその瞳がびっくりしたように見開かれた。  
慌てて股のあたりを押さえた手も空しく、びくっ、びくんっ! と背が跳ねる。  
(ちょお……っと、ゆきひろっ……!)  
 がばっとはね除けられたタオルケットの下では、ショーツの上から千秋の秘所に顔をうずめる  
幸宏の姿があった。鼻先で最も敏感な部分を押しつつ、とどまることなく溢れ出る愛液の出所に  
口づける。間断なく送られてくる刺激に、千秋は身をよじった。  
(千秋姉さん……濡れてる……)  
(あ……たりまえだろ……っ! お前がさんざん弄くるからぁ……っ!)  
(かわいい……千秋姉さん……)  
(ばかぁっ……! あっ、だめ! だめ……だめぇ……っ! あッーーー!)  
 びくびくびんッ! と千秋の身体が跳ねた。ぷしッと何かが秘所の奥から噴出し、ショーツを  
さらに濡らしたのがわかる。  
 え、もしかして、もう……? と、幸宏が顔を上げて見ると、腕を交差させて真っ赤になった  
顔を隠す千秋の姿があった。はぁーッ、はぁーッと荒い息をつく口が、何かを呟いている。  
(イかされた……ッ……幸宏に……ぐッ……うっ……)  
 嗚咽にまじってそんな言葉が聞こえてきた。千秋姉さん……と声をかけながら、そっと顔を隠す  
腕に手をかける幸宏。しかしその手を払いのけて、千秋はしゃくりを上げ続ける。  
(こんな成り行きみたいなの……やだよう……。あ、あたしだって……初めてなのに……)  
 寝たままずりずりと身体をずらして壁際を向いて移動してしまった千秋をどうして良いのかわからず、  
幸宏はその場に正座して、千秋の背中にささやいた。  
(千秋姉さん、わかった。千秋姉さんの好きなようにする。だから、どうして欲しいか言って)  
 その言葉に、涙を拭いながら千秋は身を起こす。じっと赤い目で幸宏を見つめると体育座りの体制で  
紐ショーツの両側の結び目を解いた。固唾を呑んで見守っていた幸宏の眼前で、ゆっくりと千秋はその  
健康的な脚を開いていった。はらり、と前を隠していたショーツが落ち、薄い陰毛があらわになる。  
(…………もっと、舐めて)  
 
