注)微百合?
「んん…、ここは…?」
希春は、薄暗い部屋の中で目を覚ました。
どうやら座ったまま寝ていたらしい。
「今…、何時かしら。」
時計を探そうとする。しかし、体を動かそうとしても、まるで何かで縛られているかのように動けなかった。
『もしかして…、金縛りっ?!』
ホラーな想像をしてしまい、ゾッと背筋が凍る。しかしよく見ると、手足がロープのようなもので縛られている。
体も椅子にしっかりと固定されており、動かそうにも動かせない。
「え…なにこれ!?…もしや!ゆーちゃんが私の魅力にメロメロで、監禁したくなっちゃったのかしら!?
全くもう、ゆーちゃんったら!言ってくれれば…、お姉さんはいつだって準備OKなのよっ!」
混乱の中、彼女はそうあって欲しいと思いながら想い人の名前を呼ぶ。
しかし彼女の前に現れたのは意外な人物だった。
「……小夏?」
神庭小夏。自身の妹である。
希春は、全くと言っていいほど飲み込むことができない状況に戸惑いながらも、目の前に現れた妹を問い詰める。
「何するの、小夏!? これはいったいどういうこと!?」
縛られた希春の前、小夏はそこにただ佇んでいる。
希春以外の人間から見れば、全くと言っていいほど表情に特別な感情は見られない。
ただ彼女にとってみれば、小夏は異常な表情を浮かべていたようだ。
「小夏…いえ、小夏ちゃん…? ちょっと、どうしてそんな恍惚としてるのよ!」
希春が言うが早いか、小夏は「衝撃!? 妹は真性百合っ娘!」
などと書いてあるホワイトボードを掲げている。
「………小夏? もう娘って年齢でもないでしょ。しかも百合って…。
…って、百合っ?! もしかして、もしかしてもしかして百合って!?
ダ…、ダメよ! ダメよダメよ小夏!私はゆーちゃんのものなの!ダメなのよ!」
必死で抵抗する希春。しかし小夏は全く動じず、少しずつ希春に近づいていく。
「だめよ小夏、止めなさい!お姉さん本気で怒るからねっ!ちょっと、どうして頬が上気してるの!?
やぁっ、だめぇ。ちょっと!小な…っ!!」
……こうして、神庭家長女と神庭家次女の熱い夜が、幕を開けた。