 ぢゅうっ、ぴちゃ、ぢゅっ、と小さくも淫靡な音がする。幸宏が、愛液を溢れさせ続ける千秋の秘所を  
舌と指で攻め続けている音だ。すでにそのクリトリスは真っ赤に充血し、幸宏の舌のざらざらとした刺激に  
耐えている。千秋はといえば、自らの指にかみついて、必死に声を出さないようこらえ続けていた。  
(ーーーーー!! ーーーーーッ!!)  
 声なき喘ぎを上げ続ける千秋。早寝を習慣とする神庭家の皆であれば寝静まっていてもおかしくない  
時間だったが、声を上げれば聞こえる恐れは十分にある。  
 びくッ、びくッ、びくッ! と千秋の背が跳ね、しばらくつま先立ちで尻を浮かせた後、ぐったりと  
ベッドの上に倒れ、荒い息をつき始める。幸宏がそっと内股に指で触れると、びくんっ! と身体が  
痙攣して、次いで力のない千秋の手がそれを払いのけようとする。  
 千秋は、何度目かわからない絶頂を迎え、すでに朦朧としていた。幸宏のテクニックが別段優れて  
いるわけではない。千秋がの身体が敏感すぎるのだ。  
(さわ……るな……。びんかんに……なってるからぁ……っ)  
 そう言われても、幸宏ももう止まりようがない。千秋に言われる通り千秋の秘所を責め、その反応を  
楽しむうちにいきり立ってしまったモノは、部屋着の股間の部分を痛いほど押し上げている。  
 それを見て、千秋は未だ快感の余韻に震える身体を苦労しながら起こす。  
(……脱げ、幸宏)  
(え……ええっ?)  
(脱がないんなら、脱がす)  
 千秋は素早かった。がっ! と幸宏の部屋着の下履きに手をかけると、パンツごとずりおろしてしまう。  
幸宏の強張った怒張が、ぶるんと勢いよく跳ね出た。脱がした下履きとパンツをぺいっと床に投げ捨て、  
千秋が熱っぽくそれを見つめた。  
(これが幸宏の……)  
 幸宏のモノに手をのばす千秋。今度はびくり、と幸宏が身体を震わせる番だった。何をされるのか、  
いやまさかと思いつつも、恐れと期待でドキドキと胸を高鳴らせる幸宏。両手で幸宏のモノを握り、  
じっとそれを見ていた千秋が、つと上目遣いにこちらを見た。  
(……してほしいか?)  
(……っ!?)  
 目を白黒させて幸宏は戸惑う。そんなこと聞かれても……! 抗議すべきなのか、素直に要求すべき  
なのか。だいたい、要求したところでからかわれそうで怖い。ばーかと言われて一蹴されるかも。  
(千秋姉さん、は、初めてなんでしょ?)  
(そうだよ……。悪いか?)  
(じゃなくて、そんな、無理矢理しなくたって、いいから……)  
 出てきた言葉は、遠回しな拒否だった。幸宏の返答に千秋は一瞬むっとしたように眉を怒らせ、  
それからなぜか照れくさそうに横を向きながら、顔を紅潮させた。  
(そりゃ、初めてだけど……さ……)  
 ぼそぼそと呟く。聞こえるか聞こえないかの幽かな声音に、幸宏は耳をそばだてた。  
(……ずっと期待して……想像して……して……たから……)  
 なんですと!? と驚愕に目を見張るのと同時に、幸宏のモノを温かい感触が包み込む。  
 千秋の口が、幸宏の亀頭を包み込んでいた。そのまま拙い舌が、ちろり、ちろりとモノを舐める。  
 うああぁ……千秋姉さんが、僕の、僕のを……。幸宏の背中に得体の知れない快感が走り抜けた。  
 
 そう長くは保たなかった。千秋の行為は拙いものだったが、張り詰めきっていた幸宏のモノは  
すぐ限界に達しそうになった。泣き出しそうな快感に身をよじると、千秋がモノを咥えたまま  
幸宏を上目遣いに見た。だめですやめて下さいその顔は反則ッ!  
(千秋姉さんだめっ! 離して……っ! で、出るッ……!)  
 千秋の瞳に「?」の文字が浮かんだが、すぐに驚愕に見開かれることになった。びくんッ!  
と幸宏が硬直し、千秋の口の中に欲望を解き放つ。びゅーっ、びゅっ! と音を立てるように  
勢いよく射精して放たれた精子は、それでも口を離さなかった千秋の口内を汚し続けた。  
(ふう……ッ……千秋……姉さん……ッ)  
 ぶるぶるぶるっと幸宏の身体が震える。射精後のモノを、さらに千秋が吸い上げたからだ。  
やっと口を離した千秋の手が泳ぎ、ティッシュの箱を取る。さすがに飲み込んだりはできない  
ようだった。AVじゃあるまいし。  
 ティッシュの中に精子をぺっぺっと吐き出し、ティッシュで口をぬぐう千秋を、心配そうに  
幸宏がのぞき込んだ。その脳天に、再び拳骨が振り下ろされる。ごつん、といい音がした。  
(痛ッ! は、離してって言ったじゃないか!)  
(うるさい! こ、こんなに出しやがって……にっがぁ……)  
 千秋が顔をしかめ、抗議する目つきで幸宏を睨む。  
(ビデオじゃ飲んでたけど……よくこんなもの飲めるな……)  
(え、千秋姉さん?)  
(う、うっさい! あたしじゃないぞ! 見城のだからな!)  
 なんだかよく分からないけど、女の子同士、色々あったようで……。  
 ぷんすか怒りながら小突いてくる拳を片腕で受けながら、幸宏は身を寄せて腕を伸ばし、  
千秋をぎゅっと抱きしめた。暴れるのをやめた千秋が、きょとんとする。  
(……ゆ、幸宏?)  
(……千秋姉さん、ありがとう。一生懸命してくれて)  
 横にある頬が、かあっと赤くなるのが分かる。抱きしめた腕をちょっと緩めて額を合わせ、  
唇を寄せ合う二人。互いの唇を幾度もついばみ、やがて顔を離して、真剣な顔で幸宏が千秋の  
瞳をのぞき込んだ。  
(千秋姉さん……好きです)  
 千秋の瞳が驚愕に見開かれ、その縁に涙がにじむ。そして細められた瞳は、何かずっと  
我慢してきたものが解き放たれたかのような喜びの色に満ちていた。  
(あたしも……幸宏)  
 ささやき合う二人。再び、互いをぎゅっと抱きしめ合ったが、やがて二人の身体が小さく、  
次第に大きく震えはじめる。聞こえてくるのは、ぷぷぷという声。笑っているのだ。二人で。  
(くっくっく……お前、なんで笑ってるんだよ、幸宏っ)  
(ち、千秋姉さんだって……ふふふっ……)  
 いつもじゃれ合い、ふざけ合っている二人が、いま裸で抱きしめ合っている。その緊張感に  
耐えられなかったのだった。なぜか無性にこみ上げる可笑しみが妙にツボに入り、抱き合った  
まま二人は小さな声で笑い続けた。  
(似合わねーな、まったく。こんな真剣なのは……さ……)  
(うん……でも、千秋姉さん……)  
 身体を離すと、千秋の形の良い乳房の舌に、再び元気になった幸宏のモノがあった。  
(お前……さっき出したばっかじゃねえか……しかもあんなに……)  
 自分で言った意味に気づいて赤くなる千秋。その様子を見て再びくすりと幸宏は笑う。  
(千秋姉さんを欲しがってるんだよ……だから……)  
(ん……っ)  
 唇を合わせながら、ゆっくりと千秋の身体を横たえさせ、その上に幸宏が覆い被さる。  
(……しても、いい……?)  
 笑みを浮かべたまま、千秋がこくりと頷いた。いつも健康的な姉が見せるその笑顔は、  
たとえようもなく色っぽかった。千秋の脚が開かれ、幸宏を迎え入れる体勢になる。  
(幸宏の……挿れて……)  
 幸宏は自らのモノを手に取り、千秋の秘所にあてがう。ちゅぷり、と音がした。  
先ほどまでの幸宏の責めでほぐれきったそこは、これから幸宏のものを挿れると  
想像しただけで、再び濡れ始めているのだ。  
 場所を定めると、幸宏はゆっくりと腰を押し進め、千秋の膣に分け入っていった。  
(ん……う……う……!)  
 鍛え上げられた千秋の肉体に支えられた膣内は、ぎゅうぎゅうとキツく幸宏のモノを  
締め上げ、侵入を拒もうとした。しかし十二分に溢れる愛液がぬるりと奥へ、奥へと  
導いてくれる。結果的に、意外とすんなり幸宏のものは千秋の膣の中におさまった。  
しかし、膣から溢れ出る愛液にまざる赤いものが、紛れもない破瓜を示していた。  
 
(千秋姉さん……大丈夫……?)  
(うん……ちょっと痛かったけど、なんか、思ってたほどじゃない……)  
 眉根を寄せながら、不思議そうな顔をしている千秋。そうこうする間にも、  
千秋の呼吸と心臓の鼓動に合わせて、幸宏のモノが締め付けられる。  
(幸宏は……どう……?)  
(うん……すごく気持ちいい……)  
 眉根を寄せて苦しそうな表情をしつつも、だろ? とでも言いたげな雰囲気で  
千秋がにやっと笑った。余裕を見せる千秋に、幸宏も安堵する。  
(へんなの……なんか……このへんまで入ってるかんじ……)  
 千秋は、きゅっとくびれた腰の上に手を置き、へその上のあたりを示した。  
いくらなんでも幸宏のモノはそこまで大きくないが、感覚としてそう感じるのだろう。  
(苦しい?)  
(苦しくはないけど。うーん……おなかいっぱい、って感じ)  
(そっか。じゃあ……もっとしてもいい?)  
 その言葉に、ふふっと千秋は笑う。  
(うん……幸宏の、いっぱい食べさせて……)  
 言われるが早いか、幸宏は急速に腰を動かし始めた。ぱん、ぱん、ぱんと互いの  
身体が打ち付けられて音を立てる。  
(あ! あ! あ! あ! あ! あッ……!)  
 声なき声をあげ、千秋の身体が跳ねる。だめ、声、出ちゃう、と悲鳴をあげつつ、  
ベッドの傍らにあったクッションを取って、自分の顔に押しつけた。くぐもった  
呻きがその下から聞こえてくるが、幸宏は一旦腰を止めてそのクッションをどかした。  
(……顔、見えないから。感じてる千秋姉さんの顔、見せてよ)  
(このっ……幸宏のくせに〜〜〜!)  
 てい、と千秋の脚がカニバサミ状態になって幸宏の腰をとらえた。うわわと戸惑う  
暇もなく、腹筋だけで千秋は上体を起こし、幸宏の肩にしがみついた。  
 うねるような締め付けに、幸宏の顔が歪む。危ない、一瞬イキそうになった。  
その様子を見逃さず、対面座位の姿勢のまま、千秋が腰を動かした。  
(生意気っ……幸宏のくせにっ……あッ!……あんッ……!)  
(な……なんだよ、もうっ……)  
 幸宏も負けじと腰を振る。寝ている千秋に注挿を繰り返していた時とは異なる、  
千秋の腰の動きが加わってくらくらするほどの快感が幸宏を襲った。しかし、  
それは千秋も同じなようで、眼前にある顔がどんどん泣きそうに歪んでいく。  
(あッ!……だめ! だめいっちゃう幸宏、だめッ! だめぇ……ッ!)  
 びくびくびくんッ! という痙攣とともに、ぎゅーっ、ぎゅーっと千秋の膣が  
幸宏を締め付けた。自分が感じやすい肉体の持ち主であることも忘れて、この  
従姉は自滅したらしい。  
 焦点の合わない瞳で荒い息をつく千秋に、幸宏は唇を合わせた。朦朧とする  
意識の中でも、ちゃんと唇は幸宏を求めて吸い付いてくる。  
 絶頂を迎えてさらに敏感になった肉体は、わずかな刺激にも反応してしまう  
ようで、幸宏の手が乳房を揉み、指先で乳首を撫でると、びくりと身体が跳ねた。  
(そ……こ……さわるなっ……!)  
 怒りの表情を取り戻していても、涙をいっぱい浮かべた瞳では迫力がない。  
 その可愛らしさを前にして、幸宏の嗜虐心に火がつく。  
 一度、大きくモノを引き抜くと、再び千秋の最奥部まで突き入れた。  
 肩を掴む千秋の爪先が立ち、ヒッ……という悲鳴が漏れる。  
(ば……か……だめっ……い、イッたばっかりだからぁ……っ!)  
 身体を強張らせて幸宏の動きを止めようとするが、結局幸宏が身体の自由度を  
増すだけの結果となった。ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ、と音をたてて、注挿が  
繰り返される。  
(おくっ……おくぅ……当たってるッ……いいッ……!)  
 抗議なのか歓喜なのかどっちつかずの悲鳴を上げる千秋。次第に、千秋の腰が  
ふたたびうねり始めた。その尻を掴み、首を捻って乳首に吸い付く。舐めるたび、  
膣がまたきゅうきゅうと締め付けられるのがわかった。  
(あぁっ……もう……幸宏ッ……気持ちいいようッ……! こんなのッ……!)  
 千秋の腕が幸宏の首筋に回され、ぎゅっと頭を抱え込まれる。  
 
 いつも、千秋にはヘッドロックをかけられたり、首を絞められたりと散々な  
目に遭わされている。と言いつつ、おっぱいが顔に当たる感触を思い出して、  
夜中に自分を慰めたこともあった。千秋を想いながら。  
 でも今は、正面から千秋が幸宏の頭を抱きしめ、裸の乳首に口を寄せながら、  
幸宏のモノが千秋の膣を貫いている。好きな人と、セックスしているのだ。  
(こんなのッ……! こんなの……知らないッ……ゆきひろぉ……っ!)  
 千秋も、幸宏のことを思って自分自身を慰めていたりしたのだろうか。  
さっきの口ぶりからすると、間違いなくしていそうなのだけれど、聞くと  
殺されそうだから言わない。  
(あっ……あっ……だめゆきひろ……また……またイきそう……っ!)  
 あの千秋が、こんな敏感な身体の持ち主だなんて知らなかった。  
 こんなに可愛く鳴くなんて、初めて知った。  
 でも今日からは、ずっと千秋は幸宏の、幸宏だけのものだ。  
(いいっ……イっちゃう、ゆきひろ、イっちゃうよう……!)  
(ぼく……も……!)  
 えーと特別校舎の三階の階段の幅と高さは……などと難しいことを考えつつ  
長持ちさせてきたが、幸宏自身、限界だった。しかし現在の体勢では……。  
(ち、千秋姉さん、この体勢じゃまずい……っ!)  
(いいよ、幸宏、出してっ!)  
 ええっと驚く間もなく、快感が脊髄の奥から迸りそうになる。やばい。  
(イっちゃうッ! ゆきひろぉー……! すきぃ……ッ!)  
 一足先に、千秋が絶頂に達し、恍惚の表情でぶるぶると身体を震わせる。  
 その絶頂とともにやってきた締め付けが、幸宏に限界をもたらした。  
(あッ、千秋姉さん、ごめんッ、いくッ……!)  
 対面座位でつながったまま、幸宏は絶頂に達した。  
 びゅくん、びゅくんと幸宏のモノが千秋の中で大量の精を放つ。  
(あっ……出てる……ゆきひろの……あったかい……)  
 射精に呼応するかのように、千秋も身体を震わせた。また、軽くイッて  
しまっているのかも知れない。ぎゅうぎゅうといつまでも幸宏のモノは  
締め付けを咥えられ、自分でも信じられないほど長く、射精が続いた。  
(あー……もう。お風呂入った後みてえ……あっつー……)  
 そんなことを言いつつ、千秋が抱きついてくる。幸宏も、その身体を  
抱きしめ返した。ふふっと二人で笑い合って、ちゅっとキスをした。  
 そのままベッドの上に足をつき、千秋が立ち上がろうとする。膣から  
幸宏のモノが抜け落ちると、千秋の腿を白いものが伝った。  
(っと、出ちゃう、幸宏の)  
 あわててティッシュを取り、それを拭き取る。しかし拭っても拭っても、  
白い液体はとめどなく溢れ続けた。その淫靡な光景に、思わず幸宏が目を  
逸らすと、意地悪そうな目つきで、千秋が幸宏に視線を送った。  
(……お前、出しすぎ)  
(……っ!? しょ、しょうがないじゃないか!)  
(うっそだよっ! かわいーなあ、幸宏は)  
 などと言いつつ千秋が抱きついてきて、耳たぶを甘噛みされた。  
(これから、いっくらでも出していいからな……幸宏)  
(!?)  
 耳元にささやかれた言葉に、幸宏の心臓が跳ね上がる。何かを期待する  
目つきの千秋に口づけると、額を合わせたまま幸宏は言う。  
(じゃあ……お……おかわり……)  
(……よーく、味わって食えよ……?)  
   
 ……結局その夜、幸宏は4回もおかわりをし、数え切れないほどの  
絶頂を迎えた千秋は、次の日立てずに大学を休んだという。  
 
(おしまい)  
 
 
 
☆おまけの後日談  
 
Prrrrr……Prrrrrrr……  
 
「……あ、もしもし見城? うん、まー用事ってほどじゃないんだけどさ。  
 えーっとさ、しちゃったぜ? え、へへへ。何がって、ナニだよ。  
 え、相手?それは悪ぃけどひみつー。ずるいーって別にいいじゃねえかよ。  
 ……えッ!? なに見城もしたの? おめでとー! やーどうだったよ。  
 やっぱり痛かった? そっかそっか。大変だったなー。うん。いやあたしは  
 何でかあんまり……って、え? ……なに? え? もっぺん言ってみ?  
 ……………………………………………………………………………………。   
 …………………おしり………の…………………方………で……?   
 やー……あたしはそういうのは…………ちょっと……」  
 

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